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8 児童福祉施設の整備及び運営について


(1)児童福祉施設の整備について
ア 平成10年度の社会福祉施設等施設整備費予算(案)は、「財政構造改革の推進に関する特別措置法」の趣旨、今年度実施した建設工事費等に関する「三省合同実態調査結果」及び「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針(平成9年4月関係閣僚会議決定)」等を踏まえ、対前年度比9.7%減(204億円減)の1,905億円を計上したところであり、児童家庭局関係としては次の内容となっている。
(ア)「緊急保育対策等5か年事業」、「新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)」及び「障害者プラン」分については、施設整備計画に基づく必要な整備量を確保したうえで、国庫補助基準単価の見直しだけにとどめ、対前年度比7.5%減とした。
緊急保育対策整備分については、平成7年度を初年度とする5か年計画の4年次目として、従来からの整備量に加えて77億1千2百万円を計上し、昭和40年代から昭和50年代にかけて多数整備された保育所について、改築整備を行うとともに、多機能化のための整備を推進する。
(イ)老朽社会福祉施設緊急改築整備分として、従来から進めてきた老朽社会福祉施設の改築整備に加え、40億3千1百万円を計上し、災害に強く、快適な居住空間を備えた施設への改築整備を引き続き推進する。
(ウ)一般整備分として177億5百万円を計上し、上記以外のその他の施設整備についても所要の整備を推進する。
イ 設備整備費については、対前年度比7.0%減の135億円を計上し、施設整備量に対応した必要な額を確保したところである。
ウ 平成10年度における主な改善内容は次のとおりである。
(ア)補助基準単価の見直し補助基準単価については、三省合同実態調査結果及び公共工事の費用縮減を含め、施設種別ごとに改定する。
(イ)情緒障害児短期治療施設の面積改善
情緒障害児短期治療施設については、児童福祉法の一部改正により対象児童の年齢要件(12歳未満)が撤廃されることに伴い、児童の居住環境を確保する観点から、居室等の基準面積を改善する。
(施設整備)
・1人当たり補助基準面積 24.7平方メートル → 28.6平方メートル
(ウ)児童家庭支援センターの創設
児童養護施設、母子生活支援施設等に附置して、地域における児童やその家庭等に関する相談に応じ、必要な助言を行う児童家庭支援センターを新たに整備する。(法改正により、児童福祉施設として新たに位置付け)
(施設整備)
・1か所当たり補助基準面積 84.4平方メートル
(エ)児童自立支援施設(通所部門)の創設
家庭環境その他環境上の理由により生活指導等を要する児童の自立を支援するため、児童自立支援施設に新たに通所部門を整備する。
(施設整備)
・1人当たり補助基準面積14.6平方メートル加算
(初度設備)
・108千円×利用(増加)定員
(オ)保育所の分園方式の導入
都市部や過疎地等における用地問題、入所待機児童の解消及び入所児童の減少等に対応するため保育所の分園方式を導入する。
(施設整備・初度設備)
・増築に準じた取り扱いとする。
エ 平成10年度の整備方針等
児童福祉施設等の整備については、各都道府県等における老朽施設の実態や近年の入所児童の動向など施設全体の状況を踏まえ、計画的な整備が図られるよう配慮されたい。
平成10年度においては、次の事項を基本として整備を図ることとしているが、施設整備費については極めて厳しい予算(案)となったことを踏まえ、限られた財源を効率的かつ有効に活用する見地から、施設整備事業内容の精査を行う等により、必要な整備量の確保を図ることとしている。
各都道府県・市におかれては、来年度に予定している整備計画の徹底した精査を図り、真に必要と認められる整備について厳選した対応に努めていただきたい。
(ア)「緊急保育対策等5か年事業」に基づき、老朽化している保育所の改築整備を促進するとともに、地域のニーズに応じられるよう保育所の多機能化を図るための整備を推進する。
(イ)国民の生活水準の向上に対応した居住環境の向上を図るとともに、施設入所児童等の安全性を確保する観点から、災害に強く、ゆとりある居住空間を備えた施設とするため、老朽施設の改築、大部屋解消のための増・改築及び火災、地震等の防災対策に配慮した施設の内部改修の整備を促進する。
なお、平成10年度の社会福祉施設整備費の国庫補助協議については、別途通知することとしているのでご了知願いたい。
オ その他の留意事項
(ア)補助金の富裕団体調整について
補助金等の整理合理化の一環として、平成10年度においても、引き続き、富裕団体に対して補助金等の調整措置を講ずることとしているので、了知願いたい。
カ 社会福祉施設整備業務の再点検について
平成8年度決算検査報告において、会計検査院から社会福祉施設整備費で実施した整備事業において、不適切な最低制限価格の設定や建築工事契約の二重契約、不適切な値引き処理及び補助対象外事業への補助等により補助金が過大に交付されていたとして指摘を受けたところである。
厚生省においては、平成9年3月31日に取りまとめた「施設整備事業等の再点検のための調査委員会報告書」で明らかにしたとおり、社会福祉法人等が行う契約事務については地方公共団体の契約手続きに準拠し、一括下請負の禁止などを補助金の交付の条件とすること等建設工事の適正化、補助金交付対象施設の明確化等の措置を講じ周知徹底を図ったところである。
各都道府県・市におかれては、施設整備業務のさらなる再点検と今般の会計検査院の指摘を踏まえ、会議等での関係者への指導の徹底や未然防止策の検討など再発防止対策の充実に努めていただきたい。
キ 社会福祉施設の防災対策について
(ア)防災対策の取り組み
社会福祉施設の防災対策については、入所児童等の安全確保の観点から、「社会福祉施設における防火安全対策の強化について」(昭和62年9月18日付け社施第107号社会局長、児童家庭局長連名通知)等の趣旨を踏まえ、管下社会福祉施設に対し指導をお願しているところである。施設の運営上、入所児童等の安全確保が最重要課題であることを再認識していただき、スプリンクラ−設備、屋内消火栓設備の整備及び夜間防火管理体制の整備など、施設における具体的、効果的な防災対策に万全を期すよう管下社会福祉施設に対する指導の徹底に努められたい。
施設整備費においても、入所児童等の防災対策、処遇改善の観点から、防災対策に配慮した整備を優先的に採択することとしている。また、措置費においても、地域住民との連携による合同避難訓練や避難用具の整備等を行う総合防災対策強化事業が施設機能強化推進費のメニュー事業として算入されているところであり、これらの制度の積極的な活用を図り、社会福祉施設の防災対策の充実を図られたい。
(イ)被災施設の早期復旧社会福祉施設等災害復旧事務の取扱いについては、「社会福祉施設災害復旧費国庫負担(補助)の協議について」(平成7年3月30日付け社援施第76号社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)により、児童家庭局所管施設については、災害発生後速やかに児童家庭局企画課に報告するとともに、復旧事業の早期着工を図り、施設運営に支障が生じないよう指導の徹底をお願いしたい。

(2)児童福祉施設の運営について

50年ぶりの児童福祉制度の改正、介護保険制度の創設、さらに中央社会福祉審議会においては、社会福祉基礎構造改革の議論が開始される等、社会の変化に対応するとともに、21世紀の本格的な少子高齢化社会に向けて健康で豊かな生活を維持するための社会福祉基盤の改革が着実に進められている。
このような中で、社会福祉施設の果たす役割は今後、さらに一層重要となっており、次の点を留意のうえ、管下児童福祉施設の指導を願いたい。
ア施設の役割と適正な運営管理の推進
(ア)社会福祉施設は年々増加し、平成8年10月1日現在の措置費(運営費)対象施設は3万4千か所、利用者は255万人となっており、その運営に要する経費は、利用者の自己負担を含め、平成10年度で総額3兆2,075億円となっている。
社会福祉施設に対する国民の期待と関心は益々大きくなっており、その期待に応えるため適正かつ効率的な運営に努めることはもちろんのこと、利用者の多様なニ−ズに応えるため、さらなるサービスの向上に努める必要がある。
また、施設は、地域の福祉資源として福祉活動等の拠点としての機能が求められており、施設が持っている専門的機能を地域社会に提供していくことが一層重要となっている。
さらに、福祉人材の確保を図る観点から、各児童福祉施設において、保母養成施設・介護福祉士養成施設等からの実習生の受入れや平成10年度から義務化された教員免許取得志望者に対する介護等体験の受入れ等積極的な取組みについて指導願いたい。
(イ)社会福祉施設の運営費の運用及び指導については、従来から適正な指導をお願いしているところであるが、なお多額の使途不明金が発覚するなどの施設運営をめぐる不祥事が生じているところであり、これら不祥事は、社会福祉施設に対する国民の信頼を著しく損なうこととなっている。ついては、指導監査の結果を踏まえた運営費の指導にあたる等、指導監査担当課等との連携を図り、適正な施設運営について引き続き指導されたい。
イ総務庁の勧告への対応
社会福祉施設を経営する社会福祉法人の会計経理については、経理規程準則に従い、適正な会計事務処理を行い、健全な社会福祉施設運営の確保を図ることとしているところであるが、平成4年6月及び昨年7月に総務庁より「社会福祉法人の指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告」がなされ、会計事務の一部について改善が求められたところである。
この勧告を受け、昨年12月11日付社援施第175号及び社援施第176号通知をもって経理規程準則の一部改正を行い、法人の業務に関し、業者と行う契約について、随意契約として差し支えない場合と競争契約に付さねばならない場合の基準を明確に示したところである。
ついては、管下の社会福祉法人に対し周知を図り、適正な会計経理が行われるよう指導願いたい。
ウ入所者処遇及び職員処遇の充実
児童福祉施設の運営を行うに当たっては、入所児童の処遇の向上が最も重要な課題の一つである。
処遇の向上を図るためには、その担い手である施設職員の資質の向上はもとより業務の見直し、職員処遇の充実、働きやすい職場環境を整備することが不可欠であるので、運営費(措置費)に算定されている経費(業務省力化等勤務条件改善費、年休代替要員費等)の趣旨を十分に踏まえ、適正な施設運営について管下児童福祉施設を指導されたい。
エ 児童福祉施設の感染症予防対策について
平成8年に発生した腸管出血性大腸菌O157(以下「O157」という。)による食中毒については、昨年も社会福祉施設においてその発生をみているところである。
O157は、特に、体力が弱い乳幼児等が感染しやすいといわれており、その感染予防対策等を十分に行うことが必要である。そのため、昨年3月には、大規模食中毒の発生を未然に防止するとともに、食中毒発生時の食中毒処理の一層の迅速化・効率化を図るため、大量調理施設の衛生管理マニュアルを示し、さらに、8月には社会福祉施設の食中毒予防と食中毒予防に対する意識高揚を一層図るため、自主点検の実施などをお願いしたところである。
また、冬季は、インフルエンザが流行する時期であり、特に乳幼児等が入所する児童福祉施設についてはその予防に十分留意する必要がある。ついては、管下児童福祉施設に対するこれら感染症の予防等衛生管理の指導に当たっては、衛生部局と緊密な連携を図りながら一層の指導をお願いする。
オ 施設運営費の平成10年度予算(案)における改善内容
平成10年度予算(案)においては、児童福祉法の改正を踏まえ、所要の改善を行うとともに、入所児童の一般生活費等について生活保護基準に準じた所要の改善、職員処遇の充実を図るため国家公務員に準じた給与改善等を行うこととしているので、管下施設職員の待遇改善並びに入所児童の処遇の一層の充実について引き続き指導されたい。


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