第3章 雇用構造の転換
第1節 雇用構造の円滑な転換
就業構造は産業面、職業面ともに大きく変化しているが、これまでのところ転職の寄与は小さい。今後は、少子・高齢化が進むと、若年層の新規入職と高年齢層の退職のみでは十分な就業構造の変化が行われないため、転職が重要な役割を果たすことになる。職業能力開発については、OJTを中心としつつも自己啓発の比重が高まっている。
(産業構造は新規入職と退職により変化)
就業構造は、産業面、職業面ともに大きく変化している。産業別に就業者の構成比をみると、1985年から1995年の間に第3次産業就業者の割合は4.5%上昇している。男性については、主に若年層の入職と高年齢層の退職により変化している(
第57図
)。女性については、結婚・出産を機に退職し、出産・育児が一段落した後に再入職するという就業行動をとる者が多いこと等から、男性より就業構造が大きく変化している。
(職業構造には中年層の昇進も影響)
職業別に就業構造の変化をみると、1985年から1995年の間にホワイトカラーの割合は3.8%ポイント上昇している。男性については、主に新規入職と退職と中年層の昇進で変化してきた(
第58図
)。女性については、結婚・出産による退職と再入職はホワイトカラー比率を引き下げているが、新規入職と退職の効果が大きいことから、ホワイトカラー比率は男性より大きく上昇した。このように、1985年から1995年の間に就業構造は、(1)若年層の新規入職、(2)女性の結婚・出産退職とその後の再入職、(3)高年齢層の退職に加え、職業構造では、(4)男性中年層の管理職への昇進により変化したものといえる。
(小さくなる新規入職効果)
今後は少子化が雇用面にも波及してくるため、新規入職の就業構造調整効果は大幅に小さくなる。2005年の産業・職業構造を推計すると、1995年以降の10年間の変化は過去の10年間と比較して約2割縮小する。少子・高齢化が進むと、若年層の新規入職と高年齢層の退職のみでは十分な就業構造の変化が行われないため、在職者の産業・職業間の移動が重要な役割を果たすことになる。
(パート・アルバイトの増加を中心に進んだ就業形態の多様化)
1987年から1997年の間にパート、アルバイトなどの雇用形態の雇用者は急激に増加し、パート・アルバイト比率(雇用者に占めるパート及びアルバイトの割合)が上昇した。特に、産業別には卸売・小売業,飲食店、職業別にはサービス職業で大きく上昇した。就業形態の多様化は、産業・職業構造の変化を背景としている面もあるが、製造業、ブルーカラーでも多様化が進んでおり、必ずしもそれだけが要因ではない。
(構造転換に対応した能力開発の必要性)
我が国企業は急激な構造転換の中で本業の充実・強化、あるいは新規事業展開といった経営戦略の見直しを図っているが、こうした取組を行う場合に雇用面の課題となる点をみると、人材の確保、育成に係る課題が比較的高い割合となっており、企業は急激な構造転換に対応した人材育成を図る観点から、能力開発の必要性を強く認識していることがうかがわれる(
第59図
)。
(社外にも通用する能力と創造性、柔軟性が重要)
労働者は企業内部だけでなく、外部労働市場でも通用する職業能力(エンプロイアビリティ)の向上を望んでおり、企業は社外にも通用する高い専門性と創造性、柔軟性のある人材を求めている(
第60図
)。
(OJTを中心としつつ自己啓発の比重が増加)
職業能力開発の手法としては、OJTが中心となっているが、中核的な人材に対しては自己啓発や体系的なOJTを重視している。
能力開発の今後についてみると、OJTを中心としつつも自己啓発の比重が高まっているが、能力開発の在り方としては、個性、能力に応じた多様な選択肢と長期的な視点からの計画的な取組が求められている(
第61図
)。
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