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全国厚生関係部局長会議資料(薬務局)

  目 次

(指示事項)


当面の薬務行政について

1.改正薬事法の施行について

(1)治験の取り扱いについて

(2)審査の迅速化・高度化について

(3)GCP等の法制化について

(4)市販後調査について

(5)その他

2.薬事行政組織の再編について

3.地域保健法の施行に伴う権限の移譲等について

(1)権限の移譲について

(2)円滑な施行に向けて

4.規制緩和への取り組み

(1)規制緩和に関する考え方

(2)規制緩和推進計画

(3)医薬品販売の規制緩和

5.医薬分業の推進等について

(1)医薬分業の推進

(2)薬剤師の養成・研修

6.血液事業対策について

(1)献血の推進・普及

(2)原料血漿の確保

(3)血液製剤の安全性確保対策の推進

(4)血液製剤による感染症情報の収集・提供

(5)血液製剤使用適正化の推進

(6)血液事業の効率的運営

(7)血液行政の在り方に関する懇談会の設置

7.医薬品副作用被害等の救済について

(1)医薬品副作用被害救済制度

(2)エイズ訴訟の和解等

(3)スモン対策

8.医薬品流通対策について

(1)医療保険における薬剤給付をめぐる最近の議論

(2)薬価調査・特定保険医療材料価格調査

(3)消費税率引き上げに伴う流通問題等について

9.医薬品等研究開発の振興について

(1)保健医療分野における基礎研究推進事業

(2)希少疾病用医薬品等の研究開発促進制度

(3)エイズ医薬品の研究開発の推進

(4)出融資制度の充実

(5)医療用具の研究開発の推進

10.医薬品の承認審査等について

(1)承認審査

(2)承認・許可事務の迅速化、効率化等

(3)承認審査の国際的ハーモナイゼーションの推進

(4)新医薬品承認審査概要(SBA)の作成

11.医療用具の承認許可等について

(1)許可権限の委譲

(2)FD申請

(3)国際的ハーモナイゼーションの推進

12.医薬品等の安全対策について

(1)医薬品適正使用の推進

(2)医薬品の再審査・再評価

(3)毒物劇物の登録等の電子化

13.医薬品等の監視指導について

(1)GMPの推進

(2)不良医薬品等の監視指導

14.麻薬・覚せい剤等の対策について

(1)麻薬・覚せい剤等の取締り

(2)啓発活動の推進

(3)医療用モルヒネ製剤の適正使用の推進等

(4)国際協力の取組


( 資 料 )

1.平成9年度薬務局予算案の概要

2.都道府県・市に対する補助金等一覧表

3.薬事行政組織の再編

4.年度別処方せん発行枚数の推移

5.平成8年献血区分別献血者数(速報値)

6.エイズ訴訟の和解等

7.医薬品産業の現状

8.エイズ治療薬の拡大治験について

9.医薬品安全性確保対策検討会最終報告書について(概要)

10.過去5年間の新医薬品承認状況(新有効成分数)

11.医薬品等製造(輸入)承認・許可状況の推移

12.医療機器産業の現状

13.医薬品安全性情報統合化システム等概念図

14.「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金運動について

当面の薬務行政について

1.改正薬事法等の施行について


昨年6月に公布された改正薬事法は、ソリブジンによる副作用問題等を契機として、治験から承認審査、市販後に至る医薬品の総合的な安全性確保対策を充実させることをねらいとしたものであるが、その施行が平成9年4月1日に迫っており、薬事法施行令が平成9年1月8日に公布したところであり、また、現在、GCP省令その他の関係政省令等を整備中である。これらの円滑な施行に向けて配慮願いたい。

(1)治験の取り扱いについて
 治験への公的関与の強化として、医薬品機構による治験相談、治験計画に対する調査が行われるが、機構においては、昨年10月に治験指導部を発足させ、治験データベースの構築、職員の研修等必要な準備を進めている。
 治験計画調査の対象は、新有効成分含有医薬品等とすることで検討をしている。

(2)審査の迅速化・高度化について
 改正法等の施行に伴い、医薬品機構において「審査資料適合性調査」として、承認申請資料の原データのチェック(いわゆる「生データチェック」)、GCP実地調査、GLP実地調査が行われ、資料の信頼性の確保及び厚生省における評価・判断業務の充実が図られることとなる。
 この承認審査資料の調査については、従来の同一性調査と同様、承認申請時に都道府県を経由して申請されることとなる。

(3)GCP等の法制化について
 GCP等の法制化を踏まえ、これらの省令化作業を進めている。
 GCPについては、中央薬事審議会GCP特別部会において審議中であり、昨年11月に公表された医薬品安全性確保検討会最終報告の内容等も踏まえ、モニタリング、オーデイッテイングの実施、文書によるインフォームドコンセント、治験審査委員会の機能強化、治験総括医師の廃止等を含む素案を昨年12月に公表しているところである。
 今後3月中旬に中薬審の答申を得た後、速やかに省令を公布し、関係通知を発出する予定である。
 改正GCPについては、製薬企業、医療機関等関係者への普及啓発を図るため、GCP説明会や治験モデル事業を実施していくこととしている。
 GLPについても省令化作業を進めているが、その内容は従来の通知の内容を基本的に踏襲する予定である。

(4)市販後調査について
 製薬企業の市販後調査については、調査のための社内体制や副作用情報等の収集、 提供等の手順等を定めた「市販後調査の実施に関する基準」(GPMSP基準)が 局長通知として平成5年から適用されているが、今改正においてこれを製薬企業の 遵守事項として法制化することとしており、現在その省令化作業を進めている。従 来の通知を基本とするが、新たに開発部門と調査部門の連携強化、共同販売を行う 場合の企業間の連携強化等を等を盛り込む予定である。
 また、副作用・感染症報告や医薬品の自主回収着手報告義務を法制化しており、 行政としては今後一層、副作用情報等に対する迅速・的確な対応が求められること となる。
 製薬企業がGPMSPや副作用等報告義務を遵守しない場合には、業務の停止等 の行政処分の対象となるため、これらの遵守が図られ、市販後安全対策の充実が図 られるものと考えている。

(5)その他
 緊急に使用されることが必要であり、外国において販売すること等が認められている医薬品について、承認前の許可を与えることができる承認前特例許可制度については、昨年8月に許可申請者に対する義務の付加、表示の特例等を内容とする薬事法施行令の改正が、施行されており、今後個別事案ごとに対応することとなる。
 薬局・薬剤師関係では、薬局開設者の薬剤師である薬局管理者の意見尊重義務、薬剤師の医薬品購入者等に対する情報提供義務規定等が設けられており、その趣旨等について薬剤師会等の関係団体への周知徹底が求められる。

2.薬事行政組織の再編について


 医薬品の承認審査等における専門性、透明性を高め、審査体制を強化するとともに、医薬品医療機器等の安全対策のみならず医療施設における院内感染の防止対策等医療面も含めた幅広い安全対策を推進するため、薬務局を中心とした内部部局並びに国立衛生試験所の組織再編を行う。
 具体的には、薬務局を廃止し、医薬品等に係る安全対策と振興対策を組織的に分離させるために、研究開発振興、生産・流通対策は健康政策局の所管とする一方、医薬品等の治験、承認審査、市販後の安全対策や医療施設における院内感染防止対策等の安全対策全般を所掌する「医薬安全局(仮称)」を設置する。
 また、医薬品・医療機器審査部門を独立・強化するために、医薬品や食品等の安全性、有効性に関する調査研究を総合的に推進する国立衛生試験所を改組した、国立医薬品食品衛生研究所(仮称)に「医薬品医療機器審査センター(仮称)」を新設する。
 なお、この再編の実施時期は平成9年7月1日を予定している。

3.地域保健法の施行に伴う権限の移譲等について


(1)権限の移譲について
 地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律(平成6年法律第84号)において、保健所設置市(特別区)の機能強化と一層の拡大が図られ、都道府県の事務のうち、一元的に保健所設置市(特別区)で実施することが望ましい事務について平成9年4月1日より権限移譲することとされた。薬事法関係の事務については、次の事務権限が移譲される。

ア.一般販売業(卸売一般販売業を除く。)の許可(第26条)
イ.一般販売業(卸売一般販売業を除く。)の管理者兼業の許可(第27条で第8条第3項を準用)
ウ.特例販売業の許可(第35条)
エ.特例販売品目の制限(第36条)
オ.医薬品販売業(卸売一般販売業を除く一般販売業、特例販売業に限る。)の休廃止等の届出の受理(第38条で第10条を準用)
カ.立入検査等(第69条第1項)
キ.廃棄等の措置(第70条)
ク.改善命令等(第72条)
ケ.薬剤師の増員命令(第72条の2)
コ.管理者の変更命令(第73条)
サ.許可の取消等(第75条第1項)
シ.聴聞(第76条)
ス.薬事監視員の設置(第77条)

(2)円滑な施行に向けて
 4月1日の施行に向けて、事務の引継ぎに遺漏なきよう努めるとともに、施行後においても、都道府県と保健所設置市(特別区)との間で連携をとる等、円滑な事務の施行に留意されたい。
 なお、法律附則第13条の規定により、都道府県知事から保健所設置市市長(特別区区長)に移譲される事務に関しては、施行前に都道府県知事が行った許可等の処分又は都道府県知事に対して行った申請等の行為は、それぞれ保健所設置市市長(特別区区長)が行った処分又は保健所設置市市長(特別区区長)に対して行った申請等の行為とみなされるので留意されたい。

4.規制緩和への取り組み


(1)規制緩和に関する考え方
 医薬品等に係る規制は、人の生命・健康に直接関連するものであり、国民の保健衛生上極めて重要なものである。そこで、薬事法は医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するため、医薬品の製造・販売全般にわたり様々な規制を行っている。
 しかしながら、国際的整合性の確保や事業者の負担軽減、ひいては価格の低下、消費者の医薬品へのアクセス向上等の観点から、国民の生命・健康に支障が生じないよう十分配慮しつつ、規制の緩和に取り組んでいるところである。

(2)規制緩和推進計画
 平成8年3月29日に改定された規制緩和推進計画において薬務局関係の規制緩和項目として109項目(厚生省全体では299項目)を盛り込んでいるところである。これに基づき、医療用具の製造業・輸入販売の許可権限の一部を厚生大臣から都道府県知事へ委任するための政令改正を行う等の措置を講じてきたが、更に、年度内に医療用具の承認申請、毒物劇物営業者の登録申請のフロッピーディスク化等の規制緩和を行うこととしている。
 規制緩和を円滑に実施し、その実効を上げるためには、都道府県の協力が不可欠であり、引き続き御協力をお願いする。

(3)医薬品販売の規制緩和
 医薬品の一般小売店での販売の問題をはじめ、医薬品の販売規制については、平成7年度以降、行政改革委員会規制緩和小委員会において検討が行われてきたところであるが、昨年12月に公表された同小委の報告書において以下の2点が指摘されている。これらの指摘も踏まえながら、平成9年度以降において引き続き規制のあり方について具体的な検討を進めていくこととしている。
ア.医薬品のうち人体に対する作用が緩和で、販売業による情報提供義務を課すまでもないものについて、薬事法上の許可を受けた販売業以外の一般小売店においても販売できるよう、引き続き医薬品のカテゴリーの見直しについて検討を進めるべきである。
イ.一般販売業については、個々の販売業者に対する構造設備基準上の義務づけの廃止、薬剤師と薬剤師以外の従業員との役割分担等の明確化を図る方向で検討を行い、その結果に基づき薬剤師の員数規制の見直すべきである。

5.医薬分業の推進等について


(1)医薬分業の推進
ア.薬局運営の適正化
 医薬分業は近年、着実に進展し、平成7年度で処方せん枚数は前年度から12.8%伸びて2億6千5百万枚に達し、分業率は20.3%と推定されている。一方で、一昨年から昨年にかけて、一部のチェーン薬局と医療機関との不適切な結びつきがマスコミで取り上げられるなど医薬分業のあり方が問われている。医薬分業のメリットを十分に生かせる「かかりつけ薬局」を中心とした「面分業」を推進するため、薬局の受入体制の整備や「薬局業務運営ガイドライン」に基づいて指導を徹底するとともに、薬務主管課は、保険主管課との連携を密にし、薬局開設許可及び保険薬局指定の両面からの指導を行うことにより、薬局運営の適正化を図るようお願いする。
イ.医薬分業関連事業
(ア)医薬分業計画策定事業
 「かかりつけ薬局」を中心とした「面分業」を全国的に推進していくためには、地域の実状にあった計画的な体制整備が必要である。そこで、平成8年度において4県をモデル県とし、現在当該県が、それぞれ2次医療圏1地域を選定し、モデル計画の策定に向けて作業を進めているところである。来年度、これらモデル計画を踏まえ、都道府県が、2次医療圏毎に医薬分業に係る計画を策定するための経費を補助するものである。
(イ)医薬分業推進支援センターの施設・設備整備費補助
 平成4年度から調剤用医薬品の備蓄・薬局への譲渡、医薬品情報の収集・提供、休日・夜間時の調剤の業務を行う医薬分業推進支援センターの施設・設備の整備に対する補助制度を設けている。本事業は都道府県薬剤師会が設置主体となったセンターに対し、施設・設備に要する費用の1/3を国が、1/3を都道府県が補助するものである。なお、平成5年度から新たに法人格を有する郡市区薬剤師会が設立するセンターに対しても補助対象を拡大したので、引き続きその整備にご協力をお願いする。

(ウ)未就業薬剤師就業促進事業
 医薬分業が進展している地域においては、薬局薬剤師の確保が困難になりつつある。このため、平成5年度に「未就業薬剤師就業促進マニュアル」を作成し、平成6年度から本マニュアルに基づいた事業を実施する都道府県に対し、医薬分業定着促進事業の一環として補助を行ってきたところであり、本事業の活用についてご検討願いたい。
(エ)医薬分業啓発普及事業費
 医薬分業は国民医療の向上や医薬品の適正な使用を図る上で不可欠なシステムであることから、医療における薬の役割、薬の正しい使い方、医薬分業の趣旨やメリットを国民一人一人に普及、理解してもらい、その一層の定着を図る必要がある。このため、平成6年度から医薬分業定着促進事業の一環として各都道府県が実施する医薬分業の啓発活動に対して補助を行っており、本事業の活用についてご検討願いたい。

(2)薬剤師の養成・研修
 良質な医薬分業を推進していくためには、薬剤師の資質向上が重要である。このため、平成6年6月の「薬剤師国家試験制度改善検討委員会」最終意見に基づき、出題基準の改正等を行い、平成8年の国家試験から適用している。また、大学における薬剤師の養成に関し、より医療に即した薬学教育の充実に向け、「薬剤師養成に係る実務研修の受入体制の整備等に関する調査検討委員会」を設置している。
 薬剤師免許取得後の研修については、(財)日本薬剤師研修センターが、厚生省の委託を受けて、薬剤師生涯教育推進事業を実施しており、各都道府県の薬剤師研修協議会を中心にして、薬剤師生涯教育指導者養成のための研修が進められており、平成6年からは、研修認定薬剤師制度に基づく各種研修事業を実施しているところである。また、来年度からは、免許取得後の薬剤師を対象とした1年間程度の実務研修事業を開始することとしている。
 こうした各種薬剤師養成・研修に係る諸般の取組みの効果が、地域の薬剤師にとって十分実効が上がるよう、都道府県においては薬剤師研修協議会へのご協力をお願いする。

6.血液事業対策について


(1)献血の推進・普及
 血液製剤の国内自給及び安全性向上のため推進している成分献血、400ml献血は順調に進展しているが、200ml献血と400ml献血及び成分献血の割合を全国的にみるとかなりの格差が見受けられるので、各都道府県においては、的確な採血計画の策定を行うなど管下市町村及び血液センターと十分連携を図りつつ、献血制度推進モデル事業の活用等による効果的な献血推進運動を実施されたい。

(2)原料血漿の確保
 血液製剤の国内自給の第一目標に掲げた血液凝固因子製剤については、各都道府県等の御協力により一部のバイパス製剤を除き、国内自給が図られているところである。
 平成9年度の原料血漿の確保については、凝固因子製剤の市場動向などを勘案の上、原料血漿確保目標量を77万リットルとし、先般、各都道府県別目標量を通知したところであるが、その達成に向け御協力をお願いする。

(3)血液製剤の安全性確保対策の推進
 安全な血液製剤を供給するため、問診や各種検査の充実、副作用の発生防止等を図っており、平成9年度においても、PCR法によるHIV検出法の実用化に向けた研究や人工血液の開発研究等を行うこととしている。
 また、輸血後GVHD(移植片対宿主病)に関しては、血液センターにおいて医機関からの製剤への放射線照射の要請に対して応えてきたところであり、また、昨年12月、日本赤十字社より輸血後GVHDに関して各医療機関に対して緊急安全情報が出され、周知徹底が改めて図られたところである。
 さらに、自己血輸血に関しては、医療機関に対する採血及び保存等について専門的技術を有する血液センターの協力が強く求められており、引き続き管下センターへの御協力方特段のご配慮をお願いする。

(4)血液製剤による感染症情報の収集・提供
 地域医療の代表者及び医療機関の管理者等の委員からなる血液製剤使用に係わる懇談会を設置し、医療機関に対し血液製剤の使用適正化の推進等を図っているが、血液製剤の安全性を更に向上させるため、平成9年度においても、この懇談会を通じて血液製剤による感染症等の発生に関する情報の収集・提供をお願いする。

(5)血液製剤使用適正化の推進
 献血血液の適正な使用を図るため、二次医療圏の中核病院を対象に専門家による個別説明会を実施しているが、使用適正化ガイドラインの一層の普及・啓発の推進をお願いする。

(6)血液事業の効率的運営
 採血、血液製剤の製造・供給は、一部の地域を除いて各血液センターを単位として行われているため、血液製剤の需要と供給にアンバランスが生じやすく、結果的に献血が有効利用されていない面が指摘されたことから、効率的、合理的な事業運営を行うため、日本赤十字社において、広域的な需給調整について取組が行われているが、各都道府県においても、広域需給等事業の効率的実施について御指導と御協力をお願いする。

(7)血液行政の在り方に関する懇談会の設置
 平成8年7月にまとめられた医薬品による健康被害の再発防止対策に関するプロジェクトチームの報告において、血液行政について総合的な見直しを行うことが指摘されたが、同報告を受けて昨年10月に多分野の専門家による「血液行政の在り方に関する懇談会」を設置し、効率的かつ透明な血液事業の総合的展開、国内自給の達成に向けた計画的需給調整の推進、血液製剤の安全性の確保対策等につき幅広く御検討をいただいているところである。

7.医薬品副作用被害等の救済について


(1)医薬品副作用被害救済制度
 医薬品の副作用については、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(略称:医薬品機構)において、昭和55年5月1日以降に使用した医薬品の副作用による健康被害の救済事業として医療費、障害年金、遺族年金等の給付を行っている。

(2)エイズ訴訟の和解等
ア.エイズ訴訟の和解の推進(資料編をあわせて参照のこと)
 エイズ訴訟については、平成8年3月に和解が成立したところであるが、未提訴の血友病患者等の方々については、プライバシーに配慮しつつ、訴えの提起を待って順次和解を進めていくことになっている。
 厚生省としては、全国の主要医療機関、血友病治療専門医、関係学会等に対し、未提訴の血友病患者等の方々に対する周知等についての協力をお願いする文書を送付するとともに、全国のブロックで開催しているブロック別都道府県エイズ拠点病院等連絡会議において都道府県拠点病院長等の関係者に対し周知等について協力のお願いを行ったところである。
 各都道府県におかれては、広報媒体等の利用により、未提訴の血友病患者等の方々に周知されるよう特段のご配慮をお願いする。また、貴管下市町村(特別区を含む。)に対しては、貴職からこの趣旨を御連絡の上、その協力を得られるようお取り計らい願いたい。
イ.恒久対策
 被害者に対する恒久対策については、これまでHIV訴訟原告団の方々との協議を鋭意進めてきたところであり、これを踏まえ、平成9年度においては、
 (ア)医療体制について、エイズ治療・研究開発センター(仮称)の設置、地方ブロック拠点病院の整備
 (イ)遺族弔慰事業について、遺族等相談事業等に関し所要経費を計上したところである。
ウ.血液製剤によるHIV感染者の調査研究事業(資料編をあわせて参照のこと)
 エイズの治療法が確立されていない現状において、発症前段階の感染者について発症を予防することは、極めて重要である。
 このため、平成5年度から、(財)友愛福祉財団に対し補助を行い、エイズ発症予防に資するための血液製剤によるHIV感染者の調査研究事業を実施している。
 本調査研究事業は、医薬品機構を窓口として、エイズ発症前の血液製剤によるHIV感染者、二次感染者(配偶者その他これに準ずる者)及び三次感染者(母子感染した子)に対し、プライバシーに配慮しつつ、日常生活の中で発症予防のための健康管理費用を免疫不全の状況に応じて支給するものである。
 平成9年度においては、従来の免疫機能による支給制限(CD4 500以下)を撤廃し、エイズ発症前のすべての感染者を対象とすることとしている。


 各都道府県におかれては、広報媒体等の利用により、血液製剤によるHIV感染者の方々に周知されるよう、特段の御配慮をお願いする。また、貴管下市町村(特別区を含む。)に対しては、貴職からこの趣旨を御連絡の上、その協力を得られるようお取らい計い願いたい。

(3)スモン対策
 スモン訴訟の提訴患者は6,490名であるが、平成8年12月25日に最後の原告1名との和解が成立し、すべての提訴患者との和解が成立した。
 スモン患者に対する恒久対策については、特定疾患治療研究事業、はり、灸、マッサージ治療研究事業等を実施しているところであり、事業の円滑な実施について、平成9年度においても引き続き各都道府県の協力をお願いする。

8.医薬品流通対策について


(1)医療保険における薬剤給付をめぐる最近の論議
 医療保険審議会において医療保険制度改革のあり方、また、中央社会保険医療協議会において薬価算定方式のあり方について議論が行われてきた。
 昨年その議論の結果がとりまとめられたところであるが、薬剤に関する記述は次のとおりである。
ア.医療保険審議会建議書(平成8年11月27日)(抄)
[薬剤に係る総合的な対策の推進等]
 ○ 薬剤使用の適正化、薬剤費の効率化を図る。
 ○ 薬価基準に変わる新たな方式への転換を含め、薬価制度を抜本的に見直し、薬価差問題の解消を図るとともに、薬価算定の透明化を図る。
 ○ 薬剤使用の適正化に向けて、患者や医療機関の薬剤使用に係るコスト意識を涵養するため、一般用医薬品類似医薬品の給付除外を含めて薬剤給付のあり方を見直すほか、適正な医薬分業の推進、診療報酬や審査支払における対策など、総合的な対策を進める。
 ○ 検査について不適切な重複等を是正する。
イ.中医協意見取りまとめ(平成8年12月24日)(抄)

 2.薬価差の一層の適正化を図るため、当面の措置として平成9年度に、本年秋に実施した薬価調査の結果に基づき、一定価格幅(R幅)を10(後発医薬品が収載された先発医薬品のR幅については8)に縮小して薬価を改定することが適当である。

(2)薬価調査・特定保険医療材料価格調査
 昨年は薬価調査及び特定保険医療材料価格調査の本調査実施にあたり、多大な御協力を頂いたところである。
 平成9年度においては、経時変動調査の実施が予定されているので、各都道府県におかれても引き続き御協力をお願いする。

(3)消費税率引き上げに伴う流通問題について
 本年4月1日より消費税率が3%から5%へと引き上げられる。一般用の医薬品等に関しては、通常の商品同様の取扱いがなされるため、消費税が適正に転嫁されるよう御協力をお願いしたい。
 また、現在、公正取引委員会は、再販売価格維持制度の対象として一般用の医薬品のうち14品目を指定しているところであるが、この指定を4月1日をもって解除する旨の告示がなされる予定である。再販売価格の表示の切り替え等に一定の期間が必要なこともあり、切り替えに際しては消費者に対する十分な説明が必要であると考えられる。公正取引委員会の指導の下、薬局、薬店における十分な説明がなされるよう御協力をお願いしたい。

9.医薬品等研究開発の振興について


(1)保健医療分野における基礎研究推進事業
 保健医療の分野では、がん、エイズ等の克服は我が国のみならず人類の悲願となっている。この意味で、疾病構造の解明や遺伝子治療技術等に関する基礎研究は、付加価値の高い医薬品等の創製に結びつくものであるとともに、保健医療の向上に大きく寄与するものである。
 このため、平成8年度より医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構が国の出資を受けて、医薬品、医療用具に関する基礎研究を国立研究機関、大学等と共同もしくは委託により行う「保健医療分野における基礎研究推進事業」を創設し、1課題当たり年間約1億円の研究費で、原則として3〜5年間行うこととした。
 平成8年度には、10億円の予算により、エイズ・感染症、がん、脳・神経又は免疫に関する疾患関係及び治療機器の4分野について研究課題を公募したところ172件の応募があり、このうち12件の研究課題を採択した。
 なお、平成9年度においてはこれを拡充(平成9年度予算案:29億円)し、さらに研究分野を拡大して募集を行う予定である。

(2)希少疾病用医薬品等の研究開発促進制度
 医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が極めて少ないことにより研究開発が進んでいない難病、エイズ等の医薬品等(いわゆるオーファンドラッグ等)の研究開発を民間企業の自主努力のみに期待することは極めて困難となっている。これら医薬品等の研究開発を促進するため、平成5年10月に研究開発促進制度を創設した。この制度に基づき平成5年度には医薬品40品目、医療用具2品目、平成6年度には医薬品29品目、平成7年度には医薬品11品目、医療用具2品目を、また、平成8年度には医薬品26品目、医療用具1品目(平成8年12月末現在)をオーファンドラッグ等として指定したところである。平成9年度においては5億円の国庫補助金を助成金に充てることにしているが、有効な治療薬の早期供給を必要とする希少疾病も多いことから、今後とも事業内容の充実、研究開発の促進に努めていく。

(3)エイズ医薬品の研究開発の推進
 エイズ医薬品の研究開発を推進するため、米国で既に承認されているエイズ医薬品については、米国での治験・承認データを基に、我が国における承認審査を開始することとし、そのための専任の調査会を新たに設けて審査期間の短縮を図っている。また、エイズ医薬品については、オーファンドラッグとして指定し、研究費の補助、税制上の優遇等を行っている。 さらに、承認前においても、希望する患者に幅広くエイズ医薬品が行き届くよう、通常の治験と並行して拡大治験(スタブジン等5品目)を行っており、患者の方々に対し治験に関する十分な説明を行い、書面による同意をいただいた上でエイズ医薬品の投与を行っているところである。
 なお、エイズ医薬品の内でも、日和見感染症治療薬等、国内での需要が少ないものについては、当面、エイズ治療薬研究班(班長 福武勝幸 東京医科大学教授)を通じて医薬品が入手できるようにした。

(4)出融資制度の充実
 現在めざましい進展を遂げているバイオテクノロジー、新素材、エレクトロニクス等の先端技術は、保健医療の分野で画期的な医薬品や医療機器の開発等に大きな成果をもたらすものと期待されており、その研究開発に対して昭和62年度より医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構において公的資金による出融資事業を行っているが、今後の疾病構造の変化や国民保健医療ニーズの多様化に対応するためにも引き続き研究振興の円滑な運営の確保と事業の充実に努める。

(出資事業により設立された会社)
昭和62年度 潟fィ・ディ・エス研究所   潟oイオセンサー研究所
昭和63年度 潟Tイトシグナル研究所   叶l工血管技術研究センター
平成元年度 叶カ体機能研究所   潟Aドバンストスキンリサーチ研究所
平成2年度 潟xッセルリサーチ・ラボラトリー
平成3年度 椛n薬技術研究所   潟Jージオペーシングリサーチ・ラボラトリー
平成4年度 潟Gイチ・エス・ピー研究所
平成5年度 潟Gイジーン研究所
平成6年度 潟fィナベック研究所
平成7年度 潟Wェノックス創薬研究所

(5)医療用具の研究開発の推進
 少子高齢化の進展、科学技術の発展等に伴い、人工臓器等失われた身体機能を代替・補完する医療機器や、低侵襲的に治療・診断を行うことのできる医療機器等の開発に対する期待、ニーズが高まっている。このため、平成2年度から(財)医療機器センターを実施主体とした産学官共同プロジェクト方式による新医療技術開発研究事業において人工心臓、在宅医療機器等の研究開発に取り組んできたところであるが、高度な医療機器の開発をさらに促進するため、新たに平成9年度予算において、高度先端医療研究事業(医療機器開発分野)(平成9年度 5億7500万円)を実施することとした。
 この事業は、従来の新医療技術開発研究とともに人工臓器や医用マイクロマシン等の高度な治療機器の開発・実用化を行う治療機器開発研究を実施するものである。

10.医薬品の承認審査等について


(1)承認審査
ア.医薬品について
(ア)昨年は、新医薬品として新有効成分24成分が承認された。
(イ)平成2年10月より施行された「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」の徹底を図るため、以下を実施し、普及啓発を図っている。
 a.製薬企業及び治験実施医療機関に対するGCP調査
 b.医療関係者に対するGCP説明会
 c.2医療機関を対象としてGCP適正運用推進モデル事業
  また、GCP法制化に伴い、我が国のGCPの内容にICH−GCPの内容を取り入れる等のGCP改定を行うため中央薬事審議会にGCP特別部会を設置し、平成8年12月11日に「GCP改定素案」を公表したところである。
(ウ)新医薬品の承認申請の目的で実施される臨床試験の標準的方法として、平成 8年に発表された薬効群別及び全般的臨床評価ガイドラインは次のとおりである。
 a.治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン
  (平成8年5月1日)
(エ)新医薬品の承認申請の目的で実施される非臨床試験の標準的方法として、平成8年に公表されたガイドラインは次の通りである。
 a.医薬品のための遺伝毒性試験の特定項目に関するガイダンス
  (平成8年7月2日)、
 b.トキシコキネティクス:毒性試験における全身的曝露の評価に関するガイダンス
  (平成8年7月2日)
 c.薬物動態試験:反復投与組織分布試験のガイダンス
  (平成8年7月2日)
 d.医薬品のがん原性試験のための用量選択のガイダンス
  (平成8年8月6日)
(オ)一般用医薬品については、承認審査の効率化等の観点から、かぜ薬等の承認基準を作成し、承認権限を都道府県知事に委任してきたところであるが、現在、水虫、たむし用等の承認基準の作成を9年中を目途に進めているところである。
(カ)体外診断用医薬品については、その検査の標準化等を図る観点から、ISO国際標準化機構)の動向等を配慮しつつ、標準品の統一化や検査値の共通化等についての調査等を進めている。
イ.化粧品・医薬部外品について
(ア)化粧品
  a.並行輸入化粧品(既に輸入が認められている化粧品と輸入先における販売名、製造業者及び原産国がおなじもの)については、従来、製品届の添付資料として外国製造業者の成分等の証明書の添付を求められていたが、平成8年3月から、全成分表示を義務つけしている国における全成分表示等の資料で差し支えない扱いとしたところである。並行輸入化粧品に許可等の手続き等関係業者への指導等お願いする。
  b.化粧品の種別許可基準について、平成9年3月までに現在の25種別を11種別に統合、成分の追加等大幅な規制緩和を行うこととしており、円滑な施行に配慮願いたい。
  c.化粧品については、国際的商品でもあり、規制緩和、国際的ハーモナイゼーション、消費者保護等の幅広い観点から、化粧品の安全性の確保を図りつつ、今後のわが国の化粧品規制の在り方について、「化粧品規制の在り方に関する検討会」(座長:原田昭太郎関東逓信病院副院長)を設け、検討を進めているところである。
(イ)医薬部外品
 a.医薬部外品の承認基準については染毛剤、パーマネント・ウェーブ用剤、薬用歯みがき類について作成し、承認権限を委任してきたところであるが、他の種別についても承認基準を順次作成していくこととしている。
 b.また、清浄綿については、平成9年3月までに、新たに基準を作成し、承認を不要とすることとしている。

(2)承認・許可事務の迅速化、効率化等
ア.生物学的製剤等を除き、医薬品、医薬部外品、化粧品の製造業等の許可権限を都道府県知事に委任しているところであり、許可審査等については、円滑に実施されるよう、関係都道府県及び厚生省との連絡を一層緊密なものとされたい。
イ.医薬品、医薬部外品及び化粧品の承認・許可事務、承認・許可情報管理の効率化、情報連絡の高度化等を目的として、従来の文書による申請に代えて、申請内容を入力した磁気媒体(フロッピーディスク:FD)によるFD申請システムによる受付を昨年度から導入したところである。システムの機能向上、FD申請の普及等を進めることとしており、FDシステムの所期の目的が達せられるよう都道府県においても配慮願いたい。

(3)承認審査の国際的ハーモナイゼーションの推進
ア.近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されている。
イ.我が国としても、日・米・欧三極の一つとして、国際共同研究の推進、ICHへの積極的参加等、今後、この枠組みを中心としてハーモナイゼーションを推進することとしている。
ウ.平成7年11月第3回日・米・EU三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議(ICH)が横浜において開催され、バイオテクノロジー医薬品の品質に関するガイドライン等について合意が得られ、各地域で実施されることになった。その後平成8年5月と11月に準備会合がそれぞれワシントン及びロンドンで開催されて、ICHGCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)等について合意が得られている。第4回ICHは、平成9年7月ブリュッセルにおいて開催される予定である。

(4)新医薬品承認審査概要(SBA)の作成
ア.新医薬品について承認審査の過程で得られた正確な有効性、安全性に関する情報を医療機関に迅速に提供することにより医薬品の適切な使用を確保し、また、承認審査に関する透明性の向上にも資するため、承認審査結果をわかりやすく説明した新医薬品承認審査概要を作成している。
イ.平成4年度末に新医薬品承認審査概要検討委員会より報告を得、平成6年4月に「新医薬品承認審査概要」No.1として「塩酸イリノテカン」を公表し、その後、世界的に初めて承認される新しい薬理作用の新薬を対象に、現在までに8成分(うち1成分は改訂版を作成)のSBAが作成されている。
ウ.今後、新医薬品の適正使用の推進のために、新しい薬理作用の新薬に対象を拡大する等して、SBAを作成する新医薬品の数を出来る限り増加することとしている。

11.医療用具の承認許可等について


(1)許可権限の委譲
 平成8年3月の「規制緩和推進計画」(閣議決定)に基づき、平成9年4月から用具の製造業・輸入販売業の許可権限の一部を、厚生大臣から都道府県知事へ委任する」こととしている。(薬事法施行令の一部を改正する政令(平成9年1月8日政令第3号))
 委任の範囲は、国家検定医療用具及び製造管理又は品質管理に特別の注意を要する医療用具であって厚生大臣の指定するもの(当面指定が予定されるものはない。)を除くすべての医療用具とする。

(2)FD申請
 承認許可業務の効率化を図るため、フレキシブルデイスクを用いた承認・許可申請システムを今年度中に導入することとし、本年3月末から3府県(福島、大阪、高知)において稼働を開始する予定。
 その後、平成9年度内に環境が整った都道府県から順次実施して行きたいと考えているので、よろしく御協力願いたい。

(3)国際的ハーモナイゼーションの推進
 世界的な市場を念頭においた医療機器の流通及び研究開発を図るとともに、優れた医療用具を迅速に医療の場に提供するため、各国の規制・基準をハーモナイズす ることが期待されている。
 このため、日、米、欧、豪、加の規制当局及び業界からなるGHTF(グローバル・ハーモナイゼーション・タスクフォース)において規制の整合化の検討が平成4年から開始されている。またISO(国際標準化機構)においては、品質システム等医療機器に横断的共通的基準の標準化のためのプロジェクト(TC210)が平成6年に発足するなど、ハーモナイゼーションの動きが活発化している。
 我が国としては、厚生省が業界団体とともに当初からこれらに参画し、ハーモナイゼーションの推進に努めているところである。

12.医薬品等の安全対策について


医薬品の安全対策については、承認審査の充実を図る一方、従来より副作用情報の収集・評価や再審査・再評価制度を中心に市販後安全対策を講じてきたところであるが、今後さらに医薬品の安全性を確保するため、医薬品の適正使用のための施策を推進する。
 また、毒物劇物については、規制緩和の観点から登録等の電子化を図ってまいりたい。

(1)医薬品適正使用の推進
ア.医薬品、医療用具等の副作用・感染症情報の収集について
 薬事法改正により、本年4月から企業に対し医薬品等に起因する感染症情報の収集が義務づけられることから、医薬品副作用モニター制度においても感染症情報の収集をお願いすることとし、その普及に努めることとしている。
 また、近年、企業からの副作用報告は著しい増加を見せているものの、医薬品副作用モニター制度に基づく報告数は横這となっている。
 今後、医薬品等による健康被害の再発防止を図る観点から、モニター制度の充実が求められており、報告数の増大を図るため、これまでのモニター制度を全面的に見直し、来年度からはすべての医療機関などから情報収集ができるよう制度を改めるとともに、報告様式の簡略化や、報告書の学会誌等へ綴り込み等により医療関係者が報告しやすいような制度の充実を図ることとしている。
イ.医薬品等の副作用・感染症情報の管理及び医療関係者への伝達について
 企業報告やモニター報告で収集された副作用・感染症情報等については、迅速・的確な評価、伝達を行う必要がある。このため、来年度から事務局評価体制の充実を図るとともに「厚生省健康危機管理基本指針」に対応した「医薬品等健康危険情報管理基本方針」(仮称)を作成し、情報の収集、分析・評価、対応決定、情報伝達、追跡調査に関する一連の業務を処理することとしている。
 また、緊急かつ重要な情報の医療関係者への伝達については、緊急安全性情報(ドクターレター)の配布や緊急FAX送信などによる情報伝達に加えて、積極的にマスコミに公表し、より迅速で的確な情報伝達に努めることとする。
ウ.医薬品適正使用推進事業について
 医薬品適正使用の推進事業としては、平成6年度から医療機関内における医薬品情報の収集・評価・伝達体制の整備及び薬剤評価システムの導入などの医薬品適正使用のモデル事業を実施している。
 また、平成6年7月から医薬品機構に「消費者くすり相談室」設置し、医薬品に関する一般消費者等からの疑問や苦情に応えているところである。
エ.医薬品安全性情報統合化システムについて
 平成9年度より、医薬品の副作用に関する情報や承認審査関係の情報等のデータベースを相互的、横断的に検索できる「医薬品安全性情報統合化システム」の開発を行い、行政事務の効率化を図るとともに医療機関や国民への情報提供を行うための公開情報を作成することとしている。
 また、医薬品の適正使用の推進を図るため、医薬品機構を情報発信基地として当該公開情報に医薬品添付文書など企業が保有する情報や、医薬品機構のくすり相談事例等の情報を付加した「医薬品安全性情報提供システム」を構築し、インターネット等により医療関係者はもとより広く国民に提供することとしている。
 なお、当該システムの本格稼働開始は平成11年度からの予定である。

(2)医薬品の再審査・再評価
ア.薬事法改正と市販後調査検討会
 平成7年12月より、薬務局長の私的懇談会として市販後調査検討会(座長 :紺野 昌俊 帝京大学医学部名誉教授)を開催し、市販後における医薬品の安全対策の具体的な方策を検討し、平成8年5月に中間とりまとめを行った。
 本検討会においては、平成8年6月に公布された改正薬事法に基づき本年4月より施行されるGPMSP省令、安全性定期報告(PSUR)省令、副作用・感染症報告省令の基本的考え方についても検討をいただき、これに基づき現在省令化の作業を進めているところである。
イ.医薬品の再審査について
 平成5年10月より、稀少疾病用医薬品並びに、市販後調査において患者の延命効果や、QOLの改善等を指標とした有用性の評価を行うため薬剤疫学的手法を導入した臨床試験を行う必要のある新医薬品について、再審査期間を10年に延長して再審査を実施することとしている。
 なお、これまでに1,464品目について再審査を行い、そのうち124品目が承認事項を変更する必要があるとされた。
 また、平成8年度より再審査のために収集された安全性等の情報を広く医療機関にフィードバックすることを目的に、再審査概要(SBR)を作成する事業を開始した。また平成9年度より再評価についても再評価概要(SBR2)を作成することとしている。
ウ.医薬品の再評価について
 医療用医薬品については、昭和42年9月以前の承認分について19,849品目全ての再評価を終了し、また昭和42年10月以降昭和55年3月以前の承認分についても、1,860品目全ての再評価を終了した。
 なお、現行の新再評価制度において、順次必要なものにつき再評価指定を行っているところであるが、現在までに2,067品目について再評価を終了している。
エ.GPMSPについて
 平成5年4月より、薬務局長通知に基づきGPMSP(医薬品の市販後調査の実施に関する基準)を定め、医療用医薬品の再審査のための市販後調査に適用してきたが、さらに平成6年4月より基準の適用を再評価、副作用報告も含めたすべての市販後調査に拡大適用したところである。
 今回の薬事法改正により、GPMSP基準を製造業者等の遵守事項として省令に定め、また再審査・再評価の申請資料の収集、作成のための基準としてこれを適用することとしており、本年4月からの施行を目指し、現在、省令の作成中である。
オ.安全性定期報告(PSUR)について
 昨年11月、ICH(日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション会合)において、安全性情報の定期的報告書(PSUR)の提出頻度、報告内容等について合意が得られた。
 我が国ではこれに基づき、製造業者等に対し新医療用医薬品の承認後2年間は半年毎、3年目以降再審査期間中は年一回報告を求める安全性定期報告制度を平成9年度より開始することとしている。
 これにより、我が国だけでなく諸外国における副作用情報、調査・試験の成績、各国の規制状況などの安全性情報を定期的に入手できるようになり、安全対策の充実・強化が図られるることになる。なお、これにともない従来の年次報告制度は廃止される。

(3)毒物劇物の登録等の電子化
 規制緩和推進計画(平成7年3月 閣議決定)に基づき、毒物劇物営業者のフロッピーディスクによる申請及び登録システムを導入することとしている。
 本システムは、国・都道府県庁・保健所等をネットワークで結び、登録手続等の電子化を図ることによりその迅速化、効率化に資するのみならず、中長期的には毒物劇物取締関連業務の総合的な情報化を目指すものとして構築するものであり、平成7年度後期から開発を行い、現在、パイロットスタディーを実施しているところである。
 これまで3回にわたり担当者会議を開催し、内容についてはお知らせしているとおりであるが、平成9年3月を目途に必要な法令改正を行い、本稼働することとしているので、各都道府県においては円滑な導入に向けて、機器の整備、関連業者への周知等について御協力をお願いする。

13.医薬品等の監視指導について


(1)GMPの推進
 GMPは、不良医薬品等の発生を未然に防止し、医薬品等の品質確保を図るために極めて重要な方策である。GMPの推進は、品質指導行政の柱となるものであり、医薬品製造業については平成6年4月より、また医療用具製造業については平成7年7月よりGMP基準が許可要件化されたところである。
 なお、不良品等の自主回収事例の中には、単純な作業ミスから不良品を出荷しているケースも見受けられるため、都道府県においても、より一層、GMP監視指導の組織の充実強化、薬事監視員の資質の向上等監視指導体制の強化を図られるとともに計画的・効果的なGMP監視の実施を行うようお願いする。また今後、以下に 述べるような施策の推進を図ることとしている。
ア.医薬品及び医療用具の製造技術の高度化に対応するため、生物学的製剤等についての上乗せGMPやこれらに対するGMP監視指導要領を整備し、監視指導内容を充実させること。
 イ.治験薬について、欧米の現状調査の結果を踏まえ、GMP基準を作成すること。
 ウ.GMPの相互承認協定については、米国、カナダ及びEU(欧州連合)と相互承認協定の締結協議を行うとともに、PIC(医薬品製造査察の相互承認に関する協定)への加盟交渉も行うこと。
 エ.GMP専門分野別研修については、都道府県の要望を踏まえ、医薬品のバリデーション基準(製造工程等の妥当性を科学的に証明するための基準)に対する適合性の評価方法等に対する研修を実施すること。
 オ.バリデーションの導入など、新しい分野のGMPについて、都道府県が行う査察の全国的な整合性を確保するため、査察シミュレーションソフトの開発等を行うこと。
 カ.各都道府県薬事指導所等によるGMP実施助言指導事業の導入を検討するためのモデル事業を実施し、GMP指導の充実強化を図ること。

(2)不良医薬品等の監視指導
 従来より、不良医薬品等及び無承認無許可医薬品等の流通防止等に努めてきたが、これらの事例が後を絶たない状況にある。不良品等の流通防止等のために、製造業者等が医薬品等について回収作業に着手した際には、速やかに厚生大臣又は都道府県知事に報告することが、平成8年6月の薬事法改正により法律上の義務として規定され、平成9年4月より施行される運びとなっている。医薬品の回収報告を受けた場合には、製造業者等に対し、原則としてその事実を公表し、回収状況を定期的に報告するよう指導を行うとともに、必要により自らも回収の進捗状況の確認を行うようお願いする。
 この種の事件の発生防止及び早期発見のため、引き続き製造業者等の指導を強化するとともに工夫をこらした立入検査等を実施するなど、薬事監視の一層の強化を図られたい。特に、最近は、異物混入に伴う回収事例が目立っており、立入検査においては、異物混入原因の究明及び再発防止の徹底等改善について強く指導されたい。
 また、不良品等の回収については、事例に応じ回収の方法、回収の範囲を明確にし、回収終了の確認を徹底することが重要であり、これらを含むガイドラインの作成を検討している。
 最近、健康食品と称して、医薬品として規制すべき作用の激しい成分を混入させていたり、治療効果を標榜したりする例が多く見られており、これらを含め「医薬品の範囲基準ガイドブック」を活用する等、引き続き薬事監視の強化を図られたい。

14.麻薬・覚せい剤等の対策について


(1)麻薬・覚せい剤等の取締り
  ア.我が国で乱用問題の最も大きな薬物は覚せい剤であり、近年の検挙者数は1万5千人前後で推移してきたが、平成7年には17, 364人と大幅に増加した。
  イ.最近の薬物犯罪の特徴は、外国人検挙者の増加と覚せい剤事犯における学生生徒の検挙者増加があげられる。
   ・外国人検挙者は平成元年以降年々増加し、平成7年には全検挙者数19,425人(前年17,564人)に対して外国人検挙者は1,383人(前年1,307人)となっている。
   ・覚せい剤事犯における学生生徒の検挙者は、平成6年には111人(全検挙者の0.7%)であったが、平成7年には207人(同1.2%)となり、86.5%の大幅な増加となった。
  学生・生徒の中では高校生の増加が著しく、平成7年は93人(前年42人)が検挙され、前年に比べて 121.4%増加している。また、中学生の検挙者は平成7年は19人(前年13人)で、前年に比べ46.2%増加している。
  ウ.このため厚生省としては、薬物の供給側である密売人等のほか薬物の需要側である乱用者に対する取締りに一層努力していくこととしており、都道府県におかれても、麻薬取締官に対する捜査協力等に特段のご配慮をお願いする。

(2)啓発活動の推進
 ア.薬物の乱用防止については、厳正な取締りを行うとともに、国民に対し乱用の危害について正しい知識の普及を図り、薬物の乱用を許さない社会環境をつくることが重要である。このような観点から地域に根ざしたいわゆる草の根運動による防止活動を展開するため、全国に約19,000人の覚せい剤乱用防止推進員を設置している。平成4年度から、覚せい剤乱用防止推進員の組織的展開を図り運用の充実を期すために推進員地区協議会の組織化を図る運営費補助制度を設けている。各都道府県におかれては、この補助金制度をなお一層活用され、推進員を中心とした効果的な地域活動を推進していただきたい。
 イ.一方、民間団体における啓発活動は財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターを中心とし、官民一体となった啓発活動を展開しているところである。
 センターが厚生省からの委託事業として平成4年から本格的な活動を展開している「薬物乱用防止スクールキャラバンカー」事業は、関東地区を中心に学校、集会、街頭へ出向き啓発資材として活用されている。今後も啓発活動に活用されたい。
 ウ.「国連麻薬乱用撲滅の10年」(1991年〜2000年)の支援事業の一環 として、平成5年度から「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」を普及すること等を 目的とした「ダメ。ゼッタイ。」普及運動を国、都道府県、(財)麻薬・覚せい 剤乱用防止センターの主催により展開しているところである。
 平成8年度の6・26ヤング街頭キャンペーン(6月23日)には、全国約500か所、約25,000人の参加を得て薬物乱用撲滅の街頭キャンペーンが繰り広げられ、多くの国連支援募金が集まる等の成果を挙げたところであり、当該キャンペーンに参加したヤングボランティアの中から「民間国連ヤング大使」を国連に派遣してきた。9年度においても引き続き行うこととしているので一層のご協力をお願いしたい。
 エ.麻薬等薬物乱用防止啓発活動の推進に功績のあったボランティアに対する表彰として、従来からの薬務局長表彰に加えて平成5年度から新たに厚生大臣の感謝状を個人及び団体に対し贈呈しているところである。この表彰制度は各都道府県における表彰制度と連携を保つことにより効果的な運用が期待されることから、各都道府県におかれても独自の表彰制度を設け、ボランティアによる啓発活動の推進を図られたい。
(3)医療用モルヒネ製剤の適正使用の推進等
 モルヒネの消費量はここ数年急増しており、平成7年の消費量は塩酸塩と硫酸塩合わせて701s(前年555s)で26%の増となっている。これは末期がん患者に対する疼痛緩和目的での使用が普及してきていることが原因となっていると推察され、過去10年の推移をみると10年前に比べ12.7倍に増えている。また、通院、在宅がん患者へのモルヒネ製剤の使用の普及と共に麻薬小売業者の免許をもつ薬局の数も平成7年には6.556件(前年4,735件)となり、昨年に比べて増加している。
 WHOが1986年に、70%の末期がん患者の主症状が痛みであるということ、非麻薬性の鎮痛剤が効く痛みは20%程度で、多くの場合はモルヒネでなければ効かないような強い痛みであること等を内容とするがん疼痛治療法に関するレポート「 Cancer Pain Relief (がんの痛みからの解放)」を出して以来、国際的には、鎮痛剤としてのモルヒネの有用性が再確認された。しかし、我が国では医療関係者の間では、麻薬であるモルヒネの使用を抑える傾向にあり、単位人口当たりの消費量を比べてみると、カナダ、イギリス、アメリカ等の欧米諸国の数分の一ないし十数分の一となっている。モルヒネの消費量は、その国におけるがん疼痛治療の医療水準を示す一つのバロメーターであるという指摘があり、また、WHOレポートや厚生省・日本医師会作成の「がん末期医療に関するケアのマニュアル」等で、モルヒネ製剤はがん疼痛治療に重要な役割を果たすものであることが示されている。
 こうしたことから、今後モルヒネ製剤の使用量が増加することが見込まれることから、都道府県におかれてはモルヒネを中心とした医療用麻薬の適正管理及び適正使用につき、医療関係者に対する指導をお願いいたしたい。
 なお、向精神薬等の乱用薬物については、病院、診療所、薬局、卸売業者からの盗難がみられており(平成7年は向精神薬全体で51件)、管理の徹底について指導方お願いいたしたい。

(4)国際協力の取組
 1994年7月、日米包括経済協議の「地球的展望に立った日米協力」の一環として麻薬問題が取り上げられ、日米が協力して薬物乱用防止啓発活動を推進することが合意された。この日米包括経済協議での合意を受けて、一昨年から「日米協力による開発途上国薬物乱用防止啓発活動研修」を実施している。研修は厚生省、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターと米国薬物乱用防止センターを含む米国関係機関が協力し、関係都道府県の協力も得て実施され、昨年はその第2回目として、10月21日から4週間にわたり、アジア地域9か国から9名の研修生の参加を得て実施された。本研修は今後も引き続き継続する予定である。



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