３　労使関係・労使関係制度の動向

(1)　労働組合組織の動向

• 　労働組合組織率は、イギリス、ドイツ、オーストラリアが30％程度と比較的高く、アメリカ、韓国、シンガポールが10％台と低い。先進諸国では労働組合員数が減少を続け、労働組合組織率も低下傾向にあるが、香港、シンガポール等、アジア地域の一部の国では労働組合員数が増加している。
• 　インドネシアでは、98年６月にＩＬＯ87号条約（結社の自由及び団結権の保護条約）を批准し、労働組合の設立を自由化した。

(2)　労働争議の動向

1)　労働争議件数
　労働争議は、多くの国で長期的な減少傾向にあるが、アメリカではゼネラル・モータース社のスト、アジアの一部の国では、通貨危機による雇用失業情勢の悪化等から発生した労使紛争により、労働損失日数が増加した。

2)　主な労働争議

• 　アメリカでは、ゼネラル・モータース社において、合理化を巡り労使が対立。55日間にわたりストが行われ、関連会社が操業停止に追い込まれる等の影響が出た。また、ノースウエスト社では、賃上げ、合理化問題でパイロット組合が15日間のストを実施した。
• 　韓国では、政府主導による企業の構造改革を巡り労使紛争が頻発した。韓国最大の自動車メーカーである現代自動車では、会社側が提案した人員削減案に労組が反発、約１ヶ月にわたりストが行われた。また、政府主導の銀行の再編整理では、大幅な人員削減に反発する組合がストを構える等の抗議行動を展開した。
• 　フィリピンでは、フィリピン航空が、通貨危機の影響により悪化した経営を再建するため、大幅な人員削減を実施するとともにスト権放棄等を組合側に求めたが、組合はこの受け入れを拒否し交渉は難航した。このため、フィリピン航空は、一時、自主廃業に追い込まれた。

(3)　労使関係制度の動向

• 　イギリスでは、急増する不当解雇事件に対応するため、労使紛争処理システムの改革を図る「雇用権（紛争処理）法」が成立した。また、個別的労使関係、集団的労使関係、職業生活と家庭生活の両立に関する規定を含む「雇用関係法案」が議会に提出された。
• 　韓国では、98年１月に発足した労使政委員会が、６月より第２期の活動を開始し、企業の構造改革、雇用・失業対策、労働基本権問題等についての議論を開始したが、政府が推進する構造改革に反発する労働組合は、本年に入り委員会から脱退している。