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3.高齢者保健医療制度の改革等について

(1)平成12年度における老人保健制度の見直しについて
 医療保険制度改革の中で、平成12年度は、医療保険制度の安定的運営を確保するため、給付と負担の見直し等必要な改正を行うこととしているが、老人保健制度においても、(2)において述べる医療保険福祉審議会が取りまとめた昨年8月の意見書や、年末の予算編成過程における与党と関係団体との調整等を踏まえ、老人の患者負担について以下のとおり見直しを行うこととしている。

 老人に係る薬剤一部負担の廃止
 老人に係る薬剤一部負担については廃止することとし、イに述べる一部負担の見直しと併せ、本年7月1日から施行することとしている。 なお、老人に係る薬剤一部負担軽減の臨時特例措置については、本年6月までに限り継続することとしている。

 老人の一部負担について、
・ 病院外来は、定率1割負担制とし、病院間の効率的な機能分担、複数医療機関で複数診療科を受診した者と大病院で複数診療科を受診した者との負担の公平等の観点を踏まえ、200床未満の病院と200床以上の病院で2段階の月額上限を設定
・ 診療所外来は、「かかりつけ医」機能という観点からの受診時の安心感や、事務処理能力等を勘案して、定額制と定率1割負担制(月額上限あり)との選択制
・ 入院は、定率1割負担制とした上で、月額上限を設定することとし、具体的には、以下の通りとすることとしている。

 (1)外来
病院 定率1割負担制(200床未満=上限3,000円/月、200床以上=上限5,000円/月)とする
診療所 定額制(800円×4回/月)と定率1割負担制(上限3,000円/月)との選択制
 (2)入院
定率1割負担制(上限は、高額療養費の多数該当と同様:一般37,200円/月、低所得者:24,600円/月、低所得者かつ老齢福祉年金受給者15,000円/月)
   以上について、老人保健法に所要の改正を行うための関係法律案を通常国会に提出すべく準備作業を進めているところであるが、改正法が制定され次第、高齢者、管下市町村・特別区、医療機関等関係者への周知を含め、その円滑な実施に関し協力方お願いする予定である。

 入院時食事療養費の見直しについて
 入院時食事療養費に係る標準負担額については、健康保険法、国民健康保険法と同様に、老人保健法において「平均的な家計における食費の状況を勘案して厚生大臣が定める額」とされており、今般、現行額制定(平成8年8月制定、同年10月実施)以後の家計の食費の変化を踏まえ、本年7月以降、760円/日を780円/日に改める。ただし、低所得者については、現行額通りとする。
 標準負担額の改定については、告示を行うこととしており、告示を行い次第、高齢者、医療機関等関係者への周知等に関し協力方お願いする予定である。

(2)高齢者保健医療制度の改革の動向について
 高齢者医療制度の見直しについては、医療保険福祉審議会制度企画部会において、一昨年11月に取りまとめた意見書を踏まえ更に審議が行われ、昨年8月13日に意見書が取りまとめられたが、この意見書において示された新たな高齢者医療制度の枠組みと高齢者の負担の在り方に関する考え方は、以下の通りである。(参考資料2参照。)


新たな高齢者医療制度の具体的な枠組み

 (1) 公費を主要な財源とし全ての高齢者を対象とした地域単位の新たな医療保険制度を設ける考え方

・全ての高齢者を対象とする新たな医療保険制度を創設
・対象年齢は75歳以上又は65歳以上
・保険者は市町村を基本に、広域的対応を推進
・高齢者も一定の保険料を負担するが、公費(消費税等)を中心とした費用負担
  (問題点等)
・高齢者は弱者であるという発想に立つものであり、成熟社会の下での医療制度のあり方として不適当
・財源の見通しもないまま大幅な公費増を期待することは非現実的
・年金・介護保険制度に係る公費負担との関係も含め、国民経済全体からみてこのような負担が吸収可能かどうか十分な検討が必要
 (2) 国保グループとは別に被用者保険グループの高齢者のみを対象に新たな医療保険制度を設ける考え方
・被用者保険グループの高齢者を対象とした新たな医療保険制度を創設
・対象者は一定期間以上の加入期間を有する被用者年金の受給者
・全国一本の民営保険者
・社会保険方式による費用負担
・制度(保険者)間の負担の不均衡については、公費を両グループの高齢者比率に着目して重点配分することにより調整
  (問題点等)
・就業構造が流動化している中で高齢期となってからも被用者と非被用者を区分することは、社会連帯の理念からは現行制度よりも後退
・全国一本の保険者とすると、医療費の適正化・効率化が期待できない。
 (3) 現行の保険者を前提とし保険者の責によらない事由(特に年齢構成)に基づく各グループ(保険者)間の負担格差についてはいわゆるリスク構造調整を行う考え方
・現行老人保健制度は70歳以上の加入割合のみに着目しているが、全年齢を対象として各保険者間の年齢構成の相違による負担の不均衡を調整
  (問題点等)
・国保グループと被用者保険グループでは、所得形態、所得捕捉の実態等根本部分が異なり、リスク構造調整のような調整は、納得できない。
 (4) 現行の医療保険制度を一本化して新たな医療保険制度を設ける考え方
・都道府県又は国を新たな保険者として現行制度を一本化し、被用者か否かあるいは高齢者か若年者かで区分することなく、全ての者を対象とした新たな医療保険制度を設ける。
  (問題点等)
・将来の医療保険制度のあり方としては有力な選択肢の一つであるが、被用者・自営業者間の所得捕捉の違いなどの問題があり、平成12年度を目途とした当面の具体的改革案の一つとすることは不適当

高齢者の負担について

 (1) 高齢者の患者一部負担について

・当面、診療に要した医療費の1割程度の患者一部負担を求めることが必要(ただし低所得者については特段の配慮が必要)
・医療に対するコスト意識の重視及び介護保険制度との均衡を図る観点からは定率負担が適当とするのが大方の意見
・一方、外来の定率負担は、医療機関等の窓口での負担が予測できないこと、重症患者ほど高額の負担を強いられる等安心して医療を受けられないこと、過度な受診抑制が生じる懸念があること等から、慎重に検討すべきとの意見
 (2) 高齢者の保険料負担について
・被用者保険の保険料負担額を参考とした保険料負担とする考え方
・患者一部負担と保険料を合わせて医療費の一定率以下の水準とする考え方
 高齢者医療制度の見直しについては、昨年8月の意見書においても考え方を一つに集約するまでには至っていないが、可能な限り早急に結論を出せるよう、今後とも引き続き検討を進めることとしている。


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