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(ア) | 質・量両面にわたる基盤整備 |
平成12年度から介護保険法が施行されるが、その円滑な実施のためには、要介護高齢者の需要に応じた介護サービス基盤の整備を計画的に進めることが求められる。この介護サービス基盤の整備においては、量的な面における整備の推進はもちろんのこと、今後は質的な面での取り組みがますます重要となってくる。介護サービスは、高齢者を対象とする「対人サービス」であり、その良し悪しはサービスを担う人材の個人的な資質に依存する面が強い。具体的には、(1)高齢者や家族の状態を的確に把握し、適切なサービス提供ができる「知識技術」と、(2)他の職種を含め多様な社会資源と協調し、それらと一体となって問題解決に取り組む「協調性」を有するとともに、(3)高齢者や家族の心情を理解する「やさしさ」と個人のプライバシーに深く関わっていることからくる「高い倫理観」を兼ね備えている人材が求められている。そうした人材の養成確保は、今後の基盤整備の重要な柱となるものである。 | |
(イ) | 地域の特性に応じた基盤整備 |
市町村や都道府県によって高齢化の度合い、人口規模等には大きな差異があり、高齢者を取り巻く社会資源も様々であることから、介護サービス基盤の整備にあたっては、そうした地域特性を踏まえた取り組みが求められる。このため各自治体においては、それぞれの特性を踏まえ地域に最も適した介護サービス体制を構築していくことが重要である。 そして、高齢者に対しては介護の面にとどまらず、生活全般にわたる支援が必要となってくることから、生活圏域での住民の支え合いを基本に置いた地域社会づくりが重要である。したがって、老人保健福祉の分野にとどまらず、住宅整備やまちづくり、生涯学習など幅広い分野を視野に入れた取り組みを更に推進されたい。 | |
(ウ) | 効率性の視点を踏まえた基盤整備 |
介護保険においては給付と負担が連動しており、介護サービス基盤の整備は介護保険料をはじめとする保険財政に直接結びつくこととなる。それだけに、今後の基盤整備にあたっては、経済的な面も念頭に置いた対応が一層求められることとなる。介護サービス体制の構築という目標の達成においても、その実現には多様な手段方法があり得るわけであり、その中で最も効率的なものは何かを追求する姿勢が望まれる。例えば、介護関連施設の整備において、地域の空き教室などの既存資源を有効に活用することや、高齢者の見守りなどの軽度生活援助サービスについては、健康な高齢者をはじめとする地域住民やボランティアの参加を推進するといったような様々な取り組みを積極的に進められたい。 また、高齢者ができる限り寝たきりなどの要介護状態に陥ったり、要介護状態がさらに悪化することがないように介護予防を推進することは、高齢者にとっての願いであるとともに、保険財政の面でも重要な意義を有するものであると言える。 |
(ア) | 痴呆性高齢者支援対策 |
今後、急速に増加することが見込まれる痴呆性高齢者に対する取り組みは、これからの重点課題の一つである。痴呆に関する研究を進める一方で、痴呆性高齢者が尊厳を保ちながら穏やかな生活を送ることができ、家族も安心して生活を営むことができるような社会を実現することが求められている。 このため、痴呆性高齢者に対する支援対策として、家庭的な環境で少人数で共同生活を送る痴呆性老人グループホームの整備を推進するため、平成11年度補正予算及び平成12年度予算(案)においても所要の整備量を確保したところであるので、その積極的な普及をお願いしたい。 また、「介護予防・生活支援事業」の一環として、地域における痴呆介護・予防活動等の事業を実施する痴呆性老人グループホームに対して、初年度500万円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)の初度設備費の補助を行うこととしている。この補助は、地域との交流や家族との連携が十分に確保された痴呆性グループホームの整備促進を図ることを目的としており、施設整備費補助の対象とならない場合(NPO法人等が運営主体となる場合等)であって、市町村がこうした痴呆介護・予防活動等の事業を適切に行いうると判断した痴呆性老人グループホームについて、積極的な活用を図られたい。 このほか、全国3か所の高齢者痴呆介護研究センターを中心とする、痴呆介護に関する研究・研修のための全国体制(ネットワーク)の整備を通じて、痴呆介護の質的な向上を図り、痴呆介護の専門職を養成することとしているので、今後一層の協力と参加をお願いしたい。 | |
(イ) | 介護予防・生活支援対策 |
介護保険制度の円滑な実施の観点から、高齢者ができる限り寝たきりなどの要介護状態に陥ったり、要介護状態がさらに悪化することがないようにすること(介護予防)や、自立した生活を確保するために必要な支援を行うこと(生活支援)が重要な課題となっている。また、高齢者保健福祉の観点から配食サービスや外出支援サービスなど介護保険の対象となっていないサービスについても、市町村からの要望も強い。 そこで、要介護認定で制度の対象外となる高齢者をはじめとする在宅の高齢者に対して、介護保険法とは別に市町村が地域の実情に応じて行う保健福祉サービスとして「介護予防・生活支援事業」を創設することとしたところであるので、介護保険制度の円滑な実施のための対策として重要性を十分認識の上、市町村に対し適切な助言や指導をお願いしたい。 また、要介護状態の改善等により特別養護老人ホームからの退所が必要な高齢者や要介護認定の結果、常時の介護は必要としないが在宅での一人暮らしが困難な高齢者が入居して生活する施設として、高齢者生活福祉センター、介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームなどの整備が求められる。特に、高齢者生活福祉センターについては、量的な面はもとより基準面積の拡充に加え、運営費の大幅な改善を図ることとしているので、特別養護老人ホーム退所者の受け皿として積極的な活用を図るよう指導されたい。更に、養護老人ホームについては、地域の需要(ニーズ)などの必要性を踏まえたものであれば創設又は増床整備も国庫補助協議の対象としていくこととしている。 | |
(ウ) | 介護サービス環境整備対策 |
介護保険法の実施に伴い、高齢者における介護サービスの利用は、従来の措置を中心としたサービスから、契約によるサービスへと大きく変わる。この新たな仕組みが「利用者本位」の仕組みとして定着するためには、高齢者が自分自身のニーズに合ったサービスを適切に選択し、利用できるような市場環境を整備することが重要となってくる。 このため、後述するように、介護サービスの適正実施指導として、介護サービス事業者に関する情報整備やサービスの評価、契約の適正化などに関する指導、事業者の健全な振興を目指した取り組み及び適切な苦情処理体制の整備を進めていくこととしている。現在、国においてはそうした介護サービス事業に対する指導を含め、介護保険に関する総合情報相談体制の在り方について検討を進めており、近々その方針をお示しすることとしているので、介護サービス事業指導における都道府県の役割の重要性を十分認識の上、市町村に対し必要な指導をお願いしたい。 |
(ア) | 介護サービス情報整備事業 |
都道府県、市町村が利用者等に対し、居宅介護支援事業者(ケアマネジメント機関)や介護支援専門員(ケアマネジャー)、サービス事業者等を選択するために必要な情報を提供する事業 | |
(イ) | 適正サービス契約指導事業 |
都道府県が、介護サービスの利用契約の中で留意すべき着眼点など契約が適正に行われるための情報等を適切に提供するとともに、サービス利用に際しての様々な相談に応じる事業 | |
(ウ) | ケアプラン及びケアマネジャー評価事業 |
市町村が居宅サービス計画(ケアプラン)及びプランの中に位置づけられているサービス事業者を評価するために必要な情報を提供する事業 | |
(エ) | グループホーム指導事業 |
閉じられた小規模な空間の中で24時間サービスが提供されるグループホームについて、市町村がそのサービス内容を定期的又は随時に点検する事業 | |
(オ) | 福祉用具及び住宅改修研修事業 |
介護保険のサービスである福祉用具の購入及び住宅改修については、保険給付が償還払いであり、利用者が購入や改修を行った後で保険対象となるかどうかが決まることから、混乱を避けるために、事前に福祉用具の販売及び住宅改修を行う民間事業者に対する介護保険の仕組み等の講習を行うとともに、サービス利用者に対する福祉用具の事例、住宅改修の限度額等についての情報提供を行う事業 |
(参考) 高齢者生活福祉センター運営事業にかかる改善事項
平成11年度予算 | 平成12年度予算(案) | ||
運営費(1か所あたり) | 4,923千円 | → | 6,592千円〜13,447千円 |
生活援助員の増員 | 1名 | → | 1〜3名 |
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管理費の改善:宿直手当の導入等
(ア) | 平成12年度介護関連施設関係予算(案)について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成12年度予算(案)において、介護関連施設整備分については、約1,116億円を計上したところである。 また、平成11年度第2次補正予算において、介護関連施設整備分として、約368億円を計上している。 これにより、ゴールドプラン21に掲げられた平成16年度における介護サービス提供量を踏まえた計画的な整備を進めるために必要となる経費の確保が行えたものと考えている。
介護関連施設の整備量
(参考)保健衛生施設整備
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(イ) | 平成12年度における整備方針について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(ウ) | 施設整備業務の適正化について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本年度、会計検査院の実地検査において、社会福祉法人が競争入札により建設工事請負契約を締結する際、最低制限価格の設定が高かったため、結果として割高な契約となっている事例等が指摘されている。 今後、社会福祉法人が国庫補助事業を行うにあたり、競争入札において最低制限価格を設定する場合には、都道府県等における最低制限価格の設定方法等を参考にしつつ、合理的な根拠に基づき決定するよう周知されたい。 また、今年度においても、本来の工事費を水増しした虚偽の契約書を実績報告書に添付し整備費補助金を過大に受給するなどの事件が散見されている。 これらの事件は、平成9年度に施設整備業務改善方策を示す以前の整備ではあるが、今後とも同様の事件の再発防止を図るため、管下市区町村及び社会福祉法人等に対し、引き続き各種改善通知の趣旨に沿った指導の徹底に努められたい。 なお、各種全国会議等で再三申し上げてきたことではあるが、不正受給の事実が発覚した場合には、補助金を返還させることはもとより、不正に関与していた者についての告発を行うなど、厳正な対処をお願いしたい。 |
イ 老人福祉施設の運営
(ア) | 施設の適正な運営管理の推進と介護保険制度への円滑な移行 | |
老人福祉施設の適正な運営については従来より指導いただいているところであるが、最近、施設の運営や建設をめぐる不祥事が報道等で散見されるところである。 ついては、平成9年3月以降に出した適正化への指導通知等を踏まえ、管下老人福祉施設に対し、適正な運営について強力に指導をお願いしたい。 また、本年4月からの介護保険制度の導入に伴い、特別養護老人ホームの入所手続きが措置から利用契約へ、また、措置費から介護報酬へ、費用徴収から利用者負担へと請求手続きが変わることから、管下施設に対し、適切な指導をお願いしたい。 | ||
(イ) | 感染症対策の適正な実施について | |
結核、インフルエンザ等の施設内感染症対策については、従来から指導いただいているところであるが、今年度既に通知している、結核感染症の予防について、今冬のインフルエンザ総合対策及びレジオネラ症予防対策等を踏まえ、引き続き施設内における感染症対策について特段の注意を払うよう管下老人福祉施設に対し、指導をお願いしたい。 | ||
(ウ) | 運営費の主な改善内容 | |
平成12年度予算(案)においては、入所者の一般生活費等について生活保護基準に準じた所要の改善を行うこととしているほか、労働基準法の改正を踏まえ、常勤職員について、今年度に引き続き年休代替要員費を更に1日分上乗せすることとしている。また、福祉関係職員の人材確保、処遇の観点から介護等のサービスに従事している職員を対象とした、福祉職俸給表が新設されたことにより、これに移行するとともに、専門性に応じた処遇の確保を図ることとしている。 さらに、養護老人ホームについては、入所者の重度化が進んでおり、特別養護老人ホームの入所要件を満たし夜間業務を必要とする入所者等が増加していることに鑑み、夜勤体制に移行した施設に対して、夜勤寮母の加配を行うこととしているほか、介護保険導入に伴い低所得の入所者に対する介護保険料加算など所要の改善を図ることとしている。 | ||
(エ) | 老人保護費の適正な執行 | |
本年度の会計検査院の実地検査において、平成9年度の費用徴収について、被措置者の対象収入の算定及び扶養義務者の認定を誤るなどにより、25市区村で総額約3,251万円の国庫補助金の過大な精算がなされていた、との指摘がなされたところである。 費用徴収事務の適正の確保については、昨年も指摘されており、厳正な執行が求められるところであるので、管下の措置の実施機関等に対し、改めて適正な取扱いがなされるよう周知徹底を図るとともに、費用徴収額等の決定に当たって十分な審査を行い、適正を期すよう指導をお願いしたい。 |