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1.医薬品等の承認審査等について


(1)承認審査

ア.医薬品等の審査体制について
(ア)平成9年7月1日に、薬事行政組織の見直しを行い、医療と医薬品の安全対策全般を所掌する「医薬安全局」を設置するとともに、国立医薬品食品衛生研究所に「医薬品医療機器審査センター」(以下「審査センター」という。)を設置し、承認審査における専門性と透明性を高めて審査体制の強化を図ったところである。
(イ)具体的には、1)医薬安全局審査管理課において、中央薬事審議会への諮問、最終的な承認の判断、審査業務の管理、2)審査センターにおいて、医学、薬学、獣医学、統計学等の専門知識を修得した審査官によるチーム審査、3)医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(以下「医薬品機構」という。)において、申請資料の信頼性等に係る調査、治験相談(医療用具の調査については(財)医療機器センター)を実施することとし、組織と人員の確保を図りながら、審議会中心の審査から事務局中心の審査への移行を図っているところである。
(ウ)今後、さらに医薬品等の有効性、安全性を向上させるため、組織と人員を確保し、欧米先進国と比較して遜色のない承認審査体制の確立に努めることとしている。
イ.医薬品について
(ア)平成10年は新医療用医薬品として新有効成分21成分が承認された。
(イ)新医薬品の承認申請の目的で実施される試験の標準的方法として平成10年に公表したガイドライン等は次のとおりである。
・組換えDNA技術を応用したタンパク質生産に用いる細胞中の遺伝子発現構成体の分析について(平成10年1月6日)
・生物薬品(バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品)の安定性試験について(平成10年1月6日)
・医薬品の残留溶媒ガイドラインについて(平成10年3月30日)
・臨床試験の一般指針について(平成10年4月21日)
・「医薬品のがん原性を検出するための試験に関するガイダンス」について(平成10年7月9日)
・「医薬品のがん原性試験のための用量選択」補遺について(平成10年7月9日)
・「遺伝毒性試験:医薬品の遺伝毒性試験の標準的組合せ」について(平成10年7月9日)
・外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について(平成10年8月11日)
・外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて(平成10年8月11日)
・医薬品の臨床試験のための非臨床安全性試験の実施時期についてのガイドラインについて(平成10年11月13日)
・「臨床試験のための統計的原則」について(平成10年11月30日)
(ウ)医療用後発品の生物学的同等性試験ガイドラインを平成9年12月に公表し、後発品の先発品との治療学的な同等性を保証するための方法を具体的に明示したところであり、現在、剤型違い及び処方変更に関する同等性ガイドラインの作成の検討を進めている。
(エ)一般用医薬品については、これまでも承認審査の効率化等の観点から、薬効群毎に承認基準を作成し、承認権限を都道府県知事に委任してきたところであり、平成10年5月には「みずむし・たむし用医薬品承認基準」の作成と承認権限の都道府県知事への委任を行った。
(オ)体外診断用医薬品については、国内で標準品等の入手が可能な31の測定項目に関して平成9年9月1日以降提出資料の簡素化を図った(平成9年8月28日医薬発第139号)。今後、体外診断用医薬品の一部承認不要化の検討を進めることとしている。
 また、体外診断用の放射性医薬品については、その標識成分規格集が出版されたことに併せて「体外診断用放射性医薬品指針」を平成9年12月11日医薬発第415号通知をもって廃止した。
(カ)日本抗生物質医薬品基準については、最新の科学技術の進展及び国際的調和に対応し、平成8年の第十三改正日本薬局方との整合性を図るために、平成10年8月に全面的に改正するとともに、製造実績及び製造予定のない16原薬及び75製剤を削除した。
ウ.化粧品、医薬部外品について
(ア)化粧品について
平成9年3月に種別を25から11に統合するとともに、種別許可の対象となる成分として143成分を新たに指定し、また、平成10年3月には102成分を指定して、承認を要しない化粧品の範囲を拡大した。
(イ)医薬部外品について
染毛剤、パーマネント・ウェーブ用剤及び薬用歯みがき類に加え、平成10年3月に浴用剤について承認基準を作成し、承認権限を都道府県知事に委任したところであり、他の種別についても承認基準の作成を進めているところである。
エ.医療用具について
(ア)平成10年3月末には、医療用具の新しいクラス分類の考え方を導入し、承認不要範囲の拡大、臨床試験要求範囲の見直し、販売業の届け出不要範囲の拡大等を行ったところであり、年度内に更なる承認不要範囲の拡大等を実施する予定である。
 また、10年度以降の規制緩和項目の実施についても検討を進めることとしている。
(イ)薬事法第42条第2項基づく基準(42条基準)の見直しについては、平成10年3月に既に医療現場での使用実績がない又は極めて少ない品目についての5基準を廃止したことに続き、同年12月には滅菌済み輸血セット等の3基準を廃止し、新たに対応する承認基準を通知したところであり、残る12基準についても順次見直しを進めている。
 また、JIS基準についても、平成9年度からゼロベースの見直し作業を行っており、順次、廃止、改正等を進めることとしている。

(2)国際的調和の推進

ア.医薬品について
(ア)近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的調和の必要性が指摘されており、我が国としても、日・米・EU三極の間で、国際共同研究の推進やICHへの積極的参加等を通して、医薬品規制の国際的調和を推進することとしている。
(イ)平成9年7月第4回日・米・EU三極医薬品規制調和国際会議(ICH4)が開催され、臨床試験の実施に関する一般ガイドライン等について合意が得られ、平成10年8月次期会議に向けた準備会合では、反復投与毒性試験ガイドラインについて合意が得られた。
 これら合意ガイドラインは、各地域で実施される運びとなっており、我が国としても臨床試験の一般指針をはじめとする国内ガイドラインを平成10年中に11件公表したところであり、さらに現在、他のガイドライン整備作業を進めているところである。
イ.医療用具について
 医療用具規制の国際整合については、1992年に欧州連合(EU)の提唱で創設された「医療用具規制国際整合化会合(GHTF:Global Harmonization Task Force)」において、日、米、EU、加及び豪の規制当局及び産業界代表が参加して積極的に進められている。
 昨年は、第7回の本会合が2月に開催されたほか、規制全般の整合化作業を進めている作業グループ1(SG1)が5回開催され、医療用具に求められる基本的要件の検討、医療用具のクラス分類の整合化作業等が精力的に行われたところであり、本年においても引き続き開催される。
 また、医療用具の個別の規格基準については、引き続き、国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準化会議(IEC)において精力的な作業が進められている。

(3)「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)の円滑な実施

ア.新GCPについて
 平成8年6月の薬事法改正により、従来薬務局長通知による行政指導として位置づけられていたGCPを厚生省令で定める基準とし、製薬企業のみならず治験実施医療機関及び治験を担当する者に対して遵守を義務付けることとなり、平成9年3月に「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」を定め、平成10年4月から全面施行されている。
 新GCPは、治験における被験者の人権保護の一層の強化とデータの信頼性の向上を図ることを目的としており、主な変更点としては、
○文書による説明と同意の取得
○治験総括医師制度の廃止
○治験依頼者の責任体制の強化
○治験審査委員会の機能の充実
○治験責任医師の責任と業務の明確化と治験支援体制の充実等が挙げられる。

イ.新GCPの普及定着のための事業
 新GCPにより治験実施体制も大きく変わったが、これにより治験の停滞も指摘されている。このため、平成9年度から説明会の開催、新GCP普及定着総合研究の実施、2病院をモデルとしたGCP適正運用推進モデル事業の実施等を行ってきたが、平成10年度は更に次の事業を行っている。
(ア)「治験を円滑に推進するための検討会」の運営
 治験を円滑に進めていくための具体的施策を検討し、平成10年度末を目途に取りまとめを行う。
(イ)「医薬品の臨床試験の基盤整備に関する研究班」の設置
 治験に関する問題点及びその具体的な解決策の研究を行う。
(ウ)治験推進協議会の設置
 治験実施医療機関の長からなる協議会を設置し医療機関相互の連携を図る。

(エ)その他
・一般向け普及啓発ビデオの作成
・治験実施体制調査の実施
・医師等医療従事者向け講習会の開催等
なお、上記以外に健康政策局及び保健医療局国立病院部において、治験事務局の設置スペースである治験管理施設の整備補助等を行っている。

(4)希少疾病用医薬品等の指定

 医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が極めて少ないことにより研究開発が進んでいない難病、エイズ等を対象とした医薬品(希少疾病用医薬品)及び医療用具(希少疾病用医療用具)の研究開発を促進するため、平成5年に希少疾病用医薬品又は希少疾病用医療用具として指定されれば、助成金の交付(平成11年度予算案5億円)、税額控除、指導・助言、優先審査、再審査期間の延長といった措置が講じられる研究開発促進制度が発足した。
 これまで希少疾病用医薬品として117品目、希少疾病用医療用具5品目が指定され、このうち、平成11年1月1日現在で、医薬品46品目、医療用具2品目が承認されている。今後とも本制度を推進し、希少疾病用医薬品等の研究開発の促進に努めることとしている。
 特に、HIV感染症治療薬については、米国等で新しい医薬品の急速な開発が図られ、相当程度の使用成績が集積されている一方で、患者数の少ない国内での治療薬の開発が困難である状況を踏まえ、平成10年11月より一層の迅速な承認審査を行う方針を示したところである。

(5)再審査・再評価

ア.再審査・再評価の状況
 再審査については、これまでに1,464品目について実施し、そのうち124品目が承認事項を変更する必要があるとされた。
 また、再評価については、医療用医薬品に関して、昭和55年3月以前の承認分について21,709品目全ての再評価を終了しており、昭和63年より現行の新再評価制度において、順次必要なものにつき再評価指定を行い、現在までに3,232品目について再評価を終了している。
 なお、平成8年度より再審査のために収集された安全性等の情報を広く医療機関にフィードバックすることを目的に、再審査概要(SBR)の作成を開始し、平成9年度より再評価についても再評価概要(SBR2)の作成を開始した。

イ.医療用医薬品再評価の在り方検討会
 平成9年2月に「医療用医薬品再評価の在り方検討会」を発足させ、検討いただいているところである。これまで欧州各国の医薬品承認の更新制度や米国の定期報告制度などについての調査団の派遣等を行ってきたところであり、本年2月を目途に検討会の再開を予定している。

(6)後発医薬品の品質確保対策

 医療用医薬品の経口固形製剤の一部には後発品を中心にその品質が不十分なものがあるのではないかとの指摘がある。経口固形製剤の品質の確保のためには、溶出試験規格の策定、遵守が必要であり、平成7年4月以降申請分の新医薬品については規格の策定を義務付けたところであるが、溶出試験規格の設定のない医療用医薬品のうち後発品は、約550成分5,000品目以上にのぼる。
 このため、平成16年度までの間に計画的に、国立医薬品食品衛生研究所及び10都府県の衛生研究所の協力を得て溶出試験規格を策定し、これに基づく再評価の実施と結果の公表を行うこととしている。
 さらに、後発医薬品製造業者は情報収集・提供が充分に行われていないとの指摘もある。医療用医薬品の製造業者に対しては、副作用情報の収集や医師等への情報提供体制を確保するため、平成9年4月に改正した薬事法に基づき、「医薬品の市販後調査の実施に関する基準」(GPMSP)の遵守を義務づける等の措置を講じているところであるが、後発品製造業者に対して、先発品製造業者と同等の情報収集・提供体制を定着させるための事業について、平成10年度より都道府県に委託して実施しているので引き続き御協力をお願いする。



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