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10.麻薬・覚せい剤等の対策について


(1)薬物乱用対策推進本部

ア.薬物乱用対策推進本部は昭和45年6月より、内閣官房長官を本部長として総理府に設置されていたが、最近の厳しい薬物情勢に鑑み、薬物乱用対策について関係行政機関相互の緊密な連携を確保するとともに、取締り、広報啓発その他総合的かつ積極的な施策を推進するため、平成9年1月、閣議決定により、内閣総理大臣を本部長とし、厚生大臣等を副本部長とする新たな薬物乱用対策推進本部が内閣に設置された。
イ.平成9年4月、薬物乱用対策推進本部は「薬物乱用対策推進要綱」及び「青少年の薬物乱用問題に対する緊急対策」を決定した。これに基づき、厚生省では全国の高校における薬物乱用防止教室等での麻薬取締官OBの活用及びより効果的な啓発資料の配布等の施策に取り組んでおり、都道府県におかれても麻薬取締員OB等の積極的な活用及び啓発活動等、効果的な薬物乱用防止対策に取り組んでいただきたい。

(2)麻薬・覚せい剤等の取締り

ア.我が国で乱用問題の最も大きな薬物は覚せい剤であり、近年の検挙者数は 1万5千人前後で推移していたが、平成7年から増加し、平成8年には19, 666人と大幅に増加した。
イ.最近の薬物犯罪の特徴は、麻薬・覚せい剤事犯における外国人検挙者の増加と覚せい剤事犯における学生生徒の検挙者増加があげられる。

・麻薬・覚せい剤事犯における外国人検挙者は平成元年以降年々増加し、平成8年には全検挙者数21,388人(前年19,425人)に対して外国人検挙者は1,408人(前年1,383人)となっている。
・覚せい剤事犯における学生生徒の検挙者は、平成7年には207人(全検挙者の1.2%)であったが、平成8年には354人(同1.8%)となり、71.0%の大幅な増加となった。
 学生・生徒の中では高校生の増加が著しく、平成8年は220人(前年93人)が検挙され、前年に比べて136.6%増加している。また、中学生の検挙者は平成8年は21人(前年19人)で、前年に比べ10.5%増加している。
ウ.このため厚生省としては、薬物の供給側である密売人等のほか薬物の需要側である乱用者に対する取締りに一層努力していくこととしており、都道府県におかれても、麻薬取締官に対する捜査協力等に特段のご配慮をお願いしたい。

(3)啓発活動の推進

ア.薬物の乱用防止については、厳正な取締りを行うとともに、国民に対し乱用の危害について正しい知識の普及を図り、薬物の乱用を許さない社会環境をつくることが重要である。このような観点から地域に根ざした草の根運動による防止活動を展開するため、全国に約2万人の覚せい剤乱用防止推進員を設置している。
 各都道府県におかれては、推進員地区協議会の組織化を図る目的で設けられた運営費補助制度を一層活用され、推進員を中心とした効果的な地域活動を推進していただきたい。

イ.一方、民間団体における啓発活動は財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターを中心とし、官民一体となった啓発活動を展開している。
 センターが厚生省からの委託事業として活動を展開している「薬物乱用防止スクールキャラバンカー」事業は、関東地区を中心に学校、集会、街頭へ出向き、啓発資材として活用されている。今後も啓発活動に活用されたい。

ウ.「国連麻薬乱用撲滅の10年」(1991年〜2000年)の支援事業の一環として、「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」を普及すること等を目的とした「ダメ。ゼッタイ。」普及運動を国、都道府県、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターの主催により展開している。
 平成9年度の6・26ヤング街頭キャンペーン(6月22日)には、全国約600か所、約28,000人の参加を得て薬物乱用撲滅の街頭キャンペーンが繰り広げられ、多くの国連支援募金が集まる等の成果を挙げている。同センターでは、当該キャンペーン等に参加したヤングボランティアの中から「民間国連ヤング大使」を選び、国連に派遣してきた。平成10年度においても引き続き行うこととしているので一層のご協力をお願いしたい。

(4)医療用モルヒネ製剤の適正使用の推進
 モルヒネの消費量はここ数年急増しており、平成8年の消費量は塩酸塩と硫酸塩合わせて792s(前年701s)で13.0%の増となっている。これは末期がん患者に対する疼痛緩和目的での使用が普及してきていることが原因となっていると推察され、過去10年の推移をみると10年前に比べ12.0倍に増えている。
 また、通院、在宅がん患者へのモルヒネ製剤の使用の普及と共に麻薬小売業者の免許をもつ薬局の数も平成8年には8.968件(前年6,556件)となり、昨年に比べて増加している。
 WHOが1986年に、「 Cancer Pain Relief (がんの痛みからの解放)」を出して以来、国際的には鎮痛剤としてのモルヒネ等の有用性が再確認された。しかし我が国では、医療関係者の間では麻薬であるモルヒネ等の使用を控える傾向にあり、単位人口当たりの消費量を比べてみると、カナダ、イギリス、アメリカ等の欧米諸国の数分の一ないし十分の一となっている。モルヒネの消費量は、その国におけるがん疼痛治療の医療水準を示す一つのバロメーターであるという指摘があり、また、WHOレポートや厚生省・日本医師会作成の「がん末期医療に関するケアのマニュアル」等で、モルヒネ製剤はがん疼痛治療に重要な役割を果たすものであることが示されている。
 加えて、厚生省としては医療関係者を中心にがん疼痛に対するモルヒネ等の適正な使用の普及を図るため、平成7年度より全国で開催されている「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用を推進するための講習会」を後援している。平成9年度も12月の京都会場を皮切りに熊本、高松、東京、仙台の5会場で講習会が実施される。
こうしたことから、今後モルヒネ製剤の使用量が増加することが見込まれるため、都道府県におかれてはモルヒネを中心とした医療用麻薬の適正管理及び適正使用につき、医療関係者に対するご指導をお願いしたい。

(5)麻薬取扱者等に対する指導監督

 医療用麻薬、向精神薬等及びこれらの原料物質の製造施設、卸売業者等流通段階、医療施設、研究施設など正規取扱者に対する立入検査等の監督は、乱用薬物の不正ルートへの横流れを防止するうえで重要であり、各都道府県におかれても麻薬取締員等によるその実施に尽力いただいている。
 最近の傾向として、向精神薬の病院、診療所からの盗難が増加傾向(平成8年は向精神薬全体で58件。内、病院・診療所からの盗難が50件)にあることから、向精神薬を中心に管理の徹底が図られるよう、一層の指導監督方よろしくお願いしたい。

(6)国際協力の取組
ア.1998年6月8日〜10日に国連総会麻薬特別会期(麻薬特総)が開催される予定であり、1997年夏以降、国連麻薬委員会において準備作業が進められている。この特総においては、2000年までの「国連麻薬乱用撲滅の十年」に続く、21世紀の国際的な薬物対策が策定されることになる。
 主要議題の一つが、覚せい剤(アンフェタミン型)対策である。従来、東及び東南アジアの問題と見なされていた覚せい剤乱用が、近年、北米、欧州など世界的に拡がり、国際的な覚せい剤対策が待たれている。我が国はこれまでに昭和20年代の大規模な覚せい剤乱用の鎮静化に一旦成功するなど、覚せい剤乱用対策に豊富な経験と知見を有しており、これらを十分活用できるよう麻薬特総に向けて積極的な取組みを行っていきたい。
イ.以前から、「海外麻薬行政官研修」((社)国際厚生事業団実施)及び「日米協力による開発途上国薬物乱用防止啓発活動研修」((財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター実施)が、関係都道府県の協力も得ながら毎年実施されている。平成9年度は、前者が平成9年6月〜7月に12カ国13名、後者が平成9年10月〜11月に10カ国10名のアジア等からの研修生の参加を得て実施したが、平成10年度以降も関係都道府県のご協力をお願いしたい。


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