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連絡事項

結核感染症課

1.結核対策

(1)平成9年結核発生動向調査年報集計結果について

ア 新登録患者数、罹患率について ・平成9年の結核の年間新登録患者数は42,715人(前年比243人増)である。
・全国罹患率は人口10万対33.9(同、0.2増)人である。
・新登録患者数及び罹患率が前年(平成8年)を上回ることとなったが、結核の年間新登録患者数が前年を上回ったのは昭和34年以来38年ぶり、全国罹患率が前年を上回ったのは昭和29年以来43年ぶりである。
イ 結核登録者数について
・平成9年末現在の結核登録者数は121,762人(前年比11,196人減)である。
ウ 死亡者数について
・平成9年中の結核による死亡者数は2,742人(前年比、116人減)である。・死亡順位は全疾病中22位(前年同)である。
エ 地域間格差について ・罹患率の最高は大阪府の68.5、ついで兵庫県、和歌山県の順であり、最低は長野県の16.9、次いで山梨県、秋田県の順である。
・長野県と大阪府との罹患率の較差は4倍以上である。

(2)公衆衛生審議会結核予防部会提言「緊急に取り組むべき結核対策について(提言)」について

平成10年7月3日公衆衛生審議会結核予防部会は、結核対策の現状と課題について、特に、多剤耐性結核問題、結核の院内感染問題、結核の罹患率減少速度の鈍化と地域格差の大きな要因となっている高齢者の問題や治療困難者の問題等、緊急に対応を図るべき項目についてとりまとめ、提言として発表したところである。
ア 提言の概要
(ア) 緊急に対応すべき課題
1)多剤耐性結核対策
・国立療養所等を中心に、広域圏(ブロック単位)の拠点施設(多剤耐性結核専門医療機関)、及び都道府県ごとの拠点施設を整備するとともに、すべての結核医療機関の連携による診療ネットワークを構築する等の医療体制の整備を進める。
・多剤耐性結核、合併症を有する難治性結核等に対する診療情報を提供する「結核医療機関等向け相談窓口」を設置する。
・「多剤耐性結核に対する診療の手引き」の作成等
2)結核発症の高危険群等に対する積極的な対応
・既感染高齢者の中で結核を発病(再発)しやすい基礎疾患を有する者に対して、予防投薬を実施することにより、高齢者の結核罹患率を減少させる。
・都市部における、住所不定者や雇用の不安定な単身者等の社会経済的に弱い階層にある者等に対し、地区指定等の方法により「短期化学療法による直接監視下治療」(Directly Observed Treatment,Short - course:DOTS)の推進を図るなど、積極的治療等の対策を強化する。
3)結核対策における地域間の連携強化と共同的な取り組み
・全国単位及び広域圏ごとに、結核対策に携わる行政担当者や専門家の連携組織を設けることにより、結核対策の人的・物的及び情報資源の共有、結核対策行政担当者の相互啓発と研鑽を図る。
4)院内感染対策
・厚生省と結核病学会や結核予防会が十分な検討を行い、最新の知見を集約した院内感染対策の指針を作成し、全国の医療機関等へ周知する。
5)結核患者収容モデル事業の拡大
・精神疾患と結核の合併症患者に対する適切な入院治療の確保のため、一般病床において結核の合併症患者を対象として実施されてきた「結核患者収容モデル事業」の拡大を検討する。
6)その他
・患者発生の際の医師から保健所への届出の徹底等
(イ) 当部会では、再興感染症としての結核対策の充実・強化を図るため引き続き
1)多剤耐性結核対策
・発生動向調査の強化
・治療薬の開発・確保等の方策等
2)結核発症の高危険群に対する施策
・HIV感染者やじん肺罹患者等に対する施策の強化
3)地域における対策強化とDOTSの推進
・国及び都道府県レベルでの結核対策推進計画の今後の進め方
・日本におけるDOTSのあり方等
4)院内感染対策
・報告体制の再検討
・発生時における保健所と院内感染発生病院の連携等
5)結核病床のあり方
・関係審議会と連携を図りつつ、結核患者に適切な入院医療を確保
6)今後のBCG接種のあり方
・平成6年の予防接種法及び結核予防法一部改正時の附則に基づき検討
7)その他
・定期外健康診断
・集団感染対策等について審議を継続しており、近く「21世紀に向けての結核対策(仮称)」を取りまとめることとしている。
イ 緊急提言に関する平成11年度予算(案)の概要(10年度予算額)→(11年度額(案))

(ア) 多剤耐性結核対策
1)広域圏及び都道府県の拠点病院の整備
・ 保健衛生施設等施設整備費補助金
 多剤耐性結核患者専門医療機関施設整備事業 (メニューの追加要求)
・ 国立病院・療養所の整備(国立病院部実施分)
 多剤耐性結核患者専門医療機関施設整備   0 → 375,664千円
2)診療の手引きの作成・配付
・ 結核予防対策事業費
 多剤耐性結核制圧事業費 0 → 9,442千円
(相談窓口の設置 → 引き続き検討。当面は結核研究所の既定予算等で対応)

(イ) 結核発症の高危険群等に対する積極的な対応
・ 予防及び発病防止のための高齢者に対する予防投薬事業
 結核対策特別促進事業 (メニューの追加要求)
・ 治療拒否集団に対する積極的な治療事業
 結核対策特別促進事業 (メニューの追加要求)

(ウ) 結核対策における地域間の連携強化と共同的な取り組み
1)結核対策行政担当者の相互啓発、研鑽等
・ 結核予防対策推進事業費(全国単位の会議) 0 → 471千円
 (広域圏ごとの連携組織、会議等 → 結核対策特別促進事業費で対応)
(エ) 院内感染対策

1)院内感染対策指針の作成・配付
 結核予防会等に依頼し、早急に作成する。

(オ) 結核患者収容モデル事業の拡大等
1)結核・精神合併症患者受入施設の整備(国立病院部実施分)
・ 国立療養所の整備
精神合併症患者専門病棟整備 0 → 145,320千円
2)結核患者収容モデル事業の拡大
・ 実施要綱の改正(精神疾患と結核の合併症患者を対象とする)
 本年度改正予定で作業中
ウ 今後、厚生省は「緊急に取り組むべき結核対策について(提言)」及び「21世紀に向けての結核対策(仮称)」に基づいた対策を重点的に行うこととしており、各都道府県におかれても御協力願いたい。

(3)結核予防法における公費負担の取扱いについて

 結核予防法第34条の規定に基づく一般患者に対する医療の公費負担の取扱いについては、「結核予防法による公費負担及び命令入所取扱要領について(昭和36年9月22日衛発第757号公衆衛生局長通知)」の別添「結核予防法による公費負担及び命令入所取扱要領」により執り行われているところであるが、公費負担のそ及承認事例が多数見受けられるため、「結核予防法における公費負担の取扱いについて(平成8年7月23日健医感発第74号エイズ結核感染症課長通知)」をもって、本取扱要領の趣旨に沿って適正な運用を図るよう、再度管下保健所、指定医療機関等関係機関に対する周知方をおww願いしたところであり、引き続き、公費負担の取扱いに遺漏のないよう関係機関等に対する指導方よろしくお願いする。

(4)結核対策特別促進事業費補助金について

 従来より、結核予防対策については、結核予防法による定期の健康診断及び予防接種の着実な実施を図りつつ、結核のり患率、有病率の高い地域において、地域の実情に応じた重点的な結核対策事業を実施するために、本補助金の積極的な活用をお願いしてきたところであるが、上記緊急提言における多剤耐性結核問題、結核の院内感染問題、結核の罹患率減少速度の鈍化と地域格差の大きな要因となっている高齢者の問題や治療困難者の問題等の指摘を踏まえ、現在行われている結核対策特別事業を見直すとともに、地域の実情に応じた重点的な結核対策を再度検討していただき効果的な結核予防対策を行っていただきたい。
 特に、平成11年度新たに対象事業に追加される事になる「予防及び発病防止のための高齢者に対する予防投薬事業」及び「治療拒否集団に対する積極的な治療事業」については、厚生省と各都道府県との協力関係の上実施することとしており、実施都道府県については、個別調整をさせていただくこととしているので御協力いただきたい。

(5)結核の病院及び高齢者入所施設等における集団感染の防止について

 昨年、特別養護老人ホームにおける集団感染事例が報告された事を踏まえ、「結核集団感染事例報告の徹底について(平成10年7月27日健医感発第65号厚生省保健医療局結核感染症課長通知)」により、高齢者入所施設等の結核の集団感染防止対策の適切な実施をお願いしたところである。
 近年の医療機関内で結核の集団感染が続発している実情も踏まえ、今後とも、結核の病院及び高齢者入所施設等の集団感染の予防及び結核患者の早期発見、感染拡大防止について万全を期すよう、管下関係機関等に対する指導の徹底をお願いする。

2 予防接種対策

(1) 予防接種対策については、公衆衛生水準や医療水準の向上、予防接種に関する国民の意識の変化等を踏まえ、平成6年に予防接種法等の改正を行い、新しい制度による円滑な推進を図っているところである。
 都道府県におかれては、今後とも以下の点に留意しつつ、管下各市町村への周知・指導方よろしくお願いする。
ア 有効かつより安全な予防接種を推進する観点から、個別接種体制を整備するようお願いしているところであるが、未整備の市町村にあっては、早急に個別接種体制を整備されるよう引き続き指導方お願いしたい。やむを得ず集団接種により実施する場合であっても、的確な予診の実施を徹底し事故防止に万全の配慮を期されたい。
イ 予防接種の意義及びその重要性について周知徹底を図り、予防接種が円滑に実施されるよう指導方お願いしたい。
ウ 適切な情報提供のため(財)予防接種リサーチセンター(東京都新宿区新宿1-29-8 電話03-3341-8864)において、保護者・医療従事者向けのパンフレットの作成・配布のほか、保護者に対して予防接種ホットラインによる電話相談(電話045-671-1858)を行っているところであり、その活用等について周知指導方併せてお願いしたい。
エ 予防接種による健康被害者に対する救済措置については、障害年金等救済給付金の支給が円滑に行われるよう指導方お願いする。また、(財)予防接種リサーチセンターにおいて行う保健福祉相談事業の充実に努めているところであり、これが事業の円滑かつ効率的な実施につき、支援・協力方お願いする。更に、予防接種健康被害者が重症心身障害児施設等への入所を希望する場合に、手続き等が円滑に行われるよう関係部局とも連携を図るなどのご配慮をお願いしたい。
(2) 平成6年に改正された予防接種法の附則第2条において、施行後5年を目途としての検討規定が設けられており、公衆衛生審議会のもとに、昨年6月に予防接種問題検討小委員会を設置して検討を開始し、12月に中間報告がまとめられたところである。
 中間報告は、これまでの審議を通じて、主な論点についての方向性を整理した上で、背景等についても記載したものであり、今後、広く各方面からの意見を求めた上で、必要な項目についてさらに審議を進め、本年6月を目途に最終報告をいただくこととしている。
(3) 予防接種後副反応報告及び予防接種後健康状況調査については、都道府県、市町村等の協力を得て実施しているところであるが、その調査結果について、貴管下市町村を通じ関係機関等への情報提供をよろしくお願いする。
 予防接種後副反応報告については、平成6年10月から平成9年3月までのものを報告書No.1〜3として情報提供したところであり、平成9年度分についても本年3月中を目途に情報提供することとしているので了知願いたい。
 また、予防接種後健康状況調査については、平成8年度前期分から平成9年度前期分までを報告書として情報提供したところであり、平成9年度後期分については、本年3月中を目途に情報提供することとしているので了知願いたい。
 なお、これらの報告等については、今後とも協力方よろしくお願いする。
 

3.インフルエンザ対策

 インフルエンザについては、今冬もその流行が想定されているところであり、国民に対する正しい予防方法等の情報提供に努められるよう管下市町村に対しても周知徹底されたい。
 平成11年4月より感染症新法に基づいて実施される感染症発生動向調査の中でもインフルエンザ定点の拡充等により、その発生動向の把握体制の充実を図ることとしている。また、感染症新法に基づくインフルエンザの総合的な予防対策の推進のための、特定感染症予防指針を作成・公表する予定である。
 さらに、新型インフルエンザ対策として、新型ウイルスによる地球的規模での流行が発生した場合に、ワクチンを緊急に製造する体制を整備する事業(ウイルス株の選別・保存、診断機材の作成)を、全国の地方衛生研究所の協力を得て平成10年度から開始しているが、11年度以降においても御協力をよろしくお願いしたい。
 なお、昨冬のインフルエンザの流行に伴う脳炎・脳症を起こす子供の報告が増加したことを踏まえ、今冬においてインフルエンザ脳炎・脳症患者の発生動向調査を行うこととしており、近日中に課長通知を発出する予定である。当調査の実施にあたっては、貴管下の保健所及び地方衛生研究所並びに関係医療機関等の協力が図られるよう格別のお取り計らいをお願いしたい。




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