第2部 欧米諸国における就業形態の多様化

2 パートタイム労働、有期雇用労働、派遣労働等の動向と背景

 パートタイム労働は、長期的に増加傾向にあり、アメリカを除くと雇用者全体に占める割合も上昇している。雇用者に占めるパート労働の割合は、国によってパートタイム労働者の定義や考え方が異なっているため厳密な比較は困難であるが、オランダ 38.3%(97年)、イギリス25.3%(97年)、ドイツ18.9%(96年)、アメリカ17.9 %(97年)、フランス16.3%(96年)となっている。
 有期雇用労働や派遣労働は、若干増加傾向にあるものの、パートタイム労働と比べるとその伸びや雇用者に占める割合は低い。例えば、イギリスでは、有期雇用労働者は全雇用者の3.8%、派遣労働者は1.1%となっており(97年)、フランスでは、有期雇用労働者は全雇用者の4.0%、派遣労働者は1.6%となっている。

(1) パートタイム労働者

1) 女性のパートタイム労働
 各国ともにパートタイム労働者占める女性の割合が高く、長期的に増加傾向にある(ドイツ(96年、87.2%)、イギリス(97年、82.9%)、フランス(97年、82.7%)、オランダ(97年、74.9%)、アメリカ(97年、68.0%))。女性の職場進出が進む中で、家庭責任を有する女性の多くが仕事との両立を図るためにパートタイム労働を選択しており、また、保育施設が不十分であることも背景にある。

2) 男性のパートタイム労働
 男性のパートタイム労働者は、わずかながら増加しているものの、雇用者全体に占める割合は低い(イギリス8.2%(97年)、ドイツ4.0%(96年)、フランス5.1%(97年)、オランダ16.7%(97年)、アメリカ10.7%(97年))。

3) サービス経済化の進展とパートタイム労働
 各国ともにサービス産業におけるパートタイム労働者の増加が著しい。サービス業では、ライフスタイルの変化に見合った営業時間やサービスの需要が生み出されており、営業時間の延長や多様化がパートタイム労働者、特に女性の就労を促進している。

4) 使用者の経済的要因
 使用者がコストの安い労働を選好することもパートタイム労働進展の要因の一つであると考えられる。例えば、パートタイム労働について社会保障費が減免される国々では、コストの低いパートタイム労働への需要を高める要因となる。

5) 失業問題の深刻化とパートタイム労働の雇用政策への取り込み
 オランダでは、70年初以来、高失業率を解決するための手段として積極的にパートタイム労働の促進を図ってきており、パートタイム労働の割合が先進国の中でも群を抜いて高く、失業率も大幅に低下している。
 フランスにおいても、失業対策の一環としてパートタイム労働が活用されており、一定の要件を満たしてパートタイムを雇用する場合、パートタイム労働者の社会保険料の事業主負担が軽減される措置等がとられている。
 ドイツでは、高齢労働者をパートタイム就労に移行させ「空きポスト」へ求職者・養成訓練生を就かせる制度(高齢者パートタイム就労法)が設けられている。

6) 労働組合の態度の変化
 オランダにおいては、80年代の初めより政労使が一体となってパートタイム労働の促進について取り組んでる。イギリス、ドイツ、フランスにおいても、過去においてはパートタイム労働等に若干否定的であった労働組合も、最近の深刻な雇用・失業情勢を受けて、パートタイム労働者の労働条件向上やパートタイム労働者の組織化等を図る方向へ動いている。

(2) 有期雇用労働者、派遣労働者

1) ドイツ、フランス
 常用雇用労働者は解雇制限があったり、解雇手続が複雑であることから、有期雇用労働や派遣労働を利用する要因の一つとなりうる。しかしながら、フランスでは、有期雇用労働を活用できる事由が法律で決められており、また、期間や契約更新について制限がある。ドイツでも、期間や契約更新について制限がある。このような制度も、有期雇用労働があまり伸びていない要因の一つになっていると考えられる。労働者派遣事業についても、概ね自由度は高いと考えられるにもかかわらず、現在までのところあまり伸びていない。

2) オランダ
 常用雇用労働者への法律上の保護が手厚いこと等もあり、有期雇用労働、派遣労働等の割合が比較的高くなっている。企業は有期雇用労働や派遣労働を常用雇用の試用や人材選別の手段としても使っている実情にある。

3) イギリス、アメリカ
 イギリスにおいては、勤続2年未満であれば期間の定めのない雇用についても解雇の手続きが容易であること等が、有期雇用労働や派遣労働が大きく伸びていない原因の一つとなっている。
 アメリカでは、臨時労働者の数は伸びていない。

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