第U部 高齢社会の下での若年と中高年のベストミックス
第1章 経済構造変化と高齢化の進展
第1節 経済構造及び雇用行動の変化
業況の改善にもかかわらず雇用過剰感が非常に大きかったことなどから、一部の企業においては入職抑制を中心とした雇用調整を伴うリストラクチャリングを実施、計画する動きがみられ、その厳しさは第1次石油危機時に匹敵する。雇用過剰感などは人件費 削減などにより低下に向かっており、一部の分野では新たな雇用創出の動きもみられる。
またパートを多く活用する業種・業態の拡大などから非正規雇用比率がこれまで以上のテンポで拡大している。同じ企業の中での一般からパートへの代替は比較的少ない。
(今なぜ雇用調整を伴うリストラクチャリングか)
景気には緩やかな改善の動きがみられるが、一部の企業においては雇用調整を伴うリストラクチャリングを実施、計画する動きがみられる。
こうした動きは、個別の業種、企業の置かれた環境によるところも大きいと考えられるが、背景にある共通の要素として、@今回の不況局面においては、過去の不況期と比べても生産の落ち込みが大きく、かつてない雇用過剰感の高まりがみられたこと(
第22図
)、したがって生産が回復に向かっても雇用過剰感が大きい企業では雇用調整が続いていること(
第23図
)、A高齢化の進行などにより人件費負担が増大し(
第24図
)、労働分配率も高水準であること、などが考えられる。
雇用調整の程度は、その厳しさにおいて、第1次石油危機時に匹敵するが、雇用調整の方法は入職抑制が中心である(
第25図
)。
こうした動きは企業経営上必要と判断され実施されているものではあるが、それが従業員のモラールに及ぼす影響(
第26表
)、さらには消費などを通じてマクロ経済に及ぼす影響など、より多面的な影響について十分留意する必要がある。
雇用調整を伴うリストラクチャリングの動きに影響を与えている労働分配率、雇用過剰感などは業況感の改善やこれまでの人件費削減効果により低下に向かっている。また、情報サービス、福祉などの分野では新たな雇用創出の動きもみられており(
第27図
)、今後こうした動きが雇用情勢全体に改善をもたらすことが期待される。
(非正規雇用拡大の要因)
もう一つ、最近の雇用の動きで特徴的なのは、パートなど非正規雇用比率がこれまで以上のテンポで拡大していることである(
第28図
)。このような非正規雇用比率の上昇について、まず需要側の要因をみてみる。最近10年間のパート比率の上昇については、産業構造変化効果(パート比率の高い産業における雇用の増加による効果)による寄与は少なく、多くは産業内変化効果(各産業内のパート比率の上昇による効果)でもたらされている(
第29図
)。特に、卸売・小売業,飲食店、サービス業において、パート比率の上昇が顕著になっている。この背景としては、営業形態の特性、仕事の性質からパート活用を図ったり、パート・アルバイトを多用する業態の急成長が考えられる。
また、雇用の増減パターンでみると、一般を減らし、パートを増やす、いわゆる代替をしているところは1割弱と少ない。最も多いのは一般もパートも減少しているところで4割となっている。一方、一般もパートもともに増加させているところは3割強であるが、それぞれの増加程度をみると一般に比べてパートの増加の方がずっと大きくなっている(
第30図
)。これは雇用過剰感や労働分配率の高まりの下で雇用を削減している分野では一般もパートも減少しているが、一方、先行き不透明感から、成長分野でもパート主体の雇用拡大をしており、この結果、全体としてパート比率が上昇していると考えられる。
企業は、経済環境の変化に対応するため、組織のフラット化を図ったり、成果主義的な制度の導入などの取組みを積極的に行っている。こうした動きは高齢化への対応方向、すなわち「年齢による制約の少ない働き方、賃金処遇制度」の方向性と一致した動きである。
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