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2 生活保護制度の運営について (保護課)

(1)生活保護制度制定50周年を迎えるに当たって

 現行の生活保護法の施行は昭和25年5月であることから、生活保護制度は、本年5月に50周年を迎えることとなる。

 制定当時は、他の社会保障制度が十分に整備されていなかったこともあり、昭和25年における保護率は24.40/00、被保護人員は200万人を超えており、戦後の混乱が終息した時期において、生活困窮者を支援する機能を担っていた。
 その後、経済事情の回復に加え、各種福祉施策や年金制度をはじめとする他の社会保障制度の整備に伴い、平成7年には被保護人員約88万人、保護率7.00/00にまで減少してきた。しかし、近年の社会経済構造の変化や経済事情の悪化等に伴い失業者が増加していること等により、ここ数年はやや増加傾向に転じ、平成11年8月現在の概数値によれば、被保護人員約99万6千人、保護率7.90/00となっており、現在は既に100万人を超えたものと推測される。また、保護費の給付総額は、1兆5千億円を優に超える規模に達するものと見込んでいる。
 現在の生活保護制度の対象者は高齢者、障害者世帯等要援護者が中心で、社会保障制度全般における生活保護制度の役割は、法制定時と比較して変化が見られる。
 このような中、介護保険制度が導入されるとともに、年金制度や医療保険制度の見直しなど社会保障制度全般にわたる見直しが進められており、生活保護制度においても介護扶助を創設したところであるが、今後とも、他の社会保障制度との役割の分担のあり方など制定以来50周年を迎える生活保護制度について議論することが必要である。
 なお、生活保護法制定50周年を迎えるに当たり、全国社会福祉大会における表彰とは別に、本制度の運営に功績のあった者に対する厚生大臣表彰等を行う式典の開催を検討している。追って、詳細を連絡するので、被表彰候補者の推薦等にご協力願いたい。

(2)平成12年度生活保護基準の改定

 生活扶助基準の算定方法については、昭和23〜35年のマーケット・バスケット方式、昭和36〜39年のエンゲル方式、昭和40〜58年の格差縮小方式と変遷してきたが、昭和59年からは、生活扶助基準については、ほぼ妥当な水準に達したので、政府経済見通しの民間最終消費支出の1人当たりの伸びを基礎とする、いわゆる水準均衡方式を採用しているところである。
 平成12年度についても、水準均衡方式により0.1%の改定を行うこととし、これにより、1級地の1の標準3人世帯の生活扶助基準は16万3970円となる。
標準3人世帯(33歳男・29歳女・4歳子)
  平成11年度 平成12年度
1級地−1 163,806円 163,970円
1級地−2 156,435 156,591
2級地−1 149,063 149,213
2級地−2 141,692 141,834
3級地−1 134,321 134,455
3級地−2 126,950 127,077

 世帯人員別の生活扶助基準については、一般低所得世帯の消費実態に合わせ是正を図るため、個人的経費(第1類)を据え置き、世帯共通経費(第2類)のみを改定することとしている。

 その他、出産扶助、葬祭扶助、生業扶助の技能修得費、重度障害者他人介護料については、それぞれの扶助の性格を踏まえ、各種実態料金の状況等を総合的に勘案し、所要の改善を図ることとしている。

 平成12年度からの介護扶助基準並びに介護保険料及び介護施設における日常生活費に係る生活扶助基準については、今後介護保険の動きを踏まえ設定することとしている。

(3)介護保険への対応

 介護扶助の施行準備については、各都道府県、市において、これまで、制度の周知、指定介護機関の指定及び被保険者以外の者に係る要介護認定の委託契約等の事務を進めてきていただいているところである。
 いよいよ、本年4月からの施行となるが、その円滑な実施に向けて、特に下記の事項についてご配意願いたい。

 介護扶助は、介護保険とあいまって高齢者介護サービスの利用を保障するものであり、指定介護機関の指定事務や保険料等の適用区分及び適用除外者に関する連絡など、介護保険担当課及び保険者である市町村等との密接な連携が不可欠であるため、生活保護担当部局と関係部局間との連絡調整が円滑に行われる体制を確保すること。

 介護保険制度の導入によって、福祉事務所には、介護扶助に係る調査決定や指導、介護の報酬の審査等の介護扶助に関する事務に加え、被保護者の介護保険料算定のための市町村への連絡及び保護申請却下に際しての介護保険料等に係る境界層該当の証明等の介護保険に関連する事務が生ずることとなるので、その体制を整備すること。

 第一号被保険者である被保護者(特別徴収対象者を除く。)の介護保険料の納付について、委任による代理納付の実施を含めた適切な助言・指導を行うとともに、介護保険の活用により生活の向上を図ることができると考えられる要保護者に対し、介護サービスの利用について適切に助言・指導するよう、管内実施機関を指導すること。
なお、介護扶助の施行に必要な職員については、平成12年度の地方財政計画上、介護保険関係職員として、所要の措置が講じられているところである。
(4)生活保護の実施について

 生活保護の実施については、各都道府県、市において格段の御努力をいただいているところであるが、引き続き、研修等を通じて職員の資質の向上を図るとともに、福祉事務所として組織的な保護の決定実施を行う体制を整備するよう管内実施機関を指導されたい。
 また、保護の実施に当たっては、個々の世帯の生活実態を十分に調査し、年金・社会保険等他法他施策の活用、きめ細かな面接相談と実態に応じたフォローアップ等を図ることにより、個々の被保護者の保護の受給要件を的確に把握することを通じて、国民の理解と信頼を失うことのないよう、制度の適正かつ円滑な実施について管内実施機関を指導されたい。
 世帯主に稼働能力があるにもかかわらず解雇等により要保護状態となっている被保護世帯については、政策的な雇用創出対策を活用し、又は、職業に関する技能の習得等を通じた稼働能力の向上を援助することにより就労の促進を図られたい。
 具体的には、職業安定機関との連携、技能習得費の活用等の既存の取組みのほか、
1) 緊急地域雇用特別交付金により地方公共団体等において実施されている雇用機会の創出のための事業を活用すること、
2) 都道府県福祉人材センターで実施されている福祉人材の就労斡旋、研修等を活用すること。また、介護労働安定センターで介護保険法の施行に向け実施を予定している介護労働者の確保のための助成制度の活用を図ること、
 が考えられる。
 これらの事業の活用のためには、都道府県において民生部局内あるいは関係部局との連絡を密接に行い、これら事業によって創出される雇用に係る情報を早期に得て、管内実施機関に対して適切に提供するとともに、自ら雇用機会の創出のための事業を実施することについても検討されたい。
 医療扶助については、保護費負担金の約6割を占めることからも明らかなように、生活保護制度に占める比重は大きく、その適正運営は重要な課題であるので、従来からの取組みの外、以下の点に留意され、適正運営の一層の推進を図られたい。
(ア)レセプト審査体制の整備
 平成12年度から医療扶助におけるレセプト様式を変更することとしているが、この方式への変更に伴い、レセプトが有効な医療券に基づくものであることを各福祉事務所で確認することが不可欠となるので、すべてのレセプトについて所要の照合が行われるようレセプト審査体制を整備するとともに、監査指導において重点的に実施状況を確認されたい。
 また、診療日数が過度に多い被保護者については、嘱託医や主治医との協議により必要な受診回数を確認し、適正受診の指導を行われたい。
(イ)長期入院患者の退院促進
 介護保険及び介護扶助の導入により、長期入院患者等のうち社会的入院を余儀なくされている者については、要介護状態に応じたサービスが提供される体制が確保されることとなった。
 ついては、こうした者に対して積極的に要介護認定を受け、介護サービスの利用により生活の向上を図るよう指導し、社会的入院の解消に努められたい。
(ウ)被保護者情報のデータベース化
 一部の都道府県、市において、毎月のレセプトから医療費、診療日数、受診医療機関名等の医療情報をデータベース化し、被保護者ごとの受診状況及び指定医療機関ごとの診療の状況が把握できる仕組みを整えることにより、被保護者への療養指導や医療費通知、指定医療機関への指導等を推進することが効果的であるので、各都道府県、市においても適宜、実施に取り組まれたい。
 保護施設の整備について
 救護施設は、精神入院患者、重複障害者等の受け入れ施設として、また、更生施設は、特に都市部において、ホームレスの増加等によりその必要性が高まっている。
 このため、これらの施設については、更に施設整備が必要と思われるので、それぞれの地域の実態に応じ、計画的整備に取り組まれたい。
(5)生活保護費補助金の執行

 平成12年度の執行方針について
 生活保護の実施については、(4)でも触れたとおり、稼働年齢層の就労促進及び医療扶助の適正運営が大きな課題であり、これらに関連する適正化対策事業を重点的に採択する予定である。
 適正執行について
 生活保護費補助金について、昨年、会計検査院から不適正な経理の事例が指摘されられたことは遺憾であり、ついては、事務処理体制の点検等を行い適正執行を図られたい。

3 婦人保護事業の推進について(保護課)
(1)婦人保護事業を取り巻く状況
 最近の売春を取り巻く状況は、社会・経済情勢の変化や国民の性に対する意識の変化等を反映し、売春形態の多様化や潜在化が進み、その対応は複雑、困難化している。
 また、近年は、夫等からの女性に対する暴力が社会問題となっており、各施策による適切な対応が求められている。この問題は、本来、必ずしも売春防止法が取り扱う問題とは言えないが、弱者保護の観点から果たすべき役割もあると考えられる。

(2)婦人保護施設等の活用
 このような状況を踏まえ一部の都道府県では婦人相談所の相談件数、一時保護の件数、婦人保護施設の入所者数が極めて高くなっている。一方、これらへの対応が必ずしも十分に行われているとは言い難い都道府県もあるように見受けられる。ついては、定員割れした施設などの積極的な活用を図り、新たな状況に対応されるようお願いする。
 特に、夫等の暴力から逃れてくる女性については、相手方からの追求等に対し逃避するといった都道府県内のみでは解決できない問題もあることから、広域的な保護の活用及び受け入れについても積極的に取り組むよう配慮されたい。

(3)実施体制の整備
 婦人保護事業における最近の複雑・多様化や夫等の暴力への対応といった新しい需要に適切に対応するためには、婦人相談所の機能の充実や婦人相談員の資質の向上等、行政機関の実施体制の整備が不可欠であるので、
1) 婦人相談所の職員の配置等、その実施体制の充実に配慮
2) 研修の充実等により婦人保護事業に従事する職員の資質向上
3) 婦人相談所と福祉事務所等関係機関を有機的に機能させるための連携体制の整備
等について十分な配慮を図られたい。


4 災害救助法の運用について (保護課)
(1)実施体制の整備
 市町村への指導
 災害救助法による応急救助については、被害状況を迅速に把握し、都道府県に同法の適用を求めるとともに、災害の規模や態様及び地域で活用できる資源を踏まえつつ、迅速かつ的確に実施する必要がある。これらの必要な対応については、市町村地域防災計画に定めることとされているが、被災時の連絡や適用決定に遅れが見られる場合もあることから、特に次の事項に留意しつつ、管内市町村に対し実施体制の整備につき、指導の徹底を図られたい。

1) 交通手段や連絡手段の途絶も想定した職員の参集体制や関係機関・施設間の連絡体制を確保すること。
2) 災害救助法担当部局のみならず、消防、保健、福祉、住宅などの部局との役割分担及び連携方法を明確にすること。
3) 被害状況を迅速に都道府県へ報告すること。

 都道府県における対応
 都道府県においては、市町村と同様に、職員の参集体制の確保や関係部局の役割の明確化を図り、災害救助法の適用の決定や応急救助の実施方針の策定等を迅速に行われたい。また、災害発生時には厚生省と迅速に連絡をとられたい。

(2)大規模災害時の被災者救助のあり方の検討
 阪神・淡路大震災の発生を受け、平成9年6月「大規模災害における応急救助の指針」を示したところであるが、震災後5年を経過し、応急仮設住宅の役割も平成11年12月をもって事実上終了したことを契機に、大規模災害時の被災者救助のあり方について総合的に検討する予定である。ついては、都道府県には種々ご協力を頂くことも考えられるので、よろしくお願いしたい。
(3)地方分権
 地方自治法の改正に伴い、災害救助法の施行事務については、これまでの機関委任事務から基本的には法定受託事務へ変更され、また都道府県から管内市町村への事務委任についてもそれぞれが対等の関係の下で行われる旨の法律及び政令の整備が行われたところであるが、引き続き省令等の整備を進めているところであり、できる限り早くお示ししたいと考えている。
 各都道府県におかれては、地方分権の趣旨に留意の上、今後とも地域の実情に応じ、災害救助法の施行が円滑に図られるよう努められたい。


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