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6.老人福祉施設の計画的な整備と適正な運営について


(1)老人福祉施設の整備

ア 平成10年度老人福祉施設関係予算(案)について
 社会福祉施設等施設整備費については、平成10年度予算(案)において、財政構造改革の推進に関する特別措置法の趣旨、平成9年度に実施した建設工事費等に関する三省合同実態調査結果及び公共工事コスト縮減対策に関する行動指針等を踏まえ、対前年度比9.7%減の1,905億円を計上したところである。
 しかしながら、介護保険制度への円滑な移行を図るため、着実な推進を図る必要のある新ゴールドプラン関連施設整備については、新ゴールドプランに基づく整備量を確保した上で、三省合同調査の結果等を踏まえた国庫補助基準単価の見直しのみにとどめ、対前年度比7.5%減の1,485億6,500万円を計上している。

(参 考)新ゴールドプラン関連施設の平成10年度事業量
○特別養護老人ホーム 13,646人分
○介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス) 13,150人分
○老人短期入所生活介護(ショートステイ) 6,883人分
○老人日帰り介護施設(デイサービスセンター)    1,660か所
○在宅介護支援センター 1,792か所
○高齢者生活福祉センター 40か所

イ 平成10年度における整備方針について
(ア)基本的整備方針
 新ゴールドプラン関連施設については、平成10年度においても引き続き、現行の老人保健福祉計画に示された必要整備量に基づき、特別養護老人ホーム等の施設サービスや在宅サービスの拠点となる老人日帰り介護施設(デイサービスセンター)等の計画的な整備を行うこととしている。
 なお、特別養護老人ホームの整備については、計画数を超えた整備要望が依然として強いが、新ゴールドプランの計画が残り2か年となり、介護保険制度への円滑な移行が最優先課題となった現在、介護サービス基盤の整備を図るために、まずは新ゴールドプランに示された計画内の整備を優先する方針である。
 また、介護保険制度への円滑な移行のためには、施設サービスと在宅サービスとの均衡のとれた整備が行われる必要があるにも関わらず、未だ単に「待機者」が多いとの理由のみをもって、特別養護老人ホームの整備を要望されている県・市が数多く見られる。
 しかしながら、上記3の(3)のイでも述べたように、「待機者」一人一人の生活状況、在宅サービスの利用実態を調査した結果を踏まえて、施設サービスや在宅サービスの需要が明らかになるものであり、その上で特別養護老人ホームの整備の必要性を検討すべきであると考える。
 したがって、平成10年度においては「待機者」の生活状況、在宅サービスの利用実態等の調査を行い、かつ、在宅サービスを十分利用してもなお居宅での生活が困難であり24時間の専門的な処遇が必要な者が相当数見込める場合について、その整備を協議の対象とすることとしている。
 その際、訪問介護(ホームヘルプサービス)、老人日帰り介護(デイサービス)等の在宅福祉サービスの実施が低調な市町村においては、特別養護老人ホームが老人保健福祉計画内の整備であっても、具体的に当該市町村の在宅サービス実施計画が策定されるまで、特別養護老人ホームの整備を見合わせることがあることを申し添える。
 各都道府県・市におかれても、「待機者」個々についての調査を指導するとともに、先に実施した平成10年度老人福祉施設整備事前ヒアリング等でお示しした「在宅福祉サービスの年次計画表」等を活用し、各圏域・市町村毎の在宅サービスの実施状況等を踏まえ、在宅サービスと施設サービスとの均衡のとれた整備が図られるよう配慮されたい。
 在宅サービス関連施設については、全国的に見て整備が立ち後れていることからも、平成10年度においても一層の整備促進を図ることとしているが、既存施設における利用者の要介護度、活動実績等の把握が不十分なまま、新たに施設を整備しようとする傾向が見受けられる。
 このため、平成10年度のヒアリングにおいては、既存施設における利用者の実態把握や事業費補助方式の導入実績等についても聴取することとしており、その結果、既存施設の活用が不十分と認められる市町村における新規施設整備については、その整備を見合わせることとしている。

(イ)平成10年度国庫補助協議について
 平成10年度予算(案)においては、新ゴールドプランに基づく必要整備量は確保したところであるが、効率的な執行を確保するため、老人保健福祉計画内の整備であっても、先般開催した老人福祉関係担当課長会議等の趣旨を踏まえ、既存施設の活用、補助対象経費の精査など、協議予定内容の一層の精査に努めていただくことをお願いする。
 なお、老人福祉施設を含む社会福祉施設整備費の国庫補助協議基準等については、例年どおり、別途通知することとしているので御了知願いたい。

(ウ)平成10年度国庫補助基準単価について
 平成10年度においては、「三省合同実態調査結果」及び「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」等を踏まえ、社会福祉施設の国庫補助基準単価を見直すこととし、過日、社会・援護局施設人材課より平成10年度社会福祉施設等施設整備費国庫負担(補助)基準単価(案)をお示ししたところである。
 この結果、特別養護老人ホーム及び老人日帰り介護施設(デイサービスセンター)等の整備における資金計画の見直しの必要も生じる場合があることから、設置主体への周知方を徹底されたい。
(エ)軽費老人ホーム(B型)について
 昭和49年度より施設整備費が国庫補助の対象となっていた軽費老人ホーム(B型)については、補助金等の整理合理化の一環として、平成10年度からその国庫補助制度を廃止することとした。

イ 既存資源の活用について
 介護サービス基盤整備とりわけ在宅サービスの基盤整備に当たっては、過疎地などサービス提供効率の低い地域においては、既存施設活用型日帰り介護(サテライト型デイサービス)事業等既存施設の活用は、極めて有効な手段であるので、その実施について積極的に推進されたい。
 また、平成7年度から、公立学校の余裕教室等を活用して、老人日帰り介護施設(デイサービスセンター)等に転用する際の財産処分について、文部大臣への報告書の提出がなされれば財産処分の承認があったものとして取り扱うなど、財産処分手続等の簡素化が図られている(なお、平成9年度においても、廃校に特別養護老人ホームを整備する場合も簡素化の対象となった。)。管下市町村に対し、周知の徹底を図るとともに、本制度の有効的な活用に努められたい。

ウ 施設整備業務の適正化対策について
 一昨年発生した特別養護老人ホーム等の施設整備費補助金の仕組みを悪用した事件をはじめ、会計検査院の検査結果からも明らかなように、近年、施設整備費をめぐる不祥事が多発している。
 これら不祥事の発生により失った信頼の回復と不祥事件の再発防止のためには、厳正な対処方針と情報の公開が必要であると認識している。
 すでに「施設整備業務等の再点検のための調査委員会」報告(平成9年3月31日)に基づき、「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」(平成9年11月5日厚生省発社援第219号厚生事務次官通知)等の通知により事件の再発防止策をお示ししたところである。
 今年度の整備についてはもとより、来年度以降の施設整備業務においても、これら通知の趣旨に沿って、適切に施設整備が行われるよう、管下市町村及び社会福祉法人に対し指導の徹底を行われたい。
 また、不祥事が発生した場合には、不正に受給した補助金の返還のみに止めず、入所者処遇の確保に留意しつつも、業務改善命令等により十分な対処が図れない場合については、社会福祉事業法第54条の積極的な適用を基本的対処方針としていく考えであるので、各都道府県・市におかれても、厳正な方針で望むことを改めてお願いする。

(2)老人福祉施設の運営

ア 施設の役割と適正な運営管理の推進
 老人福祉施設は、新ゴールドプランの着実な推進により平成8年10月1日現在、1万5千か所、在所者は、33万人(通所者を除く。)となっており、その運営に要する経費は、利用者の自己負担を含め、総額約1兆758億円(通所・利用施設を除く)となっている。また、特別養護老人ホームは介護保険制度への移行も控えており、国民の期待と関心は益々大きくなっており、その期待に応えるためにも適正かつ効率的な運営に努めることが必要となっている。
 特に、平成8年11月に発生した特別養護老人ホームの施設整備補助金等の仕組みを悪用した事件の反省を踏まえた社会福祉法人の認可や運営に関する業務の適正化については、既に通知しており実施に移されていることと認識しているが、これをより一層定着させる必要がある。
 なお、平成4年6月及び平成9年7月に総務庁より社会福祉法人の業務の決定に関して、「理事長が専決する日常軽易な業務」及び「随意契約として差し支えない場合と競争契約に付さなければならない場合の基準」を具体化するよう勧告をされたことを受け、平成9年12月に社会福祉法人定款準則及び経理規程準則の一部改正を行い、この具体化を図ったところであるので、併せて、管下の社会福祉法人に対し周知徹底を図り、適正な法人運営が行われるよう指導願いたい。

イ 適切な入所者処遇の実施
 入所者の処遇については、介護保険制度への移行も控え、サービスの質的向上が必要であることから、サービス評価基準等を活用するなどによりサービスの質的向上に努めるよう指導願うとともに、O157による食中毒及びインフルエンザ等の感染症の予防についても引き続き特段の注意を払うよう指導願いたい。
 なお、インフルエンザについては、昨冬のインフルエンザ様疾患の流行を踏まえ、対策の手引の作成を現在東京都に依頼して、委託研究中であり、完成次第配布する予定である。
 また、一部の市町村において特別養護老人ホームの入所申請時に提出を求めている健康診断書については、入所に関して必要な事項を超えて検査を求めることにより、申請者にとって過重な負担となっているとの指摘があることから、「老人ホームの入所措置等の指針について」(昭和62年1月31日社老第8号社会局長通知)及び「入所措置事務処理マニュアル」(平成4年12月)を踏まえ、入所申請時における健康診断書の提出依頼等が必要最小限のものとなっているか、利用者の負担軽減の観点から改めて再点検するよう管下市町村に対して注意喚起願いたい。

ウ 運営費の主な改善内容
 平成10年度予算(案)においては、入所者の一般生活費等について生活保護基準に準じた所要の改善を図るとともに、職員処遇の充実を図るため国家公務員に準じた給与改善等を行うこととしている。養護老人ホームについては、病弱者介護加算等の加算経費の統合を図り、重度化に対応するとともに、併せて事務の簡素化に資することとしている。
 また、特別養護老人ホームの費用徴収基準については、平成6年3月31日以前から入所している者について適用されている経過措置を6月限りで廃止し、一本化することとしているので、それぞれ管下の市町村並びに施設に対して周知徹底方指導されたい。
エ 老人保護費の適正な執行
 本年度の会計検査院の実地検査において、平成7年度の費用徴収について、被措置者の対象収入の算定及び扶養義務者の認定を誤るなど、21県・市で総額約3,874万円の過大な精算がなされていた、との指摘がなされたところである。
 費用徴収についての不適正な事務処理については、昨年も指摘されており、厳正な執行が求められるところであるので、管下の措置の実施機関等に対し、改めて適正な取扱いがなされるよう周知徹底を図るとともに、費用徴収額等の決定に当たって十分な審査を行い、適正を期すよう指導されたい。
 また、昨今、特別養護老人ホーム等において不祥事の発生が散見されている。老人福祉施設は公費で運営されており、適正な運営が何よりも求められていることから、こうした事態に対しては、平成9年9月及び10月に実施した老人福祉関係担当課長会議においてお示しした「特別養護老人ホーム等における不祥事の発生防止及びその対応について」を十分踏まえ対応されるよう改めてお願いしたい。



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