第4節 中高年齢者の労働移動の実態と課題
中高年齢者の再就職はこれまでの職種領域をベースとした移動が主体であることを踏まえた能力開発が必要である。求人の年齢要件設定が中高年の再就職を困難にしている。出向の機能としては、移動のショックの緩和、雇用機会の確保があるが、出向先の確保に苦心している。起業者に占める中高年齢者の割合が上昇している。
(これまでの職種領域をベースとした中高年の再就職)
中高年齢者の職種別再就職の状況は、前職と全く同じか、その関連職種、いわばこれまでの職種領域をベースとした移動が主体であるが、一部、運転手、守衛・警備・清掃など前職と関連のない職業への移動もある(
第84図
)。こうした移動パターンを前提にした時、再就職の際に必要とされるのは、現在持っている能力をベースとして、それが市場で評価されるよう、専門性に磨きをかけたり、幅を広げたりするための能力開発を行うことである。また、自らの意識改革や自分の仕事能力を明確に人に伝えられる能力も重要である。
(中高年の再就職を困難にしている求人年齢要件設定)
求人の平均的な上限年齢が41.1歳と年齢制限がある状況では、中高年齢者の再就職は容易ではない。年齢要件設定の理由としては体力的な理由、賃金水準の高さが多いが(
第85図
)、必ずしも実際に雇用し問題が生じて年齢要件が設定されているわけではない。
なお、中高年齢者では需給調整における公共職業安定所の役割が大きい。
(増加している系列外出向・転籍)
出向・転籍による企業間移動は、賃金差額補填など移動のショックの緩和、出向元企業の定年後の雇用機会の確保に一定の機能を果たしているが、最近、大規模企業を中心に系列外出向の広がりが顕著で、出向先確保にかなり苦心していることも窺われるほか、人件費増大など受入れ側からの問題指摘もあり、多くを求めるのは難しい(
第86図
、
第87図
)。
(中高年齢者の割合が高まっている「起業」)
ここ数年、起業者に占める中高年齢者の割合が上昇している。起業経験者にとって、開業まで勤務した企業での経験やそこで形成された人脈が役立っている。また、高齢化の下で、ニーズに近いところにいる高年齢者が新たな市場を創り出す可能性も大きい。
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