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4. 臓器移植対策について


(1)臓器の移植に関する法律(中山案)の審議経過

平成8年12月11日 「臓器の移植に関する法律案」が第139回国会に提出。
(提出者−中山太郎衆議院議員外13名)
平成9年4月24日 衆議院本会議で可決
同日 参議院に送付
平成9年6月16日 臓器の移植に関する法律案に対する修正案が参議院臓器の移植に関する特別委員会に提出
(提出者−関根則之参議院議員外5名)
同日 臓器の移植に関する法律案に対する修正案及び臓器の移植に関する法律案が参議院臓器の移植に関する特別委員会で可決
平成9年6月17日 修正後の臓器の移植に関する法律案が参議院本会議で可決
同日 修正後の臓器の移植に関する法律案が衆議院本会議で可決
平成9年7月16日 臓器の移植に関する法律が公布
(平成9年法律第104号)
平成9年10月16日 臓器の移植に関する法律が施行
修正案のポイント: 中山案においては、臓器提供について本人の書面による意思表示と家族の同意が必要であったが、修正により、脳死判定についても本人の書面による意思表示と家族の同意が必要となった。

(2)臓器の移植に関する法律の要点

1) 臓器の範囲

 「臓器」とは、人の心臓、肺、肝臓、腎臓その他厚生省令で定める内臓(膵臓及び小腸を規定)及び眼球をいうこと。

2) 臓器の摘出に関する事項

 医師は、本人が臓器提供の意思を書面により表示しており、かつ、遺族が拒まないとき又は遺族がないときには、移植術に使用するため、死体(脳死した者の身体を含む。)から臓器を摘出することができるものとすること。
 アの「脳死した者の身体」とは、臓器が摘出されることとなる者であって脳死と判定されたものの身体をいうこと。
 臓器の摘出に係る脳死判定は、本人が脳死判定に従う意思をアの意思表示に併せて書面により表示しており、かつ、家族が脳死判定を拒まないとき又は家族がないときに限り行うことができること。
エ   当分の間の経過措置として、眼球又は腎臓の摘出については、これまでどおり、遺族の同意により、心停止後の死体からの摘出を認めること。

(3)臓器の移植に関する法律施行規則の要点

1) 臓器の範囲

 臓器移植法の対象となる臓器として、法律で定められている人の心臓、肺、肝臓、腎臓及び眼球に加え、膵臓及び小腸を規定。

2) 脳死判定基準

 脳死判定基準について、いわゆる竹内基準に沿って行うこと。
3) 脳死判定等の記録
 医師が作成すべき脳死判定に関する記録等について、記載すべき具体的な項目を規定。
(4)「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)の要点

1) 有効な意思表示の可能な年齢

 法の運用に当たっては、15歳以上の意思表示を有効なものとして取り扱うこと。

2) 遺族及び家族の範囲

 個々の事例に即し、家族構成等に応じて判断すべきであるが、喪主等となるべき者が配偶者、子、父母、孫、祖父母及び同居の親族の総意を取りまとめるものとする。ただし、他の親族から異論が出された場合には、慎重に判断すること。

3) 臓器提供施設について

 臓器提供施設は、当面、救急医学等の関連分野において、高度の医療を行う次のいずれかの施設に限定する。
・大学附属病院
・日本救急医学会の指導医指定施設
・日本脳神経外科学会の専門医訓練施設
・救命救急センターとして認定された施設
ただし、最初の数例については、大学附属病院(本院)及び日本救急医学会の指導医指定施設とする。

4) 移植実施施設について

 移植実施施設については、移植関係学会合同委員会において選定された施設に限定する。
(参考)
・心臓移植 東京女子医科大学附属病院
国立循環器病センター病院及び大阪大学医学部附属病院
・肝臓移植 信州大学医学部附属病院
京都大学医学部附属病院

5) その他

ア 脳死した者の身体から臓器を摘出する場合の脳死判定を行うまでの標準的な手順を規定。
イ 臓器摘出に係る脳死判定に当たっての留意事項を規定。

(5)臓器移植の推進について

1) 臓器提供意思表示カードについて

 臓器提供の意思の有無を明らかにする臓器提供意思表示カードの普及については、臓器の移植に関する法律」の施行に合わせて新しいカードを作成し、その配布にご協力をいただいているところであるが、平成10年度予算(案)においては、1,000万枚の作成費が計上されたところであり、引き続きご協力をお願いする。
 なお、先般カードの記載漏れ等に関する報道がなされたところであるが、こうした記載漏れ等を未然に防ぐために、都道府県においても記載方法等について関係方面にさらに周知いただくと共に、意思表示カードと共に、説明用のリーフレットを配布する等のご協力をお願いいたしたい。

2) 都道府県臓器移植連絡調整者(コーディネーター)について

 都道府県臓器移植連絡調整者の設置については、これまでの腎移植連絡調整者を拡充することで対応していくこととしており、今後も臓器の唯一のあっせん機関である(社)日本臓器移植ネットワークのブロックセンターに設置されている移植連絡調整者と連携をとりながら、臓器移植の推進にあたっていただきたいと考えるところであるが、その設置に係る国庫補助金について、平成10年度予算(案)においては、これまで法人を経由して補助していた形態を改め、直接、都道府県へ補助をしていく形としたところである。このことについては、昨年9月の主管課長会議の際にもお伝えしていることであるが、国民への移植医療の理解を深めていくことが地方公共団体の責務であると新しい法律にも明文化されたところであり、ご協力をいただきたい。

3) 死体腎移植の件数等について

・「臓器の移植に関する法律」が平成9年10月16日から施行されたが、それ以前から死体腎による腎臓移植は、廃止された「角膜及び腎臓の移植に関する法律」に基づきその推進が図られてきているところであり、近年の状況は、平成元年の259件のピークから平成7年度まで減少傾向にあったが、平成8年度の実績は年間180件と7年度実績の161件を上回ったところである。

・また、昨年7月15日付けで、医療機関、関係機関等の腎臓移植に対する一層の理解と協力を得ることを目的として、全国の救急救命施設を持つ医療機関に協力依頼の文書(次頁)を送付した。

・平成9年4月から12月までの死体腎移植の件数は119件となっており、平成8年度同時期の140件より減少している。今後とも、腎臓移植の推進にご協力をお願いしたい。
  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月〜3月
 8年度  21 14 11 15 12 18 22 19 40
 累 計  21 35 43 54 69 81 99 121 140 180
 9年度 20 4 12 6 14 14 19 6 24  
 累 計  20 24 36 42 56 70 89 95 119  



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