(2)雇用・失業対策
各国の雇用・失業対策には雇用・失業情勢の差が反映している。
@アメリカ、イギリス
職業能力開発に重点を置いた対策を実施
- アメリカでは、従来連邦政府主導によって実施されてきた職業訓練プログラムの予算を3つの総合的な補助金に統合して各州に分配し、各州政府がその権限と責任の下で職業訓練プログラムの実施を図ることを目的とする職業訓練改革法案が審議された。
- イギリスでは、97年5月に誕生したブレア労働党政権の下で、若年失業者及び長期失業者の失業保険給付への過度の依存に歯止めをかけ、就職に結びつく技能の向上を図ること等が盛り込まれた「Welfare-to-Work」プログラムが開始された。
Aドイツ、フランス
新規雇用を創出し失業率を低下させるための対策を実施
- ドイツでは、雇用情勢の悪化に対応するため、雇用政策関係の基本法である雇用促進法の改正が行われ、長期失業者のための職場適応契約制度が新たに導入された。
- フランスでは、97年6月に誕生したジョスパン政権が、深刻な雇用・失業情勢を背景に、若年者を期限付きで新規雇用する自治体や各種公共団体等に助成金を支給する制度により、今後5年間で35万人の若年者雇用を公共部門で創出するための法案を成立させ、また、ワークシェアリングによる雇用創出を目的として、法定労働時間を35時間に短縮するための法律案を議会に提出した。
- イタリアでは、雇用形態の多様化の促進や政府の助成金支給による新規雇用の創出等を内容とする雇用対策法が制定された。
BアジアNlEs、ASEAN諸国
アジアでは、通貨危機の影響により深刻な経済危機に陥った韓国、インドネシア、タイにおいて、以下の雇用対策が実施された。
- 韓国では、IMFとの資金支援合意に基づく労働市場改革を進めるため、政労使間の合意を経て、経営上の理由による労働者の解雇を可能にする整理解雇制の導入を決定した。また、雇用保険制度の拡充や職業紹介、職業訓練の充実等を内容とする短期失業対策を発表した。
- インドネシアでは、労働集約型の公共事業を行うことにより約390万人の失業者を吸収する雇用プロジェクトを発表した。
- タイでは、98年1月、チュアン首相を委員長とする国家失業問題対策委員会が開催され、タイ国内の外国人労働者を約30万人削減しタイ人労働者の雇用を確保する等の7項目の雇用・失業対策が発表された。