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11 社会福祉施設の整備等について(施設人材課)

(1)平成10年度社会福祉施設整備費予算(案)の状況

ア 社会福祉施設等施設整備費

(ア)施設整備費については、「財政構造改革の推進に関する特別措置法」の趣旨、今年度実施した建設工事費等に関する「三省合同実態調査結果」及び「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針(平成9年4月関係閣僚会議決定)」等を踏まえ、対前年度比9.7%減(204億円減)の1,905億円を計上したところである。
 しかしながら、「新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)」、「障害者プラン」、「緊急保育対策等5か年事業」については、施設整備計画に基づく必要な整備量を確保したうえで、国庫補助基準単価の見直しだけにとどめ、対前年度比7.5%減としたところである。
 また、地方改善施設整備費で実施していた生活館(ウタリ対策分)を社会福祉施設等施設整備費に移し替えを行った。
【具体的な社会福祉施設等施設整備費の内容】
1) 新ゴールドプラン関連施設整備分として1,485億6,500万円を計上し、地方老人保健福祉計画を踏まえた計画的な整備を進める。
2) 障害者プラン関連施設整備分として、従来からの整備量に加えて84億3,200万円を計上し、平成8年度を初年度とする7か年計画の3年次分として障害者施設の整備を推進する。
3) 緊急保育対策整備分として、従来からの整備量に加えて77億1,200万円を計上し、昭和40年代から50年代にかけて多数整備された保育所について改築整備を行うとともに、保育所の多機能化のための整備を推進する。
4) 老朽社会福祉施設緊急改築整備分として、従来からの整備量に加えて40億3,100万円を計上し、災害に強く、快適な居住空間を備えた施設への改築整備を引き続き推進する。
5) 一般整備分として177億500万円を計上し、上記以外のその他の施設整備についても所要の整備量を確保する。
6) 隣保館等施設整備分として31億600万円を計上し、隣保館及び生活館の整備を進める。
7) 障害者等生活環境基盤整備事業分として9億1,500万円を計上し、既存の公共施設にスロープや障害者用トイレ、自動ドア等の整備を行うなど障害者や高齢者にやさしいまちづくりを引き続き推進する。
(イ)平成10年度における改定事項は次のとおり。
1) 補助基準単価の見直し
 補助基準単価については、三省合同実態調査結果及び公共工事の費用縮減を含め、施設種別ごとに改定する。
2) 情緒障害児短期治療施設の面積改善
 情緒障害児短期治療施設については、児童福祉法の一部改正により対象児童の年齢要件(12歳未満)が撤廃されることに伴い、児童の居住環境を確保する観点から、居室等の基準面積を改善する。
 ・1人当たり補助基準面積   24.7平方メートル → 28.6平方メートル
3) 児童家庭支援センターの設置
 児童養護施設、母子生活支援施設等に附置して、地域における児童やその家庭等に関する相談に応じ、必要な助言を行う児童家庭支援センターを新たに創設する。(法改正により、児童福祉施設として新たに位置付け)
 ・1か所当たり補助基準面積   84.4平方メートル
4) 児童自立支援施設(通所部門)の設置
 家庭環境その他環境上の理由により生活指導等を要する児童の自立を支援するため、児童自立支援施設に新たに通所部門を整備する。
 ・1人当たり補助基準面積   14.6平方メートル加算
5) 保育所の分園方式の導入
 都市部や過疎地等における用地の問題、入所待機児童の解消及び入所児童の減少等に対応するため保育所の分園方式を導入する。
6) 身体障害者療護施設における筋萎縮性側索硬化症(ALS)等居室の整備
 身体障害者療護施設に筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の疾患を有する障害者の残存機能の維持、日常生活における介助を効率的に行うための専用居室を新たに整備する。
 ・1人当たり補助基準面積   15.3平方メートル加算

イ 社会福祉施設等設備整備費

(ア)設備整備費については、対前年度比7.0%減の135億円を計上し、施設整備量に対応した必要な額を確保した。
(イ)新たな施設整備に伴う初度設備費の補助
1) 児童自立支援施設(通所部門)の設置に伴う初度設備
 ・初度設備   108千円×利用(増加)定員
2) 保育所の分園方式導入に伴う初度設備
 ・初度設備   43千円×利用(増加)定員
3) 身体障害者療護施設における筋萎縮性側索硬化症(ALS)等居室の整備
 ・初度設備   121千円×利用(増加)定員
 ・特殊介護設備   厚生大臣が必要と認めた額

(2)平成10年度の整備方針等

ア 基本的整備方針

 平成10年度においては,次の事項を基本として整備を図ることとしているが施設整備費については、極めて厳しい予算(案)となったことを踏まえ、限られた財源を効率的かつ有効に活用する見地から、施設整備事業内容の精査を行う等により、必要な整備量の確保を図ることとしている。
 各都道府県市におかれては、来年度に予定している整備計画の徹底した精査を図り真に必要と認められる整備について厳選した対応に努められたい。

(ア)「新ゴールドプラン」関係については、地方老人保健福祉計画に示された必要整備量を踏まえた計画的な整備を着実に推進する。
(イ)「障害者プラン」関係については、平成14年度末の整備目標に向けて計画的に障害者施設の整備を推進する。
(ウ)「緊急保育対策等5か年事業」関係については、老朽化している保育所の改築整備を促進するとともに、地域のニーズに応じた保育所の多機能化を図るための整備を推進する。
(エ)施設入所者の安全性を確保する観点から、老朽施設の改築、大規模修繕等の整備を推進する。なお、この場合、建築後の経過年数及び老朽度を重視するとともに防災対策に十分配慮する。
(オ)(ア)〜(エ)のほか、原則として、次の内容のものを優先的に整備する。
1) 施設利用者に対するサービス提供にとどまらず、広く地域に開かれた在宅福祉の推進拠点としての機能を果たすもの。
2) 施設入所者等の居住環境、保健衛生等、処遇の一層の向上を図るため、大部屋解消等の整備を図るもの。
3) 土地の有効活用等を図るもの。
 特に、都市部における用地取得の困難性から施設の高層化、複合化を図るものや、文教施設等の利用も含め各種施設の合築、併設を行うもの。
4) 過疎、山村、離島等において、適切な入所者処遇と効率的な施設運営が確保できるもの。
5) 地すべり防止危険か所等危険区域に所在する施設の移転改築整備を行うもの。

イ 平成10年度施設整備費の国庫補助協議について

 各都道府県市において計画されている平成10年度の国庫補助協議予定額は、約2,150億円(平成9年12月現在で把握)が見込まれており、平成10年度予算計上額を大幅に上回っている状況にあることから、各都道府県市からの国庫補助協議に当たっては厳しい調整をせざるを得ないところである。
 昨年9月に開催した社会福祉施設整備主管課長会議の趣旨等を踏まえ、各都道府県市におかれてはさらなる協議予定内容の精査に努めていただきたい。
 なお、社会福祉施設整備費の国庫補助協議については、別途通知することとしているのでご了知願いたい。

ウ その他の留意事項

(ア)補助金の富裕団体の調整について
 富裕団体向けの補助金等の調整については、平成10年度においても、引き続き補助金等の整理合理化の一環として富裕団体に対して調整措置を講ずることとしているのでご了知願いたい。
(イ)国庫補助事業の廃止について
 地域福祉センター及び軽費老人ホーム(B型)に対する国庫補助については、補助金の整理合理化の一環として、平成10年度に廃止する。

(3)社会福祉施設整備業務の再点検について

 平成8年度決算検査報告において、会計検査院から社会福祉施設整備費で実施した整備事業において、不適切な最低制限価格の設定や建築工事契約の二重契約、不適切な値引き処理及び補助対象外事業への補助等について補助金が過大に交付されていたとして指摘を受けたところである。
 厚生省においては、平成9年3月31日に取りまとめた「施設整備事業等の再点検のための調査委員会報告書」で明らかにしたとおり、各都道府県市が行う契約手続きに準拠、一括下請負の禁止などを補助金の交付の条件とすること等建設工事の適正化、補助金交付対象施設の明確化等の措置を講じ周知徹底を図ったところである。
 各都道府県市におかれては、施設整備業務のさらなる再点検と今般の会計検査院の指摘を踏まえ、都道府県部課長会議等での指導の徹底や未然防止策の検討など再発防止対策の充実に努めていただきたい。

(4)社会福祉施設の運営について

 昨年6月の児童福祉法の改正及び12月に成立した介護保険法の導入により、社会福祉施設を取り巻く環境に大きな変化がみられ、さらに昨年11月から中央社会福祉審議会において社会福祉基礎構造改革の議論が開始され措置制度についても検討がなされることとなっている。
 しかしながら、社会福祉施設の果たす役割は変わるところでなく、次の点を留意のうえ管下社会福祉施設の指導を願いたい。

ア 施設の役割と適正な運営管理の推進

(ア)社会福祉施設は、「新・高齢者保健福祉推進十か年戦略」等福祉3プランの着実な推進により高齢者及び障害者施設を中心に施設数が増加し、平成8年10月1日現在の措置費対象施設は3万4千か所、利用者は255万人となっており、その運営に要する経費は、平成10年度で利用者の自己負担を含め総額3兆2,075億円となっている。その事業規模や少子高齢化社会への対応、福祉3プランの推進等により社会福祉施設に対する国民の期待と関心は益々大きく、適正かつ効率的な施設運営に努めることはもちろんのこと、高齢者、障害者等の多様なニーズに応えるため、さらなるサービスの向上に努める必要がある。
 また、社会福祉施設は、地域の福祉資源として福祉活動等の拠点としての機能が求められており、施設のもっている設備や専門的機能、介護等の情報を地域社会に提供していくことが重要となっている。
 さらに、福祉人材の確保を図る観点から、各社会福祉施設において介護福祉士養成施設等からの実習生の受入、寮母等職員の介護福祉士資格取得に対する支援や平成10年度から義務化された教員免許取得志望者に対する介護等体験の受入等、積極的な取組みについて管下社会福祉施設に対し指導願いたい。
(イ)社会福祉施設の運営費の運用及び指導については、従来から適正な指導をお願いしているところであるが、なお多額の使途不明金が発覚するなどの不祥事が生じているところであり、これら不祥事は、社会福祉施設に対する国民の信頼を著しく損なうこととなる。
 ついては、指導監査の結果を踏まえた運営費の指導にあたる等、指導監査担当課等との連携を図り、適正な施設運営について引き続き指導されたい。

イ 総務庁の勧告への対応

 社会福祉施設を経営する社会福祉法人の会計経理については、経理規程準則を定め、会計事務処理の統一を図り健全な社会福祉施設運営の確保をお願いしているところであるが、平成4年6月及び昨年7月に総務庁より「社会福祉法人の指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告」等を受けたところである。
 この勧告を受け、昨年12月11日付社援施第175号及び社援施第176号通知をもって経理規程準則の一部改正を行い、法人の業務に関し業者と行う契約について、随意契約として差し支えない場合と競争契約にふさねばならない場合の基準を明確に示したところである。
 ついては、管下社会福祉法人に対し周知を図り、適正な会計経理が行われるよう指導願いたい。

ウ 入所者処遇及び職員処遇の充実

 「新・高齢者保健福祉推進十か年戦略」等により、計画的な施設整備が行われることとなるが、社会福祉施設の運営を行うにあたっては入所者処遇の向上が最も重要な課題の一つである。
 入所者処遇の向上を図るためには、その担い手である施設職員の資質の向上はもとより、業務の見直し、職員処遇の充実、働きやすい勤務体制を整備することが不可欠であるので、措置費に算定されている職員処遇改善のための経費(業務省力化等勤務条件改善費、年休代替要員費等)の趣旨を十分に踏まえ、管下社会福祉施設を指導されたい。

エ 社会福祉施設の感染症予防対策について

 平成8年に発生した腸管出血性大腸菌O157(以下「O157」という。)による食中毒については、昨年も社会福祉施設においてその発生をみているところである。
 O157は、特に、体力が弱い高齢者、幼児等が感染しやすいといわれ、その感染予防対策等を十分に行うことが必要である。そのため、昨年3月には、大規模食中毒の発生を未然に防止するとともに、食中毒発生時の食中毒処理の一層の迅速化・効率化を図るため、大量調理施設の衛生管理マニュアルを示し、8月には社会福祉施設の食中毒予防と食中毒予防に対する意識高揚を一層図るため自主点検の実施など、種々の対策をお願いしたところである。
 この結果、社会福祉施設においては、O157による食中毒は減少したところであるが、サルモネラ菌などの原因による食中毒は依然減少していない状況である。
 また、冬季はインフルエンザが流行する時期であり、特に高齢者は感染した場合に重度化しやすいといわれており、老人福祉施設をはじめ社会福祉施設についてもその予防に十分留意する必要がある。
 ついては、管下社会福祉施設に対するこれら感染症の予防等衛生管理の指導にあたっては、衛生部局と緊密な連携を図りながら一層の指導をお願いする。

オ 施設運営費の平成10年度予算(案)における改善内容

 平成10年度予算(案)においては、入所者の一般生活費等について生活保護基準に準じた所要の改善を図るとともに、職員処遇の充実を図るため国家公務員に準じた給与改善等を行うこととしているので、管下社会福祉施設職員の待遇改善並びに入所者処遇の一層の充実について引き続き指導されたい。

カ 福祉施設経営指導事業について

 本事業は、社会福祉施設の適正かつ安定的な経営と入所者処遇の向上等をめざし、専門家による指導、援助を行うため平成2年度の事業創設以来、計画的な整備を図り平成9年度において全県実施としたところであるが、今後の社会福祉基礎構造改革など福祉をめぐる施策の変化に社会福祉施設が的確に対応するためにも重要な事業と認識しており、さらに効果的な事業運営が必要と考えているところである。
 ついては、既実施県の状況を見るとその取組状況が低調な県が見受けられるので、実施状況を再点検し、積極的かつ効果的な事業の推進が図られるよう指導願いたい。

(5)社会福祉施設の防災対策について

ア 防災対策の取り組み

 社会福祉施設の防災対策については、入所者の安全確保の観点から、「社会福祉施設における防火安全対策の強化について」(昭和62年9月18日社施第107号社会局長、児童家庭局長連名通知)等の趣旨を踏まえ、管下社会福祉施設に対し指導を願っているところである。施設の運営上、入所者の安全確保は最重要課題であることを再認識いただき、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備の整備及び夜間防火管理体制の整備など、施設における具体的、効果的な防災対策に万全を期すよう管下社会福祉施設に対する指導の徹底に努められたい。
 施設整備費においても、入所者の防災対策、処遇改善の観点から、防災対策に配慮した整備を優先的に採択することとしている。また、措置費においても、地域住民との連携による合同避難訓練や避難用具の整備等を行う総合防災対策強化事業を施設機能強化推進費のメニュー事業として算入しているところであり、これらの制度の積極的な活用を図り、社会福祉施設の防災対策の充実をお願いしたい。

イ 被災施設の早期復旧

 社会福祉施設等災害復旧事務の取扱いについては、「社会福祉施設災害復旧費国庫負担(補助)の協議について」(平成7年3月30日社援施第76号社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)により、災害発生後速やかに施設人材課に報告をお願いするとともに、災害復旧事業の早期整備を図り、施設運営に支障が生じないよう指導の徹底をお願いしたい。


12 社会福祉・医療事業団の事業について(施設人材課)

(1)貸付規模

 平成10年度予算(案)においては、福祉・医療両貸付事業について、少子・高齢社会等に対応し、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)、障害者プラン、緊急保育対策等5か年事業、地域医療計画等を着実に推進するとともに、介護保険法の施行を円滑に推進していくために必要な社会福祉施設、医療関係施設の整備のための事業枠、資金枠を確保している。

 ア 貸付契約額 3,680億円

  (うち福祉貸付 1,280億円)

 イ 資金交付額 3,841億円

  (うち福祉貸付 1,266億円)

(ア)資金運用部借入金 3,645億円
(イ)自己資金 196億円
(2)福祉貸付事業における条件の改定について

ア 社会福祉事業施設に係る貸付利率設定方式の変更

 4.6%(固定金利)。ただし、財投金利が4.6%を下回る場合は、財投金利と同率とする。

イ 医療法改正に伴う貸付けの相手方の拡大

 医療法改正に伴い、第2種社会福祉事業を実施する医療法人を貸付けの相手方に加える。

ウ 融資率の引き下げ

 有料老人ホーム(WAC事業を除く)、在宅シルバーサービス事業に係る融資率を引き下げる。
 90% → 80%

(3)融資基準単価等の見直しについて

 社会福祉事業施設に対する事業団融資基準単価については、平成9年12月26日に閣議決定された「特殊法人等の整理合理化について」を踏まえ、三省合同実態調査の結果等に基づき改定された国庫補助基準単価と同額とする等の見直しを行う。
 また、地方単独補助金のうち、事業団融資対象と重複する部分に対する補助金については、事業団融資対象基準から控除し、法人に対し適正な自己負担を求めることとしている。
 これらの見直しを踏まえ、各都道府県市においては、融資を希望する法人の資金計画及び償還計画等を十分に精査されたい。

(4)事業団融資と国庫補助協議との並行審査について

 国庫補助協議との並行審査については、「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」(平成9年3月28日付社援企第68号)により、平成10年度以降に創設法人が事業団の融資を希望する場合には、同事業団への借入申込の時期を早めるとともに、国庫補助協議のヒアリング及び法人設立認可の審査と並行して融資審査を行い、相互の連携を図ることとしたところである。各都道府県市においては、国庫補助協議が確実に見込まれる案件であって、事業団への融資を希望するものについては速やかに事業団への借入申込を行うよう、貴管下社会福祉法人等への指導とともに、意見書の提出及び融資審査の参考となる資料の添付についてご配意願いたい。

(5)社会福祉施設職員等退職手当共済事業

ア 平成10年度における給付予定額

(ア)給付予定人員 37,582人
(イ)給付総額 484億5千万円

イ 社会福祉施設職員等退職手当共済法第19条に基づく社会福祉・医療事業団に対する都道府県補助金の早期交付については引き続きご協力をお願いしたい。
 特に、平成9年度分に係る補助金未交付の都道府県においては、速やかな交付 について特段のご配意をお願いしたい。

(6)長寿社会福祉基金の充実について

 長寿社会福祉基金については、政府出資金の運用益により、高齢者や障害者の在宅福祉の充実と、生きがい・健康づくり事業の推進を図るため、民間の創意工夫を生かしつつ、地域の実態に即したきめ細かな在宅福祉事業等を実施するものである。
 また、平成8年度補正予算において行った500億円の追加出資による「高齢者・障害者在宅福祉等整備基金」については、ボランティア団体等多様な主体が参加した在宅福祉の充実を図る等従来の施策の枠を越えたよりきめ細かな在宅福祉事業等を実施するものである。
 各都道府県の本事業へのご協力に感謝申し上げるとともに、引き続き管下団体等に対する周知、社会福祉協議会に対する指導方お願いしたい。


13 福祉人材確保対策の推進について(施設人材課)

 少子・高齢化の急速な進行等に伴い増大・多様化する福祉需要に対するため、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)等の基盤整備を着実に推進していく必要があり、福祉サービスを担う人材の養成・確保がますます重要な課題となっている。
 特に、先の国会で成立した介護保険制度の円滑な実施を図る必要があり、各都道府県市におかれても、社会福祉事業従事者の就労の促進、処遇の改善、資質の向上等の人材の確保対策を一層推進するための対応に十分ご配慮願いたい。

(1)都道府県福祉人材センターの運営について

 新ゴールドプラン等の推進さらには、介護保険制度の円滑な実施のためには、福祉を支える人材の養成確保が不可欠であり、都道府県福祉人材センターは、その中核的な役割を果す必要がある。
 今後の福祉人材センターの運営は、無料職業紹介事業の実施にとどまらず、社会福祉従事者の資質の向上、社会福祉事業経営者の期待に応えられる人材確保相談、福祉の仕事に関する啓発普及活動の積極的な展開が必要であるので、一層の取り組みをお願いしたい。
 なお、都道府県福祉人材センターは、平成5年度に全都道府県に設置され、設置後5年を経過し、センターの人的な体制が一応整ったことから、平成10年度予算(案)において、地方分権推進委員会からの勧告を踏まえ、人件費相当額について一般財源化を図ることとしているが、その事業の推進に支障を生じないよう各都道府県においては、所要の財源措置等のご配慮を願いたい。
 また、このセンターの事業費に対する国庫補助についても、介護保険制度が施行される平成12年度を目途に、国と地方の経費負担のあり方を見直す予定である。

(2)社会福祉事業従事者等の資質の向上について

 これからは、社会福祉事業に従事する人材の資質の確保が極めて重要であり、あらゆる職種の従事者が、生涯にわたって続けられる仕事として、研修を通して自らの知識技術を高めていくことができるように、体系的かつ生涯にわたる研修の確立が必要である。
 そのため、研修実施に必要な教材及び指導教本を開発中であり、完成次第、各都道府県市に発送する予定であるのでご活用され、研修の充実について一層の取り組みをお願いする。

(3)介護福祉士、社会福祉士の養成強化について

ア 介護福祉士養成施設の設置について

 これからの高齢者等の介護問題に適切に対応していくためには、それぞれの介護現場でサービスにあたる者に、豊かな人間性とすぐれた介護技術を兼ね備えた資質の高い人材を確保することが求められている。
 とりわけ、介護福祉士が介護職員の中核的な役割を担うことが期待されていることから、介護福祉士を養成する介護福祉士養成施設については設置要望が高まっている。しかしながら、現状では養成施設の設置が地域的に集中していることや、各都道府県間の養成施設数に格差が見受けられる。
 今後の養成施設の新設や定員増の予定のある都道府県においては、介護保険制度の円滑な実施に必要な人材見込み等中長期的な需要や、就学人口の状況、実習施設の確保、学校運営面等総合的な観点から検討のうえ、適切な指導をお願いしたい。

イ 介護福祉士養成のための実習指導者養成課程の拡大について

 平成9年4月現在、介護福祉士養成施設は、253校(291課程)、入学定員17,056人となっており、さらに平成10年度にも約40校が新設される予定である。質の高い介護福祉士を養成するためには、社会福祉施設等での介護実習の充実が必要であり、そのため実習受け入れ施設での実習指導者の確保が急務となってきている。
 そこで、平成10年度予算(案)において、従来より(福)全国社会福祉協議会に委託実施してきた介護福祉士養成のための実習指導者養成課程の定員を200名から400名に増員することとしているので、この養成課程への参加が積極的になされるよう関係施設へ周知願いたい。

ウ 社会福祉士会、介護福祉士会への支援について

 社会福祉士、介護福祉士の全国的な職能団体として(社)日本社会福祉士会、日本介護福祉士会(任意団体)が設立され、自主的活動として全国研修会、各ブロック研修会等を実施しているところである。この活動は福祉専門職の資質を向上させる観点から有意義なものと考えられるので、地域での活動が円滑に行われるよう特段の支援をお願いしたい。
 なお、日本介護福祉士会については、社団法人化に向けて取り組んでいるところであり、介護に関わる専門家としての介護福祉士の質の向上を図るためには、都道府県レベルでの職能団体としての活動が必要であり、都道府県介護福祉士会(支部)の未設立の府県があるが、すみやかに組織化が図られるよう積極的な支援をお願いしたい。

・(社)日本社会福祉士会 支部数47都道府県 5,024名(9年12月末現在)
・日本介護福祉士会 支部数39都道府県 11,589名( 同上 )

(4)福利厚生センターについて

 福祉人材確保対策の重要な柱の一つである、社会福祉事業従事者の福利厚生については、福利厚生センターにおいて、各種事業を実施しているところであり、平成10年度においてもさらに会員の利便性の向上に努め、新たな事業を開始するなど福利厚生事業の一層の充実を図ることとしている。
 会員数は、各都道府県市の積極的なご協力により、平成9年12月現在、約12万人となっているが、都道府県間での加入率に、依然として大きな格差がある。福利厚生センターへの加入も職員処遇の一環としてきわめて重要と考えているので、引き続き加入促進について、積極的な指導・支援に特段のご協力をお願いしたい。

(5)教員免許状取得希望者の介護等の体験実習の実施について

 「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」(平成9年法律第90号)が、先の第140回国会で成立し、本年4月1日から施行されることとなっている。
 これは、教育職員の資質の向上を図るために、教員免許状の取得を希望する者に介護等の体験実習を行わせるものであるが、社会福祉施設等に対する理解を深めるためにも有意義なものであり、厚生省としてもこれに協力をすることとしている。各都道府県市においても、これが円滑に実施されるよう、対象社会福祉施設等に対して趣旨、内容を周知されるとともに、学生の受け入れ調整窓口を担う都道府県社会福祉協議会や、その他関係機関及び各都道府県市の教育委員会等との密接な連携を図られるよう、特段のご配慮をお願いしたい。



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