第2部 雇用失業問題の解決に向けた先進国の取組

1 主要先進諸国の取組

 先進国の雇用失業情勢は、1980年代後半に一時改善の兆しを見せたものの、90年以降の全体的な景気後退局面において悪化へと転じた。その後、景気は多くの先進国で回復したが、失業情勢は、景気の回復に伴って顕著な改善を示している国から、改善が見られず一層悪化している国まで、相当の格差が生じてきている。景気循環と失業率の乖離は、現在の先進国の失業問題が、景気の回復のみによって解決されるものではなく、その原因の多くが構造的な問題に根ざしていることを示しており、各国の状況に合わせた構造改革が不可欠であるということが、各国の共通認識となっている。
 雇用失業間題の解決はこのように先進国共通の課題であることから、毎年のサミットの場において重点課題とされるとともに、94年には、G7各国の労働、大蔵大臣等が一堂に会した初めての雇用サミットがアメリカのデトロイトで開催され、賃金の上昇を伴った質の高い雇用の創出と失業の減少は先進国共通の課題であるとの認識の下に構造改革の必要性が強調され、雇用創出における民間部門の役割、未熟練労働者に対する就業機会や教育訓練の提供、中小企業支援等が合意された。
 さらに、96年には、依然深刻な先進国における失業情勢を背景に、フランスのリールで2回目の雇用サミットが開催され、適切なマクロ経済政策を通じた持続的な雇用創出、労働市場を含む市場機能の改善、経済の変化に対する適応力を高めることで将来の雇用を創出すること等が合意された。また、同雇用サミットの場において、我が国政府は、若年者の雇用、高齢労働者問題、生涯学習に焦点を当てた会合を主催する旨を提案し、各国から賛同を得た。
 この我が国政府の提案は、96年のリヨン・サミットや97年のデンバー・サミットにおいても各国から期待が寄せられた。こうして、97年11月、我が国において、日米欧とロシアの主要8カ国による「雇用に関する国際会議(神戸雇用会議)」が開催された。
 神戸雇用会議には、各国の雇用担当大臣、産業担当大臣を含むハイレベルが参集し、これまでの雇用サミット等を通じて形成された、持続的な成長をもたらすマクロ政策と構造政革の推進との連携が必要であるとの認識を背景に、今後各国が共通して取り組む、より具体的な政策の方向、指針について合意がなされた。このような神戸雇用会議の成果は、98年2月にイギリスで開催された成長と雇用に関する8カ国会合の成果ともあいまって、98年5月に同じくイギリスで開催されたバーミンガム・サミットで各国首脳が雇用失業問題を議論する上での基礎となった。



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