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3 生活保護制度の運営について (保護課)

(1)平成11年度生活保護基準の改定

 平成11年度の生活扶助基準については、平成11年度の政府経済見通しを基礎とし、一般国民の消費動向を総合的に勘案して、0.3%の改定を行うこととしている。
 これにより、平成11年度の1級地の1の標準3人世帯の生活扶助基準は16万3806円となる。

標準3人世帯(33歳男・29歳女・4歳子)
  平成10年度 平成11年度
1級地−1 163,316円 163,806円
1級地−2 155,967 156,435
2級地−1 148,618 149,063
2級地−2 141,268 141,692
3級地−1 133,919 134,321
3級地−2 126,570 126,950

 世帯人員別の生活扶助基準については、家計の弾力性に乏しい少人数世帯の特性や世帯人員別の消費構造の差異を勘案し、一般世帯における世帯人員別の消費支出の実態に合わせるよう是正を図ることとしている。
 
 なお、生活扶助基準以外の他の扶助基準等については、これらの扶助の性格を踏まえて各種実態料金の状況等を総合的に勘案し、所要の改善を図ることとしている。

(2)生活保護の動向

 最近の保護動向をみると、全体的な動向としては増加傾向で推移し、被保護人員は平成10年3月現在で約92万人、保護率も平成10年1月以降、7.30/00に上昇している。
 また、被保護世帯数については、平成5年度より増加傾向で推移しており、平成10年3月現在で約64万5千世帯となっている。保護動向に影響を与える主な要因としては、景気の動向等の経済的要因、高齢化の進行や核家族化等の社会的要因、他法他施策の整備状況、実施機関の適正実施の取組等が考えられるが、景気の低迷状態が長引いて極めて厳しい状況にあり、また完全失業率もこれまでの最高水準で推移していることから、これらの動向を注視していく必要がある。

(3)生活保護の適正実施の推進等

 生活保護の適正な運営については、各都道府県、市において格段の御努力をいただいているところであるが、引き続き福祉事務所として組織的な対応を図るとともに、保護の受給要件の的確な把握、年金・社会保険等他法他施策の活用、きめ細かな面接相談と実態に応じたフォローアップ等を図り、国民の理解と信頼を失うことのないよう、制度の適正かつ円滑な実施について管下実施機関を指導されたい。
 
 医療扶助については、保護費負担金の約6割が医療扶助費であり、被保護者の約8割が医療扶助を受給していること、また、保護開始時の約8割が傷病を原因としていることなどからも明らかなように、本制度における医療扶助の占める割合は大きく、その適正運営は制度全体に大きな影響を与えている。
 このため、従来からレセプト審査や指定医療機関の指導・検査に御努力いただいているところであるが、今後とも、なお一層の充実強化を図られたい。
 また、現在、現行医療券の様式の見直しについて検討を進めているところであるが、この見直された医療券により医療扶助を実施する場合、福祉事務所におけるレセプト審査が極めて重要となることから、今までにもましてレセプト審査体制の確保に努められたい。
 
 被保護世帯のうち高齢、母子、傷病障害世帯などの要援護世帯の占める割合が年々増加しており、これらの世帯の実情に対応したきめ細かい適切な処遇を図る観点から、
1)世帯の生活実態の把握の徹底
2)他法他施策の活用及び関係機関との連携の充実強化
3)研修等を通じた査察指導機能及びケースワーク技術の向上
4)職員の資質の向上
等に積極的に取り組むよう管下実施機関を指導されたい。

(4)生活保護費補助金について

 平成10年度第3次補正予算の執行について
 平成10年度第3次補正予算においては、生活保護制度における介護扶助の円滑な実施を推進するため、生活保護の事務処理を行う電子計算機システムの改善等を図る「生活保護電算処理システム整備費」(1,134,994千円、補助率1/2)を計上したところである。
 本経費の執行に当たっては、各都道府県、指定都市、中核市等に対し、本年度末までの短期間における補正予算の計上、契約、事業実施等の緊急対応を依頼しているところであるが、政府における緊急経済対策の一環であることも踏まえ、各地方公共団体における理解と協力を願いたい。
 
 平成11年度予算(案)について
平成11年度予算(案)においては、介護扶助事務の円滑な実施を図るため、福祉事務所現業員等を対象として都道府県、指定都市及び中核市本庁が行う介護扶助準備説明会等の開催経費(6,640千円、補助率1/2)を計上しているので了知されたい。

(5)介護扶助の施行について

 介護扶助の創設を内容とする生活保護法の一部改正が、平成12年4月1日に施行される。この改正は生活保護法の施行以来最大の改正であり、施行に向けて、平成11年度においては、介護扶助の現物給付を委託する指定介護機関の指定に関わる事務、介護扶助の審査支払にかかる国保連との委託契約の締結、被保険者以外の者(40歳以上65歳未満の被保護者で医療保険未加入のため、介護保険の被保険者となれない要介護者)にかかる要介護度判定のための審査判定を町村の介護認定審査会へ委託する事務など、各般にわたる準備事務が必要である。
 現在、国においては政省令の整備や、実施にかかる具体的な事務処理手順について検討を進めているところであるが、各都道府県市においても、施行に向けた組織体制の強化など本制度の円滑な施行に向けた万全の準備についてご配意を煩わしたい。

4 婦人保護事業の推進について(保護課)

(1)婦人保護事業に係る取組の強化

 最近の売春を取り巻く状況は、社会・経済情勢の変化や国民の性に対する意識の変化等を反映して、売春形態の多様化や潜在化が進み、その対応は複雑、困難化している。
 このような状況を踏まえ、売春の未然防止等に重点をおいた事業運営を図る観点から、各都道府県においては、婦人相談所や婦人保護施設の職員、婦人相談員等の資質の向上、啓発活動の積極的推進、関係機関の連携体制の強化等を推進し、要保護女子への相談、援助等に積極的に取組まれたい。

(2)男女共同参画審議会の動向

 平成9年6月に総理府の男女共同参画審議会に設置された女性に対する暴力部会において、売買春その他の女性に対する暴力に関する調査審議が行われてきたところであるが、平成10年10月30日に同部会から中間取りまとめが公表された。その中で、特に婦人保護事業の関係では、主に次のような内容が取り上げられているところである。
 
(参考)男女共同参画審議会女性に対する暴力部会の中間取りまとめ(抄)
(平成10年10月30日男女共同参画審議会女性に対する暴力部会)
 
V 女性に対する暴力への対応の現状と問題点
○ 被害者の援助・サポート関係
社会的に、被害者に対する精神的な援助、心身の安全の確保や自立に向けてのサポートなど適切な対応が必要であること。
・公的機関の活性化が必要
−売春防止法に基づく一時保護機能を有する婦人相談所における対応の限界
 
VI 当面の取組課題
○ 女性に対する暴力を扱う関係機関、団体、専門家等が効果的に機能するようその実効あるネットワークを確立すること。
・売春防止法に基づく婦人相談所の役割も含め、女性に対する暴力の現状に対応する公的機関のあり方についての検討
−被害女性に接する職員の意識啓発、研修や職員の配置にあたっての十分な配慮
 
 同部会においては、今後、関係各者から寄せられた情報を参考に更に審議を進め、部会報告及び審議会答申を取りまとめる予定とされており、婦人保護事業についても、同部会における調査審議の動向を踏まえて対応を検討していきたいと考えている。

5 災害救助法の運用について(保護課)

(1)災害救助法による応急救助は、発災直後の混乱状況下における被災者の保護と社会秩序の維持を目的とし、大規模な災害が発生した場合において、被災者の救出、食品及び飲料水の供給、避難所及び応急仮設住宅の設置、救護班による医療等を応急的に行うものであり、災害応急対策において極めて重要な役割を担うものである。
 
(2)災害は、全国各地域において毎年発生しているところであり、災害救助法による応急救助の迅速かつ的確な実施が要求されるため、平素からその実施体制を確保しておくとともに、管下市町村に対する指導の徹底を図られたい。特に、発災時には平常時には予想していない事態が生じることも考えられるので、交通手段や連絡手段の途絶も想定した職員の参集体制や関係機関間の連絡体制について予め定めておくとともに、管下市町村にもその指導の徹底を図られたい。
 
(3)災害が発生した際には、災害救助法による救助の実施について速やかに判断する必要があること、また、応急救助の程度、方法や特別基準の要否等の実施方針を迅速かつ的確に策定し、これを踏まえて国、都道府県が一体となって対応する必要があることから、被害状況を迅速に把握し、とりあえず厚生省に第一報を入れる等、遅滞なく報告するとともに、その後も連絡を密にして救助に当たられるよう特にお願いする。
 
(4)救助の程度、方法及び期間等を定めた基準のうち、応急仮設住宅の供与については、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、通産省及び建設省と合同で適切な住戸プラン、面積、仕様等について調査検討した結果を受けて、平成11年度基準改定において1戸当たりの設置費を2,034千円から2,498千円に改定することとしている。
 
(5)災害弔慰金及び災害障害見舞金の支給並びに災害援護資金の貸付については、発災直後の極めて混乱した状況の下で、迅速、的確に事務を遂行する必要があるため平素から実施体制の確保について十分配慮し、管下市町村の指導の徹底を図られたい。


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