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1 社会福祉基礎構造改革について

(1)社会福祉基礎構造改革の動向
 目的

○利用者本位の社会福祉制度の実現
・福祉サービス利用者がサービスを選択できる仕組みの確立
・福祉サービス利用者を保護する仕組みの制度化
○時代の要請に応える福祉サービスの提供
・社会福祉法人の運営の弾力化
・盲導犬訓練施設、手話通訳事業等の福祉サービスの制度化
・小規模作業所の社会福祉法人設立の促進

 検討経過
[検討会]
○平成9年8月28日
・「社会福祉事業等のあり方に関する検討会」を設置
○平成9年11月25日
・同検討会が「社会福祉の基礎構造改革について(主要な論点)」を公表

[審議会]

○平成9年11月26日
・中央社会福祉審議会に「社会福祉構造改革分科会」を設置
○平成10年6月17日
・同分科会が「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)」を公表
○平成10年12月8日
・同分科会が「社会福祉基礎構造改革を進めるに当たって(追加意見)」を公表

○平成11年8月10日
・「社会福祉事業法等一部改正法案要綱」を中央社会福祉審議会に諮問(関係部分について、中央児童福祉審議会及び身体障害者福祉審議会にも諮問
(平成11年9月22日及び平成11年9月27日))
○平成11年9月30日
・「社会福祉事業法等一部改正法案要綱」について、中央社会福祉審議会、
中央児童福祉審議会及び身体障害者福祉審議会が了承の答申

[関係団体との関係]

○5回にわたり関係団体(34団体)と意見交換
○平成11年10月15日
・社会福祉基礎構造改革推進代表者集会が「緊急アピール」を採択
○平成11年12月22日
・同代表者集会が「緊急要望書」を採択

 今後の予定
 厚生省においては、社会福祉事業法等の一部改正法案を通常国会へ提出することを目指し、準備を進めている。法案の施行については、平成12年4月を基本とすることとしている。
 なお、法律事項以外のいわゆる運用事項についても、順次見直していくこととしており、今後、内容が固まり次第、事前に都道府県市へも情報提供してまいりたいと考えている。

(2)運用事項に係る見直しの動向

 社会福祉法人の見直し

 社会福祉法人については、(1)小規模授産施設及びホームヘルプサービス運営団体に対して社会福祉法人格取得の途を開くための資産要件の緩和、(2)理事長等の経営責任体制を確立するための組織運営体制の見直し、(3)社会福祉事業団ついてその活性化を図るための見直し等について、現在、検討を進めているところである。

 行政監査の見直し

 いわゆる地方分権一括法の施行を踏まえ、かつ、措置制度から利用制度への転換、社会福祉法人に対する財務諸表等の開示の義務付け、苦情解決の仕組みの整備、サービス内容の第三者評価制度の導入に対応できるよう、行政による監査については、今後、その位置付けの明確化を図るとともに、重点化・効率化していく方向で検討する必要がある。
 内容については、現在、関係部局とともに検討しているところであり、まとまり次第、お示ししたいと考えている。

社会福祉の活性化を図るための

「社会福祉事業法等の一部改正」

【社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律案(仮称)】

〔目的〕

○利用者本位の社会福祉制度の実現
・福祉サービス利用者がサービスを選択できる仕組みの確立
・福祉サービス利用者を保護する仕組みの制度化
○時代の要請に応える福祉サービスの充実
・社会福祉法人の運営の弾力化
・盲導犬訓練施設、手話通訳事業等の福祉サービスの制度化
・小規模作業所の社会福祉法人設立の促進

   

社会福祉の活性化
(施行は、平成12年4月を基本。ただし、市町村等の準備を要する事項については、猶予期間を設定。)

〔参考〕

○福祉サービスの利用者(障害者等)、提供者(社会福祉施設等)の双方から強く要望されている。
○雇用機会の創出にも寄与。

社会福祉基礎構造改革に係る検討経過

平成 9年11月25日社会福祉事業等のあり方に関する検討会

(平成9年8月28日設置)

◎社会福祉の基礎構造改革について(主要な論点)を公表
平成10年 6月17日 中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会

(平成9年11月26日設置)

◎社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)を公表
12月 8日中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会

◎社会福祉基礎構造改革を進めるに当たって(追加意見)を公表
平成11年 1月25日障害者関係3審議会合同企画分科会

◎今後の障害者保健福祉施策の在り方について(意見具申)を公表

身体障害者福祉審議会

◎今後の身体障害者施策の在り方について(意見具申)を公表

中央児童福祉審議会

◎今後の知的障害者・障害児施策の在り方について(意見具申)を公表
8月10日中央社会福祉審議会

◎社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律

案(仮称)制定要綱の諮問
9月22日中央児童福祉審議会

◎児童福祉法の一部改正案要綱及び知的障害者福祉法の一

部改正案要綱の諮問
9月27日身体障害者福祉審議会

◎身体障害者福祉法の一部改正案要綱の諮問
9月30日中央社会福祉審議会

身体障害者福祉審議会 ◎了承の答申

中央児童福祉審議会
10月 8日社会保障制度審議会全委員委員会(事前説明)
10月15日社会福祉基礎構造改革推進全国代表者集会における「緊急アピール」
12月22日社会福祉基礎構造改革推進全国代表者集会における「緊急要望書」


社会福祉基礎構造改革の全体像について
平成11年10月

厚 生 省
I 趣 旨
○ 本改革は、昭和26年の社会福祉事業法制定以来大きな改正の行われていない社会福祉事業、社会福祉法人、措置制度など社会福祉の共通基盤制度について、今後増大・多様化が見込まれる国民の福祉需要に対応するため、見直しを行うものである。

○ この見直しは、介護保険制度の円滑な施行(平成12年4月1日施行)、成年後見制度の導入(平成12年4月1日施行予定)、規制緩和推進計画の実施(平成11年度以降)、雇用対策、社会福祉法人による不祥事の防止、地方分権の推進などに資するものであり、早急に実施する必要がある。

II 理 念
○ 個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう支えるという社会福祉の理念に基づいて、本改革を推進する。

○ 具体的な改革の方向
   1) 個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立
   2) 質の高い福祉サービスの拡充
   3) 地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実

III 制度改正の概要

1 改正等の対象となる法律(8本)
社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法、民生委員法、社会福祉施設職員等退職手当共済法、生活保護法、公益質屋法(廃止)

2 改正の内容

(1)利用者の立場に立った社会福祉制度の構築

1)福祉サービスの利用制度化
          【身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法】
図

※1 公費助成については、現行の水準を維持
※2 要保護児童に関する制度などについては、措置制度を存続

2)利用者保護制度の創設        【社会福祉事業法】
ア)地域福祉権利擁護制度(福祉サービス利用援助事業)

 ○痴呆性高齢者など自己決定能力の低下した者の福祉サービス利用を支援するため、民法の成年後見制度を補完する仕組みとして制度化

 ○都道府県社会福祉協議会等において実施

イ)苦情解決の仕組みの導入

 ○福祉サービスに対する利用者の苦情や意見を幅広く汲み上げ、サービスの改善を図る観点から、

・社会福祉事業経営者の苦情解決の責務を明確化
・第三者が加わった施設内における苦情解決の仕組みの整備
・上記方法での解決が困難な事例に備え、都道府県社会福祉協議会に、苦情解決のための委員会(運営適正化委員会)を設置

※運営適正化委員会は、地域福祉権利擁護制度の運営にも関与

ウ)利用契約についての説明・書面交付義務付け

エ)誇大広告の禁止

(2)サービスの質の向上

1)良質なサービスを支える人材の養成・確保          【運用事項】
 ○社会福祉士及び介護福祉士について、

・保健医療との連携や介護保険制度の実施に対応した教育課程の見直し
・実習教育の強化、卒後継続教育の充実
 ○社会福祉主事について、施設長をはじめとして社会福祉事業従事者全体の資質の向上を図る観点から、養成課程を見直し 2)サービスの質の向上          【社会福祉事業法】
 ○事業者によるサービスの質の自己評価などによる質の向上

 ○サービスの質を評価する第三者機関の育成 【運用事項】

3)事業の透明性の確保 【社会福祉事業法】
 ○事業運営の透明性の確保、サービス利用者の選択に資するため、

・事業者によるサービス内容に関する情報の提供
・財務諸表及び事業報告書の開示を社会福祉法人に対して義務付け
・国、地方公共団体による情報提供体制の整備

(3)社会福祉事業の充実・活性化

1)社会福祉事業の範囲の拡充          【社会福祉事業法】
 ○社会福祉に対する需要の多様化に対応し、9事業を追加

・権利擁護のための相談援助事業(福祉サービス利用援助事業)
・身体障害者・知的障害者・障害児相談支援事業
・身体障害者生活訓練等事業
・手話通訳事業
・盲導犬訓練施設
・知的障害者デイサービス事業、知的障害者デイサービスセンター

※ 平成11年6月の精神保健福祉法の一部改正により、

・精神障害者地域生活支援センター(平成12年4月1日〜)
・精神障害者居宅介護等事業(平成14年4月1日〜)
・精神障害者短期入所事業(平成14年4月1日〜)が、社会福祉事業に追加。

2)社会福祉法人の設立要件の緩和

 ○地域におけるきめ細かな福祉活動を推進するため、

・障害者の通所授産施設の規模要件の引き下げ【社会福祉事業法】
(20人以上→10人以上)
・在宅サービス事業等を経営する社会福祉法人の資産要件(1億円)の大幅引き下げ【運用事項】
・通所施設の用に供する土地・建物について賃借を認めること。【運用事項】

3)多様な事業主体の参入促進 【運用事項】

・保育所について、待機児童数の状況など地域の需給状況等を総合的に勘案して民間企業など社会福祉法人以外の参入を認めること。

(注) 特別養護老人ホームなどの入所施設については、介護保険制度の施行状況等を踏まえ、事業の継続性・安定性の確保を考慮して引き続き検討

4)福祉サービスの提供体制の充実 【運用事項】

 ○社会福祉施設に対する国庫補助制度を堅持しつつ、

・障害者プランの着実な推進など計画的な整備
・学校等の空き教室の活用など整備方法の多様化

5)社会福祉法人の運営の弾力化 【運用事項】

・施設ごとの会計区分を弾力化し、法人単位の経営を確立すること。
・利用制度化した事業については、利用料収入を施設整備費の償還に充てることを認めること。
・行政監査の重点化・効率化を図ること。

(4)地域福祉の推進

1)地域福祉計画の策定【社会福祉事業法】

 ○社会福祉事業の計画的推進、住民の自主的な活動と公的サービスの連携などを目的として、市町村は市町村地域福祉計画を、都道府県 は都道府県地域福祉支援計画を、それぞれ策定

 ○ボランティア団体、NPO、郵便局、農協、生協などの地域における身近な活動にも配慮【運用事項】

2)知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲

【知的障害者福祉法、児童福祉法】

3)社会福祉協議会、共同募金、民生委員・児童委員の活性化

【社会福祉事業法、民生委員法、児童福祉法】

 ○市町村社会福祉協議会を地域福祉の推進役として明確に位置づけるとともに、二以上の市町村を区域として設立することができること。都道府県社会福祉協議会の役割として社会福祉事業従事者の養成研修、社会福祉事業の経営指導を行うことを明確にすること。

 ○県内配分を原則とする共同募金について、大規模災害に対応した広域配分を可能にするとともに、配分の透明性確保のための配分委員会設置の義務付けや、「過半数配分の原則」の撤廃を行うこと。

 ○住民の立場に立った活動を行う民生委員・児童委員の職務内容を明確にすること。

(5)その他の改正

社会福祉施設職員等退職手当共済法の見直し、公益質屋法の廃止等

3 施行

平成12年4月1日施行を原則。ただし、

・ 身体障害者生活訓練等事業、盲導犬訓練施設の社会福祉事業への追加、助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直しについては、
平成13年4月1日施行
・ 措置制度の利用制度への変更、地域福祉計画の策定、知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する規定については、準備期間を考慮し、平成15年4月1日施行


社会福祉事業法等一部改正法案要綱の概要

第1 改正の趣旨

 個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう、個人の選択を尊重した制度の確立、質の高い福祉サービスの拡充、個人の自立した生活を総合的に支援するための地域福祉の充実を図るため、所要の改正を行うもの。

第2 内 容

I 改正等の対象となる法律(8本)

 社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法、社会福祉施設職員等退職手当共済法、民生委員法、生活保護法、公益質屋法(廃止)

II 改正の概要

1 社会福祉事業法の一部改正

(1)法律の題名、目的規定及び基本理念規定の改正

(2)社会福祉事業の推進
[社会福祉事業の範囲の見直し]

1) 社会福祉事業の追加及び削除 (別紙1)

[規制緩和]
2) 政令で定める事業の規模要件(通所施設20人以上)を緩和し、社会福祉法人の設立を促進。

[情報開示]
3) 社会福祉法人に財務諸表及び事業報告書の開示を義務付け

(3)福祉サービスの適切な利用の推進等

[情報提供]

1) 社会福祉事業経営者及び国、地方公共団体の情報提供に係る責務の明確化

2) 福祉サービスの利用契約の適正化

・ 利用契約についての説明・書面交付義務付け
・ 誇大広告の禁止

[苦情解決、権利擁護]

3) 社会福祉事業経営者の苦情解決の責務を明確化

4) 都道府県社会福祉協議会に、福祉サービス利用援助事業の実施及び福祉サービスに関する苦情解決のための運営適正化委員会を設置

[その他]
5) 社会福祉事業経営者についてサービスの自己評価などにより質の向上に努める責務を明確化

(4)地域福祉の推進

[地域福祉計画]

1) 地域福祉を推進するため、市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画に関する規定を設けること

[社会福祉協議会]
2) 市町村社会福祉協議会について、二以上の市町村を区域として設立することができることなどを規定

3) 都道府県社会福祉協議会の役割として社会福祉事業従事者の養成研修、社会福祉事業の経営指導などを行うことを明記

[共同募金]
4) 共同募金に関する制度の見直し

 ア 大規模災害に対応するため、県外への広域配分の実施を可能とすること
 イ 配分の透明性を確保するため配分委員会を設置すること
 ウ 「過半数配分原則」(県内の過半数の社会福祉事業経営者に配分しなければならないという原則)を撤廃

2 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法及び児童福祉法の一部改正

(1)措置制度の支援費支給方式への変更

 以下に掲げる福祉サービスの提供方式を、現行の措置制度から、利用者が福祉サービスの提供者と直接契約し、市町村が利用者に対し支援費を支給する方式(支援費支給方式)に改めること(別紙2)

1) 対象事業
 身体障害者福祉法上の事業

(ア)施設:身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設
(イ)在宅:身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業

 知的障害者福祉法上の事業

(ア)施設:知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮
(イ)在宅:知的障害者居宅介護等事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者短期入所事業、知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)

 児童福祉法上の事業

児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業

2) 支援費支給方式における市町村等の役割
[市町村の役割]

ア 相談、情報提供、及び必要に応じたあっせん又は調整等。
イ 緊急の場合等、契約によるサービスの利用が著しく困難である場合には、職権による入所等の措置。

[国及び都道府県の財政援助]

ウ 国及び都道府県は、市町村が支援費として支弁する費用の一部を負担又は補助。

(2)事業の法定化

1) 事業・施設の追加

ア 身体障害者・知的障害者・障害児相談支援事業
(相談、情報の提供並びに助言及び指導、連絡調整等の援助を総合的に行う事業)
イ 身体障害者生活訓練等事業
(身体障害者が日常生活又は社会生活を営むために必要な訓練等の援助を提供する事業)
ウ 手話通訳事業
エ 盲導犬訓練施設、盲導犬の貸与
オ 知的障害者デイサービス事業、知的障害者デイサービスセンター
2) 視聴覚障害者情報提供施設に、点訳、手話通訳等の機能を追加

3 児童福祉法の一部改正

(1)助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直し
 助産施設及び母子生活支援施設について、現行の措置制度から、保育所の利用方式と同様の方式(利用者が、希望する施設を都道府県等に申し込み、利用する方式)に改めること(別紙3)

(2)児童委員の見直し
 要保護児童を発見した者が、当該児童を福祉事務所又は児童相談所に通告する場合に、児童委員を介して行うことができること等とすること。

4 知的障害者福祉法及び児童福祉法の一部改正

 都道府県が行う知的障害者福祉、障害児福祉に関する以下の事務を市町村に委譲

 ア 知的障害者更生施設等への入所、知的障害者短期入所に係る事務
 イ 知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)に係る事務
 ウ 児童短期入所(障害児のショートステイ)に係る事務等

5 その他

(1)民生委員法の一部改正

 1) 住民の立場に立った活動を行う民生委員の職務内容を明確化
 2) 民生委員推薦会の委員の資格要件を緩和

(2)社会福祉施設職員等退職手当共済法の一部改正

 1) 共済契約の対象範囲を社会福祉法人が経営する社会福祉施設等以外の施設及び事業に拡大すること
 2) 掛金の額を、概ね五年を通じ財政の均衡を保つことができるように決定すること
 3) 退職手当金の算定基準を、国家公務員退職手当に準じたものとすること

(3)公益質屋法の廃止

6 施行期日

この法律は、平成12年4月1日から施行。ただし、

○ 身体障害者生活訓練等事業、盲導犬訓練施設の法定化及び社会福祉事業への追加に関する規定、助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直しについては、平成13年4月1日から、
○ 地域福祉計画、措置制度から支援費支給方式への変更及び知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する規定については、平成15年4月1日から、
それぞれ施行。

厚生省発社援第219号

平成11年8月10日

中央社会福祉審議会
 委員長 木 村 尚三郎 殿

厚生大臣 宮 下 創 平




諮 問 書

 社会福祉事業法(昭和26年法律第45号)等を別添のとおり改正することについて、同法第6条第3項の規定に基づき、貴会の意見を求めます。

 社会福祉の増進のための関係法律の整備等に関する法律案(仮称)制定要綱

第一 改正の趣旨

 社会福祉の一層の増進に資する観点から、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域福祉の推進を図るため、福祉サービスに関する情報提供、利用援助及び苦情解決に関する規定を整備するとともに、市町村地域福祉計画等の作成に関する規定を設けるほか、身体障害者、知的障害者、障害児等に係る福祉サービスに関し市町村等による措置から利用者の選択に基づき利用する制度への変更、身体障害者生活訓練等事業、知的障害者デイサービス事業等の社会福祉事業としての位置付け、知的障害者福祉に関する事務等の市町村への委譲その他所要の措置を講ずること。

第二 社会福祉事業法の一部改正の要点

 一 法律の題名及び総則に関する事項
 1題名の改正

 法律の題名を、2の目的の改正に合わせて改めること。

 2 目的の改正

 法律の目的に、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域福祉の推進を図ることを追加すること。

 3 社会福祉事業の追加及び削除

(1) 障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業、盲導犬訓練施設を経営する事業、知的障害者相談支援事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者デイサービスセンターを経営する事業及び福祉サービス利用援助事業を社会福祉事業に追加すること。
(2) 公益質屋を経営する事業を社会福祉事業から削除すること。
 4 事業規模要件の緩和

 常時保護を受ける者が二十人未満であるために社会福祉事業に含まれなかった事業のうち政令で定めるものについては、常時保護を受ける者が十人以上であれば、社会福祉事業に含まれるものとすること。

 5 基本理念の改正

 福祉サービスに関する基本理念を改め、地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、地域における社会福祉の増進に努めなければならないものとするとともに、社会福祉事業の経営者が福祉サービスを提供するための原則並びに国及び地方公共団体の責務について規定すること。

二 社会福祉主事の任用資格に関する事項

 社会福祉主事の任用資格に係る要件について、所要の改正を行うこと。

三 社会福祉法人に関する事項

 1 事業経営の原則

 社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的に経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならないことを、社会福祉法人の事業経営の原則とすること。

 2 収益事業の収益の充当先の拡大

 収益事業の収益を、政令で定める公益事業に充当できることとすること。

 3 事業報告書等の閲覧

 事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書並びにこれに関する監事の意見を記載した書面を各事務所に備えて置き、利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないものとすること。

四 社会福祉施設の最低基準に関する事項

 社会福祉施設の最低基準において、福祉サービスの提供の方法、利用者等からの苦情への対応等に関する事項を定めることとすること。

五 福祉サービスの適切な利用の推進等に関する事項

1 情報の提供

(1) 社会福祉事業の経営者は、福祉サービスを利用しようとする者に対する情報の提供を行うよう努めなければならないものとすること。
(2) 国及び地方公共団体は、福祉サービスを利用しようとする者の情報の入手を容易にするため、必要な措置を行うよう努めなければならないものとすること。

2 利用契約成立時の書面交付等

 社会福祉事業の経営者は、福祉サービスの利用希望者からの申込みがあった場合に契約内容等を説明するよう努めなければならないこととし、利用契約成立時に重要事項を記載した書面を交付しなければならないものとすること。

3 福祉サービスの質の向上のための措置

 社会福祉事業の経営者は、福祉サービスの質の評価その他の質の向上のための措置を講ずるよう努めなければならないこととするとともに、国は、福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施に資するための措置を講ずるよう努めなければならないこととすること。

4 誇大広告の禁止

 社会福祉事業の経営者は、誇大広告をしてはならないこととすること。

5 福祉サービスの利用の援助及び利用者等からの苦情の解決

(1) 福祉サービス利用援助事業について、その実施に当たっては、利用者の意向を十分に尊重し、利用者の立場に立って公正かつ適切な方法により行わなければならないものとすること。
(2) 都道府県社会福祉協議会は、福祉サービス利用援助事業を実施するとともに、当該事業の従事者の資質向上のための事業等を行うものとすること。
(3) 社会福祉事業の経営者は、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないものとすること。
(4) 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、運営適正化委員会を設置すること。

6 共同事業の実施

 都道府県社会福祉協議会は、必要に応じ、福祉サービスの提供に要した費用について社会福祉事業の経営者が地方公共団体に対して行う請求事務の代行等の共同事業を実施するよう努めなければならないこととすること。

六 地域福祉の推進に関する事項

1 市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画

(1) 社会福祉を目的とする事業及び住民その他の者が行う社会福祉に関する活動が総合的かつ効率的に実施されることにより、市町村において福祉サービスが身近な地域で確保され、住民が適切かつ円滑にこれを利用できるよう、市町村地域福祉計画に関して規定すること。
(2) 各市町村を通ずる広域的な見地から市町村地域福祉計画の達成に資するため、都道府県地域福祉支援計画に関して規定すること。

2 社会福祉協議会の活性化

(1) 社会福祉協議会は、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が参加する団体である旨を明示すること。
(2) 市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会は、それぞれ二以上の市町村及び指定都市の区を区域として設立することができることとするとともに、広域的に事業を実施することにより効果的な運営が見込まれる場合には、その区域を越えて事業を実施することができるものとすること。
(3) 都道府県社会福祉協議会は、社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導及び助言等を行うものとすること。

3 共同募金の活性化

(1) 寄附金の公正な配分に資するため、共同募金会に配分委員会を置くものとすること。
(2) 地域福祉の推進の観点から、共同募金会の区域内において社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数に寄附金を配分しなければならない旨の原則を廃止すること。
(3) 共同募金会は、募集した寄附金を、当該募集を行った年度の翌年度末までに配分しなければならないこととするとともに、災害の発生等の特別の事情がある場合に備えるための準備金を積み立てることができることとし、災害等が実際に発生した場合には当該準備金を他の共同募金会に拠出できることとすること。

七 その他「収容」等の用語を改める等所要の改正を行うこと。

第三 身体障害者福祉法の一部改正の要点
一 身体障害者の地域生活を支援する事業に関する事項

1 身体障害者福祉法上の事業及び施設として、次に掲げる事業及び施設を追加すること。

(1) 身体障害者相談支援事業 身体障害者の福祉に関する相談及び指導並びに関係機関との連絡調整等の援助を行う事業
(2) 身体障害者生活訓練等事業 点字又は手話の訓練等身体障害者が日常生活又は社会生活を営むために必要な訓練等の援助を提供する事業
(3) 手話通訳事業 聴覚、言語機能又は音声機能の障害により意思疎通を図ることに支障がある身体障害者につき、手話通訳の便宜を供与する事業
(4) 盲導犬訓練施設 無料又は低額な料金で、盲導犬の訓練及び視覚障害者に対し盲導犬の利用に必要な訓練を行う施設

2 視聴覚障害者情報提供施設について、その機能に、点訳、手話通訳等の便宜の供与を加えること。

二 新しい利用制度に関する事項

1 市町村の情報提供

市町村は、身体障害者に対する福祉に関する必要な情報提供を行わなければならないものとすること。
2 利用の調整等

市町村は、身体障害者から求めがあったときは、必要に応じて、福祉サービスの利用について、あっせん又は調整を行うとともに、指定居宅支援事業者及び指定身体障害者施設の長等に対する利用の要請を行うものとすること。
3 支援費の支給

身体障害者福祉法上の福祉サービスであって措置制度により提供されているもののうち、次の4にいう身体障害者居宅支援及び身体障害者施設支援について、居宅生活支援費及び施設訓練等支援費(支援費)を支給する方式を導入するため、次の事項について規定すること。
(1) 市町村は、身体障害者が、指定居宅支援事業者が提供する身体障害者居宅支援(指定居宅支援)又は指定身体障害者施設が提供する身体障害者施設支援(指定施設支援)を受けたときは、当該支援に要した費用について、支援費を支給することができること。
(2) 身体障害者は、支援費を受けようとするときは、市町村に申請しなければならないこと。
(3) 市町村は、(2) の申請がなされたときは、当該身体障害者の障害の種類及び程度等を勘案して、その要否の決定をすること。
(4) 支援費の額は、指定居宅支援及び指定施設支援に通常要する費用につき市町村長が定める基準により算定した額から、身体障害者又はその扶養義務者の負担能力に応ずる利用者負担額を控除した額とすること。
(5) 市町村は、指定居宅支援及び指定施設支援に要した費用について、支援費として支給すべき額の限度において、身体障害者に代わり、指定居宅支援事業者及び指定身体障害者施設に支払うことができることとするとともに、この場合において、当該身体障害者に支援費の支給があったものとみなすこと。
(6) 市町村は、居宅生活支援費の支給決定を受けた身体障害者が、指定居宅支援以外の身体障害者居宅支援を受けた場合において、必要と認めるときは、これに要した費用について、特例居宅生活支援費を支給することができること。
4 身体障害者居宅支援及び身体障害者施設支援(支援費の支給の対象となる福祉サービス)

身体障害者居宅支援とは、身体障害者居宅介護、身体障害者デイサービス及び身体障害者短期入所をいい、身体障害者施設支援とは、身体障害者更生施設支援、身体障害者療護施設支援及び身体障害者授産施設支援をいうこと。
5 事業者・施設の指定制度

指定居宅支援事業者及び指定身体障害者施設の指定は、身体障害者居宅生活支援事業等を行う者の申請に基づき都道府県知事が行うものとすること。
6 国の設置する身体障害者更生施設等への入所

身体障害者が、国の設置する身体障害者更生施設等に入所する場合について、所要の規定を設けること。
7 やむを得ない事由により身体障害者居宅支援等を利用することが著しく困難な場合の措置

支援を必要とする身体障害者がやむを得ない事由により、居宅生活支援費の支給に係る身体障害者居宅支援又は施設訓練等支援費の支給に係る身体障害者施設支援を利用することが著しく困難であると認めるときは、市町村は、居宅介護、施設入所等の措置を採ることができるものとすること。
8 国及び都道府県の負担及び補助

市町村が支援費として支弁する費用に係る国及び都道府県の負担及び補助について、次のようにすること。
(1) 施設訓練等支援費 政令で定めるところにより、国はその二分の一を、都道府県はその四分の一を負担すること。
(2) 居宅生活支援費 政令で定めるところにより、国はその二分の一以内を、都道府県はその四分の一以内を補助できること。
三 その他福祉の措置に関する事項
身体障害者の社会参加を促進する事業の実施に努めることを地方公共団体の責務とすること。
四 その他所要の改正を行うこと。

第四 知的障害者福祉法の一部改正の要点

一 総則に関する事項

 知的障害者は、自立に努めるとともに、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとすること。

二 知的障害者の地域生活を支援する事業に関する事項

 知的障害者福祉法上の事業及び施設として、次に掲げる事業及び施設を追加すること。

(1) 知的障害者相談支援事業 知的障害者の福祉に関する相談及び指導並びに関係機関との連絡調整等の援助を行う事業
(2) 知的障害者デイサービス事業 手芸、工作その他の創作的活動、社会適応訓練、介護方法の指導等の便宜を必要とする十八歳以上の知的障害者又はその介護を行う者を、知的障害者デイサービスセンター等に通わせ、当該便宜を供与する事業
(3) 知的障害者デイサービスセンター 知的障害者デイサービス
事業に係る便宜を供与することを目的とする施設

三 事務の委譲に関する事項

1 市町村への事務の委譲

知的障害者更生施設等への入所、知的障害者短期入所、知的障害者地域生活援助事業等に係る事務を都道府県から市町村に委譲すること。
2 都道府県による連絡調整等

都道府県は、市町村の更生援護の実施に関し、市町村相互間の連絡調整等の必要な援助を行うものとすること。
3 知的障害者更生相談所等に関する事項

(1) 知的障害者更生施設等への入所に係る事務の市町村への委譲に伴い、市町村による知的障害者更生施設等への入所措置に関し、知的障害者更生相談所が市町村相互間の連絡調整等必要な援助を行うものとすること。
(2) 従来、都道府県の福祉事務所に設置することとされていた知的障害者福祉司を、知的障害者更生相談所に設置するものとすること。
4 財政負担の変更

市町村が支弁する知的障害者更生施設等への入所等に要する費用に係る国及び都道府県の負担を次のようにすること。
(1) 市及び福祉事務所を設置する町村の場合 国はその二分の一を負担
(2) 福祉事務所を設置しない町村の場合 国はその二分の一を、都道府県はその四分の一を負担

四 新しい利用制度に関する事項

1 市町村の情報提供

市町村は、知的障害者に対する福祉に関する必要な情報提供、相談及び指導を行わなければならないものとすること。
2 利用の調整等

市町村は、知的障害者から求めがあったときは、必要に応じて、福祉サービスの利用について、あっせん又は調整を行うとともに、指定居宅支援事業者及び指定知的障害者施設の長等に対する利用の要請を行うものとすること。
3 支援費の支給

知的障害者福祉法上の福祉サービスであって措置制度により提供されているもののうち、次の4にいう知的障害者居宅支援及び知的障害者施設支援について、居宅生活支援費及び施設訓練等支援費(支援費)を支給する方式を導入するため、次の事項について規定すること。
(1) 市町村は、知的障害者が、指定居宅支援事業者が提供する知的障害者居宅支援(指定居宅支援)又は指定知的障害者施設が提供する知的障害者施設支援(指定施設支援)を受けたときは、当該支援に要した費用について、支援費を支給することができること。
(2) 知的障害者は、支援費を受けようとするときは、市町村に申請しなければならないこと。
(3) 市町村は、(2) の申請がなされたときは、当該知的障害者の障害の程度等を勘案して、その要否の決定をすること。
(4) 知的障害者地域生活援助以外の知的障害者居宅支援又は知的障害者施設支援に係る支援費の額は、指定居宅支援又は指定施設支援に通常要する費用につき市町村長が定める基準により算定した額から、知的障害者又はその扶養義務者の負担能力に応ずる利用者負担額を控除した額とすること。
(5) 知的障害者地域生活援助に係る居宅生活支援費の額は、知的障害者地域生活援助に係る指定居宅支援に通常要する費用につき市町村長が定める基準により算定した額とすること。
(6) 市町村は、指定居宅支援及び指定施設支援に要した費用について、支援費として支給すべき額の限度において、知的障害者に代わり、指定居宅支援事業者及び指定知的障害者施設に支払うことができることとするとともに、この場合において、当該知的障害者に支援費の支給があったものとみなすこと。
(7) 市町村は、居宅生活支援費の支給決定を受けた知的障害者が、指定居宅支援以外の知的障害者居宅支援を受けた場合において、必要と認めるときは、これに要した費用について、特例居宅生活支援費を支給することができること。
4 知的障害者居宅支援及び知的障害者施設支援(支援費の支給の対象となる福祉サービス)

 知的障害者居宅支援とは、知的障害者居宅介護、知的障害者デイサービス、知的障害者短期入所及び知的障害者地域生活援助をいい、知的障害者施設支援とは、知的障害者更生施設支援、知的障害者授産施設支援、知的障害者通勤寮支援及び心身障害者福祉協会の設置する福祉施設において提供される支援をいうこと。
5 事業者・施設の指定制度

 指定居宅支援事業者及び指定知的障害者施設の指定は、知的障害者居宅生活支援事業等を行う者の申請に基づき都道府県知事が行うものとすること。
6 やむを得ない事由により知的障害者居宅支援等を利用することが著しく困難な場合の措置

 支援を必要とする知的障害者がやむを得ない事由により、居宅生活支援費の支給に係る知的障害者居宅支援又は施設訓練等支援費の支給に係る知的障害者施設支援を利用することが著しく困難であると認めるときは、市町村は、居宅介護、施設入所等の措置を採ることができるものとすること。
7 国及び都道府県の負担及び補助

 市町村が支援費として支弁する費用に係る国及び都道府県の負担及び補助について、次のようにすること。
(1) 施設訓練等支援費 政令で定めるところにより、国はその二分の一を、都道府県はその四分の一を負担すること。
(2) 居宅生活支援費 政令で定めるところにより、国はその二分の一以内を、都道府県はその四分の一以内を補助できること。

五 その他所要の改正を行うこと。

第五 児童福祉法の一部改正の要点

一 障害児の地域生活を支援する事業に関する事項

 児童福祉法上の事業として、障害児相談支援事業(障害児の福祉に関する相談及び指導並びに関係機関との連絡調整等の援助を行う事業)を追加すること。

二 児童委員に関する事項

1 児童相談所長への通知方法

児童委員は、担当区域内における児童及び妊産婦に関し、必要な事項について児童相談所長に通知するとき、緊急の必要があると認める場合は、市町村長を経由しないことができることとすること。
2 要保護児童の児童相談所等への通告

要保護児童を発見した者が、当該児童を福祉事務所又は児童相談所に通告する場合に、児童委員を介して行うことができることとすること。

三 助産施設及び母子生活支援施設に係る利用方式に関する事項

 助産施設及び母子生活支援施設の利用方式を、措置制度から保育所の利用方式と同様のものとするため、次の規定を置くこと。

1 助産又は母子保護の実施を希望する者は、入所を希望する施設等所定の事項を記載した申込書を都道府県等に提出することとするとともに、申込書の提出を施設が代行できるものとすること。

2 都道府県等は、福祉事務所長等から助産又は母子保護の実施が必要として報告等があった妊産婦又は保護者及び児童について、必要があると認めるときは、当該助産又は母子保護の実施の申込みを勧奨しなければならないものとすること。

3 都道府県等は、各施設の設備、運営の状況等についての情報の提供を行わなければならないものとすること。

四 児童福祉施設の設置者に対する監督に関する事項

 都道府県知事は、厚生大臣の定める最低基準を維持するため、児童福祉施設の長、里親及び保護受託者のほか、児童福祉施設の設置者に対しても、報告徴収、立入検査等を行うことができる旨規定すること。

五 児童短期入所に係る事務の市町村への委譲に関する事項

1 児童短期入所に係る事務を都道府県から市町村に委譲すること。

2 市町村が支弁する児童短期入所に要する費用について、国はその二分の一以内を、都道府県はその四分の一以内を補助することができるものとすること。

六 新しい利用制度に関する事項

1 居宅生活支援費の支給

 児童福祉法上の福祉サービスであって措置制度により提供されているもののうち、次の2にいう児童居宅支援について、居宅生活支援費を支給する方式を導入するため、次の事項について規定すること。

(1) 市町村は、障害児が、指定居宅支援事業者の提供する児童居宅支援(指定居宅支援)を受けたときは、当該支援に要した費用について、支援費を支給することができること。
(2) 障害児又はその親権を行う者等は、支援費を受けようとするときは、市町村に申請しなければならないこと。
(3) 市町村は、(2) の申請がなされたときは、当該障害児の障害の種類及び程度等を勘案して、その要否の決定をすること。
(4) 支援費の額は、指定居宅支援に通常要する費用につき市町村長が定める基準により算定した額から、障害児又はその扶養義務者の負担能力に応ずる利用者負担額を控除した額とすること。
(5) 市町村は、指定居宅支援に要した費用について、支援費として支給すべき額の限度において、障害児の親権を行う者等に代わり、指定居宅支援事業者に支払うことができることとするとともに、この場合において、当該障害児に支援費の支給があったものとみなすこと。
(6) 市町村は、居宅生活支援費の支給決定を受けた障害児が、指定居宅支援以外の児童居宅支援を受けた場合において、必要と認めるときは、これに要した費用について、特例居宅生活支援費を支給することができること。
2 児童居宅支援(支援費の支給の対象となる福祉サービス)
児童居宅支援とは、児童居宅介護、児童デイサービス及び児童短期入所をいうこと。

3 事業者の指定制度
指定居宅支援事業者の指定は、児童居宅生活支援事業を行う者の申請に基づき都道府県知事が行うものとすること。

4 やむを得ない事由により児童居宅支援を利用することが著しく困難な場合の措置
支援を必要とする障害児がやむを得ない事由により、居宅生活支援費の支給に係る児童居宅支援を利用することが著しく困難であると認めるときは、市町村は、居宅介護等の措置を採ることができるものとすること。

5 市町村の情報提供、利用の調整

(1) 市町村は、指定居宅支援に関し必要な情報提供、相談及び助言を行わなければならないものとすること。
(2) 市町村は、障害児又はその保護者から求めがあったときは、必要に応じて、指定居宅支援の利用について、あっせん又は調整を行うとともに、指定居宅支援事業者に対する利用の要請を行うものとすること。

6 国及び都道府県の補助

 市町村が居宅生活支援費として支弁する費用について、政令で定めるところにより、国はその二分の一以内を、都道府県はその四分の一以内を補助できるものとすること。

七 その他所要の改正を行うこと。

第六 社会福祉施設職員等退職手当共済法の一部改正の要点

一 退職手当共済契約の当事者及び退職手当金の受給者の範囲に関す事項

1 退職手当共済契約の当事者の範囲
 退職手当共済契約を締結することができる者を社会福祉施設又は特定社会福祉事業(社会福祉施設等)を経営する社会福祉法人とすること。

2 退職手当金の受給者の範囲
 退職手当共済契約の当事者である社会福祉法人が経営する社会福祉施設等以外の施設又は事業であって、当該社会福祉法人が社会福祉・医療事業団に届け出たものの業務に常時従事する職員(届出施設等職員)を退職手当金の支給を受けることができる者に加えること。

二 退職手当金の算定基準に関する事項

 退職手当金の算定基準について、国家公務員退職手当の算定基準に準じたものに見直しを行うこと。

三 掛金に関する事項

 社会福祉施設等の職員に係る掛金及び届出施設等職員に係る掛金の額は、退職手当金の支給に要する費用の予想額、社会福祉施設等の職員及び届出施設等職員の見込数等に照らし、おおむね五年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならないものとし、それぞれ政令で定めるものとすること。

四 費用に関する事項

 国は、社会福祉施設等の職員に係る退職手当金の支給に要する費用の三分の一以内を補助できること。

五 その他所要の改正を行うこと。

第七 民生委員法の一部改正の要点

一 民生委員の理念に関する事項

 民生委員の理念として、常に住民の立場に立って相談に応じ、及び必要な援助を行い、もって社会福祉の増進に努めることを位置付けること。

二 民生委員推薦会に関する事項

 民生委員推薦会の委員の資格要件について、当該市町村の区域における社会福祉の実情に通ずる者であることを加え、当該市町村の議会の議員の選挙権を有する者でなければならないことを削除すること。

三 民生委員の職務に関する事項

 民生委員の職務について、援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を追加するほか、所要の改正を行うこと。

四 その他

1 民生委員を名誉職とする旨の規定を削除し、民生委員には給与を支給しない旨を明確にすること。
2 「統制」等の用語を改めること。

第八 生活保護法の一部改正の要点

 「収容」等の用語を改めること。

第九 公益質屋法の廃止

 公益質屋法を廃止すること。

第十 施行期日等

 一 施行期日

1 この法律は、平成十二年四月一日から施行すること。ただし、2及び3に掲げる事項は除くこと。
2 第二の一3(1) のうち身体障害者生活訓練等事業及び盲導犬訓練施設を経営する事業を社会福祉事業に追加する部分、第三の一1(2)及び(4)並びに第五の三については、平成十三年四月一日から施行すること。
3 第二の六1、第三の二、第四の三及び四並びに第五の五及び六については、平成十五年四月一日から施行すること。
 二 その他

 この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の規定の整備を行うものとすること。

平成12年度予算(案)の概要

厚生省社会・援護局(社会)
平成12年度予算(案) 1,489,514百万円
平成11年度当初予算額 1,392,106百万円
差  引  額 97,408百万円
(対前年度比 7.0%)

I 利用者本位の福祉サービスの推進

 福祉サービスについて、現行の措置制度から、利用者がサービスを自ら選択して利用する制度への転換を行うとともに、以下の仕組みを整備し、利用者の利益を保護する体制を確立する。

1 地域福祉権利擁護事業の推進958百万円 → 1,872百万円
2 福祉サービスに関する苦情解決事業0百万円 → 257百万円

○都道府県単位での苦情解決制度の整備に係る経費
 47ヶ所(1ヶ所あたり 10,930千円)

3 福祉サービスの第三者評価事業0百万円 → 45百万円

II 社会福祉施設等に対する支援

1 社会福祉施設の整備174,976百万円 → 155,670百万円
(1)社会福祉施設整備費161,395百万円 → 143,556百万円

・介護関連施設等施設整備分
・障害者プラン関連施設整備分
・多機能保育所整備分
・老朽民間社会福祉施設緊急改築整備分
・一般整備分
・隣保館等施設整備分
・障害者等生活環境基盤整備分
111,553百万円
6,519百万円
7,696百万円
3,894百万円
10,043百万円
2,967百万円
884百万円

(2)社会福祉施設設備整備費13,581百万円 → 12,114百万円

(3)補助事業の廃止

○介護福祉士・社会福祉士養成施設

2 社会福祉施設の運営(4部局合計)1,233,578百万円 → 881,987百万円

○福祉職俸給表への対応
○年休代替要員費の改善(常勤職員 17日 → 18日)
○一般生活費等の改善
○除雪費、降灰除去費等の改善

*介護保険制度への移行に伴い、平成12年度より特別養護老人ホーム保護費負担金を廃止する。

3 福祉分野における雇用対策1,535百万円 → 1,492百万円

○中高年離職者に対する福祉職場への就労や起業の支援の強化
・中央福祉人材センター運営事業費77百万円
・都道府県福祉人材センター運営事業費1,061百万円
・社会福祉職員研修センター経営委託費68百万円
社会福祉主事資格認定通信教育課程に、中高年離職者に対する受講枠を設定
・介護福祉士等修学資金貸付事業285百万円
返還免除に必要な業務従事期間の改善

III 低所得者等への支援

1 生活保護1,152,370百万円 → 1,230,558百万円

○保護費負担金1,193,944百万円
・生活扶助基準の改善
標準3人世帯
(33歳男、29歳女、4歳子、1級地−1)
月額 163,806円 → 163,970円
・介護保険法の施行にあわせ、介護扶助を創設
○保護施設事務費負担金27,607百万円
・救護施設寮母加算の創設
介護を要する者の多い施設に寮母を加配
○生活保護費補助金6,547百万円
○生活保護指導監査委託費2,459百万円

2 ホームレス対策0百万円 → 892百万円

○ホームレス自立支援事業
一定期間の宿泊により、健康診断、生活相談・指導等を行うとともに、労働省(公共職業安定所)と連携して、職業相談・あっせん等を行い、本人の意思による自立を支援
○自立支援事業を行う隣保館(生活館)の居住部門の整備

3 生活福祉資金

○生活福祉資金貸付金(原資の追加)1,127百万円 → 1,072百万円
○生活福祉資金貸付事務事業推進費402百万円 → 520百万円
○生活福祉資金貸付制度の充実(介護関連経費特別分)
0百万円 → 2,448百万円

IV 地域福祉の推進
1 ふれあいのまちづくり事業1,253百万円 → 1,114百万円

・実施カ所数 362カ所

2 市区町村社協強化推進事業73百万円 → 73百万円

○市区町村社会福祉協議会の広域的事業実施の推進

4 全国社会福祉協議会活動費42百万円 → 41百万円

5 ボランティア活動の振興1,075百万円 → 999百万円

○市町村ボランティアセンター474百万円
○都道府県ボランティアセンター478百万円
・ボランティアグループ組織化等支援事業の創設
○全国ボランティア活動振興センター46百万円

V 地方改善対策

15,970百万円 → 15,242百万円

1 地方改善施設・設備整備費8,892百万円
2 地方改善事業費6,185百万円

○地域福祉事業(隣保館デイサービス事業)の拡充40館 → 50館
○広域隣保活動事業の拡充50カ所 → 60カ所
○生活相談員設置費28人 → 19人

3 ウタリ福祉対策165百万円

VI 社会福祉・医療事業団

1 貸付事業等

(1)貸付原資の確保

○貸付契約額 3,970億円
○資金交付額 4,131億円
・財投借入金 4,105億円
・自己資金 26億円
※貸付契約額及び資金交付額には、介護保険制度移行時における経営資金分を含む。

(2)貸付条件の改善

○福祉貸付
・介護保険対象施設等に対する貸付条件の改善
・痴呆対応型老人共同生活援助事業を貸付対象とする。等
○医療貸付
・経営安定化資金に係る貸付条件の改善(対象範囲に老人保健施設を追加) 等

2 社会福祉施設職員等退職手当共済事業17,387百万円 → 18,338百万円

3 子育て支援基金の拡充400億円積み増し

(現行 900億円)

VII 福祉人材確保対策

2,321百万円 → 2,244百万円
1 福祉人材センター運営事業費1,138百万円
2 福利厚生センター運営事業費195百万円
3 社会事業学校経営委託費等557百万円
4 社会福祉職員研修センター経営委託費68百万円
5 介護福祉士等修学資金貸付事業285百万円

VIII 婦人保護関係

1,984百万円 → 1,989百万円

1 婦人保護事業強化対策費372百万円

○婦人相談員手当の改善  月額  109,600円 → 110,000円

2 婦人保護施設運営費補助金1,247百万円

3 一時保護所保護費負担金370百万円

4 婦人保護施設の基準面積の改善

○1人当たり   23.3平方メートル → 26.3平方メートル

IX 災害救助関係

3,040百万円 → 1,340百万円

・応急仮設住宅の解体撤去等に要する経費等


1.平成11年度第2号補正予算の執行について

 昨年11月11日の経済対策閣僚会議において決定された「経済新生対策」を実施するため、平成11年度第2号補正予算(第2次補正予算)を計上したところである。
 社会・援護局(社会)関係の経済新生対策関係予算は、参考のとおりであるが、これらの経費の円滑な執行のためには、地方公共団体の補正予算の早期成立が不可欠である。
 なお、経済新生対策にかかる地方財政については、自治省において公共事業等の追加に伴う財政措置等所要の措置を講じることとされているので、都道府県、指定都市、中核市はもとより、管下市町村を含め、補正予算への早期対応について協力をお願いしたい。


(参考)

平成11年度第2号補正予算の概要

(経済新生対策関係)

社会・援護局(社会)

1 社会福祉施設の整備78,650百万円
(1)介護サービス基盤整備事業38,780百万円
(2)介護予防拠点整備事業30,000百万円
(3)障害者プラン関連施設整備2,042百万円
(4)多機能な保育ニーズに対応した保育所の整備促進5,485百万円
(5)児童養護施設の整備促進2,343百万円

2 情報化の推進721百万円
(1)生活福祉資金の業務システムの改修23百万円

○ 介護保険法の円滑な実施のため、生活福祉資金の運営の拡大を
図ることとしているが、それに伴うシステム改修を実施

(2)福祉・保健情報サービス事業(WAM NET)の改善等595百万円
○ 介護保険法の指定事業者情報提供システムの拡充等

(3)社会福祉法人台帳等の電子化103百万円
○ 介護保険法の実施など社会福祉分野において、利用者から求められている情報開示の要請に応えられる環境を整備するためのシステム開発

3 福祉を取り巻く環境の整備676百万円
(1)福祉就職総合相談会の開催、求人開拓等の強化402百万円
○ 福祉人材の養成及び確保を図るとともに、中高年者を始めとす
る離職者に就職や起業支援を実施し、雇用対策に資する。

(2)地域福祉権利擁護事業の円滑実施のための広報200百万円
○ 地域福祉権利擁護事業の対象者となる痴呆性高齢者等への事業
周知及び生活支援員等の確保等のため、必要な広報事業を実施

(3)介護関係施設等経営資金貸付準備経費74百万円
○ 社会福祉・医療事業団における介護関係施設等に対する経営資
金の貸付けに必要な準備経費


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