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7 母子保健対策について

 母子保健は、生涯の健康の基礎であり、また、次の世代を健やかに生み育てるための基礎であることから極めて重要であると認識しており、今後とも、住民の多様なニーズに対応した母子保健対策の一層の推進を図って行くこととしている。
 このため、平成12年度においても、1)周産期医療対策事業、2)生涯を通じた女性の健康支援事業、3)子どもの心の健康づくり対策事業等、少子社会に対応した総合的な母子保健対策の充実強化を図ることとしている。
 また、平成9年4月より、母子保健サービスの主たる実施主体を市町村に移譲したところであるが、都道府県におかれては、引き続き、改正の趣旨を踏まえ管下市町村に対する指導・助言を願いたい。

(1)乳幼児事故防止対策に関する普及・啓発について

 乳幼児のうち1歳〜4歳児の死亡原因として、溺水、誤飲等の不慮の事故が第一位となっているため、乳幼児の事故予防は重要な課題となっている。
 これらについては、周囲の大人が目を光らせることで事故の6割が防げると言われていることから、一般家庭や保育所等の児童福祉施設等の職員に対して、こうした事故予防の方法や、万一の際の応急処置などの普及啓発を行うこととし、事故防止対策のポスターを作成するとともに、一般家庭等に対する講習会(4か所)を開催することとしている。

(2)乳幼児健康診査費等の一般財源化について

 乳幼児健康診査(昭和23年度創設)及び乳児健康診査(昭和44年度創設)は、制度創設後相当の年数が経過し市町村の経常的な事務として同化・定着していることから、地方分権推進委員会の第2次勧告の趣旨に沿って、平成11年度及び平成12年度の2か年間で一般財源化を行うこととしている。
 なお、所要の財源については地方交付税措置されることとなるので、一般財源化によって事業の低下を招くことのないよう管下市町村に対し指導願いたい。

(3)不妊専門相談センター事業の整備について

 不妊に悩む方々に的確な情報を提供し、専門的な相談に応じられる体制を地域において整備することは重要であることから、平成8年度から「生涯を通じた女性の健康支援事業」の一環として、不妊専門相談センター事業を実施しているが、本事業について、今般の新エンゼルプランの中で、計画的に整備すべき重点施策として位置づけられたところであるので、各都道府県の積極的な実施をお願いしたい。
 なお、平成12年度予算案においては、「不妊治療に関する情報提供」を行うこととしており、事業内容の充実を図ることとしている。

(4)先天性代謝異常等検査の充実について

 1) 新生児聴覚障害検査について

 難聴児に対する適切なケアを早期から開始することは、乳幼児の生育環境を整備する上で重要なことであるが、一方で、新生児や乳幼児期の聴覚障害は、他覚的兆候に乏しいこともあり、年齢が進んでから発見されることが多いのが現状となっている。
 このため、近年の医療技術の進歩を踏まえ、聴覚障害を早期に発見し、
 早期治療を進める観点から、自動聴性脳幹反応検査装置(AABR)等の検査装置を活用した聴覚スクリーニングの普及を図ることとし、平成12年度予算案において、先天性代謝異常等検査費補助金の中の一事業として新たに計上したところである。
 なお、本事業については、当面は、スクリーニングに適した実施方法等を検討するための試行的事業として実施することとしており、年間出生数が一定数以上の医療機関において新生児を対象に実施することとしている。(10月実施)

 2) 神経芽細胞腫検査の精度管理

 スクリーニング検査においては、患者の発見漏れを引き起こした場合に、重大な結果を招く恐れがあるため、従来から先天性代謝異常及びクレチン症について、精度管理機関による精度の維持向上に努めているところであるが、同様の観点から、今般、神経芽細胞腫検査についても精度管理事業を実施することとし、新たに平成12年度予算案に計上したところである。

(5)育児等健康支援事業のメニュー事業の追加について

 共働き家庭等が乳幼児健康診査や保健指導等を受けやすくするため、平成12年度予算案において、育児等健康支援事業のメニュー事業の中に、新たに「休日健診・相談等事業」を追加し、休日における受診機会の整備を図ることとしたところである。
 本事業は、休日において、市町村が市町村保健センター等での健診等を行う場合に、必要となる医師・看護婦等の確保を図るものであり、市町村における積極的な実施をお願いしたい。

(6)周産期医療ネットワークの整備について

 妊産婦死亡、周産期死亡等のさらなる改善により安心して出産ができる体制を整備するため、新エンゼルプランにおいて、総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療ネットワーク(システム)の整備を進めることとしている。
 地域医療計画の改訂に際しては、周産期医療について計画に盛り込むとともに、平成16年度までに原則として各県に1ヶ所の総合周産期母子医療センターを整備し、これを中心とした地域周産期母子医療センター及び一般産科との母体及び新生児の搬送体制をはじめとする連携体制の整備をお願いしたい。

(7)乳幼児健康支援一時預り事業の充実について

 乳幼児健康支援一時預り事業については、事業の一層の拡大のため、
  1) 実施施設に保育所を追加
  2) 派遣対象に
   ・保護者が病気等になった家庭や
   ・出産後間もないため家事や育児が困難な核家族家庭を追加することとしたので、各市町村の積極的な取り組みについて指導されたい。
 また、引き続き労働省のファミリー・サポート・センター事業の会員の保育士等を活用とするとともに、同事業において本事業の申請代行、送り迎え、情報提供を行う。(平成12年度200市町村)
 なお、平成11年度第2次補正予算において、今回限りの措置として、 医療機関で本事業を実施するための部屋の整備(乳幼児健康支援一時預かり施設の整備)を医療施設等施設(設備)整備費により行うこととしたので、これが整備方について積極的に取り組まれるようお願いしたい。

(8)21世紀の母子保健に係る国民運動計画(「健やか親子21」)について

 これまでの母子保健の取組みの成果を踏まえるとともに、残された課題と新たな課題を整理し、21世紀の母子保健の取組みの方向性を提示すると同時に、目標値を設定し、関係機関・団体が一体となって推進する国民運動計画として、「健やか親子21」を関係専門家等による検討を経て、平成12年中に策定、実施することとしている。
 本計画は、国民が健康で明るく元気に生活できる社会の実現を図るための国民の健康づくり運動(「健康日本21」)の一環となるものである。

 

「健やか親子21」について

○ 我が国の母子保健は、20世紀中の取組みの成果として既に世界最高水準にあるが、妊産婦死亡や乳幼児の事故死について改善の余地があるなどの残された課題や思春期における健康問題、親子の心の問題の拡大などの新たな課題が存在する。また、小児医療や地域母子保健活動の水準の低下を防止する等、保健医療環境の確保についても対応すべき課題が存在する。
 「健やか親子21」は、これまでの母子保健の取組みの成果を踏まえるとともに、残された課題と新たな課題を整理し、21世紀の母子保健の取組みの方向性を提示するものであると同時に、目標値を設定し、関係機関・団体が一体となって推進する国民運動計画である。関係専門家等による詳細な検討を経て、平成12年中に策定し実施する。

「健やか親子21」のイメージ
・21世紀の母子保健の主たる課題を提示
 (1)思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
 (2)妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
 (3)子供のからだの健やかな発達を図るための環境整備
 (4)育児不安の解消と子供の心の安らかな成長の促進
・各課題に関する2010年の目標値を提示
・関係機関・団体等による国民運動の展開方法を具体的に提示

○ 「健やか親子21」は、安心して子供を産み、健やかに子供を育てることの基礎となる少子化対策としての意義に加え、少子・高齢社会において、国民が健康で明るく元気に生活できる社会の実現を図るための国民の健康づくり運動(「健康日本21」)の一環となるもの。

(注)「健康日本21」について
 ・ 全ての国民が、健康で明るく元気に生活できる社会の実現のため、壮年死亡の減少、痴呆や寝たきりにならない状態で生活できる期間の延伸等を目標に、国民の健康づくりを総合的に推進。
 ・2010年を目標年度として2000年から計画を実施。


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