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5 地域福祉の推進について(地域福祉課)

 急速に少子・高齢化が進展する中で、地域社会においては、社会福祉協議会(以下、本項において「社協」という。)、民生委員をはじめとして、ボランティア団体、生協、地域住民等による助け合い活動や様々な福祉活動が活発になってきている。
 地域福祉を進めていくうえで、公的施策の充実はもとより、このような地域社会における住民相互の助け合いや交流活動、社協等の民間福祉活動等の支援を積極的に進めていくことが重要であるため、厚生省としては、今後とも次のような取組みを通じて地域福祉の推進を図っていくこととしている。

1) 社協については、市区町村社協を中心として、「ふれあいのまちづくり事業」の実施等により、地域に密着した社協活動の一層の充実を図る。
2) ボランティア活動については、社協に設置されたボランティアセンターへの助成等を通じ、国民の自主的・自発的な福祉活動への参加を促進するための基盤整備を積極的に図っていく。
3) 民生委員については、地域住民の身近なところで活動する民生委員の特徴に鑑み、民生委員に対する研修の実施により、資質の向上、活動の強化を図る。

 各都道府県・指定都市・中核市においては、このような動向に十分留意され、地域社会において社協、ボランティア、民生委員等の活動が一層活発になるよう、その指導等に積極的に取り組まれたい。

(1) 社協活動の推進
ア ふれあいのまちづくり事業の推進

(ア) ふれあいのまちづくり事業は、市区町村社協が実施主体となって、地域住民の参加と関係機関との連携のもとに、地域に即した創意と工夫により具体的な課題に対応するとともに、住民相互の助け合いや交流の輪を広げ、共に支え合う地域社会づくりに寄与することを目的としている。

(参考)「ふれあいのまちづくり事業」1ヶ所当たり事業費
平成12年度予算(案)においては、補助金の整理合理化の観点から、
1ヶ所当たり事業費について見直しを行ったので留意されたい。
【A型事業】11年度12年度(案)
○ 1〜3年次11,866千円 → 10,595千円
○ 4,5年次9,785千円 → 8,814千円
【B型事業】2,081千円 → 1,781千円

(イ) 平成12年度においては、平成7年度指定の市区町村社協についての指定替えを行うこととしている。新たな指定に当たっては、年度内にヒアリングを予定しているので、各都道府県・指定都市においては、事業実施計画市区町村社協の事業内容や実施体制、取組み意欲や事業実施により期待される成果などを十分精査の上協議願いたい。

(ウ) 実施要綱に基づき、事業実施3年目において、事業の成果を評価することとしているため、的確に評価が行われるよう指導、助言されたい。
また、指定が終了となる市区町村社協に対しては、本事業の実施により得られた成果の定着が図られるよう指導・支援されたい。

イ 「市区町村社協強化推進事業」の充実

 近年、市区町村社協は、都道府県・指定都市社協の実施する「事業型社協推進事業」による支援等を受けながら、様々な在宅福祉サービス等の企画・実施に取り組んできたところである。
 これら、訪問介護(ホームヘルプサービス)事業等の住民に対する直接的なサービスは、社会福祉協議会に対する地域住民の信頼を高め、社会福祉協議会の事業への住民参加を促進する効果があったことから、今後とも地域の実情に応じて自主的に取り組んでいくことが望まれる。
 今後は特に、地域で活動する住民組織、ボランティア組織の連携強化、一般の社会福祉事業者が行わないような日常的生活援助等の事業が、市区町村社会福祉協議会の中心的な活動として展開されることが必要である。同時に、利用者によるサービスの選択を援助するための情報提供、権利擁護、苦情解決などの役割も期待されている。
 このような事業を積極的に展開していくためにも、会費や寄付金等の自主財源の一層の充実が望まれるとの意見が、中社審社会福祉構造改革分科会より具申された。
 このため、都道府県・指定都市社協が、インフォーマルな福祉サービスの研究開発や巡回指導を実施することにより、市区町村社協の事業型化を更に推進するとともに、独自財源の確保、活動手法等に関する検討、管理職員等を対象とした研修の実施を通じて運営基盤の強化についての助言、指導等を行う「市区町村社協強化推進事業」を平成11年度より行っているとこである。
 また、平成12年度予算(案)により、本事業において複数の市区町村社協か共同で在宅福祉サービスを行うこと等、事業の広域的実施について検討できるよう事業容の充実を図ったところである。
 各都道府県・指定都市においては、これらの趣旨を踏まえ、本事業の推進について、管下都道府県・指定都市社協に対する指導・支援に特段の配慮を願いたい。

(参考) 「市区町村社協強化推進事業」
・実施主体 都道府県・指定都市社協
・1ヶ所当たり事業費 2,465千円(負担割合 国 1/2,県 1/2)

(2) ボランティア活動の基盤整備
 厚生省においては、「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年4月)や「ボランティア活動の中長期的な振興方策について(意見具申)」(平成5年7月)等に基づき、国民の自主性、自発性を尊重しつつ、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」、「気軽に」、「楽しく」、ボランティア活動に参加できるよう、ボランティアセンターに対する助成等を通じて、その基盤整備を図っているところである。
 また、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会においてまとめられた意見の中でも、地域で活動する住民組織、ボランティア組織の連携強化などの取り組みが地域福祉を推進していくうえで重要である旨、指摘されている。
 都道府県・指定都市・中核市においては、これらの動向を十分に踏まえ、ボランティア活動の推進の機運を一層高めるよう、体制の整備はもとより、ボランティア基金や地域福祉基金等の積極的な活用を図る等、ボランティア活動の促進に特段の指導・支援を行うよう配慮されたい。

ア ボランティアセンター事業の推進

(ア) 都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業

 広域的な観点からボランティア活動の促進を図る都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業においては、これまで福祉教育推進事業(学童・生徒のボランティア活動普及事業等)や養成・研修事業(ボランティア活動コーディネーターの養成等)等に取り組んでいるところである。
 平成12年度予算(案)においては、養成・研修事業の一環として組織化等を目指すボランティアグループ・団体を対象に、社会福祉法人、NPO法人の法人格取得及び在宅福祉サービスを行う事業者としての運営・管理等を支援するための情報提供、研修会の開催、個別相談等の実施を行う「ボランティアグループ組織化等支援事業」を創設することとした。
 都道府県・指定都市においては、これらの事業の推進について、管下都道府県・指定都市社協に対する指導・支援に特段の配慮を願いたい。

(参考)「都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業」
1ヶ所当たり事業費
11年度12年度(案)
16,020千円 → 16,217千円

(イ) 市区町村ボランティアセンター活動事業

 市区町村ボランティアセンターは、住民に最も身近な市区町村におけるボランティア活動の拠点として、相談や登録 ・あっせん、入門講座の開催、福祉救援ボランティア活動の促進のための事業を行っているが、平成12年度予算(案)においても、そのための必要な予算を確保し、引き続き市区町村社協における本事業の充実を目指しているところである。
 現在、本事業を実施している市区町村社協に対しては、その事業効果が十分上がるよう、また、本年度で国庫補助の指定が終了する社協に対しては、引き続き11年度以降も事業の定着が図られるよう指導・支援されたい。併せて、国庫補助指定外のボランティアセンターに対しても、地域の実情に応じた事業の実施が図られるよう指導・支援願いたい。
 また、本事業の国庫補助期間は実施要綱において原則3年間としていることから、12年度には、9年度指定の市区町村社協についての指定替えを行うこととしている。12年度の国庫補助の事前協議に当たっては、年度内に予定しているので、事業実施計画市区町村社協の事業内容等を十分精査願いたい。
 なお、補助金の整理合理化の観点から、本事業の1ヶ所当たり事業費については見直しを行ったので留意されたい。

(参考)「市区町村ボランティアセンター活動事業」1ヶ所当たり事業費
11年度12年度(案)
3,483千円 → 3,438千円

イ ボランティア功労者に対する厚生大臣表彰等

 ボランティア活動が一層拡大していくためには、誰もがボランティア活動に参加しやすくなるための基盤整備や啓発 ・広報等を推進するとともに、ボランティア活動が社会的に評価されることが重要である。
 このような観点から、厚生省においては、都道府県・指定都市・中核市等からの推薦に基づき、ボランティア功労者に対する厚生大臣表彰を毎年実施し、ボランティア活動の社会的評価の向上を図っているところである。
 都道府県・指定都市・中核市においては、平成12年度においても、各地域で活動している様々な個人や団体について推薦願いたい。また、福祉分野等のボランティア功労者に対する表彰制度については、ほとんどの都道府県・指定都市・中核市において設けられているところであるが、未だ表彰制度を設けていない場合は、制度化について早急に検討されたい。
 なお、被表彰者等については、活動事例の紹介等のPR活動を行うこと等により、ボランティア活動の社会的評価の向上に積極的に努められたい。

ウ その他

(ア) 全国ボランティアフェスティバルの開催について

 平成12年度(第9回)の全国ボランティアフェスティバルは、平成12年9月23日・24日に徳島県(徳島市)で開催されることとなっているので、各都道府県・指定都市・中核市においては、本フェスティバルへのボランティア等の幅広い参加等について協力願いたい。
 また、今後の開催地については、平成13年度(第10回)は神奈川県が既に決定されているところであるが、平成14年度以降の開催を希望する場合は、早期に全国ボランティアフェスティバル推進協議会(事務局:全国社会福祉協議会)へ要望するとともに、社会・援護局地域福祉課へもその旨連絡願いたい。

(イ) ボランティア活動保険の普及について
 ボランティア活動保険は、ボランティア活動を行う者が、その活動中の事故に伴う傷害、損害を補償するものとして、全国社会福祉協議会と民間損害保険会社との契約に基づき、市区町村社協を受付窓口として運営されている。
 都道府県・指定都市・中核市においては、ボランティアが安心して活動に取り組むことができるよう、ボランティア活動保険の普及について配慮されたい。

(3) 民生委員活動の推進

ア 民生委員活動の充実

 民生委員は、社会奉仕の精神をもって、地域住民に最も身近なところで相談・支援活動を行っているが、今後はより地域住民の立場に立ち、地域の福祉需要に即した相談・支援活動を活発に行っていくことが求められている。
 このような時代の変化に対応した民生委員活動を行えるようにするため、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会の意見を踏まえ、民生委員の職務内容を明確にすること等、民生委員法の改正を行い、民生委員活動の強化を図ることとしている。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、これらの動向を踏まえ、今後とも民生委員活動の円滑な遂行と充実が図られるよう努められたい。
 なお、平成12年度の全国民生委員児童委員大会は、鹿児島県において開催することしているので了知願いたい。

(参考)「平成12年度第69回全国民生委員児童委員大会」の開催日程等
日 時 平成12年10月18日(水),19日(木)
会 場 「鹿児島アリーナ」(鹿児島市)他

イ 人権・同和問題に関する理解の促進等

 民生委員法においては、民生委員の職務の遂行に当たり、個人の人格の尊重、差別的な取扱いの禁止について規定している(第15条)。全ての民生委員が、研修等を通じて人権問題や同和問題についての理解と認識を一層深めるとともに、日々の活動において、基本的人権の尊重や差別意識の解消に向けて、積極的に実践していくことが必要である。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、今後とも民生委員に対する人権・同和問題に関する理解と認識を深めるための研修等の充実強化に努め、その実施に当たっては、都道府県・指定都市民生委員児童委員協議会等と連携し、積極的な指導について配意願いたい。

6 地域福祉権利擁護事業について (地域福祉課)

 痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者など、判断能力が不十分な者に対して福祉サービスの利用援助等を行う「地域福祉権利擁護事業」が、平成11年10月から開始されたところである。
 今後、福祉サービスの利用制度化に伴い、益々ニーズが高まる事業であることから、本事業を着実に実施することが重要なため、各都道府県におかれては管下都道府県社会福祉協議会に対して特に以下の点について更なる指導、支援をお願いしたい。

(1) 対象者等への周知
 本事業は、判断能力が不十分な者に対して支援するという新しい事業であることから、対象者、家族、民生委員等周囲の方々へ積極的に本事業の紹介をしていくことが必要である。この場合、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者など、本事業の対象となる全ての人がわかりやすいパンフレットを作成することが非常に重要である。
 特に知的障害者の当事者団体から知的障害者の方が理解しやすいパンフレット作成の要望が強いことも踏まえ、創意工夫の上そのようなパンフレットを作成し有効に活用されるよう指導されたい。

(2) 幅広い広報の実施
 本事業の着実な実施のためには、対象者、家族、民生委員等への周知のほか、幅広い層へ広報を行うことも重要である。このため、平成11年度第2次補正予算において本事業の幅広い広報を行う経費(国から民間会社への委託費)として約2億円を計上したところである。広報の詳細については後日各都道府県あて連絡することとしているが、この実施を契機として各都道府県においても幅広い層への広報について配慮願いたい。

(3) 事業推進のための協力関係の構築
 今後の事業推進のためには、都道府県社会福祉協議会と委託された市区町村社会福祉協議会等との連携はもちろん、委託を受けていない市区町村社会福祉協議会やその他関係機関、団体との協力関係を構築することが重要であるため「関係機関連絡会議」を定期的に開催することとしているが、各都道府県においては、管下都道府県社会福祉協議会が必要とする機関、団体と協力関係を構築できるよう指導、支援願いたい。

(参考)
平成11年度予算額平成12年度予算額(案)
958,224千円 → 1,871,657千円
(平年度化による増)

7 生活福祉資金貸付制度の運営について(地域福祉課)

(1) 制度の効果的運営

 経済的自立と生活意欲の助長促進等を図ることを目的として運営されている生活福祉資金貸付制度は、平成10年度には、約1万7千件、約160億円の貸付けを行うなど低所得対策等の中核的な施策として大きな役割を果たしている。
また、阪神・淡路大震災に際して特例措置を実施する等、生活福祉資金は低所得世帯等のために極めて大きな役割を果たしているだけでなく、その時々のニーズにも的確、機動的に対応した措置を講じてきたところである。
本制度は、世帯の自立及び生活のための援助に役立てるための制度であるので、その運営を担っている管下都道府県・市区町村社会福祉協議会に対し、制度の積極的な広報、啓発等を一層徹底するとともに、民生委員をはじめ関係機関等との連絡・調整を密にし、対象世帯の貸付需要に適切かつ円滑に対応できるよう指導の徹底を願いたい。
加えて本制度は、給付事業とは異なり、一定の財源をより多くの方々が繰り返し活用する(償還金を原資として新たな貸付を行う)ことで制度が成り立つものであるので、適正な債権の管理に努められるよう併せて指導願いたい。

(2) 介護保険法の円滑な実施のための特別対策

 平成12年4月より介護保険法が施行されることとなるが、介護保険法の円滑な実施のための特別対策の一環として、生活福祉資金貸付制度による介護保険制度の利用料等の一部負担等が困難な者への対応をすることととしている。

 具体的な内容は以下のとおりであるが、都道府県におかれては、その趣旨をご理解いただき、予算面その他必要な準備につき、適切な対応をお願いしたい。

 貸付の範囲
(1)利用料の自己負担(1割負担)等に対する貸付

福祉制度における利用者の負担は、これまで負担能力に応じたものとされていたのに対し、介護保険制度においては、基本的に全ての利用者から利用料の1割の負担を求めることとなっている。
このため、低所得者等の中には、(1)年金などの収入が得られるまで間がある、(2)家族が遠隔地に居住していること等により一時的に家族の援助が得られない等により、その自己負担額が一時的に融通できない者も生じることから、自己負担額及び食事標準負担額、介護保険料に相当する額を生活福祉資金で貸付することにより介護保険制度利用者の負担軽減を図るよう運用の拡大を図り対応するもの。

(2)現金給付(償還払い)となる介護サービスの立て替えのための貸付
現金給付(償還払い)となる介護サービスについては、現金給付(償還払い)がなされるまでに通常申請後2〜3ヶ月を要すると見込まれているため、一時的に本人が立て替えるための経費としても貸付を行う。

(参考)
現金給付(償還払い)となる介護サービスの例
■ 福祉用具購入費(介護保険法 第44条、56条)
■ 住宅改修費(介護保険法 第45条、57条)
■ 高額介護サービス費(介護保険法 第51条)
■ 高額居宅支援サービス費(介護保険法 第61条)   など

 対応の方法
 療養資金の貸付対象に介護保険の一部負担等に要する経費を加えるとともに特別 の基準を設け対応するものとする。
○ 貸付限度額 270,000円以内(特別498,000円以内)
○ 貸付対象期間 原則1年(特別1年6ヶ月)
○ 据置期間 最終貸付日から6月以内
○ 償還期限 5年以内
○ 貸付利子 無利子

8 地方改善事業の推進について(地域福祉課)

(1)地方改善事業の推進

 一般対策としての地方改善事業
 地方改善事業については、平成9年4月から一般対策とされ、これまでの特別対策として実施してきた施策の効果が損なわれることのないよう、その施策ニーズに応じて各般の一般対策によって的確に対応していくことが重要である。なお残されている課題については、地域の状況や事業の必要性に応じて施策を実施するなど、人権・同和問題の早期解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。

(ア)地区道路・橋梁等整備事業
 地区道路等の地方改善施設(設備)整備事業については、法期限内に実施できなかった事業や新たな幹線道路整備に伴うアクセス道の必要性等を勘案し、平成12年度予算(案)においても、各地方自治体の要望も踏まえた上で、所要の整備量を確保しているので、その計画的な整備について、管下市町村に対し周知願いたい。
 なお、本事業については、平成9年度以降の5年間(平成13年度まで)に限り補助率を3分の2としている。

(イ)隣保館整備事業
 隣保館整備事業については、一般対策移行後は、社会福祉施設等施設(設備)整備費補助金において実施しており、平成12年度予算(案)においても、各地方自治体の要望に応えうる額を確保したところである。
 なお、本事業については、平成9年度以降の5年間(平成13年度まで)に限り補助率を3分の2としている。
 また、一般対策移行の際、老朽施設に対する増改築等や社会福祉施設並びで昇降機設備やスロープの設置等を新たに補助対象(補助率2分の1)としているので管下市町村に対し制度の周知等引き続き指導願いたい。

(ウ)隣保館運営事業
 隣保館は、周辺地域の住民を含めた地域社会全体の中で、生活上の各種相談事業など社会福祉に関する総合的事業の推進や同和問題をはじめとする人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、極めて重要な役割を担っている。
 平成12年度予算(案)においては、隣保館デイ・サービス事業及び広域隣保活動事業の拡充を図ったほか、人件費等運営単価についても所要の改善を行ったところである。
 また、一般対策移行時に創設された3事業(地域交流促進事業、継続的相談援助事業、広域隣保活動事業)についても、引き続きその定着を図るとともに、隣保館活動における重要な課題である高齢者、障害者在宅福祉対策についても一般施策の一層の活用が図られるよう管下市町村に対し特段の指導を願いたい。

 地域改善対策特定事業(経過措置・生活相談員設置事業)
 平成9年3月の「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律」により経過措置対象事業となっている生活相談員設置事業については、平成13年度をもって終了することとしているため、本事業について、計画削減が円滑に行われるよう対象市町村を指導願いたい。

 ウタリ福祉対策事業
 ウタリ福祉対策については、ウタリ集落の生活環境の改善を図るため北海道庁において策定された「第4次ウタリ福祉対策」(平成7〜13年)の実施とあわせ、平成9年5月に制定されたいわゆる「アイヌ新法」の趣旨を踏まえ、アイヌの人々の福祉の向上、生活環境の改善等に向けた事業を推進する必要がある。

(ア)地区道路・橋梁等整備事業
 地区道路等の施設整備事業については、平成12年度予算(案)においても所要の整備量を確保しているので、その計画的な整備について、管下市町村に対し周知願いたい。

(イ)生活館整備事業
 生活館整備事業については、平成10年度以降、社会福祉施設等施設(設備)整備費補助金において実施しており、隣保館と同様に老朽施設に対する改築費等を新たに補助対象としているので関係市町村に対し、制度の周知等引き続き指導願いたい。

(ウ)生活館運営事業
 生活館運営事業については、アイヌの人々を中心とした地域住民に対する相談事業や地域交流事業等を実施しているが、アイヌの人々の生活の改善、啓発等生活館の活動が一層推進されるよう関係市町村を指導願いたい。

(2)人権・同和問題に関する啓発等の推進

 人権が守られ差別のない公正な社会を実現するため、人権教育や啓発、研修のもつ意義は大きいものがあるが、各地方自治体においても「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画や人権擁護推進審議会答申を踏まえ、同和問題をはじめとする人権問題について、関係部局が連携を図り、心理的差別の解消に向けた全庁的な取組が積極的になされることが重要である。

 研修の充実及び職員採用選考時における指導・啓発
 管下行政関係職員をはじめ保健福祉に携わる関係者等に対し、積極的な啓発・研修を通して人権・同和問題に関する理解が深められるよう指導願いたい。
 また、平成10年には一部地域において、就職差別につながるおそれのある調査会社による身元調査事案が発生したが、これは関係者の人権問題に対する認識不足によるものが大きいと思われる。こうしたことが二度と起きないようにするためにも関係者等に対する啓発・研修は、ただ漫然と行うのではなく具体的な事例を挙げるなど効果的なものとなるよう努めるとともに、社会福祉法人等の関係団体に対して、職員の採用選考に当たっては身元調査を行うことなく、応募者の適性と能力を基準として採用選考を行うよう機会を捉えて指導・啓発を行われたい。

 「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画
 平成7年から「人権教育のための国連10年」の取組が開始されているが、政府では平成9年7月4日に国内行動計画を策定し、「重要課題への対応」として、「同和問題」、「アイヌの人々」が位置付けられたところである。ついては、隣保館等における総合的な活動の推進やアイヌの人々に対する歴史・文化・伝統等への理解と認識を深めるなど国内行動計画の趣旨に沿った教育及び啓発が推進されるよう各般の指導を願いたい。
 なお、平成8年に成立した人権擁護施策推進法に基づき、法務省に設置された人権擁護推進審議会においては、平成9年5月以降「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項」について審議が行われ、平成11年7月29日に答申がなされた。その答申においては、国、地方自治体等の人権教育・啓発を行う各実施主体が、その役割に応じて相互に連携協力して、総合的かつ効果的に人権教育・啓発を推進していくことが必要であるとされており、この答申を踏まえた一層効果的な取組が行われるよう配慮願いたい。
 また、現在、人権擁護推進審議会では、「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する基本的事項」について審議がなされているので、その動向等についても注視されたい。

9 ホームレス対策について(地域福祉課)

(1)ホームレス問題への対応

 「ホームレス問題連絡会議」の設置
 ホームレス問題については、昨今の経済・雇用情勢の悪化等を背景にして、大都市を中心に、道路、公園等で野宿生活を送っているホームレスが増加しており、大きな社会問題となっている。
 こうした現状を踏まえ、平成11年2月に、厚生省、労働省を中心とした関係省庁及び関係地方公共団体で構成する「ホームレス問題連絡会議」が設置され、その対応策について検討を重ねてきた結果、平成11年5月に「ホームレス問題に対する当面の対応策」がとりまとめられたところである。

 「当面の対応策」に基づく施策の推進
 この「当面の対応策」においては、ホームレスが自らの意思で自立して生活できるように支援することを基本に、老齢や健康上の理由などにより自立能力に乏しい人々に対しては適切な保護を行うこととし、以下の五分野にわたる施策を推進することとしている。

○総合的な相談・自立支援体制の確立
○雇用の安定
○保健医療の充実
○要援護者の住まい等の確保
○安心・安全な地域環境の整備

 ホームレス自立支援事業の実施
 平成12年度予算(案)においては、「当面の対応策」の主要な柱である「ホームレス自立支援事業」の実施のための経費を新たに計上している。本事業は、就労意欲を持つホームレスを対象に、宿所、食事等を提供するとともに、健康診断、生活相談・指導等により自立意欲を喚起させ、公共職業安定所との密接な連携の下で職業相談員による職業相談・斡旋等を行い、就労による自立ができるよう積極的に支援する事業である。
 平成12年度においては、ホームレスが相当数存在する大都市を中心に事業を実施する予定であり、関係地方公共団体については、早期に事業実施できるよう積極的な対応を図られたい。

(2)各地方公共団体におけるホームレスの実態把握について

 先般、全国のホームレスの概数調査を行ったところであるが、その結果、全国で約2万人のホームレスが存在している。この調査は地方公共団体によって調査時期、方法等は異なるものの、大都市を中心に引き続き増加傾向にあり、地方の主要都市においてもホームレスが相当数存在しており、全国的広がりを見せている。
 このため、ホームレス問題への対応については、まずは福祉事務所等における窓口相談や街頭相談等により、ホームレスの実態を十分に把握し、その状況に応じて、適切かつ効果的な施策を推進されたい。

10 消費生活協同組合の指導・育成について(地域福祉課)

(1)生協を取り巻く環境

 今日、消費生活協同組合法(以下「生協法」という。)に基づき設立されている生活協同組合(以下「生協」という。)は約1,200組合、組合員数は延べ約4,700万人にも及んでいる。また、その事業の範囲は、共済事業や供給事業をはじめ各種利用事業等幅広い分野に及び、契約高や事業高においても膨大な額に上っているところであり、生協の活動は国民生活に多大な影響を与えているところである。
 一方、長引く経済状況の低迷や資産運用環境の悪化の中で、生協の経営は今後一層厳しくなるものと予想されるところである。
 いうまでもなく生協は、消費者による自主的な相互扶助組織であり、その運営については、一義的には組合員自身が決定していくべきものであるが、かかる情勢の変化等に鑑み、組合員の保護を図る観点から、生協が健全に運営されるよう所管行政庁としても適切に指導を行う必要があると考えられるところである。

(2)健全な運営の確保

ア 健全な管理運営
 生協は生協法に基づく特別の法人であり、税制においても普通法人に比べ優遇されているように、その社会的責務は非常に大きく、責任ある経営が求められるところである。
 したがって、生協の管理運営については、適正な執行と事業の健全性が確保されなければならず、所管行政庁においては、設立認可はもとより、新規事業の許認可に際しては、この点に留意の上、十分な検討及び審査をお願いする。
 さらに、事業毎の収支の明確化や組合員に対する情報開示など法の趣旨に則った運営がなされるよう日常的な指導についても、種々の機会を積極的に捉えて行われるよう併せてお願いする。

イ 運営への組合員の参加
 一部の生協にあっては、役員による生協の私物化や商品販売における虚偽表示などの報道が行われているところであるが、組織の巨大化に伴い経営に直接携わる者と組合員との間で、生協運営についての合意形成が不十分である事例なども見受けられるところである。
 そもそも生協は、相互扶助の精神に則った自主的な組織体であり、役員は組合員からの付託により経営を任されているに過ぎず、理事会等執行機関は、常に組合員からの要望を汲み上げ、組合員の需要に応えるべくその事業を展開することが求められる。
 また、最近においては、組合員の意識の変化も手伝い、生協が単なる事業の利用の場となっている傾向がある。
 ついては、人と人との結合並びに相互扶助といった生協の基本理念に則って、組合員に対する十分な情報提供や知識の向上に努め、生協の運営に関し組合員が自由に積極的に参加することができるよう特段の指導をお願いする。

(3)指導体制の確保等

 都道府県においては、以上の観点等から指導体制の確保に努め、管下生協に対 し、計画的かつ効果的な実地による検査指導を行うこと等により、組合の健全経営、組合員管理、員外利用の防止、政治的中立の確保、組合員借入金の適正な管理などについて、法令等に則った適切な指導に当たられたい。
 また、消費の伸び悩み等により、生協の約4割が赤字経営であるが、経営が悪化している生協、特に、累積赤字を抱えている生協については、事業改善計画の策定などにより経営の健全化に向けた指導に留意されたい。
 さらに、一部生協においては不適切な財務処理を行っているところも見受けられるので、指導に当たっては「消費生活協同組合財務処理規則」等に基づき、適正な財務処理は勿論のこと、組合員への透明性の確保等が図られるよう指導されたい。
 なお、生協法を含む「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」が昨年7月8日に成立し、平成12年4月より、地方公共団体が行う生協事務は機関委任事務から自治事務となることから、管下生協への計画的な検査指導を行うなど、今後とも生協の健全な運営の確保に努められたい。

(4)「消費生活協同組合模範定款例」の改正

 平成10年6月に報告された生協のあり方検討会報告書「今後の生協のあり方について」では、生協の本質は、同じニーズを抱える人々の共助組織であり、今日の社会では、自助、公助に加え、共助の役割がますます増大しているが、生協の事業活動は、こうした自発的な共助の仕組みそのものであるとし、共助活動としての生協の意義が明確に提示されたところである。
 そして、今後の生協の役割としては、安全、安心、安価という従来からの役割に加え、福祉事業、環境問題、コミュニティへの貢献等が期待されるとしている。
 その上で、このような生協の役割を的確に果たしていくためには、(1)組合員のニーズに合致した事業の追求、(2)組合員の意思が反映される民主的な運営、(3)厳正な経営責任体制の確立が図られるべきであるとの指摘がなされたところである。
 この報告を踏まえ、現行の法令体系の中で可能な措置を採るべく、保健・福祉サービスに関する事業の明確な位置付け、情報の開示、責任ある運営体制の確立等の観点から、現在、「消費生活協同組合模範定款例」の改正作業を進めており、近く改正通知を発出する予定であるので、所管行政庁におかれては、管下生協への周知徹底を図るとともに、定款変更の際には適切な審査・指導をお願いする。


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