第2部 欧米諸国における就業形態の多様化

1 多様な就業形態の概念

 次のように、国によってパートタイム労働、有期雇用労働、派遣労働等の概念、法律における位置づけ等は異なっている。

(1) イギリス

 大陸ヨーロッパ諸国に比べると労働分野における法規制は少なく、パートタイム労働者、有期雇用労働者についての法規制は無い。統計ではパートタイム労働者数は自己申告に基づいて集計される。労働者派遣事業についても、事業運営に対する規制のみが存在する。政府は、伝統的に、労使関係は当事者である労使の話し合いによって決定・解決されるべきとの立場をとっている。

(2) ドイツ

 パートタイム労働とは「その週所定労働時間が事業所内で対比しうるフルタイム労働者の週所定時間より短い者」(就業促進法)と規定されている。
 有期雇用労働は、「期間設定に合理的な理由が無い限り、期間が設定されていても、判例によって期間の定めのない労働契約を締結したものとして取り扱う」とされ、例外的な雇用形態であると考えられている。ただし、一定の要件を満たす場合、24ヶ月を上限に有期雇用契約が認められこの範囲内であれば2回契約を更新することができる(就業促進法)。
 労働者派遣事業は、許可制とされており、建設業を除いて対象業務に制限は無い。派遣元と派遣労働者との労働契約は原則として最初の契約のみ期間の定めを置くことが認められている。

(3) フランス

 パートタイム労働とは、1)労働時間が法定労働時間又は協約の定める労働時間を1/5以上下回る、又は2)就労期間と不就労期間が交互におとずれその年間労働時間が年当たり法定労働時間又は協約の定める労働時間を1/5以上下回る労働と規定されている(労働法典)。
 派遣事業の対象業務に制限は無いが、利用可能な事由が制限される。派遣元と労働者の契約は登録型のみ。有期雇用契約は、利用事由に派遣と同様の制限があり、期間については上限が定められている。

(4) オランダ

 失業の削減、女性の労働市場への参加促進、高年齢就業者の就労継続の促進等を目的としたパートタイム労働の質・量両面における促進が図られており、男性のパートタイム労働も拡大してきている。
 有期雇用労働は、契約期間の上限が3年、通算契約期間がこの上限を超えない限り2回の契約更新が認められる。派遣労働者については、労働者派遣事業についての規制が緩和される一方で、派遣労働者の雇用保護の拡大が図られている。

(5) アメリカ

 労働分野に関する法律は少なく、パートタイム労働者、派遣労働者等についての労働法上の規定は無い。
 アメリカ統計局では、パートタイム労働者を「通常の週労働時間が35時間未満の者」としている。95年と97年に実施した特別調査では、「臨時労働者」を「仕事の継続について暗黙の或いは明白な契約のない者で、自らの仕事が続く見込みがないと考えている者」、「非典型労働者」を「人材派遣等の仲介者を通じて労働の配置が取り決められる者及び労働の場所・時間・内容が標準化されていない者」と定義している。

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