第2部 雇用失業問題の解決に向けた先進国の取組

国際機関の取組

OECD ILO EU
94年6月
「雇用研究:事実、分析、戦略」
92年5月の閣僚理事会の要請により事務局が加盟国の協力を得ながら研究を行い、閣僚理事会に対し報告
各国の雇用失業情勢の分析とともに各国が失業削減・雇用創出のために取り組むべき9項目の政策提言を提示

96年5月
「雇用戦略:戦略の推進」
上記報告後のフォローアップ作業としての「テーマ別研究」と「国別審査」の結果を取りまとめたもの
テーマ別研究
@これまでの労働市場政策の効果の向上
A労働が報われるようにする:税及び社会福祉制度の改革
Bマクロ経済政策と構造政策の協調
C起業家精神の醸成
D技術革新の成果
E技能と訓練

「雇用戦略の実施:加盟国の経験から得られた教訓」
経済開発検討委員会(EDRC)による加盟各国の提言実施状況に関する「国別審査」結果。各国の雇用失業を改善するために必要な措置を国ごとに「提言」として提示
これらの提言に基づきその後も毎年各国ごとの審査を行っている

97年10月14、15日
労働大臣会合
 「雇用失業研究」や「雇用戦略」等の成果を踏まえ、各加盟国における失業削減に向けた取組の成果を総括
[議題]
@低賃金労働者、未熟練求職者対策
A積極的労働市場政策の効率性の向上
B雇用可能性を維持するための生涯教育訓練
[コミュニケ(ポイント)]
失業の高止まりと低賃金は、OECD諸国の社会編成に対する脅威となる
多くのOECD諸国において若年者の失業が持続的に高水準にあることや、高年齢者の雇用機会が減少していることを懸念
雇用政策は、持続的な高失業を低下させ人々が長期失業に陥り社会から疎外されるのを防止し、高生産性と高賃金を生む知識集約社会を目標とすべきである
労働市場の効率性と社会の公平性の両者を可能な限り両立させる、「両勝ち」の解決策を採ることを決意する
95年2月
「世界雇用報告」
世界的な視野から雇用問題を包括的に報告した初の報告書
@先進国、移行国、開発途上国の失業問題は貿易、海外直接投資、国際金融によって、相当程度、相互に関連しており、かつ関連が強まっている。A失業問題に対して国際的に協調して取り組むことによって、すべての国により多くの利益をもたらすことから、雇用問題はグローバルな視点で分析することが不可欠であるとの認識を示す
先進国の失業増加の原因と対策について「経済政策」と「労働市場の規制」の2点からそれぞれ指摘

96年6月
「グローバル化の進展下における完全雇用の達成:政労使の責務」
(第83回総会第5議題レポート)
「完全雇用」の実現は依然として主要目的であるが、それは、単なる失業の回避ということではなく、生産的な仕事、職業選択の自由、能力の開発・向上とその発揮をも含むものであり、政労使は急速なグローバル化の進展の中で、この実現を目指さなければならない
高失業率の問題を抱える先進国にとって賃金不均衡の拡大、労働コスト、労働市場の硬直性、雇用機会の不均衡の拡大が政労使の最大の関心事になっており、成長率と生産力・生産性を回復させる政策を基盤とした戦略を樹立することが必要

96年11月
「世界雇用報告1996/97:グローバル化の進展下の政策」
「完全雇用」という目標の有効性とその達成の可能性について再検証した報告書
先進国が「完全雇用」に再挑戦するために以下の3点が重要
@高成長
賃金上昇と物価上昇の悪循環を断ち切る政策と技能労働力の不足を防止する政策の着実な実行を伴った拡大政策の維持により、高成長が初めて可能となる
A賃金上昇抑制メカニズムの確立
B労働市場政策の見直し
失業給付制度の改革、低賃金労働者に対する助成金等の対策は失業を劇的に削減するものではないが、労働市場の不公平の解消に大きく貢献する
87年
「単一欧州議定書」の発効とローマ条約の改正
労働社会政策のうち安全衛生に係る事項については全会一致ではなく特定多数決で採択することができるようになるとともに、欧州レベルでの労使間の対話の促進を規定

89年12月
「労働者の基本的社会権に関するEC憲章」及びその実施のための「行動計画」
ECの労使社会政策の方向を示す政治的宣言としてイギリスを除く11加盟国により採択
同憲章の目標を具体化するため47の措置を提示した行動計画を策定

91年12月
「欧州連合条約(マーストリヒト条約)」と「社会政策に間する講定書」
労働社会分野の規定の整備のため、イギリスを除く11カ国が「社会政策に関する議定書」及びこれに附属する協定を作成し、社会政策の一部を条約から切り離し

93年12月
「成長、競争力、雇用に関する白書(ドロール白書)」「失業に取り組む行動計画」策定

 失業の増大、経済再建のための「ドロール白書」の提出と、そてに基づく「行動計画」の策定

94年12月
「成長を雇用ヘ/行動計画(第2段階)」
「ドロール白書」、「行動計画」のフォローアップとして、今後の雇用政策の方向を提示
教育訓練を通じた人々の雇用可能性の向上
経済成長効果の雇用への振り分け
賃金以外の労働費用の削減
労働へのインセンティブ向上のため積極的労働市場への移行
若年者、長期失業者、女性、高齢者等に対する対策の改善

96年1月
 サンテール委員長が「欧州雇用信頼協定」の締結を提唱。単一市場の完成のためには緊縮財政政策・積極的雇用政策の連携が重要と強調

96年12月
「雇用に関するダブリン宣言」
 マーストリヒト条約の見直し(雇用に開する規定の新設)等を了承

97年6月
「成長と雇用に関する決議」

「安定成長協定」を雇用の面から補足するものとして採択
@EUレベルの経済政策を再検討し、雇用創出・経済成長の促進に資するものとする
A税制及び社会保障制度の改革を通じて雇用を拡大する
Bベンチャーキャピタルを利用した中小企業の活性化等の方法を通じて欧州投資銀行の役割を拡大
「新欧州連合条約(アムステルダム条約)」
従来の欧州連合条約(マーストリヒト条約)を改正
雇用に関する新たな編を創設し、毎年の雇用指針の策定、雇用委員会の設立等を規定
マーストリヒト条約附属議定書の社会政策に関する協定の内容を条約本文に組み込む
社会政策の立法過程における欧州議会の権限を強化

97年11月20、21日
「特別雇用欧州理事会(EU雇用サミット)」
EU史上初めての雇用に関する首脳会議
「1998年指針」が合意されるとともに各国が行動計画を作成し、その実施状況を毎年12月の首脳会議の場で検証することを決定


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