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7.高齢者向け民間サービスの健全育成等について


 近年の高齢者をめぐる社会、経済状況の変化を背景に、高齢者の生活福祉に係る要望は高度化・多様化し、普遍化している。公的部門では、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の見直し(新ゴールドプラン)により、国民生活の基盤となる施策の一層の推進を図っているところであるが、これとあいまって、多様かつ高度な要望に応えるためには、民間部門の創意工夫を生かした高齢者向け民間サービスの発展が不可欠であり、その健全な育成を推進しているところである。
 高齢者向け民間サービスの健全育成については、国、地方公共団体が行政指導を行う際の指針(事業分野ごとのガイドライン)を策定しているところであり、今年度については日帰り介護(デイサービス)及び短期入所生活介護(ショートステイ)の事業指針(ガイドライン)を策定した。
 また、平成12年度より介護保険制度が施行されることとなり、介護サービスの基盤整備が重要な課題となるが、特に在宅サービスの分野については、増大する介護需要に的確に対応し、多様な主体による機動的、弾力的なサービスの確保を図る観点から、株式会社、農協、生協、住民参加型非営利組織等の多様な民間事業者の積極的な参入が期待されるところである。
 介護保険制度においては、公民の主体の種別を問わず、原則として同じ条件を満たした事業者が在宅サービスに参入できることとなることから、介護保険制度導入前においても在宅福祉サービスにおける民間活力の活用を一層推進することが重要である。

(1)民間事業者による在宅福祉サービス事業の育成

ア 民間事業者への委託の推進
 在宅福祉事業を効果的に実施する上で、機動的、弾力的なサービスの確保を図る
 観点からも、民間事業者を積極的に活用することが期待される。老人保健福祉計画の実効ある推進を図り、今後増大、多様化する介護需要に的確に対応していくためにも、在宅福祉サービスの実施に当たっては、管内民間事業者の実態把握に努め、管下市町村に情報提供をするとともに、民間事業者への業務委託を積極的に推進するよう管下市町村に対し指導されたい。

イ 過疎地域等在宅保健福祉サービス推進試行的事業の実施
 民間事業者等による24時間対応を含めた訪問介護、訪問入浴サービス等を試行的に実施し、民間企業、農協、生協、住民参加型非営利組織等の民間事業者を過疎地域等において活用する際の課題や問題点を把握する「過疎地域等在宅保健福祉サービス推進試行的事業」を今年度より実施しているところである。
 本事業については、平成10年度においても引き続き実施することとしているところであり、各都道府県の積極的な活用を図られたい。

ウ 都市部等住民参加型在宅保健福祉サービス推進試行的事業の実施
 指定都市等の都市部等における在宅保健福祉サービスについては、公的福祉サービスの他に、よりきめの細かな在宅福祉サービス活動を提供する住民参加型非営利組織等が増加してきている。
 このため、介護保険制度の円滑な導入に向け、都市部等において、住民参加型非営利組織や生協等の積極的な参加による訪問介護(ホームヘルプ)サービスを提供する事業を試行的に実施するとともに、これら団体の活用に当たっての課題や問題点を把握することを目的に、平成10年度より本事業を実施することとしている。
 当事業におけるサービス事業者については、住民参加型非営利組織や生協等の民間非営利組織とすることを予定しているところであるが、この要件も含めた実施要綱等の詳細については、平成10年度予算成立後早急にお示ししたいと考えている。
 なお、介護保険制度においては、法人格を有しない住民参加型非営利組織も在宅サービスの提供主体となることができるが、その際のサービス費用の支払方式は償還払いとされているところであるため、当事業において利用券(バウチャー)を使用した償還払い方式を試行的に実施することも検討している。

(2)有料老人ホームの健全育成について

 有料老人ホームは、自由契約による民間の事業として行われているが、国としては事前届出制、指導指針による行政指導、民間事業者による質の向上のための自主的な取組の促進、政策融資等の誘導措置により健全育成を図っているところである。

ア 有料老人ホームに対する指導
(ア)我が国の高齢化が急速に進展する中で、高齢者の老後の生活の場としての有料老人ホームの重要性は今後ますます高まっていくものと考えられる。こうした中で、公正取引委員会が、個別の有料老人ホームに対し実態と表示に乖離があり不当表示のおそれがあるとの警告を行うとともに、「有料老人ホームにおける消費者取引の適正化について」(平成9年6月公正取引委員会)により、終身利用型の有料老人ホームにおける介護体制の整備、積極的な情報開示、有料老人ホームの類型の見直しの必要性等について指摘するなど、有料老人ホームの運営について一層の適正化を図ることが強く求められている。
 このような状況を踏まえ、利用者の適切な選択を確保する上で必要な情報の開示をより一層推進すること等を目的として、平成9年12月19日付で老人福祉法施行規則を改正するとともに、有料老人ホーム設置運営指導指針等を改正したところであり、平成10年4月以降は新指導指針等に基づく指導の徹底を図られたい。
(イ)今般改正された新指導指針においては、介護専用型有料老人ホ−ム及び介護付終身利用型ホームは、他の有料老人ホームに比べ、より一層充実した介護体制、施設運営の適正を確保する必要があることから、1年毎の実施計画を立てるなどにより定期的な立入調査を実施するとともに、他の型のホームについても定期的な立入調査を実施するよう求めているところである。各都道府県におかれては定期的な立入調査等の計画を策定するとともに、立入調査等に当たっては、特に介護サービスをはじめ入居者に対するサービスが当該指針を満たし、適切に行われているかという点に重点を置いて実施されたい。
 また、新指導指針においては、利用者に対する情報提供を図るため、各ホームの情報開示等の状況を取りまとめた「有料老人ホーム情報開示一覧表」を作成し、管下市町村、福祉事務所等に配布、公開することとしているので、その作成、公開等につき徹底を図られたい。
(ウ)有料老人ホームの設置に関する相談については、建設担当部局等との十分な連携を図り、建設計画を事前に把握するとともに、設置予定者から設置運営に対する考え方、資金計画等についてその内容を聴取のうえ行われたい。
(エ)近年、経営破綻をきたし、入居者に大きな影響を及ぼした有料老人ホームがあることから、各都道府県におかれては、有料老人ホームの経営状況等を改めて点検するとともに、その際、不適切な経営状態のところがあれば、その原因を解明し対処方針等を報告させるなど、早急な対応を行うよう願いたい。
(オ)平成10年度から各都道府県の有料老人ホーム担当職員に対する研修を実施する方向で検討しているのでその旨ご承知おき願いたい。

イ 介護費用の調整に関する指導
 介護保険制度において、有料老人ホームが特定施設入所者生活介護の指定事業者として保険給付の対象である介護サービスを行う場合には、有料老人ホームが徴収する介護費用について介護保険の給付対象部分との調整が行われていることが必要となるものである。具体的な調整は、最終的には契約当事者である施設と入居者に委ねられるものであるが、現在行っている介護サービスの実態調査(実施:(財)長寿社会開発センター(有料老人ホーム介護サービス調査委員会(座長:堀 勝洋上智大学教授))の結果等を踏まえ、調整方法に関する考え方を提示することとしている。
 調整に当たっては、今後具体的に検討が行われる保険給付の水準等も考慮する必要があるが、1月13日の高齢者介護担当課長会議においてお示しした事項について管下ホームを指導願いたい。

ウ 有料老人ホーム類似施設に対する指導
 有料老人ホーム及び建設省所管のシニア住宅に類似しつつも、これらに該当しないものとして、居住機能と生活サービス提供機能の組合せによる多様な形態の高齢者向けケア付き居住施設が供給されるようになってきている。そのため、類似施設の建築計画の概要、サービス内容及び利用料に関する情報開示等を進め、利用者の適切な選択等に資することを目的として、建設省所管課との連名通知を平成9年12月19日付で各都道府県宛発出したところである。都道府県及び市町村においては、福祉部局と住宅担当部局等との十分な連携の下、類似施設の把握及び指導等に努められたい。
 あわせて、類似施設の情報収集、調査、把握に努めることを目的として各都道府県に調査をお願いしているところであるので、御協力をお願いするとともに当調査結果を管下類似施設への指導等にも活用されたい。



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