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6 地域福祉の推進について(地域福祉課

 急速に少子・高齢化が進展する中で、国においては、「新ゴールドプラン」、「エンゼルプラン」、「障害者プラン」を策定し、国、地方公共団体を通じこれらの、公的施策の一層の充実を図っているところである。
 地域社会においては、社会福祉協議会(以下、本項において「社協」という。)、民生委員をはじめとして、ボランティア団体、生協、地域住民等による助け合い活動や様々な福祉活動が活発になってきている。
 地域福祉を進めていくうえで、公的施策の充実はもとより、このような地域社会における住民相互の助け合いや交流活動、社協等の民間福祉活動等の支援を積極的に進めていくことが重要である。
 また、先般、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会においてまとめられた意見の中でも、地域福祉計画の策定、社協・民生委員等の強化等をはじめとする「地域福祉の充実」が一つの柱とされているところであり、厚生省としては、これらを基に関係法令の改正を行うこととしているほか、今後とも、次のような取組みを通じて地域福祉の推進を図っていくこととしている。

1) 社協については、市区町村社協を中心として、「ふれあいのまちづくり事業」の実施等により、地域に密着した社協活動の一層の充実を図る。
 特に平成11年度予算(案)においては、市区町村社協の運営基盤の強化を図ることを目的とした「市区町村社協強化推進事業」を創設することとしている。
 
2) ボランティア活動については、社協に設置されたボランティアセンターへの助成等を通じ、国民の自主的・自発的な福祉活動への参加を促進するための基盤整備を積極的に図っていく。
 
3) 民生委員については、地域住民の身近なところで活動する民生委員の特徴に鑑み、民生委員に対する研修の実施により、資質の向上、活動の強化を図る。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、このような動向に十分留意され、地域社会において社協、ボランティア、民生委員等の活動が一層活発になるよう、その指導等に積極的に取り組まれたい。

(1) 社協活動の推進

 ふれあいのまちづくり事業の推進
 
(ア) ふれあいのまちづくり事業は、市区町村社協が実施主体となって、地域住民の参加と関係機関との連携のもとに、地域に即した創意と工夫により具体的な課題に対応するとともに、住民相互の助け合いや交流の輪を広げ、共に支え合う地域社会づくりに寄与することを目的としている。
 本事業については、平成7年9月の中央社会福祉審議会地域福祉専門分科会小委員会報告「地域福祉の展開に向けて」の趣旨を踏まえ、平成8年7月に実施要綱を改正し、一層の充実を図ったところであり、引き続き、事業の適正な実施等について指導、助言されたい。
 
(イ) 平成11年度予算(案)においては、補助金の整理合理化の観点から、1ヶ所当たり事業費について見直しを行ったので留意されたい。
(参考)「ふれあいのまちづくり事業」1ヶ所当たり事業費
 
【A型事業】 10年度 11年度(案)
○ 1〜3年次 12,658千円 → 11,866千円
○ 4,5年次 10,543千円 → 9,785千円
【B型事業】 2,115千円 → 2,081千円
 
(ウ) 平成11年度においては、平成6年度指定の市区町村社協についての指定替えを行うこととしている。新たな指定に当たっては、年度内にヒアリングを予定しているので、各都道府県・指定都市においては、事業実施計画市区町村社協の事業内容や実施体制、取組み意欲や事業実施により期待される成果などを十分精査の上、1〜2ヶ所を目途に選定し、協議願いたい。また、市区町村の社会資源や財政状況等を勘案し、B型事業の選択も検討されたい。
 
(エ) 平成8年度以降新規指定の市区町村社協については、実施要綱に基づく事業実施3年目の評価に向けて、毎年の事業実施に係る成果等を整備しておくよう指導、助言されたい。
 なお、平成11年度においては、平成9年度指定社協についての事業の成果を評価し、その継続について検討していただくこととしている。
 
(オ) 現在、本事業を実施している市区町村社協に対しては、その事業効果が十分上がるよう指導・支援されたい。
 また、指定が終了となる市区町村社協に対しては、本事業の実施により得られた成果の定着が図られるよう指導・支援されたい。
 
「市区町村社協強化推進事業」の創設
 近年、市区町村社協は、都道府県・指定都市社協の実施する「事業型社協推進事業」による支援等を受けながら、様々な在宅福祉サービス等の企画・実施に取り組んできたところである。
 これら、訪問介護(ホームヘルプサービス)事業等の住民に対する直接的なサービスは、社会福祉協議会に対する地域住民の信頼を高め、社会福祉協議会の事業への住民参加を促進する効果があったことから、今後とも地域の実情に応じて自主的に取り組んでいくことが望まれる。
 今後は特に、地域で活動する住民組織、ボランティア組織の連携強化、一般の社会福祉事業者が行わないような日常的生活援助等の事業が、市区町村社会福祉協議会の中心的な活動として展開されることが必要である。同時に、利用者によるサービスの選択を援助するための情報提供、権利擁護、苦情解決などの役割も期待されている。
 このような事業を積極的に展開していくためにも、会費や寄付金等の自主財源の一層の充実が望まれるとの意見が、先般、中社審社会福祉構造改革分科会より具申されたところである。
 このため、平成11年度予算(案)において、都道府県・指定都市社協が、インフォーマルな福祉サービスの研究開発や巡回指導を実施することにより、市区町村社協の事業型化を更に推進するとともに、独自財源の確保、活動手法等に関する検討、管理職員等を対象とした研修の実施を通じて運営基盤の強化についての助言、指導等を行う「市区町村社協強化推進事業」を創設することとした。
 各都道府県・指定都市においては、これらの趣旨を踏まえ、本事業の推進について、管下都道府県・指定都市社協に対する指導・支援に特段の配慮を願いたい。
 なお、平成6年度から実施してきた「事業型社協推進事業」については、本事業に組み入れ、発展的に解消することとしたので了知願いたい。
 
(参考)「市区町村社協強化推進事業」の概要
・実施主体都道府県・指定都市社会福祉協議会

・1ヶ所当たり事業費 2,462千円(負担割合 国 1/2,県 1/2)

「福祉活動専門員設置費」の一般財源化
 福祉活動専門員は、市区町村の区域における民間社会福祉活動の推進方策について調査、企画及び連絡調整を行うとともに広報、指導その他の実践活動の推進に従事する者であり、高齢化の進展等に伴い、要援護者に対する多種多様な福祉サービスが求められる昨今、地域の市区町村社会福祉協議会の中核として、極めて重要な役割を担っている。
 これらの福祉活動専門員の設置に要する費用に対する国庫補助については、発足以来30年余りが経過したことにより、各市区町村社協への配置が概ね完了し、各市区町村の事業として十分に同化・定着した実情に鑑み、平成11年度に一般財源化を図ることとしたところである。
 しかしながら、福祉活動専門員の役割は今後益々重要となることから、引き続き、管下市区町村社協に対し、福祉活動専門員の資質の向上、活動内容の充実等が図られるよう指導願いたい。
 また、福祉活動専門員の設置に要する費用については、自治省において、地方交付税の単位費用(市町村分)に的確に盛り込む方向で調整が進められているところであるので、申し添える。

 

(2) ボランティア活動の基盤整備

 厚生省においては、「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年4月)や「ボランティア活動の中長期的な振興方策について(意見具申)」(平成5年7月)等に基づき、国民の自主性、自発性を尊重しつつ、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」、「気軽に」、「楽しく」、ボランティア活動に参加できるよう、ボランティアセンターに対する助成等を通じて、その基盤整備を図っているところである。
 御承知のように、平成7年1月の阪神・淡路大震災を契機とし、また、その後のタンカー重油流出事故等の際にも見られるように、ボランティア活動に対する国民の関心が、かつてない高まりを見せている。
 こうした動きに合わせ、ボランティア団体等の民間の非営利組織に法人格を付与する「特定非営利活動促進法」(NPO法)が昨年3月に制定され、12月1日より施行されたところである。また、平成9年11月に行われた第52回国連総会においては、西暦2001年(平成13年)を「国際ボランティア年」として宣言する旨の決議が採択されたところである。
 都道府県・指定都市・中核市においては、これらの動向を十分に踏まえ、ボランティア活動の推進の機運を一層高めるよう、体制の整備はもとより、ボランティア基金や地域福祉基金等の積極的な活用を図る等、ボランティア活動の促進に特段の指導・支援を行うよう配慮されたい。
 
 ボランティアセンター事業の推進
(ア) 都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業広域的な観点からボランティア活動の促進を図る都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業においては、これまで福祉教育推進事業(学童・生徒のボランティア活動普及事業等)や養成・研修事業(ボランティア活動コーディネーターの養成等)等に取り組んでいるところであり、引き続きこれらの事業の充実・強化を図られたい。
 なお、平成11年度予算(案)においては、補助金の整理合理化の観点から、1ヶ所当たり事業費について、見直しを行ったので留意されたい。
 
(参考)「都道府県・指定都市ボランティアセンター活動事業」
1ヶ所当たり事業費
10年度 11年度(案)
18,414千円 → 16,020千円
 
  (イ) 市区町村ボランティアセンター活動事業市区町村ボランティアセンターは、住民に最も身近な市区町村におけるボランティア活動の拠点として、相談や登録・あっせん、入門講座の開催、福祉救援ボランティア活動の促進のための事業を行っているが、平成11年度予算(案)において、国庫補助対象箇所数を前年度同数の473ヶ所を確保し、引き続き市区町村社協における本事業の充実を目指しているところである。
 本事業の国庫補助期間は実施要綱において原則3年間としていることから、11年度には、8年度に指定した59ヶ所分の指定替えを行うこととしている。 11年度の国庫補助の決定に当たっては、年度内にヒアリングを予定しているので、事業実施計画市区町村社協を各都道府県・指定都市それぞれ2〜3ヶ所程度選定し、事業内容等を十分精査した上で協議願いたい。
 現在、本事業を実施している市区町村社協に対しては、その事業効果が十分上がるよう、また、本年度で国庫補助の指定が終了する社協に対しては、引き続き11年度以降も事業の定着が図られるよう指導・支援されたい。併せて、都道府県・指定都市においては、国庫補助指定外のボランティアセンターに対しても、地域の実情に応じた事業の実施が図られるよう指導・支援願いたい。
 なお、補助金の整理合理化の観点から、本事業の1ヶ所当たり事業費については見直しを行ったので留意されたい。
 
(参考)「市区町村ボランティアセンター活動事業」1ヶ所当たり事業費
10年度 11年度(案)
3,806千円 → 3,483千円
 

   ボランティア功労者に対する厚生大臣表彰
 ボランティア活動が一層拡大していくためには、誰もがボランティア活動に参加しやすくなるための基盤整備や啓発・広報等を推進するとともに、ボランティア活動が社会的に評価されることが重要である。
 このような観点から、厚生省においては、都道府県・指定都市・中核市等からの推薦に基づき、ボランティア功労者に対する厚生大臣表彰を毎年実施し、ボランティア活動の社会的評価の向上を図っているところである。
 都道府県・指定都市・中核市においては、平成11年度においても、各地域で活動している様々な個人や団体について推薦願いたい。また、福祉分野等のボランティア功労者に対する表彰制度については、ほとんどの都道府県・指定都市・中核市において設けられているところであるが、未だ表彰制度を設けていない場合は、制度化について早急に検討されたい。
 なお、被表彰者等については、活動事例の紹介等のPR活動を行うこと等により、ボランティア活動の社会的評価の向上に積極的に努められたい。

 その他
(ア) 全国ボランティアフェスティバルの開催について
 平成11年度(第8回)の全国ボランティアフェスティバルは、平成11年10月23日・24日に宮崎県(宮崎市)で開催されることとなっているので、各都道府県・指定都市・中核市においては、本フェスティバルへのボランティア等の幅広い参加等について協力願いたい。
 また、今後の開催地については、平成12年度(第9回)は徳島県、平成13年度(第10回)は神奈川県が既に決定されているところであるが、平成14年度以降の開催を希望する場合は、早期に全国ボランティアフェスティバル推進協議会(事務局:全国社会福祉協議会)へ要望するとともに、社会・援護局地域福祉課へもその旨連絡願いたい。
 
(イ) ボランティア活動保険
 ボランティア活動保険は、ボランティア活動を行う者が、その活動中の事故に伴う傷害、損害を補償するものとして、全国社会福祉協議会と民間損害保険会社との契約に基づき、市区町村社協を受付窓口として運営されている。
 都道府県・指定都市・中核市においては、ボランティアが安心して活動に取り組むことができるよう、ボランティア活動保険の普及等について配慮されたい。

(3) 民生委員活動の推進

 民生委員活動の充実
 民生委員は、社会奉仕の精神をもって、地域住民に最も身近なところで相談・支援活動を行っているが、今後はより地域住民の立場に立ち、地域の福祉需要に即した相談・支援活動を活発に行っていくことが求められている。
のため、社会福祉基礎構造改革においては、このような時代の変化に対応した民生委員活動を行えるようにするため、民生委員の基本的な性格の見直しを含めた民生委員法の改正を行い、民生委員活動の強化を図ることとしている。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、これらの動向を踏まえ、今後とも民生委員活動の円滑な遂行と充実が図られるよう努められたい。
 なお、平成11年度の全国民生委員児童委員大会は、長野県において開催することとしているので了知願いたい。
 
(参考)「平成11年度第68回全国民生委員児童委員大会」の開催日程等
日 時 平成11年11月17日(水),18日(木)
会 場 「長野県県民文化会館」(長野市)他
 
 人権・同和問題に関する理解の促進等
 民生委員法においては、民生委員の職務の遂行に当たり、個人の人格の尊重、差別的な取扱いの禁止について規定している(第15条)。全ての民生委員が、研修等を通じて人権問題や同和問題についての理解と認識を一層深めるとともに、日の活動において、基本的人権の尊重や差別意識の解消に向けて、積極的に実践していくことが必要である。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、今後とも民生委員に対する人権・同和問題に関する理解と認識を深めるための研修等の充実強化に努め、その実施に当たっては、都道府県・指定都市民生委員児童委員協議会等と連携し、積極的な指導について配意願いたい。
 また、昨年12月には、3年に一度の一斉改選が行われたところであり、今回新たに委嘱された民生委員に対する研修については、特に配慮願いたい。

(4) 緊急経済対策について

 緊急経済対策(平成10年度第3次補正予算)による「生活福祉資金の業務システムの開発・機器整備」及び「ボランティア情報ネットワーク事業」については、これまでに、大半の都道府県で補正予算化に向け迅速に対応をいただき、感謝申し上げる。
(資料参照)
 なお、一部に、未だ補正予算化の対応をされていないところが見受けられるが、業務処理の正確化、迅速化、省力化に資するのみでなく、緊急経済対策として景気の回復を実現するため実施するものであり、その趣旨をご理解いただくとともに、地方負担分についても、応分の地方交付税の財政措置がなされるので、その旨財政当局に説明の上、早期に対応されるよう協力方を強く要請する。
 特に、「ボランティア情報ネットワーク事業」については、市区町村社会福祉協議会も事業の対象となることから、負担を行う管下市区町村へもその趣旨等を周知のうえ本年度の補正予算化をされるよう、指導・協力方をお願いしたい。この市区町村分についても応分の地方交付税の財政措置がなされるので、念のため申し添える。

7 地域福祉権利擁護事業について (地域福祉課)

(1) 事業の必要性
 痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者など、判断能力が不十分であるため、福祉サービスを十分に活用できないといった問題や、身の回りのことや金銭管理ができないなど危機的な状況で日常生活を送らざるを得ない事例が増えている。
 
 一方で、福祉サービスの利用にあたっては、介護保険制度をはじめとして、個人の自立支援、利用者による選択の尊重などの観点から、個人が自ら福祉サービスを選択し、それをサービス提供者との契約により利用する制度を基本とする方向で見直しが図られつつあることから、個人の立場に立って適切な福祉サービスの利用援助を行うことにより、できる限り自立した地域生活が送れるよう支援する仕組みの構築が急務となっている。
 
 中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会の中間まとめ(平成10年6月)においても、現在法務省で検討されている新しい成年後見制度の早期導入とあわせて社会福祉の分野においても、判断能力が不十分な者の権利を擁護し、各種サービスの適正な利用などを援助する制度の導入、強化を図るべきであるとの指摘がされたところである。 (「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)」〜抜粋〜 資料1)
 
 このような状況を踏まえ、厚生省においては、こうした事業を構築するための基本的な枠組みについて検討するため、外部有識者から成る「社会福祉分野における権利擁護を目的とした日常生活支援に関する検討会」を設置した。
検討会では、平成10年7月に第1回を開催して以降、5回にわたり審議を行い報告をまとめたところである。(平成10年11月) (「社会福祉分野における権利擁護を目的とした日常生活支援に関する検討会」の報告資料2)
 
 このような検討を踏まえ、判断能力が不十分な者に対する福祉サービスの利用援助等が、全国どこでも利用できるよう、社会福祉協議会等を中心に、その体制整備を図るため、所要の経費を補助する「地域福祉権利擁護事業」を平成11年度から実施することとしている。(平成11年10月実施(予定)) 各都道府県におかれては、本事業の重要性に鑑み、早急に実施体制の整備に努められたい。
 
(2) 実施に向けての今後の予定
判断能力が不十分な者に対する福祉サービス利用援助について、福祉関係者が取り組みやすくするため、社会福祉事業法上、社会福祉事業として位置付け、社会福祉協議会の広域的な活動を推進するための措置など、所要の改正を予定している。
 また、今後、事業の実施に向けて、以下の事項について検討を進めることとしている。
 
1) 施設入所者の取扱い
2) 判断能力の評価に関するガイドライン
3) 専門員、生活支援員の研修課程
4) 契約書等の諸様式の開発 等
 
 なお、本事業についての担当者向けの会議を、本年3月までの間に開催することを予定しているので、担当者の出席方についてお取り計らい願いたい。

 

8 生活福祉資金貸付制度の運営について(地域福祉課)     

(1) 制度の効果的運営
 経済的自立と生活意欲の助長促進等を図ることを目的として運営されている生活福祉資金貸付制度は、平成9年度には、約17千件、約160億円の貸付けを行うなど低所得対策等の中核的な施策として大きな役割を果たしている。
 また、阪神・淡路大震災に際して特例措置を実施する等、生活福祉資金は低所得世帯等のために極めて大きな役割を果たしているだけでなく、その時々のニーズにも的確、機動的に対応した措置を講じてきたところである。
 近年の貸付状況を見ると、修学資金は伸びているものの更生資金や住宅資金等は若干減少している。
 本制度は、世帯の自立及び生活のための援助に役立てるための制度であるので、その運営を担っている管下都道府県・市区町村社会福祉協議会に対し、制度の積極的な広報、啓発等を一層徹底するとともに、民生委員をはじめ関係機関等との連絡・調整を密にし、対象世帯の貸付需要に適切かつ円滑に対応できるよう指導の徹底を願いたい。
 
(2) 制度の改善
 平成11年度予算(案)においては、修学資金の自宅外の創設、技能習得費貸付限度額の引上げを行うこととしているので、対象世帯の貸付需要等に適切に対応できるよう、管下都道府県・市区町村社会福祉協議会及び民生委員をはじめ関係機関等に対する周知及び指導の徹底を願いたい。
 また、低所得世帯等の資金需要に応ずるとともに、修学資金の自宅外創設等に対応するため、貸付原資の追加を予定しているので、各都道府県においても所要の財政措置について特段の配意を願いたい。
 
(3) 債権管理強化推進事業の創設
 生活福祉資金貸付事業は、給付事業とは異なり、一定の財源をより多くの人々が繰り返し使用する(償還金を原資として新たな貸付を行う)ことで制度が成り立つものであり、延滞債権の調査、督促、回収、不良債権の償却等を行い、回収された債権等を改めて貸付金として使用することにより、はじめて適正かつ効果的な運営が図られるものである。
 加えて、延滞等が生じた場合には、その理由を把握し、支払猶予等といった対応はもとより、必要に応じて関係機関等と連携し、他の福祉サービスの利用を促す等、自立や社会参加に向けての援助指導も制度の重要な目的とされている。したがって、債権の管理が不十分であれば、防貧施策としての制度本来の目的を達し得ないこととなる。
 そのため、従来の活性化モデル事業を廃止し、債権管理強化推進事業を創設することにより、督促等の償還指導等が適切かつ迅速に行われるよう、債権管理体制の強化を図り、もって貸付原資の有効活用を図るものである。

9 地方改善事業の推進について(地域福祉課)

(1)地方改善事業の推進

 一般対策としての地方改善事業
 地方改善事業については、平成9年4月に一般対策に移行され2年が経過しようとしているが、今後の施策ニーズには必要な各般の一般対策によって的確に対応していくことが重要であり、なお残されている課題については、これまでの成果が損なわれるなどの支障が生ずることのないよう、地域の状況や事業の必要性に応じて施策を実施するなど、人権・同和問題の早期解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。
 
(ア)地区道路・橋梁等整備事業
 地区道路等の地方改善施設(設備)整備事業については、法期限内に実施できなかった事業や新たな幹線道路整備に伴うアクセス道の必要性等を勘案し、平成11年度予算(案)においても、各地方自治体の要望も踏まえた上で所要の整備量を確保しているので、管下市町村の整備需要を的確に把握し、計画的に整備を進められたい。
 なお、地域改善対策の一般対策移行分については、平成9年度以降の5年間に限り補助率を3分の2としている。
 
(イ)隣保館整備事業
隣保館整備事業については、一般対策移行後は、社会福祉施設等施設(設備)整備費補助金において整備事業を実施しており、平成11年度予算(案)においても、各地方自治体の要望に応えうる額を確保したところである。
 また、一般対策移行の際、老朽施設に対する増改築等や社会福祉施設並びで昇降機設備やスロープの改築等を新たに補助対象(補助率2分の1)としているので市町村に対し制度の周知及び活用について、引き続き指導願いたい。
 なお、地域改善対策の一般対策移行分については、平成9年度以降の5年間に限り補助率を3分の2としている。
 
(ウ)隣保館運営事業
 隣保館は、周辺地域の住民を含めた地域社会全体の中で、生活上の各種相談事業をはじめ社会福祉に関する総合的事業の推進や同和問題をはじめとする人権啓発の住民交流の拠点となる開かれた福祉センター(コミュニティーセンター)として、極めて重要な役割を担っている。
 それらを踏まえ、隣保館の運営については、平成11年度予算(案)において、地域福祉事業(隣保館デイ・サービス事業)及び広域隣保活動事業の拡充を図ったほか、運営単価についても所要の改正を図ったところであるので、事業の積極的な実施をお願いしたい。
 併せて、一般対策移行時に創設された3事業(地域交流促進事業、継続的相談援助事業、広域隣保活動事業)についても、引き続きその定着を図るとともに、隣保館活動における重要な課題である高齢者、障害者在宅福祉対策についても一般施策の一層の活用が図られるよう特段の指導を願いたい。
 
 地域改善対策特定事業(経過措置・生活相談員設置事業)平成9年3月の「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律」により経過措置対象事業となっている生活相談員設置事業については、平成13年度をもって終了することとしているため、本事業について、計画削減が円滑に行われるよう対象市町村を指導願いたい。
 
 ウタリ福祉対策事業
ウタリ福祉対策については、ウタリ集落の生活環境の改善を図るため北海道庁において策定された「第4次ウタリ福祉対策」(平成7〜13年)の実施とあわせ、平成9年5月に制定されたいわゆる「アイヌ新法」の趣旨を踏まえ、アイヌの人々の福祉の向上、生活環境の改善等に向けた事業の推進に努めることしている。
 
(ア)地区道路・橋梁等整備事業
地区道路等の施設整備事業については、平成11年度予算(案)においても所要の整備量を確保しているので、管下市町村の整備需要を的確に把握し、計画的に整備を進められたい。
 
(イ)生活館整備事業
生活館整備事業については、平成10年度以降、社会福祉施設等施設(設備)整備費補助金において整備事業を実施しており、隣保館と同様に老朽施設に対する改築費等を新たに補助対象としているので関係市町村に対し、制度の周知及び活用について引き続き指導願いたい。
 
(ウ)生活館運営事業
生活館運営事業については、アイヌの人々を中心とした地域住民に対する相談事業や地域交流事業等を実施しているが、生活館を中心としたアイヌの人々の生活の改善、啓発等の活動を一層推進されるよう指導願いたい。

(2)人権・同和問題に関する啓発等の推進

 人権が守られ同和問題など差別のない公正な社会を実現するため、人権教育や啓発、研修のもつ意義は大きいものがあるが、各地方自治体においても「人権教育のための国連10年」をはじめ、心理的差別の解消に向けての取組が積極的になされることが重要である。
 研修の充実及び職員採用選考時における指導・啓発
管下行政関係職員をはじめ社会福祉・保健衛生に携わる関係者等に対し、積極的な啓発・研修を通して人権・同和問題に関する理解が深められるよう指導願いたい。
 また、先般一部地域において、調査会社による就職差別につながるおそれのある身元調査事案が発生したが、一般に職員採用選考時において、応募者の本籍、生活状況、家族の職業などを調査することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握することとなり、結果として、就職の機会が閉ざされるという就職差別につながるおそれがあるものである。このため、社会福祉法人等の関係団体に対し、身元調査を行うことなく、応募者の適性と能力を基準として採用選考を行うよう機会を捉えて指導・啓発を行われたい。
「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画
 平成7年から「人権教育のための国連10年」の取組が開始されているが、政府では平成9年7月4日に国内行動計画を策定し、「重要課題への対応」として、「同和問題」、「アイヌの人々」が位置付けられたところである。ついては、隣保館における総合的な活動の推進やアイヌの人々に対する歴史・文化・伝統等への理解と認識を深めるなど国内行動計画の趣旨に沿った教育及び啓発が推進されるよう各般の指導を願いたい。
 なお、平成8年に成立した人権擁護施策推進法に基づき、法務省に設置された人権擁護推進審議会において平成9年5月以降、1)人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項については2年を目処に、2)人権が侵害された場合における被害者の救済に関する基本的事項については5年を目処に答申等がなされることとなっているので、その動向等についても注視されたい。

 

10 消費生活協同組合の指導・育成について(地域福祉課)

(1)生協を取り巻く環境の変化と「生協のあり方検討会」の報告

 昨年は、消費生活協同組合法(以下「生協法」という。)が制定されて50周年という、生活協同組合(以下「生協」という。)にとってまさに節目の年を迎えたところである。
 今日、生協法に基づき設立されている生協は約1,200組合、組合員数は延べ約4,500万人にも及んでおり、その事業の範囲は、共済事業や供給事業をはじめ各種利用事業等幅広い分野に及び、契約高や事業高においても膨大な額に上っている。
 しかしながら、経済のグローバル化、深刻な経済状況といった中で、経済社会全体が大きな転換点を迎えており、生協を取り巻く経営環境はますます厳しい状況となってきているところである。
 一方、少子高齢化の進展等により、福祉需要が増大、多様化してきており、介護保険の導入を控え、生協の保健・福祉活動への取組が活発になる等新たな福祉需要への対応が求められている。
 このような時代の変化を受け、今後の生協の適正かつ健全な運営に資するため、昨年1月、有識者、生協関係者からなる「生協のあり方検討会」を設置し、今後の生協のあり方について、総合的な観点から御議論をいただき、昨年6月にその報告をいただいたところである。
 その報告の中では、まず、生協を取り巻く社会環境の変化の中で、生協の存在意義を改めて問い直すべきだとの指摘がなされている。
 その観点から、生協は、同じニーズを抱える人々の共助組織であり、今日の社会では、自助、公助に加え、共助の役割がますます増大しているが、生協の事業活動は、こうした自発的な共助の仕組みそのものであるとし、共助活動としての生協の意義が明確に提示されている。そして、今後の生協の役割としては、安全、安心、安価という従来からの役割に加え、福祉事業、環境問題、コミュニティへの貢献等が期待されるとしている。
 その上で、このような生協の役割を的確に果たしていくためには、まず第一に、何よりも組合員のニーズに合致した事業を追求していくこと、第二に、組合員の意思が反映される民主的な運営が図られるべきこと、第三に、厳正な経営責任体制の下での健全な運営が図られるべきであるとの指摘がなされているところである。
 このように、生協を取り巻く社会環境は、近年大きく変化してきているが、生協に対する国民の期待は、ますます増大していくことが予想される。所管行政庁としては、こうした時代に対応した生協活動の育成支援に努めるとともに、組合員の保護を図るという観点から、生協が健全に運営されるよう適切な指導を行う必要がある。
 なお、この検討会の報告を踏まえ、現在進められている「社会福祉基礎構造改革」に関連し、生協についても、生協法の体系の中での福祉事業の位置付けや情報開示のあり方等について検討を行っているところである。

(2)健全な運営の確保

 健全な管理運営
 生協は生協法に基づく特別の法人であり、税制面においても普通法人に比べ優遇されているように、その社会的責務は非常に大きく、責任ある経営が求められるところである。
 したがって、生協の管理運営に当たっては、適正な執行と事業の健全性の確保が必要であり、所管行政庁においては、設立認可はもとより、新規事業の許認可に際しても、この点に留意の上、十分な検討及び審査をお願いする。
 また、許認可に関わらず、事業毎の収支の明確化や組合員に対する情報開示等生協法の趣旨に則った運営がなされるよう、日常的な指導についても、積極的に行われるよう併せてお願いする。
 
 運営への組合員の参加
 一部の生協にあっては、組織の巨大化に伴い、組合員による運営が形骸化し、役員の独断専行による生協の私物化という不当な運営の事例、過度の設備投資が運営を圧迫し、解散せざるを得なくなった事例等が見受けられる。こうした問題の発生は、それぞれの生協が、もう一度原点に立ち返り、運営のあり方、資産管理のあり方等について、組合員の視点から再点検すべきことを求めているものと言える。
 生協は、相互扶助の精神に基づき協同して事業を行う自主的な組織体であり、役員は組合員からの付託により経営を任されているに過ぎない。したがって、理事会等執行機関は、常に組合員からの要望を汲み上げ、組合員の需要に応えるべくその事業を展開することが求められる。また、最近においては、組合員の参加意識が希薄化し、生協自体の組合員に対する求心力が急速に低下しているものも見られ、生協が単なる事業の利用の場となっている傾向がある。
 ついては、人と人との結合並びに相互扶助という生協の基本理念に則って、組合員に対する十分な情報提供や知識の向上に努め、生協の運営に関し、組合員が自由に積極的に参加することができるよう特段の指導をお願いする。

(3)指導体制の確保等

 都道府県においては、以上の観点等から指導体制の確保に努めるとともに、管下生協に対し、計画的かつ効果的な実地による検査指導を行うこと等により、組合の健全経営、組合員管理、員外利用の防止、組合員借入金の適正な管理等について、法令等に則った適切な指導に当たられたい。
 現在、生協の約3割が赤字経営と言われているが、経営が悪化している生協、特に、累積赤字を抱えている生協については、事業改善計画の策定等による経営の健全化に向けた指導に留意されたい。
 さらに、一部生協においては不適切な財務処理を行っているところも見受けられるので、指導に当たっては「消費生活協同組合財務処理規則」等に基づき、適正な財務処理は勿論のこと、組合員への透明性の確保等が図られるよう、当該生協の債権債務の状況、経理処理等財務内容を重点的に指導されたい。

(4)政治的中立の確保

 本年4月には統一地方選挙が予定されているところであるが、生協の政治活動については、誤解や批判を招くことのないよう、生協法の趣旨に照らし、政治的中立の確保が図られるよう特段の指導をお願いする。

 

今後の生協のあり方について(要旨)

1 生協を取り巻く環境の変化

○ 国民の求める豊かさの変化、少子高齢化・女性の社会進出等生活基盤の変化を背景として、同じ要望を抱える人々同士の相互扶助(共助)の仕組みである生協への期待が大きく増大。

○ 一方で、経済の停滞、一層の競争激化の中、組合員の参加意識の希薄化、独自性の低下など生協を取り巻く経営環境は大きく変化。

2 生協の意義と役割

(1)生協の意義

○ 生活の安定と生活文化の向上を図るため、組合員の相互扶助の精神に基づいて、協同して事業を行う非営利の組織。

○ 今日の社会では、自助、公助に加え、相互扶助(共助)の役割がますます重要になっているが、生協の事業活動はこうした自発的な共助の仕組みそのもの。

(2)生協の役割

1)安心や安全の追求

○ 消費者、生活者の要望を先取りし、民間市場では提供されていない財・サービスに対する積極的な事業展開に取り組んでいくことが必要。

○ 介護等の各種の生活保障への需要が増大。

2)環境問題への取組

○ 持続可能な発展を実現するため、環境問題に配慮した商品の開発・普及やリサイクル等への取組への一層の促進が重要。

3)コミュニティへの貢献

○ 地域に根ざした様々なコミュニティ活動を促進し、生協に対する地域住民の信頼を確かなものにしていくことが重要。

4)生協の福祉事業に期待される役割

○ 介護サービスの供給体制の充実が焦眉の急。在宅介護サービスに対する多種多様な提供主体のひとつとして生協に大きな期待。

○ 介護保険法の施行をにらみつつ、社会的要請の強い介護サービスについては正当な理由がある場合として組合員以外の利用を認めるなど適切な措置が講じられるべき。

3 生協運営の基本方向

○ 第一に、組合員の切実な要望に合致した事業の追求。
  第二に、組合員の意思が反映される民主的な運営。
  第三に、厳正な経営責任体制の下での健全な経営。

(1)組合員の意思が反映される運営の確保

1)組合員の参加

○ 組合員の参加を促進するには、組合員の切実な要望を的確に把握すること。個々の組合員の意思を適切に反映できる組織のあり方について工夫が必要。

2)情報の開示

○ 生協が地域社会に開かれた社会的存在として、地域社会での一層の信頼を得るためには、生協の組織内外に向けての情報開示が必要。

3)組合員の研修の充実強化
4)政治的中立の原則

(2)経営体制の強化と責任体制の明確化

1)経営・財務体質の強化

○ 組合員の要望に応えた事業の展開には、事業が健全かつ的確に運営されていることが不可欠。長期の経営戦略に則った経営・財務体質の強化も必要。

○ 財政基盤の強化のためには、出資金の額や出資口数の見直し等組合員からの拠出資金の拡大に努めることが必要。

2)役職員の教育・研修体制の充実強化
3)事業者間、地域コミュニティ、国際的な協同組合間の連携
4)責任体制の確立

○ 生協運営の健全化のため、理事や理事会の責任と構成の明確化、監事の責任の明確化、内部牽制体制の強化、組合員の少数意見を尊重する仕組み、一定規模以上の事業者に対する公認会計士等第三者による監査の導入等について、生協の自律性にも配慮しつつ、商法に準じて必要な法的措置を含めた検討を行っていくべき。

○ 長期共済事業を行っている生協についても、基本的運用方針を定める「資金運用委員会」の設置など、資金運用体制の確立と責任の明確化、専門家の養成・確保が緊急の課題。運用体制の確立と運用能力の向上を踏まえて、運用方法の弾力化等の措置も講じられていくことが必要。

5)事業区域

○ 生協の事業区域は、取引をめぐる環境の変化を見守りつつ、民主的な運営が図られ組合員の主体性が実質的に確保されるかどうかという観点を踏まえて検討すべき。

6)組合員利用の原則

○ 組合員利用の原則は堅持されるべき。その上で、介護サービスや災害時における取組など社会的要請への対応には配慮が必要。


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