第2部 雇用失業問題の解決に向けた先進国の取組

2 国際機関の取組

 第1章でも取り上げたように、雇用失業問題の解決は先進国共通の課題であることから、毎年のサミットの場において重点課題とされ、また、デトロイト、リールの雇用サミットや神戸雇用会議等の雇用間題に焦点を絞った国際会議が開催されてきた。これらに加えて、OECDやILO等の国際機関でも、雇用失業問題解決のための取組がなされてきた。
 OECDにおいては、92年に同閣僚理事会の要請により、雇用失業情勢の分析及び失業削減・雇用創出のための研究が開始され、94年に加盟国の雇用失業問題に対する政策提言である「雇用研究(The OECD Jobs Study)」が発表された。その後、このフォローアップ作業として、96年、雇用失業情勢改善のための特定のテーマについてより掘り下げた研究と、加盟国個別の雇用状況及び提言事項への対応状況の審査が行われ、これらの結果が「雇用戦略(The OECD Jobs Strategy)」として発表された。国別審査は97年にも実施され、また、同年l0月には、低賃金労働者・未熟練求職者対策、積極的労働市場政策の効率性の向上及び雇用可能性を維持するための生涯教育訓練をテーマとし、OECD労働大臣会合が開催された。
 一方、ILOにおいても、95年、雇用問題解決に向けた国内的・国際的な行動を促進するとのILOの姿勢を明らかにした「世界雇用報告1995」が発表され、さらに96年6月の第83回ILO総会において、グローバル化が急速に進展する中で完全雇用を目指し、今後の雇用政策はどうあるべきか、ILOとしてこの問題にいかに取り組むかについて、「グローバル化の進展下における完全雇用の達成:政労使の責務」と題する報告がなされた。また、同年11月、「世界雇用報告 1996/97」が発表され、完全雇用という目標の有効性とその達成可能性について再検証が行われた。
 EUでも労働社会政策は主要な分野として重要視されてきた。特に近年は、不況の深刻化と失業の増大への対処が重点課題とされ、93年「成長、競争力、雇用に関する白書(ドロール白書)」とこれに基づく「行動計画」、94年「成長を雇用ヘ/行動計画(第2段階)」等の報告がまとめられてきた。さらに、97年には「安定成長協定(通貨統合後の財政規律を規定)」を雇用の面から補足するものとして、「成長と雇用に関する決議」が採択され、経済政策を再検討し、雇用創出・経済成長の促進に資するものとすること等が盛り込まれた。また同年11月には、EU史上初めての雇用に関する首脳会合が開催され、若年失業者等に対する職業訓練の充実等を内容とする「1998年指針」が合意された。


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