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1 対象薬剤
2 薬剤分類の考え方
3 作業結果と今後の課題
1 基本的考え方
2 購入価格について
3 給付基準額の設定について
現在、保険収載されている薬剤についてその一部を対象に試行的に分類作業を行った。具体的には、制度企画部会において了解された、薬効分類上、以下に分類されている4薬剤群の内用薬を対象としたが、必要に応じて、作業の過程で他の薬剤を追加した(*印)。
(2) 血圧降下剤(同:214)
(*)利尿剤(同:213)、血管拡張剤(同:217)
(3) 解熱鎮痛消炎剤(同:114)
(*)坐剤
(4) 感染症用剤(同:611〜629,641,642)
2 薬剤分類の考え方
(1) 基本的考え方
薬剤の分類については、臨床上、薬剤処方の実態からみて同等に使用される薬剤を同一グループとするという基本的考え方に基づき、まず薬学的観点から整理作業を進め、続いて臨床的観点から検証作業を進めた。
具体的には、以下の作業手順により、公開されている関連情報についてはできる限り利用して、分類作業を進めた。
(2) 作業手順
3 作業結果と今後の課題
今回の4薬剤群を例とした薬剤の分類作業については、薬効又は薬理作用の同等性を基本とした分類作業に臨床的同等性による評価を必要に応じ加味することにより、概ね適切に、薬剤処方の実態からみて同等に使用される薬剤を同一グループとすることができることが確認された。(分類結果については別紙4)
なお、今回の作業で検討した薬剤群が限られた領域であることから、今後、薬剤の分類作業を全体的に進める場合には、臨床的同等性に関しては、今回、主要な要素として着目した4点の他、以下のような細部の留意点もあり、医学、薬学等の専門家からなる委員会を設置し、幅広く意見を聴取しまた情報を収集しつつ、薬剤分類に関する統一的な基準づくりを進めていくことが必要と考えられる。
(2) 同一成分であるが投与経路が異なる薬剤の取扱い
(3) 臨床現場における使用性、利便性の向上を目的として開発されたキット製品(薬剤とその投与システムを組み合わせたもの)等の取扱い
(4) 製造方法が異なる薬剤(特にバイオテクノロジー(遺伝子組換技術等)応用医薬品)の取扱い
(5) 植物性の薬剤(漢方薬や生薬)の取扱い
制度企画部会での議論を踏まえ、以下の4つの視点から、保険給付の仕組みについて検討した。
(1) 薬の使用の適正化
公定された薬価からの値引き販売で生じる薬価差を解消し、必要以上の薬の多用と高薬価な薬への移行傾向(高薬価シフト)を抑制するという観点から、必要な検討を行った。
なお、検討事項とされた給付基準額により一律に支払うことについては、低価格品の場合には、給付基準額と購入価格の間に大幅な差額が生ずる可能性があるため、薬の使用の適正化の観点から、否定的に考えざるを得ない。購入価格と給付基準額いずれか低い額を基礎に保険給付を行う仕組みとすることが必要と考えられる。
(2) より安価な薬の使用促進
コスト意識を高め、臨床上同等のものであれば、より安価な薬の使用促進を図るという観点から、必要な検討を行った。
なお、この観点からは、まず患者、医療機関にコスト意識が働く仕組みとするため、購入価格又は給付基準額いずれか低い額を基礎として、一定率の保険給付を行う仕組み(一定率の患者負担)とすることが必要であると考えられる。
更に、こうした給付基準額を超える部分の患者負担や定率の患者負担によるコスト意識が効果的に働くようにするため、患者、医療機関への価格情報も含めた適切な薬剤情報の提供等の措置を講ずることが必要と考えられる。
(3) 有用な薬剤の研究開発促進・安定供給
国民にとって有用性の高い薬剤の研究開発の促進、薬剤の安定供給が図られる仕組みであるかという観点からの検討にも留意した。
(4) 効率性・透明性の確保
制度の効率性・透明性が確保される仕組みであるかという観点からの検討にも留意した。
2 購入価格について
(1) 実購入価格制の問題点
完全な実購入価格制(医療機関が実際に購入した薬剤価格を保険給付の基礎とする仕組み)については、患者負担が医療機関毎にばらつきが生じてもある程度やむを得ないとの意見もあったが、患者負担の公平性、患者行動の安定性の観点から、以下のような問題があると考えられる。
初期投資は必要であるが商品流通システムを導入すれば実購入価格の把握は可能ではないかという意見もあったが、制度の効率性、信頼性という観点から、完全な実購入価格制については以下のような問題があると考えられる。
(2) 今後の検討方向
完全な実購入価格制は、薬価差を解消するという観点からは最善の方法であるが、上記のような問題点があることから、現実的にこれを導入することは困難であると考えられる。
市場価格に応じて保険給付額が変動するという、薬価差解消のための実購入価格制の基本骨格を維持しつつ、このような問題点を解消できる仕組みを検討する際には、同一の薬剤について消費者価格が同一となるよう、製薬企業が届け出る全国一律の出荷価格を基本に流通経費等を加えた価格を基礎に保険給付を行っているドイツの方式を参考にして検討を進めることが現実的であると考えられる。
また、この方式では、薬剤価格の引下げの経済的誘因がある程度生じる可能性があることから、後述する低価格品の価格上昇を防止する等の副次的効果も生じるのではないかと考えられる。
しかし、この方式について具体的検討を行うに当たっては、流通の非効率性を温存することのないよう現在の流通システムを改善すること、流通システムの改善が保険給付額に反映されるような効率的な給付の仕組みとすることに留意することが必要である。
3 給付基準額の設定について
(1) 給付基準額の設定方法
与党協案は、臨床上の同等性を有する薬剤グループ毎に、給付対象の上限とする基準額(給付基準額)を設定することにより、患者、医療機関のコスト意識を高め、臨床上同等のものであれば、より安価な薬剤を使用する経済的誘因を高めようとする仕組みと考えられる。
給付基準額を設定することについては、公定価格を設定することと大差がなく、与党協案の実購入価格制の趣旨の一つである薬剤価格を自由な市場競争に委ねるという発想とは矛盾するのではないかとの意見もあったが、保険給付がなされる前提で保険制度としての給付の上限を全く設けないとすると、薬剤価格が著しく高価になる可能性が否定できないため、基本的には、給付基準額を設定することが必要と考えられる。
給付基準額の設定については、薬剤グループをどのような範囲で設定するかが大きな問題であるが、いずれにしても市場に過度に介入しない透明かつ安定した制度であることが必要と考えられる。
このような観点から、同一グループ内の全薬剤の加重平均値を基礎に給付基準額を設定する方法が基本と考えられるが、具体的に設定方法を検討する際には、作業チームの検討過程で指摘のあった以下のような点について、その可否も含め更に考え方を整理することが必要と考えられる。
(2) 現行の新薬薬価算定方式に準じた給付基準額への加算の考え方について
(3) 新薬の場合における原価計算方式による給付基準額の考え方について
(4) 既存薬や従来の治療法と比較した費用−便益分析等の経済性評価の考え方について
(5) 複数規格、複数剤型等を有するグループに給付基準額を設定する際の考え方について
(6) 多くの薬剤が給付基準額に近い価格で高止まりする可能性に対応するための価格引下げ誘因の考え方について
(7) 価格抑制の観点から、グループ内の最低価格等を給付基準額の基礎とする考え方について
(2) 給付基準額設定による価格への影響
薬剤を臨床上の同等性の観点から分類し、同一の給付基準額を設定した場合には、給付基準額を超える価格の薬剤は、患者・医療機関の薬剤選択の変化の可能性を踏まえ、その大多数については、製薬企業は給付基準額まで価格を引き下げる方向で行動するものと考えられる。
一方、給付基準額を下回る価格の薬剤については、ドイツ等の例を見ると、低価格品の価格が一定程度上昇する可能性も否定できないため、これを防止できるような方策を導入することが必要と考えられる。
例えば、以下のような方法が考えられるが、その適否については更に検討することが必要である。
(3) 患者への説明と薬剤の選択
与党協案は、患者が、医師から、薬剤の効能やその処方の必要性の他、患者負担を含めた説明を受け、納得の下に薬剤が選択される仕組みである。
通常、一人の医師が診療で使用する薬剤は限られており、医師は診療経験に基づいて、その中から患者に適切な薬剤を処方することとなる。効能・効果の面における患者への説明は、現在でも普通に行われており、それ程負担になるものではないと考えられる。
また、医師が患者に対して患者負担を含めた薬剤の説明を行うことについては、医師にとって重い負担が生じる可能性があるものの、医師は診療経験に基づいて薬剤の効能やその処方の必要性を説明すれば、患者の病態から給付基準額を上回る高価格の薬剤を使わなければならないとしても、通常は、患者の納得は得られるのではないかと考えられる。なお、場合によっては、患者の納得を得ることが困難な状況となる可能性もあるとの意見もあった。
いずれにしても、この点については、新しい制度における論点の一つであり、患者の納得が受けられるような仕組みとなるよう、十分な検討が必要と考えられる。
(4) 薬剤の研究開発・安定供給に与える影響
薬剤の研究開発・安定供給に与える影響については、薬剤グループをどのような範囲で設定し、どのように給付基準額を設定するかに大きくかかわる問題であるが、今後、制度化の検討を進める上では、基本的には以下のような論点があると考えられる。
ドイツのように特許期間が終了した薬剤についてのみ給付基準額の設定を行うとすると、かえって新規性に乏しい新薬の開発を助長する可能性があり、薬剤費の増加傾向をもたらすことも考えられる。
一方、特許期間中か否かにかかわらず、原則として全ての薬剤を薬理作用を基本に分類し、給付基準額を設定するとすると、研究開発費を十分回収できず、有用な薬剤についての開発意欲を損なう可能性も高いと考えられる。
全ての特許期間中の薬剤について、研究開発の促進の観点から一定の配慮を行うことが適切であるとの意見もあったが、製薬企業の新規性に乏しい新薬の開発を抑制しつつ、国民にとって有用性の高い新薬の開発意欲を損なわないようにするため、医療保険制度としても、特許期間中の新薬のうち、有用性等も勘案しつつ、「一定の範囲」の新薬について、給付基準額の設定等に配慮を行うことが必要と考えられる。
なお、新規性に乏しい薬剤の開発抑制は、医療保険制度としてではなく、薬剤の承認審査の厳格化を図ることにより対応することが適切であるとの意見もあった。
国民医療に有用な画期的新薬、希少疾病用医薬品等については、臨床的同等性のある薬剤がない又は乏しいと考えられ、銘柄間競争が十分に働かず、著しく高価になる可能性が否定できないこと、また負担能力のある患者しか使用できないことになる可能性があること等との観点から、費用−便益分析等の結果に基づく適切な給付基準額の設定、原価計算方式等に基づく公定価格設定等を検討することが必要との意見もあった。
しかし、これらの有用性の高い薬剤が十分に上市され、利用が促進されるという国民医療の向上の観点から、医療保険制度としても、給付基準額を設定せず、自由価格を基礎に給付する等の何らかの思い切った優遇措置を講ずることについても検討することが必要と考えられる。
また、これ以外でも副作用が少ない優れた改良型新薬など、有用性の高い一定範囲の薬剤についても、給付基準額に一定の配慮を行う等の措置を講ずることについて検討することも必要と考えられる。
いずれにしてもこれらの配慮を行う場合には、対象となる薬剤の範囲の定義を明確に設定しておくことが必要であるが、その際には単に製薬企業の研究開発意欲ということにとどまらず、国民医療の向上への寄与度、国民医療費への影響度、患者負担の程度といった観点も含めて総合的に判断されるべきものと考えられる。
また、個々の薬剤について、いずれの薬剤に該当するかを具体的に認定する場合には、幅広い意見を聴取し、科学的妥当性を担保するため、医学、薬学等の専門家からなる委員会において、開発企業の見解も十分に聴取した上で、その検討を行うことが必要と考えられる。
先発品と後発品については、より安価な薬の使用を促進するという観点からは、先発品と後発品を制度上同一に取り扱うことを原則とすべきであるが、一方、現実問題として、我が国では、現時点において、副作用などの薬剤情報の収集・提供などの面で先発品のみが大きなコストを負っている状況にある。このような状況で、同一グループ内で現在の後発品が大幅にシェアを拡大すると先発品は市場から撤退してしまい、情報提供・安定供給の側面で問題が生じる可能性がある。
従って、先発品メーカー、後発品メーカーにかかわらない統一的な薬剤情報の収集・提供体制、副作用事故への対応体制等の整備が進められるまでの間は、同一グループ内で価格が大幅に乖離した後発品等については、別に給付基準額を設定することとし、使用実態や価格の推移を見ながら両者の給付基準額を調整すること等を検討することが必要であると考えられる。
なお、先発品と後発品を制度上同一に取り扱うこととすると、研究開発等のコストがかかっていない後発品メーカーが不当に大きな利益を得る可能性があり、先発品メーカーの研究開発意欲を阻害する可能性があること等から、同一グループ内で価格が大幅に乖離した後発品等については、別に給付基準額を設定することが必要であるとの意見もあった。
いずれにしても、先発品メーカー、後発品メーカーにかかわらない統一的な薬剤情報の収集・提供体制、副作用事故への対応体制等の整備を進めることと並行して、その位置づけについて更に検討することが必要である。
(5) 新しい制度を導入する際の環境整備
新しい制度を導入する際には、以下のような環境整備を図ることを検討することが必要との意見があった。
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