最近の保護動向を見ると、全体的な動向としては増加傾向で推移し、被保護人員は平成10年3月現在で約92万人、保護率も平成10年1月以降、7.30/00に上昇しており、全体の7割を越える福祉事務所において被保護世帯が前年度と比較して増加している。
また、福祉事務所の保護の決定実施の状況をみると、厚生省指導監査においてもおよそ3割の福祉事務所で訪問調査活動及び病状把握等保護決定実施上の基本的事項に問題ありとしており、また、不正受給についても福祉事務所の取り組みにもかかわらず、依然として毎年度相当数発見されているところである。
一方、福祉事務所の実施体制については、現業員の4分の1が毎年の人事異動の対象となっているほか、査察指導員についても現業経験を有しない者が全体の3割を占め、また、被保護世帯数が増加傾向にある一部の福祉事務所おいて、現業員が法定数に比して不足する状況にあるなど、実施体制の強化が課題となっている。 ついては、本庁の指導監査の実施にあたっては、別途示す監査方針を踏まえるとともに、特に以下の点に留意されたい。
ア 福祉事務所ごとの保護動向、課題等の明確化上記のような状況の中で、保護の適正実施を確保するためには、従前にも増して個々の福祉事務所における保護動向やその背景に留意しつつ、各福祉事務所における保護決定実施上の課題を適切に把握し、明確にしたうえで指導すること。
イ 福祉事務所の課題に応じた実効ある指導監査の実施本庁が実施する指導監査は、監察的見地から事務の執行等の適否を調査する等の消極的な機能に止まらず、更に行政が効率的に運営されるよう援助指導する積極的な機能を果たすべきものである。
ついては、毎年度の監査結果の是正・改善の指示に当たっては、その問題が生じた背景及び要因について十分な分析・検討を行い、これに基づいた具体的な改善方策を提示することにより、その実効を期するとともに、改善措置の進捗状況についても確認監査や巡回指導等により継続的な指導を行うこと。
また、福祉事務所の所長等幹部職員に対しては、制度運営の理解・認識及び人事上の配慮を求めること。
なお、監査の事前検討、監査結果の復命、今後の指導方針の策定等の一連の過程において、これらが組織的に行われるよう、本庁の指導監査体制を確立するとともに、特に多くの課題を抱えた福祉事務所の指導監査に当たっては、本庁幹部職員が自らその指揮に当たるなど必要な対応を行うこと。
ウ 福祉事務所の体制整備保護の適正な運営を確保するためには、査察指導員、現業員等の充足が不可欠であるので、保護動向等を踏まえた必要な体制の確保に努めるよう指導すること。
また、福祉事務所の所長等幹部職員に対しては、研修等により個々の職員の資質の向上を図ることはもとより、職員の士気高揚への配慮に努めるとともに、所全体の生活保護の運営状況を必要に応じて自ら点検する等により把握し、職員全体が一体となって問題解決に取り組む等組織的な対応が図れる体制の整備について指導すること。