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6.介護サービスの基盤整備について

 (1) 基本的な考え方について
  ア 平成11年度、12年度の介護サービス基盤整備
 今般、新ゴールドプランの後の新たなプランとして「ゴールドプラン21」が策定されたところであり、平成12年度以降はこのプランに掲げられた介護サービス見込量を踏まえた介護サービス基盤の整備が必要となってくる。国としても、平成16年度における各市町村の介護サービス見込量の達成に向け、毎年度必要な整備量を確保するためできる限り支援することとしているので、各市町村における整備状況及び整備計画を十分把握し、調整を図られたい。
 平成12年度予算(案)においては、訪問介護員の養成研修や痴呆介護の研修研究の推進といった人材養成確保対策のほか、施設整備対策として、特別養護老人ホーム10,000人分、痴呆性老人グループホーム500か所(保健衛生施設整備分を含む。)など、平成12年度に必要な整備量を確保したところである。各市町村において基盤整備が適切に行われるよう、指導をお願いしたい。
 また、平成11年度第2次補正予算においては、平成12年4月からの介護保険法の円滑な実施のため、介護サービス基盤の整備充実を図ることとしており、これに係る施設整備のヒアリングを1月中旬以降から行うこととしている。整備にあたっては都道府県・市のいわゆる裏負担に対し地方債の起債措置が講じられることとされていることから、財政担当部局とも十分協議の上、今年度事業への前倒しも積極的に検討されたい。
  イ 今後の介護サービス基盤整備の基本方向
 平成12年度以降、介護サービス基盤の整備を進めるにあたっては、次に掲げるような点を基本方向として対応することが望まれる。
(ア) 質・量両面にわたる基盤整備
 平成12年度から介護保険法が施行されるが、その円滑な実施のためには、要介護高齢者の需要に応じた介護サービス基盤の整備を計画的に進めることが求められる。この介護サービス基盤の整備においては、量的な面における整備の推進はもちろんのこと、今後は質的な面での取り組みがますます重要となってくる。介護サービスは、高齢者を対象とする「対人サービス」であり、その良し悪しはサービスを担う人材の個人的な資質に依存する面が強い。具体的には、(1)高齢者や家族の状態を的確に把握し、適切なサービス提供ができる「知識技術」と、(2)他の職種を含め多様な社会資源と協調し、それらと一体となって問題解決に取り組む「協調性」を有するとともに、(3)高齢者や家族の心情を理解する「やさしさ」と個人のプライバシーに深く関わっていることからくる「高い倫理観」を兼ね備えている人材が求められている。そうした人材の養成確保は、今後の基盤整備の重要な柱となるものである。
(イ) 地域の特性に応じた基盤整備
 市町村や都道府県によって高齢化の度合い、人口規模等には大きな差異があり、高齢者を取り巻く社会資源も様々であることから、介護サービス基盤の整備にあたっては、そうした地域特性を踏まえた取り組みが求められる。このため各自治体においては、それぞれの特性を踏まえ地域に最も適した介護サービス体制を構築していくことが重要である。
 そして、高齢者に対しては介護の面にとどまらず、生活全般にわたる支援が必要となってくることから、生活圏域での住民の支え合いを基本に置いた地域社会づくりが重要である。したがって、老人保健福祉の分野にとどまらず、住宅整備やまちづくり、生涯学習など幅広い分野を視野に入れた取り組みを更に推進されたい。
(ウ) 効率性の視点を踏まえた基盤整備
 介護保険においては給付と負担が連動しており、介護サービス基盤の整備は介護保険料をはじめとする保険財政に直接結びつくこととなる。それだけに、今後の基盤整備にあたっては、経済的な面も念頭に置いた対応が一層求められることとなる。介護サービス体制の構築という目標の達成においても、その実現には多様な手段方法があり得るわけであり、その中で最も効率的なものは何かを追求する姿勢が望まれる。例えば、介護関連施設の整備において、地域の空き教室などの既存資源を有効に活用することや、高齢者の見守りなどの軽度生活援助サービスについては、健康な高齢者をはじめとする地域住民やボランティアの参加を推進するといったような様々な取り組みを積極的に進められたい。
 また、高齢者ができる限り寝たきりなどの要介護状態に陥ったり、要介護状態がさらに悪化することがないように介護予防を推進することは、高齢者にとっての願いであるとともに、保険財政の面でも重要な意義を有するものであると言える。
  ウ 重点課題への取り組み
 今後高齢化が一層進行していく中で、老人保健福祉施策として取り組むべき重点課題としては、次の3点があげられる。各自治体においても、これらの課題に積極的に対応していくことが望まれる。
(ア) 痴呆性高齢者支援対策
 今後、急速に増加することが見込まれる痴呆性高齢者に対する取り組みは、これからの重点課題の一つである。痴呆に関する研究を進める一方で、痴呆性高齢者が尊厳を保ちながら穏やかな生活を送ることができ、家族も安心して生活を営むことができるような社会を実現することが求められている。
 このため、痴呆性高齢者に対する支援対策として、家庭的な環境で少人数で共同生活を送る痴呆性老人グループホームの整備を推進するため、平成11年度補正予算及び平成12年度予算(案)においても所要の整備量を確保したところであるので、その積極的な普及をお願いしたい。
 また、「介護予防・生活支援事業」の一環として、地域における痴呆介護・予防活動等の事業を実施する痴呆性老人グループホームに対して、初年度500万円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)の初度設備費の補助を行うこととしている。この補助は、地域との交流や家族との連携が十分に確保された痴呆性グループホームの整備促進を図ることを目的としており、施設整備費補助の対象とならない場合(NPO法人等が運営主体となる場合等)であって、市町村がこうした痴呆介護・予防活動等の事業を適切に行いうると判断した痴呆性老人グループホームについて、積極的な活用を図られたい。
 このほか、全国3か所の高齢者痴呆介護研究センターを中心とする、痴呆介護に関する研究・研修のための全国体制(ネットワーク)の整備を通じて、痴呆介護の質的な向上を図り、痴呆介護の専門職を養成することとしているので、今後一層の協力と参加をお願いしたい。
(イ) 介護予防・生活支援対策
 介護保険制度の円滑な実施の観点から、高齢者ができる限り寝たきりなどの要介護状態に陥ったり、要介護状態がさらに悪化することがないようにすること(介護予防)や、自立した生活を確保するために必要な支援を行うこと(生活支援)が重要な課題となっている。また、高齢者保健福祉の観点から配食サービスや外出支援サービスなど介護保険の対象となっていないサービスについても、市町村からの要望も強い。
 そこで、要介護認定で制度の対象外となる高齢者をはじめとする在宅の高齢者に対して、介護保険法とは別に市町村が地域の実情に応じて行う保健福祉サービスとして「介護予防・生活支援事業」を創設することとしたところであるので、介護保険制度の円滑な実施のための対策として重要性を十分認識の上、市町村に対し適切な助言や指導をお願いしたい。
 また、要介護状態の改善等により特別養護老人ホームからの退所が必要な高齢者や要介護認定の結果、常時の介護は必要としないが在宅での一人暮らしが困難な高齢者が入居して生活する施設として、高齢者生活福祉センター、介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームなどの整備が求められる。特に、高齢者生活福祉センターについては、量的な面はもとより基準面積の拡充に加え、運営費の大幅な改善を図ることとしているので、特別養護老人ホーム退所者の受け皿として積極的な活用を図るよう指導されたい。更に、養護老人ホームについては、地域の需要(ニーズ)などの必要性を踏まえたものであれば創設又は増床整備も国庫補助協議の対象としていくこととしている。
(ウ) 介護サービス環境整備対策
 介護保険法の実施に伴い、高齢者における介護サービスの利用は、従来の措置を中心としたサービスから、契約によるサービスへと大きく変わる。この新たな仕組みが「利用者本位」の仕組みとして定着するためには、高齢者が自分自身のニーズに合ったサービスを適切に選択し、利用できるような市場環境を整備することが重要となってくる。
 このため、後述するように、介護サービスの適正実施指導として、介護サービス事業者に関する情報整備やサービスの評価、契約の適正化などに関する指導、事業者の健全な振興を目指した取り組み及び適切な苦情処理体制の整備を進めていくこととしている。現在、国においてはそうした介護サービス事業に対する指導を含め、介護保険に関する総合情報相談体制の在り方について検討を進めており、近々その方針をお示しすることとしているので、介護サービス事業指導における都道府県の役割の重要性を十分認識の上、市町村に対し必要な指導をお願いしたい。
 
 (2) 在宅福祉サービスの整備について
  ア 訪問介護員養成研修事業等について
 訪問介護員養成研修事業については、平成11年度まで、各都道府県事業として実施するものに対し、全国一律に国庫補助を行ってきたところであるが、平成12年度予算(案)においては、介護保険制度の施行を踏まえ、従来の養成研修事業を基本的に見直し、(1)離島等必要となるヘルパーの供給確保が困難な地域について養成研修事業の国庫補助を行うとともに、(2)資質向上の観点から、現にヘルパーとして活動している3級課程修了者に2級課程を受講させた場合に、これに対する補助を行うこととしている。また、痴呆性高齢者に対する介護サービスの提供については、より高度な専門性が求められることから、(3)高齢者介護実務者及びその指導的立場にある者に対し、痴呆介護技術向上のための研修に対する国庫補助を行うこととしている。介護サービスの質的な向上の観点から、人材養成確保は今後の重要な柱となるものであり、各自治体においても積極的な対応が望まれる。
  イ 介護サービス適正実施指導事業について
 高齢者が良質な介護サービスを適切に選択・利用できるよう、介護サービス市場に関する環境整備を進めていく観点から、平成11年度補正予算において、平成11年10月から実施されている要介護認定結果を活用して、特に適切な対応が求められる高齢者を中心に、可能な限り事前に介護サービスを調整することができるよう所要の経費を計上しているところである。
 さらに、平成12年度予算(案)において、利用者が自分自身のニーズに合ったサービスを適切に選択し、利用できるような市場環境を整備する観点から、次の事業を実施することとしているので、各自治体において積極的な対応をお願いしたい。
(ア) 介護サービス情報整備事業
 都道府県、市町村が利用者等に対し、居宅介護支援事業者(ケアマネジメント機関)や介護支援専門員(ケアマネジャー)、サービス事業者等を選択するために必要な情報を提供する事業
(イ) 適正サービス契約指導事業
 都道府県が、介護サービスの利用契約の中で留意すべき着眼点など契約が適正に行われるための情報等を適切に提供するとともに、サービス利用に際しての様々な相談に応じる事業
(ウ) ケアプラン及びケアマネジャー評価事業
 市町村が居宅サービス計画(ケアプラン)及びプランの中に位置づけられているサービス事業者を評価するために必要な情報を提供する事業
(エ) グループホーム指導事業
 閉じられた小規模な空間の中で24時間サービスが提供されるグループホームについて、市町村がそのサービス内容を定期的又は随時に点検する事業
(オ) 福祉用具及び住宅改修研修事業
 介護保険のサービスである福祉用具の購入及び住宅改修については、保険給付が償還払いであり、利用者が購入や改修を行った後で保険対象となるかどうかが決まることから、混乱を避けるために、事前に福祉用具の販売及び住宅改修を行う民間事業者に対する介護保険の仕組み等の講習を行うとともに、サービス利用者に対する福祉用具の事例、住宅改修の限度額等についての情報提供を行う事業
  ウ 在宅介護支援センター運営事業について
 在宅介護支援センターについては、介護保険制度の導入に伴いその事業内容の見直しが行われるものの、センターに期待される役割は新たな分野を含め今後とも大きなものがある。今後、在宅介護支援センターにおいては、次のような業務を3本柱とし、地域の在宅介護の拠点として重要な役割を果たすことが期待される。
 (1) 今後とも要介護者に対する介護サービスの利用調整(ケアマネジメント)業務は業務の一つの柱である。このため、介護保険制度導入に伴い居宅介護支援事業者の指定を積極的に受けるよう指導をお願いしたい。
 (2) また、要介護認定における訪問調査は、在宅介護支援センターの公的な性格からみて業務の一つの柱となるべきものである。各市町村に対しては、センターを積極的に活用するよう指導願いたい。
 (3) 一方、介護保険外の業務としては、平成12年度予算(案)においては、在宅介護支援センターの運営費として、介護報酬の対象とならない総合相談、高齢者実態把握や要介護者以外の者等に対する保健福祉サービスの利用調整(申請代行)等に必要な経費を計上しているところである。このほか、介護サービス適正実施指導事業や高齢者共同生活(グループリビング)支援事業等の一部は、在宅介護支援センターに委託して実施することができることとしている。センターにおいては、これらの介護保険外の業務も併せて行う総合的な機能が求められることとなる。
 また、基幹型在宅介護支援センターについては、地域ケアの中核を担うものであり、その体制整備が極めて重要である。そのため、平成12年度予算(案)において、市町村における全体的な連絡・調整を行う「地域ケア会議」の設置・運営に必要な経費を計上するなどの拡充を図ることとしたところであり、積極的な推進に努められたい。
 各都道府県においては、管下市町村に対し、これらの趣旨を周知するとともに、在宅介護支援センター運営事業の整備促進が図られるよう、特段のご配慮をお願いしたい。
  エ 高齢者生活福祉センター運営事業について
 介護保険制度導入に伴い、現在、特別養護老人ホームに入所している者のうち、要介護認定の結果、自立又は要支援と認定された者については、生活の場を確保して、円滑に退所できるようにする必要がある。
 このため、平成12年度予算(案)において、高齢者生活福祉センターの生活援助員を増員する等の措置を講じ、機能強化を図ることとしている。
 各都道府県においては、この趣旨を管下市町村に周知するとともに、特別養護老人ホーム退所者の受け皿対策として積極的に本事業に取り組むよう指導、助言をお願いしたい。

(参考) 高齢者生活福祉センター運営事業にかかる改善事項

平成11年度予算平成12年度予算(案)
運営費(1か所あたり)4,923千円6,592千円〜13,447千円
生活援助員の増員1名1〜3名

利用定員6人〜10人2名(常勤1名、非常勤1名)
10人超3名(常勤2名、非常勤1名)

管理費の改善:宿直手当の導入等


 (3) 福祉施設サービスの整備について
  ア 介護関連施設の整備
(ア) 平成12年度介護関連施設関係予算(案)について
 平成12年度予算(案)において、介護関連施設整備分については、約1,116億円を計上したところである。
 また、平成11年度第2次補正予算において、介護関連施設整備分として、約368億円を計上している。
 これにより、ゴールドプラン21に掲げられた平成16年度における介護サービス提供量を踏まえた計画的な整備を進めるために必要となる経費の確保が行えたものと考えている。

介護関連施設の整備量
(11年度第2次補正予算)(平成12年度予算案)
特別養護老人ホーム5,000人分10,000人分
ショートステイ2,000人分6,000人分
ケアハウス1,500人分5,000人分
高齢者生活福祉センター200か所200か所
老人デイサービスセンター100か所1,200か所
痴呆性老人グループホーム100か所400か所

(参考)保健衛生施設整備
老人保健施設4,000人分7,000人分
訪問看護ステーションー1,000か所
痴呆性老人グループホーム100か所100か所


(イ) 平成12年度における整備方針について
(1)基本的整備方針
 特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、ケアハウス等ゴールドプラン21において平成16年度における介護サービス提供量が示された介護関連施設については、その介護サービス提供量策定の基礎となる各地方公共団体の作成する介護保険事業計画における介護サービス見込量等に基づき、計画的な整備を行うものを推進する。また、特別養護老人ホーム及び養護老人ホームにおいて、大部屋として整備されているものや老朽化が激しいものについては、サービスの質の向上を図る観点から平成12年度においても優先的に整備を行う方針である。
 介護保険制度下での特別養護老人ホームについては、地域における今後の状況等を踏まえつつ、より良質で効果的な介護サービスを安定的、効率的に提供できるような運営基盤の確保が求められていることから、施設整備に関しては、特に次の3点に留意されたい。
  1.  多機能化・機能転換(痴呆性老人グループホーム、デイサービス、ショートステイ、ホームヘルパーステーション、ケアハウス、高齢者生活福祉センター等の機能を併せ持つこと)、
  2.  適正な規模の確保(需要がある地域では基本的には70人程度以上の定員規模を確保すること、また、既存施設で健全な運営を図っている施設については、定員増を図ること)、
  3.  グループケアユニット型(いくつかの居室や共用スペースを一つの生活単位として整備し、家庭的な環境の中で、少人数ごとに処遇する形態)の整備
 これら将来に向けての取組みが重要になると考えられることから、こうした内容を含む老朽改築整備や増改築・新築整備を積極的に推進していただきたい。

(2)平成12年度国庫補助協議について
 介護関連施設をはじめとする社会福祉施設については、昨年度と同様に、平成11年度末から平成12年度にかけて、切れ目のない予算執行を行う方針である。
 このため、平成12年1月中旬から平成11年度第2次補正予算に係る整備と併せて平成12年度に係る整備について協議を受けることとしているので、準備方よろしくお願いしたい。
 なお、国庫補助協議にあたっては事業内容等の徹底した審査を求めているところであるが、平成11年度では国庫補助協議後の事業内容の変更等の事例がみられた。
 今後は、執行段階での予期せぬ事由による計画変更を除き、このような事態が生じないよう、協議対象施設の審査にあたっては、一層厳密に行うようお願いしたい。

(3)平成12年度予算(案)における内容改善事項
  1.  特別養護老人ホームの面積改善
     いくつかの居室を一つの生活単位としてまとめた、いわゆるグループケアユニット型として特別養護老人ホームを整備する場合に、国庫補助基準面積を、一人当たり38.0平方メートルに引き上げる。
  2.  高齢者生活福祉センターの面積改善
     現行では、併設するデイサービス部門と共用している食堂、事務室などを、居住部門にも独立して整備できるよう、国庫補助基準面積を、一人当たり35.0平方メートルに引き上げる。
  3.  ケアハウスの定員規模の緩和
     特別養護老人ホーム等と併設した小規模なケアハウスの整備促進を図るため、現行の最低定員規模を引き下げる。
    【現行】【改正(案)】
    (単独で設置する場合)30人以上20人以上
    (特養等に併設で設置する場合)15人以上10人以上

  4.  養護老人ホームの定員規模の緩和
     養護老人ホームの一部を特別養護老人ホームに転換する場合及び特別養護老人ホームに養護老人ホームを併設する場合に、養護老人ホームの最低定員を20人以上とする。
(ウ) 施設整備業務の適正化について
 本年度、会計検査院の実地検査において、社会福祉法人が競争入札により建設工事請負契約を締結する際、最低制限価格の設定が高かったため、結果として割高な契約となっている事例等が指摘されている。
 今後、社会福祉法人が国庫補助事業を行うにあたり、競争入札において最低制限価格を設定する場合には、都道府県等における最低制限価格の設定方法等を参考にしつつ、合理的な根拠に基づき決定するよう周知されたい。
 また、今年度においても、本来の工事費を水増しした虚偽の契約書を実績報告書に添付し整備費補助金を過大に受給するなどの事件が散見されている。
 これらの事件は、平成9年度に施設整備業務改善方策を示す以前の整備ではあるが、今後とも同様の事件の再発防止を図るため、管下市区町村及び社会福祉法人等に対し、引き続き各種改善通知の趣旨に沿った指導の徹底に努められたい。
 なお、各種全国会議等で再三申し上げてきたことではあるが、不正受給の事実が発覚した場合には、補助金を返還させることはもとより、不正に関与していた者についての告発を行うなど、厳正な対処をお願いしたい。

  イ 老人福祉施設の運営
(ア) 施設の適正な運営管理の推進と介護保険制度への円滑な移行
 老人福祉施設の適正な運営については従来より指導いただいているところであるが、最近、施設の運営や建設をめぐる不祥事が報道等で散見されるところである。
 ついては、平成9年3月以降に出した適正化への指導通知等を踏まえ、管下老人福祉施設に対し、適正な運営について強力に指導をお願いしたい。
 また、本年4月からの介護保険制度の導入に伴い、特別養護老人ホームの入所手続きが措置から利用契約へ、また、措置費から介護報酬へ、費用徴収から利用者負担へと請求手続きが変わることから、管下施設に対し、適切な指導をお願いしたい。
(イ) 感染症対策の適正な実施について
 結核、インフルエンザ等の施設内感染症対策については、従来から指導いただいているところであるが、今年度既に通知している、結核感染症の予防について、今冬のインフルエンザ総合対策及びレジオネラ症予防対策等を踏まえ、引き続き施設内における感染症対策について特段の注意を払うよう管下老人福祉施設に対し、指導をお願いしたい。
(ウ) 運営費の主な改善内容
 平成12年度予算(案)においては、入所者の一般生活費等について生活保護基準に準じた所要の改善を行うこととしているほか、労働基準法の改正を踏まえ、常勤職員について、今年度に引き続き年休代替要員費を更に1日分上乗せすることとしている。また、福祉関係職員の人材確保、処遇の観点から介護等のサービスに従事している職員を対象とした、福祉職俸給表が新設されたことにより、これに移行するとともに、専門性に応じた処遇の確保を図ることとしている。
 さらに、養護老人ホームについては、入所者の重度化が進んでおり、特別養護老人ホームの入所要件を満たし夜間業務を必要とする入所者等が増加していることに鑑み、夜勤体制に移行した施設に対して、夜勤寮母の加配を行うこととしているほか、介護保険導入に伴い低所得の入所者に対する介護保険料加算など所要の改善を図ることとしている。
(エ) 老人保護費の適正な執行
 本年度の会計検査院の実地検査において、平成9年度の費用徴収について、被措置者の対象収入の算定及び扶養義務者の認定を誤るなどにより、25市区村で総額約3,251万円の国庫補助金の過大な精算がなされていた、との指摘がなされたところである。
 費用徴収事務の適正の確保については、昨年も指摘されており、厳正な執行が求められるところであるので、管下の措置の実施機関等に対し、改めて適正な取扱いがなされるよう周知徹底を図るとともに、費用徴収額等の決定に当たって十分な審査を行い、適正を期すよう指導をお願いしたい。


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