第5節 引退過程における雇用・就業と生活
引退過程では、経済的な面で就業の必要性が低下し、就業理由も生計目的以外の理由が増加している。一方、諸外国と比較した年金等への将来不安や人とのつながりの希薄さが老後生活への満足度を低めている。精神的にも豊かな老後生活を送るためには、若い時からの働き方を含め、地域等とのバランスのとれた関わりを考える必要がある。
(引退過程における家計と就労)
高年齢者においては、必要生計費の減少や年金受給額の増加により経済的な面での就業の必要性が低下している(
第88図
)。就業理由も健康上の理由や、生きがい、社会参加等のためといった生計目的以外の理由が増加している。
(なだらかな引退と引退過程の都市と地方の違い)
このような就業をめぐる状況変化は、働き方にも変化をもたらす。一つは、自営業やシルバー人材センターのような地域の中での働き方であり、いま一つは短時間勤務の広がりである。また、引退過程における自営・家族従業者割合の高まり方は、大都市圏外の方が高く、大都市では年齢を経ても雇用者割合やフルタイム指向が高い(
第89図
)。
(健康、経済面では高い水準にある日本の高年齢者)
「健康」、「現在の経済的生活」、「将来の経済的生活」、「社会的活動」、「隣人・友人」の5項目からなる「ハッピーリタイアメント指標」(
第90図
)を作成し、諸外国の高年齢者と日本の高年齢者を比較してみると、日本の高年齢者は健康面、経済面では水準が高く、他の国よりも恵まれた状況にあるが、人とのつながりについては他の国よりも水準が低い。また、経済面についても、年金や介護などについての将来不安が、他の国より大きい。
(満たされていない人とのつながり)
諸外国と比較して我が国の高年齢者は人とのつながりが希薄であり、これが生活への満足度を低めている(
第91図
)。この傾向は特に被用者、大都市及び男性でより顕著である。これは現役時代の生活が仕事に特化しており、地域社会とのつながりが希薄なため、企業から離れた時に孤独な状況に置かれることによるところが大きい(
第92図
)。精神的にも豊かな老後生活を送るためには、企業、家庭、地域とバランスのとれた関わり方を考える必要があり、さらに、高年齢期に至ってからも、地域社会と就業やボランティアなどを通じて関わりをもつことで老後生活をより豊かなものとすることができると考えられる。
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