第2章 若年者の雇用・失業問題
第1節 若年者の就業・失業と学卒労働市場の実態
学卒労働市場は厳しい状況にあるが、職種等のミスマッチも存在する。学卒無業者比率は高卒で3割を超えているが、これは需給関係だけでは説明のつかない増加となっている。また、若年の失業は自発的離職による失業が最も多く、親等の経済的支えがそれを可能にしている側面もあると思われる。若年者の自発的離職率の最近の高まりはフリーターなど離転職の多い非正規労働者のウェイトの上昇によるところが大きい。
(厳しい学卒労働市場とミスマッチ)
企業による採用抑制中心の雇用調整が続く中、学卒労働市場は厳しい状況にあり、求人が大幅に減少している(前掲第5表)。就職者は進学率の上昇に伴い高卒の減少、大卒の増加傾向がみられ、1997年以降、大卒就職者が高卒就職者を上回っている(
第35図
)。職種別には特に事務従事者で学歴構成の変化が著しく、最近では大卒のみならず、短大卒よりも高卒就職者が少なくなっている(
第36図
)。
しかし、高卒女子の希望職種は依然、一般事務に偏っており、他職種での就職可能性があっても就職しないという意味でミスマッチの一因となっている(
第37図
)。また、企業規模間のミスマッチも大きく、学卒求人減少の一方で、中小規模企業の未充足求人も相当数存在しており、5〜29人規模の高卒求人の充足率は47.3%に止まっている。
(学卒無業者の増加)
このような中で、学卒無業者がここ数年急増しており、無業者比率は高卒で3割、大卒で4分の1となっている(
第38図
)。学卒無業者の増加には需給関係のみならず、若年者の意識変化など供給側の要因も働いているものと考えられる。
(不況期でも増加する自発的離職による失業)
若年失業率は男子で10%を超えている。このところ非自発的離職によるものが少し増えているものの、自発的離職によるもののウェイトが最も高く、それはバブル期だった10年前と変わっていない。他の先進諸国と比べても若年失業におけるそのウェイトの高さは特徴的である。(
第39図
、
第40表
)。
(単身世帯よりその他の家族で増加している若年失業者)
単身世帯より家族と同居している者の失業率が高く、親等の経済的支えが若年者の失業を可能にしている側面もあるとみられる(
第41図
)。
(いわゆるフリーターについて)
近年いわゆるフリーターが増加しており、その数を推計すると1997年で151万人で82年に比べ3倍に増加している(
第42図
)。男女別では、男性61万人、女性90万人と女性の方が多く、年齢別には20歳台前半層をピークに、20歳台後半、30歳台になると減少するが、近年はその減少率が若干低下しており、滞留する傾向がみてとれる(
第43図
、
第44表
)。
フリーターの属性をみると、最終学歴別では、高卒が4割弱 、大学・大学院卒が2割弱、高専・短大卒が1割強となっている。フリーターの業務は「コンビニエンス・スーパーの店員」「ホールスタッフ」などのサービス的業務が6割強と多く、1カ月の平均収入は10〜14万円未満が3割強と最も多い。また、家族と同居している者が8割を占めている。
(自発的理由が多い若年の離職率)
若年者の離転職は多く、学卒就職後、3年目までに離職する者が高卒で約5割、短大卒で約4割、大卒で約3割となっている。
離職理由別に離職率の推移をみると、自発、非自発ともに上昇傾向にあるが、特に自発的離職率の上昇が大きい。傾向として、不況時には景気循環的な要因が自発的離職を減らす方向に働くが、趨勢的な増加傾向がこれを打ち消す動きをしている。加えて、ここ数年は過去の傾向以上に離職率が高まっているが、その一つの要因としては、フリーターなど離転職の多い非正規労働者のウェイトの上昇で全体の離職率が高められていることが考えられる(
第45図
)。
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