4.医療における情報化の推進について
(1)保健医療情報システムの研究開発及び普及推進について
- ア 少子・高齢社会において、良質な保健医療サービスを効率的に提供するために、近年、発達の目覚ましい情報通信技術の活用が必要であるとの認識に立って、保健医療情報システムの研究開発と普及・推進を図っている。
- イ 政府では、平成6年8月に、我が国の高度情報通信社会の構築に向けた施策を総合的に推進するとともに、情報通信の高度化に関する国際的な取組みに積極的に協力するため、内閣総理大臣を本部長とする「高度情報通信社会推進本部」が内閣に設置された。
- ウ 厚生省においては、平成6年5月に厚生行政各分野の情報化を総合的かつ整合的に推進するため、官房長を本部長とする情報化推進連絡本部が設置された。
- エ 平成6年7月に「保健医療情報システム検討会」(健康政策局長の私的懇談会)において、中間報告を取りまとめた後、平成7年8月には、「保健医療福祉サ−ビスの情報化に関する懇談会」(厚生大臣の私的懇談会)において、「保健医療福祉分野における情報化実施指針について」を公表した。
- オ 医療の情報化に関連して、平成8年3月に閣議決定された「規制緩和推進計画」において、遠隔診断行為及び診療録の電子媒体による保存が盛り込まれた。
これを受けて、遠隔診断行為については法令上の整理を行うとともに、電子保存については、診療録の電子化の研究開発に取り組んでいる。
診療録の電子化を進めるためには、病名等の用語やコードの標準化及び安全性(セキュリティ)の確保等の技術的諸課題を解決することが前提となる。これらの前提となる作業のうち、病名の標準化及び安全性の確保に関する基本的な考え方の整理を終えたところであり、引き続き病名以外の用語の標準化の作業等を進めていく考えである。
(2)研究開発中の事業について
平成6年度から平成8年度に実施した「新医療情報通信網基盤整備開発事業」及び平成7年度補正予算事業の「診療録の電子的保存の標準化(電子カルテ)」で得られた成果を引き継いで、平成9年度より「高度情報社会医療情報システム構築推進事業」に着手している。
本事業は、情報化社会において、様々な利用者が高度で多様な情報を活用できる医療情報システムを構築するための研究開発であり、電子診療録を出発点として、医療機関の内外にわたる統合的医療情報システムの構築を目指すものである。
(3)医療における情報通信技術の推進について
地域における保健・医療・福祉分野の情報化を推進するため、「遠隔医療推進モデル事業」を平成9年度より実施している。
このモデル事業は、診療所等の医療施設と在宅で療養している患者の家庭に、テレビ電話等の遠隔医療に必要な機器を設置し、診療所等の診療、看護・介護指導等の充実による機能強化を図るものである。
また、平成9年8月の「21世紀の医療保険制度(厚生省案)−医療保険及び医療提供体制の抜本的改革の方向−」等においても指摘されているとおり、かかりつけ医機能の向上が重要な課題であることから、情報通信技術を活用した診療所支援システムに関する研究を行っているところである。
なお、遠隔医療に係る医師法第20条等の解釈については、初診及び急性期の疾患を原則として除き、直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の情報が得られる場合には、直ちに違反を構成するものではないとの解釈を示す通知を、平成9年12月に発出したところである。
(4)医療技術評価について
限られた医療資源を効率的に活用し、医療の質と患者サービスの向上を図る手段として「医療技術評価」が注目されていることから、「医療技術評価の在り方に関する検討会」(座長:竹中浩治(財)ヒューマンサイエンス振興財団理事長)を開催し、諸外国における医療技術評価の在り方や推進方策について検討したところであり、その結果については、平成9年6月に報告書として取りまとめたところである。
さらに、この報告書を踏まえ、現在、優先的に評価すべき技術の選定等の基礎的研究を行っている。