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4 生活保護制度の運営について (保護課)


(1)平成10年度生活保護基準の改定

ア 平成10年度の生活扶助基準については、当該年度に予想される国民生活の動向を勘案して、従来同様、水準均衡方式により改定することとしている。
 これにより、標準3人世帯の生活扶助基準は0.9%の引上げとなる。

標準3人世帯(33歳男・29歳女・4歳子)

  平成9年度 平成10年度
1級地−1 161,859円 163,316円
1級地−2 154,575 155,967
2級地−1 147,292 148,618
2級地−2 140,008 141,268
3級地−1 132,724 133,919
3級地−2 125,441 126,570

イ 世帯人員別の生活扶助基準については、家計の弾力性に乏しい少人数世帯の特性や世帯人員別の消費構造の差異を勘案し、一般世帯における世帯人員別の消費支出の実態に合わせるよう是正を図ることとしている。

ウ なお、生活扶助基準以外の他の扶助基準等については、これらの扶助の性格を踏まえて各種実態料金の状況等を総合的に勘案し、所要の改善を図ることとしている。

(2)生活保護の動向

 最近の保護動向をみると、全体的な動向としては横ばいから増加傾向に転じ、被保護人員は平成9年5月現在で約89万人、保護率も平成8年10月以降ほぼ7.10/00で推移している。
 また、被保護世帯数は平成5年度より増加傾向で推移しており、平成9年5月現在で約62万3千世帯となっている。
 保護動向に影響を与える主な要因としては、景気の動向等の経済的要因、高齢化の進行や核家族化等の社会的要因、他法他施策の整備状況、実施機関の適正実施の取組等が考えられるが、景気が足踏み状態にあり、また、完全失業率も依然高い水準で推移していることから、これらの動向を注視していく必要がある。

(3)生活保護の適正実施の推進等

ア 生活保護の適正な運営については、各都道府県、市において格段の御努力をいただいているところであるが、引き続き福祉事務所として組織的な対応を図るとともに、保護の受給要件の的確な把握、年金・社会保険等他法他施策の活用、きめ細かな面接相談と実態に応じたフォローアップ等を図り、国民の理解と信頼を失うことのないよう、制度の適正かつ円滑な実施について管下実施機関を指導されたい。

イ 医療扶助については、保護費負担金の約6割が医療扶助費であり、被保護者の約8割が医療扶助を受給していること、また、保護開始時の約8割が傷病を原因としていることなどからも明らかなように、本制度における医療扶助の占める割合は大きく、その適正運営は制度全体に大きな影響を与えている。
 このため、従来からレセプト審査や指定医療機関の指導・検査に御努力いただいているところであるが、昨今、医療機関による不祥事が相次いで発生し、国民の不信を招いているところであるので、今後とも一層の充実強化を図られたい。

ウ 被保護世帯のうち高齢、母子、傷病障害世帯などの要援護世帯の占める割合が年々増加しており、これらの世帯の実情に対応したきめ細かい適切な処遇を図る観点から、

1)世帯の生活実態の把握の徹底
2)他法他施策の活用及び関係機関との連携の充実強化
3)研修等を通じた査察指導機能及びケースワーク技術の向上
4)職員の資質の向上
等に積極的に取り組むよう管下実施機関を指導されたい。

(4)生活保護費補助金について

ア 平成10年度予算(案)について

 生活保護費補助金については、生活保護法等の法施行事務費である生活保護適正化運営対策等事業及び奨励的補助金である生活保護安定運営対策等事業について補助を行ってきたところであるが、地方分権推進委員会の第二次勧告において、同化・定着・定型化しているものに係る補助金等、即ち法施行事務費に係る補助金等については一般財源化することが勧告されたところである。
 この勧告に基づき、生活保護適正化運営対策等事業費のうち地方公共団体の事務として同化・定着している事務については一般財源化することとし、監査旅費等の都道府県本庁経費、売春防止法に基づく婦人保護事業強化対策費及び災害救助対策事業費については生活保護適正実施推進等事業費として再編することとしている。
 また、生活保護安定運営対策等事業費についても生活保護適正実施推進等事業費として再編し、保護費支弁分及び社会福祉適正化推進総合対策事業分については廃止するとともに、生活保護指導監査委託費において実施していた事業費分については、生活保護適正実施推進等事業費において補助することとしているところである。

(参考)

生活保護費補助金等の見直し

生活保護費補助金 生活保護適正実施推進等事業費 
6,550百万円
・生活保護安定運営対策等事業費 
12,000百万円
・生活保護適正化運営対策等事業費
2,517百万円
生活保護指導監査委託費       
2,778百万円
2,479百万円
事業費303百万円を生活保護適正実施推進等事業費に移替

イ 補助事業の適正実施について

 補助金等の執行については、従来から機会あるごとにその適正な執行を行うよう強く要請してきたところである。
 しかしながら、昨今、いわゆるカラ出張等による補助金等の不適正な支出の事例が見受けられたことは極めて遺憾であるので、補助事業の実施及び経理の適正化に対する指導を一層強化、徹底していただきたい。

(5)介護扶助の創設について

 介護保険制度の創設に伴う介護扶助の創設を内容とする生活保護法の一部改正については、昨年12月17日をもって、「介護保険法施行法(平成9年法律第124号)」として公布されたところである。
 その改正の趣旨は、介護保険制度により、保険給付の対象となる介護サービスに係る介護需要の充足が国民に権利として保障されることとなること及び当該介護需要は従前生活困窮者についても老人福祉の措置又は医療扶助により充足されていたことにかんがみ、利用者負担を自ら負担できない者についても当該介護需要が充足されるよう、生活保護制度において、介護保険の給付の対象となる介護サービスに係る介護需要を最低限度の生活需要と位置付け、保護の対象とするものである。
 現在、介護扶助の実施に係る具体的な事務処理の手続について検討を進めているところであり、本年3月を目途にその骨格をお示ししたいと考えている。


5 婦人保護事業の推進について(保護課)


(1)婦人保護事業に係る取組の強化

 今日の売春問題を取り巻く状況は、社会情勢の変化や国民の性に対する意識の変化等を反映して、売春形態の多様化、潜在化が進み、その対応はますます複雑、困難化している。
 このような状況を踏まえ、売春の未然防止等に重点をおいた事業運営を図る観点から、各都道府県においては、婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設等の連携体制の強化、啓発活動の積極的推進、要保護女子の早期発見等について、さらなる取組の強化に努めていただきたい。

(2)男女共同参画審議会の動向

 平成9年4月1日に男女共同参画審議会設置法が施行され、総理府に男女共同参画審議会が設置された。これに伴い、売春対策審議会は廃止され、平成9年6月に男女共同参画審議会に置かれた女性に対する暴力部会において、売買春その他の女性に対する暴力に関する調査審議が行われているところである。
 厚生省においては、今後、同審議会及び同部会における調査審議を踏まえ、婦人保護事業の在り方等について、検討していくこととしているので了知願いたい。

(3)地方分権の動向

 平成9年7月の地方分権推進委員会第2次勧告においては、売春防止法上の婦人相談員に係る必置規制について、婦人相談員の職務上の名称に関する規制は存置することとし、都道府県知事が、婦人相談員を委嘱することとされたところである。
 今後、本勧告を踏まえた地方分権推進計画が策定され、法改正等所要の手続が進められることとなるので了知されたい。


6 災害救助法の運用について(保護課)


(1)災害救助法による応急救助は、発災直後の混乱状況下における被災者の保護と社会秩序の維持を目的とし、大規模な災害が発生した場合において、被災者の救出、食品及び飲料水の供給、避難所及び応急仮設住宅の設置、救護班による医療等を応急的、一時的に行うものであり、災害応急対策において極めて重要な役割を担うものである。

(2)災害は、全国各地域において毎年発生しているところであり、災害救助法による応急救助の迅速かつ的確な実施が要求されるため、平素からその実施体制を確保しておくとともに、管下市町村に対する指導の徹底を図られたい。特に、発災時には平常時には予想していない事態が生じることも考えられるので、交通手段や連絡手段の途絶も想定した職員の参集体制や関係機関間の連絡体制について予め定めておくとともに、管下市町村にもその指導の徹底を図られたい。

(3)災害が発生した際には、災害救助法による救助の実施について速やかに判断する必要があること、また、応急救助の程度、方法や特別基準の要否等の実施方針を迅速かつ的確に策定し、これを踏まえて国、都道府県が一体となって対応する必要があることから、被害状況を迅速に把握し、とりあえず厚生省に第一報を入れる等、遅滞なく報告するとともに、その後も連絡を密にして救助に当たられるよう特にお願いする。

(4)救助の程度、方法及び期間等を定めた基準等については、平成9年6月に阪神・淡路大震災における経験等を踏まえ、避難所、応急仮設住宅、炊き出しその他による食品の給与等の単価を大幅に引き上げるとともに、福祉避難所、福祉仮設住宅、応急仮設住宅の集会施設等の新設を図るなど大幅な見直しを行ったところである。
 また、その運用については、新たに「大規模災害における応急救助の指針」を策定し、1)避難所の周知、管理責任者の配置、運営マニュアルの作成等、2)応急仮設住宅の用地の把握・確保、高齢者等への配慮等、3)食料・飲料水・生活必需品の確保等、4)その他、救助に当たり特別な配慮を要する者への支援、情報提供、ボランティア活動との連携、救助物資・義捐金の取扱い等、留意事項をお示ししたところである。これらの内容については、これに先立って行われた総務庁の「震災対策に関する行政監察」において指摘されたものもあるので、これらの趣旨を踏まえ、今後の救助に当たられるようお願いする。

(5)災害弔慰金及び災害障害見舞金の支給並びに災害援護資金の貸付については、発災直後の極めて混乱した状況の下で、迅速、的確に事務を遂行する必要があるため平素から実施体制の確保について十分配慮し、管下市町村の指導の徹底を図られたい。



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