- 労働組合の組織率は、イギリス、ドイツ、オーストラリアが30％台と比較的高く、アメリカ、韓国、シンガポールが14％前後と低い。先進国においては、労働組合員数が減少を続け、組織率も低下傾向が続いているが、香港、シンガポールといったアジアの新興国では労働組合員数が増加している。
- ドイツでは、ドイツ最大の産別組合である金属産業労組（IGメタル）が97年10月、繊維・被服労組を吸収合併したが、これは組織率の低下に歯止めをかけるために産別組織の再編を進めようというツヴィッケルIGメタル委員長の方針の一環とされており、このほかにも、木材・プラスチック労組とIGメタルとの合併計画が公表されている。
@労働争議件数
A主な労働争議
- 労働争議は、先進国では長期的に減少している。アジアにおいては、韓国で減少が続いているが、インドネシア、タイでは運貨危機の影響による雇用失業情勢の悪化等から増加傾向にある。また、中国では、95年1月の労働法施行以降労働争議が大幅に増加している。
- アメリカで最大の小荷物輸送会社であるユナイテッド・パーセル・サービス社において、パートタイム労働者等の非正規職員の待遇等を争点とした初の本格的なストライキが起こった。争議は会社側が譲歩して終わったが、パートタイマー等の不安定な雇用が増加している米国経済の動きを反映したものと言える。
- フランスでは、トラック運転手労働組合が、96年に引き続き、賃上げ等の労働条件の向上をめぐってストライキに突入し、フランス全土にわたり道路封鎖を行った。これに対し欧州委員会や周辺諸国が相次いでストの早期解決を要請したが、経済の統合の進む中で、一国の争議行為の影響が必ずしも一国にのみとどまらない傾向を示している。
- 韓国では、金新大統領が97年末からの経済危機を打開するため、整理解雇制の早期導入を新政権の課題に掲げ、政労使の代表から成る労使政委員会を設置した。同委員会では、一時民主労総が導入に反対の姿勢を示したが、最終的には整理解雇制を即時導入するために現行法を改正することで合意し、98年2月、臨時国会において整理解雇条項を含む勤労基準法の改正等の労働分野における法案等が成立した。
- タイでは、通貨危機の影響による経済情勢の悪化に伴い、98年2月に政労使の合意により、経営状況についての労働組合への報告、労使協議による解雇・倒産防止のためのコスト削減努力、等を内容とする「経済危機下における労使関係の円滑な推進に関する行動規範」が作成された。また、労使紛争を調停するための特別の組織である「経済危機下における労使紛争の防止解決委員会」（三者構成）が設置された。