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2 児童虐待防止施策について

 全国の児童相談所における虐待相談処理件数は、平成10年度には6,932件、統計を始めた平成2年度の1,101件の6倍強となり、相談件数の急増が続いている。この件数の伸びは、各地方自治体における児童福祉法第25条(国民の通告の義務)についての広報・啓発、関係機関との連携促進等の積極的な取組によるものとも考えられることから、今後さらに虐待相談件数の増加が予想され、児童相談所の体制強化等が喫緊の課題となっている。
 一方、第146回国会の衆議院「青少年問題に関する特別委員会」において「児童虐待の防止に関する決議」(平成11年12月10日)がなされ、児童虐待防止に向けた万全の措置を講じることとされたところである。
 これらの状況を踏まえ平成12年度予算案において、児童虐待防止施策の一層の充実に努めるものである。

(1)虐待に関する広報・啓発について

1) 児童虐待防止ビデオ等の活用について
 平成11年度において、家庭や児童と接する機会の多い児童福祉機関、医療機関、学校等の職員及び地域住民に対し児童虐待の理解促進と国民の通告義務に関する啓発を目的としたビデオ及びパンフレットを作成したところである。
 ついては、1月中に各都道府県・指定都市宛送付するので管下の児童相談所等における啓発活動に活用するとともに児童福祉、保健、医療、教育、警察等の関係機関に貸し出しを行うなどあらゆる場を通じて啓発に努めるようお願いする。
 また、管下市町村に配布し、保育所、幼稚園、学校、保健センター等の地域住民が集う場において上映する等啓発に努めるよう指導をお願いする。

2) 子ども虐待防止ポスターの作成について
 平成12年度予算案において、子ども虐待防止や児童福祉法第25条の国民の通告の義務に関する啓発を目的としたポスターを作成、配布するので、貴都道府県・指定都市及び管下市町村等の公共の場等において掲示するなどにより、児童虐待の発生防止及び児童相談所等への通告促進に努めていただくようお願いする。

(2)児童相談体制の充実について

1) 児童虐待防止市町村ネットワーク事業について
 近年、児童虐待の問題が深刻な社会問題となっており、住民に身近な市町村域において、こうした問題への取り組みを進めることが必要となっている。
このため、平成12年度予算案において、保健、医療、福祉、教育、警察、司法等の関係機関・団体等のネットワークを整備する「児童虐待防止市町村ネットワーク事業」を実施することとしている。
 なお、本事業については、「子どもの心の健康づくり対策事業」の一環として実施することとしており、同事業に対する市町村における積極的な対応をお願いする。

2) 家庭支援体制緊急整備促進事業について
ア 地域連絡網の整備促進について
 本事業は、児童相談所により、地域の主任児童委員等に対して児童虐待に関する研修を実施し、研修修了者を登録する等の方法により地域連絡網の基盤整備を行うために平成11年度に創設したものである。
 平成12年度予算案では、全都道府県・指定都市において実施できる予算を確保しているので、未実施の地方自治体では、その整備促進を図るようお願いする。

イ 児童虐待対応協力員の配置について
 これまで児童福祉司が行っている関係機関の連絡調整をはじめ、関係機関からの情報把握等の業務を行う児童虐待対応協力員(非常勤)を全児童相談所に1名配置することとしたので、虐待相談の急増に対して迅速、的確な対応をお願いする。

3) 児童家庭支援センターについて
 児童相談所等の関係機関と連携しつつ、虐待や非行など複雑な問題を抱える児童及びその家庭に対し、地域に密着したきめ細かい相談支援を行う施設として平成10年度に創設されたところであるが、平成12年度予算案では、11年度の実績及び各県の計画等を勘案して15か所(計40か所)の増を図ることとしているので、積極的な設置が図られるよう、管下の施設に対する指導をお願いする。

4) 児童相談所職員の任用について
 児童相談所の所長及び児童福祉司等は、児童・家庭の各般の問題に対し相談に応じ、問題の本質を的確に捉え、個々の児童や家庭に最も効果的な処遇を行うため、児童福祉に関する高い専門性が必要であることから、資格について児童福祉法に規定しているところである。
 しかしながら、各自治体の児童相談所の所長及び児童福祉司の任用状況を調査したところ、所長のうち5割、児童福祉司のうち2割が準用規定による任用であり、所長及び児童福祉司全員が準用による任用や規定の拡大解釈による任用となっている自治体も見受けられる。
 日頃より職員の資質の向上、専門性の向上に努めていただいているところであるが、児童虐待、非行問題への対応等複雑多様化する児童問題に適切に対応するため、児童福祉法に基づく有資格職員の配置を積極的に行うよう一層のご尽力を改めてお願いする。

第146回国会衆議院「青少年問題に関する特別委員会」決議
(平成十一年十二月十日)

児童虐待の防止に関する件

 国連児童権利条約の採択から十年、我が国の批准から五年が経過した。
しかし、我が国においては、親など保護者等による暴力行為等が激増し、尊い命が奪われる事件が多発している。こうした児童虐待は児童の将来に多大な影響をもたらすものであり、深刻な社会問題となっている。
 児童虐待は、家庭内におけるしつけとは明確に異なり、親権や親の懲戒権によって正当化されるものではない。
 本委員会においては、児童虐待が、国の将来を担う子どもたちだけでなく、国民全体の問題であることを認識し、国会は使命をもって、児童虐待の防止に最大限の努力を払うこととする。
 児童虐待を防止するには、現代日本における家族のあり方、教育のあり方、子育て不安等根本的な問題の解決が必要とされるが、現行制度の中ででき得る限りの対策を講じ、今後早急に法制面、予算面の措置において万全を期する必要がある。
 ついては、緊急の対応として、政府は、次に掲げる諸点について関係者の意見を聴取し、万全の措置を講ずべきである。

一.国民に課せられた通告義務に対し、啓発及び広報の徹底を図ること。
二.児童相談所の体制と専門職員の充実及び児童養護施設の改善を図ること。
三.二十四時間対応窓口の整備に努めること。
四.児童相談所が立入調査を行う場合、警察は積極的に協力すること。
五.国及び地方自治体における関係機関の連携強化を図ること。
六.NGO、ボランティア組織等民間とのネットワークの構築に努めること。
七.当該児童、保護者等に対するカウンセリング及び個別フォロー体制の充実を図ること。
八.関係省庁による検討体制を確立するとともに、検討状況を随時国会に報告すること。
 また、立法府は、本問題の早期解決を図るため、児童福祉法その他関連法の必要な法整備を早急に講ずることとする。

右決議する。

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