前ページ
次ページ
厚生統計の今後の在り方についてNO2
II 統計分野ごとの課題の解決に向けて
1.人口動態調査について
少子・高齢化及び国際化の進展等、厚生統計を取り巻く環境の変化を踏まえ、人口動
態統計においても基本的な枠組みを維持しつつ、的確に対応することが必要である。
(1)出生、婚姻、離婚等の新たな指標
少子・高齢化の進展に対応し、人口動態事象をより精密に観察できるようにするため、
出生、婚姻、離婚等について、本協議会は、既婚・未婚別人口を用いた指標を作成し、
それに基づく分析を行う必要があると指摘した。
これを受け厚生省では、人口動態統計のうち婚姻についてまとめた「人口動態統計特
殊報告―婚姻統計―」(現在、準備中)で出生動向を左右する婚姻について、新たに未婚
人口を分母とする年齢別婚姻率を時系列で分析することとしている。この結果を踏まえ、
今後更に出生等についても、既婚・未婚別人口を用いた新たな指標に基づく分析を行っ
ていくべきである。
(2)外国人の取扱い
本協議会は、人口動態統計において、外国人の人口動態事象が把握できるようクロス
集計を含めて拡充していく必要があると指摘した。
これを受け厚生省では、平成8年10月に公表した「平成7年人口動態統計(確定
数)」で外国人を表章した表を追加充実しているが、今後も、外国人の届出状況と外国
人人口の占める割合をにらみつつ、適宜、追加拡充していく必要がある。
(3)人口及び世帯の移動状況の把握
現在では、地域の人口は自然増減でそれほど変化せず、人口移動により地域人口の規
模と構成が決まってくる。各地域における保健、医療、福祉等の行政施策の推進や行政
計画の立案をする際には人口移動を加味する必要があり、そのためには地域の経済計画
等をよく踏まえるなどし、地域の人口の動向を把握する必要がある。
人口移動を世帯の観点からみると、その地域の世帯類型別の世帯数など地域の世帯構
成に変化を生じさせることになる。厚生行政施策では、高齢者単身世帯や母子世帯対策
など世帯に着目し施策を進めていくケースが多いことから、人口のみならず世帯の地域
間移動の状況把握が必要である。
人口の移動については住民基本台帳に基づくデータ整備の進捗によって、量的な側面
についてある程度把握できると考えられるが、世帯構成の変化に関わる移動理由等の側
面は把握することができない。このため、世帯調査の中に、世帯構成員の移動状況及び
移動理由等を把握する項目を含めること等により、世帯の面から見た移動の状況を明ら
かにし世帯構成の変化を把握すべきである。また、地域を限定した上での移動データの
検証や各種調査の結果を利用した実証研究など、移動に関する調査研究も積極的に行っ
ていくべきである。
(4)第10回修正国際疾病分類(ICD−10)の適用による死因統計の変化の検証
結果の普及
本協議会は、ICD−10の適用により、選択される原死因が肺炎から脳血管疾患、
悪性新生物に変わるなどの死因統計の変化についての情報を、国内外に広く普及する必
要があると指摘した。これを受け厚生省では、平成7年人口動態統計に基づいた検証結
果を平成8年7月以降、国内の専門誌等に公表したほか、平成8年10月に行われた国
際会議で報告している。ICD−10の適用は世界に先駆けた経験であり、また保健医
療政策に大きな影響を与えるものであるため、今後もさらにICD−10の適用による
死因統計の変化について詳細な分析を加え、積極的に国内外に公表していく必要がある。
(5)複合死因の分析
死亡診断書に記載されている、原死因を含むすべての死因、すなわち複合死因の情報
は、例えば、死亡へ至る過程の分析、慢性疾患における合併症の考察、原死因とそれ以
外を含む疾病の総体としての影響の把握など幅広い活用が想定されることから、本協議
会は、複合死因の分析のためのデータの整備等の必要性を指摘した。これを受け厚生省
では、現在、複合死因のデータを試験的に一部蓄積し始めたほか、平成8年度厚生科学
研究で分析も進めている。
今後は、原死因以外の死因の精度、データの蓄積・整備、利活用の方法などについて
引き続き検討し、幅広く複合死因のデータを提供していく必要がある。
(6)死因統計と疾病統計の関連を分析する上での検討事項
現代社会においては、疾病構造の変化、高齢化、医療技術の進歩などによって疾病進
行の経過は複雑になってきているため、罹患した時点から死亡へ至る経過を把握して死
亡の全体像を明らかにすることが必要となっている。本協議会は、そのための方法の一
つとして死因統計と疾病統計の関連を分析するための課題と対応策について整理した。
(1)関連分析のための死因統計上の課題と対応
1)複合死因による疾病的背景の照合
死因統計と疾病統計の関連を分析するための課題としては、まず死因と疾病的
背景とを可能な限り照合し得るようにするため、現在のような原死因一つのみの
情報ではなく、死亡診断書に記載されている複数の死因すなわち複合死因の情報
を得ることが重要である。このためにも、上記の複合死因のデータの蓄積・整備
を積極的に進めていく必要がある。
2)死因(死亡診断書)の精度の向上
また、死亡診断書に記載される死因が正確であることも、死因と疾病の関連分
析を行うためには重要である。そのためには、特に臨床現場における死因統計・
死亡診断書に関する教育を充実する必要がある。
例えば、医師の卒前・卒後教育において、死亡診断書が死因統計に反映される
ことを強調し、更にマニュアルを作成し、あるいは様々な専門誌その他の各種メ
ディアによって死亡診断書の記載方法を周知することを検討し、実現していく必
要がある。
(2)関連分析のための疾病統計上の課題と対応
1)疾病登録型の疾病情報
死因統計と疾病統計の関連を分析するためには、疾病への罹患から死亡へ至る
時間的経過を連続的に反映した疾病的背景の情報を得ることも必要である。
そのためには、患者を罹患(発症)の時点から死亡へ至るまで把握する疾病登
録のような情報収集の方法などについて検討することが望ましい。しかし、この
疾病登録のような方法には多額の費用、人手と時間を要するため、例えば診療録
の管理された病院などを選び、死亡を起点として過去の疾病的背景にさかのぼる
形の調査によって代替する方法も考えられる。
現在、病院の退院時抄録を標準化する努力がなされているが、それが実用化さ
れれば、病院の記録から疾病的背景を知る方途が拡大するため、この点からも退
院時抄録の標準化が望まれる。
2)疾病の重症度・合併症などの表記方法
また、死因と疾病の関連について分析し、疾病の実態を質を含めて把握するこ
とは疾病対策上きわめて有益であるので、今後、患者調査などの疾病統計におい
て疾病の分類ばかりでなく重症度の把握、複数の疾患に罹患している場合の疾患
の程度の評価、合併症のとらえ方といった問題を解決するため、必要な研究を行
うべきである。
(7)疫学的研究における被調査者の追跡
疫学的な知見は、医療又は保健政策の基礎となる重要な情報であるが、なかでも重要
なコホート的疫学的調査・研究においては、対象者の追跡が転院・転居などにより途中
で中断(脱落)すると分析精度が大きく低下する。そのため、人口動態の死亡データを
用いて、コホート調査の対象者の生存・死亡確認を行い、対象者の脱落を補うことにつ
いての検討を考慮すべきである。
2.施設面統計調査について
保健、医療、福祉サービスは、「施設」というハードとソフトを一体化した総合的な
主体によって提供されているものが多いため、施設面からサービスの実態を把握する意
義は大きいが、近年は、保健、医療、福祉の連携が進み、保健・医療・福祉、施設・在
宅という区分にこだわらず最も適したサービスを総合的に提供していくとの考え方が強
く打ち出されている。こうした動きの中で、統計調査も、従来の施設面、世帯面という
区分で別々に調査の設計を行うのではなくサービスの需要と供給の両面から総合的な情
報を一体的に把握していくことが求められるようになってきている。このような変化に
対応した施設面統計の在り方については、今後、介護保険制度の導入に伴う厚生統計の
見直しを検討する中で更に検討が必要と考えられるが、当面取り組むべき課題は以下の
とおりである。
(1)医療の需要と供給の動態をより的確にとらえるための医療統計の改善
医療をめぐる諸状況の変化に対応し良質で効率的な医療サービスを提供するシステム
の確立に資するためには、医療の需要と供給の動態をより的確にとらえる必要があると
の見地から、本協議会は平成7年8月医療機関と直接接点のある患者自身から情報の把
握を行う「受療行動調査」の実施を提言した。これを受け厚生省は、平成8年度この調
査に取り組み、現在集計中である。
介護対策、障害者対策の充実等、医療を取り巻く環境は今後も大きく変化していくも
のと考えられ、これらを踏まえた需要と供給の動態を的確にとらえることのできる情報
の収集と有効活用を目指した医療統計の改善、充実を今後とも積極的に行っていく必要
がある。
(2)保健・医療・福祉施設従事者についての情報把握の充実
社会福祉施設や老人保健施設の従事者については、将来の需要増大に向けての従事者
の確保・定着、そして何よりも質的な向上が重要な課題となっている。
今後は、従事者の質の向上がサービスの質の向上につながり、従事者の安定供給、定
着が良質なサービスの安定供給につながるという視点から、そのための対策の基礎とな
る従事者に関する情報の把握の充実を図ることが必要である。
このため、本協議会は、社会福祉施設におけるいわゆる直接処遇職員について、新規
採用者・退職者の状況、雇用形態、労働時間、処遇の状況、研修等の資質向上の状況等
について調査し、多角的な分析が行えるようにするべきであると提言した。これを受け
厚生省は、「平成9年度社会福祉施設等調査」において従事者票の導入を計画中である。
また、老人保健施設、医療施設等の従事者についても、既に調査している事項に加え
資質向上の状況等、従事者自身の意識を含め必要な情報の収集を検討する必要がある。
なお、施設におけるサービスの質を客観的に評価し得るような情報の充実についても今
後更に検討を進めることが必要である。
(3)保育関連等地域の自主的な活動についての情報把握の充実
本協議会としては、従来、公的な分野での把握に重点が置かれてきた保育サービス関
連の状況について、認可外保育施設、児童クラブ等の在所・参加児童数、保育者・指導
者の状況、保育形態、開設時間等の実態や保育関連以外の地域の自主的な活動について
も、その状況を把握すべきであると指摘してきた。
これを受け厚生省は、これらの細部の実態について把握するため、平成9年度に「児
童福祉事業等調査(仮称)」の実施を計画しているが、こうした統計データは少子化及
び児童の健全育成対策の分野において極めて重要であるので、その動向については今後
も引き続き継続的に把握していくことが必要である。
(4)健康・福祉関連サービス産業統計調査の改善
「健康・福祉関連サービス産業統計調査」については、公的サービスと民間のサービ
スをどのように組み合わせ、どのように役割分担していくべきかといった政策的な問題
を検討していく上で必要となる情報を提供するための調査として位置付けられ、サービ
スの質にかかわる情報や公私のサービスの比較ができるような事項など政策に直接結び
つく内容を調査するとともに、当面の政策の視野には入っていない事業については調査
対象から除外するなど、位置付けを明確にすべきであると指摘した。これを受け厚生省
は、平成8年の当調査において、(1)対象となるサービスの種類を公的サービスの分類あ
るいは施策上の分類に即した区分により整理し(2)民間事業所のサービスの内容、提供の
実態及び公的機関からの受託・助成の状況等を把握し(3)営利・非営利を問わず有償で
サービスを提供している民間事業所を調査対象とする等の改善を図って調査を実施して
いる。
今後も政策上必要となる事項についての詳細な分析や、行政機関のみならず一般の利
用者の利便にも配慮した名簿の作成等、調査の充実、発展に対する継続的な検討が望ま
れる。
3.業務統計について
「衛生行政業務報告」「社会福祉行政業務報告」等の業務統計は、もともと厚生省の
機関委任事務として地方公共団体が実施している事業実績及び法律による届出を統計と
して収集し、その事業目的や目標の達成度を確認する役割を担ってきた。しかしながら、
福祉八法の改正、地域保健法の制定にみられるように、厚生行政は地方の自主性を尊重
する方向に大きく変化しつつあり、国は、公平性の確保に配慮しつつ、サービス提供の
調整を行い、その量的質的向上を支援していくといった役割を果たすように変わりつつ
ある。
国、都道府県、市町村がそれぞれの役割を果たしていくためには必要な情報を主に
サービスの供給面から体系的に把握し提供することが今日における業務統計の中心的役
割である。
こうした側面から、例えば従来の「保健所運営報告」を改正し、「地域保健事業報
告」として実施し、地域の実情をより小さな単位でわかるような工夫の具体化が図られ
ている。今後も更に、地域の保健福祉情報がより的確に地方支援に資するよう十分な配
慮が必要である。これらも含め、業務統計関係の課題を整理すると以下のとおりである。
(1)事業の客観的評価が可能な情報の収集、活用
(1)保健・福祉サービスの需要、供給の関連を明確にし、供給面については事業の評価
が可能となる情報の収集を行う。
(2)保健、医療、福祉の情報を相互に関連させて保健・福祉サービスの総合的な把握が
可能となるよう業務統計の報告内容の整備を図る。
(3)事業評価を行うに当たって、業務統計で把握できない情報については業務統計以外
の調査統計及び各種情報等との関連分析を行うなど情報の活用を図る。
(2)市町村等が実施するサービス提供を支援するための情報の収集・提供
(1)情報の収集は可能な限り事業主体である市町村ごとに行う。
(2)市町村等の事業主体が事業の効果等を客観的・相対的に評価することが可能となる
よう、事業の実績と住民の保健・福祉水準の改善との関係を示すような指標を策定
する。
(3)地域住民が様々な形で自主的に保健・福祉サービスに参加する上で、あるいはサー
ビスの受け手として必要となる情報の提供ができるような環境整備を行うことを検
討する。
(3)統計の効率化
(1)業務統計と厚生省各局の事業実績報告等とで内容の類似したもの、情報把握の必要
性が低くなったものは見直すなど、情報の重要性に優先度をつけ収集する情報を整
理する。
(2)報告周期について、月報は季節変動の観察、速報性等特別な必要性のあるもののみ
とし、原則として年報又は年度報に整理する。
4.世帯面統計調査について
厚生省は国民生活と密着した行政を所管しており、多くの施策が世帯を対象として幅
広く展開されている。そのため、世帯及び世帯員の変化や実態を的確にとらえることが
施策遂行上、不可欠である。国民生活基礎調査など世帯面統計調査は、各種行政施策の
企画・立案の基礎資料を得るため、日常生活の基本単位である世帯及び世帯員を対象に
実施されているが、こうした世帯面統計調査は昭和50年代の後半に再整備されたもの
である。その後、社会情勢は少子・高齢化の進展を始めとして大きく変化し、厚生行政
の施策においても、介護保険制度創設への取組み、障害者プランの推進等の新たな広が
りをみせている。
こうした中で世帯面統計調査は、新たな施策の展開に必要な基礎資料及び現在推進さ
れている各種施策の効果測定、検証のための基礎資料として一層の重要性が増している。
一方、調査対象としての世帯においては、世帯規模の縮小・高齢化がみられるととも
に、単身赴任、高齢者の入院・入所、子供の遊学等による居住形態の多様化、さらには
女性の就労、高齢者の年金、子供のアルバイト等による収入形態の多様化などの大きな
変化が生じている。
また、世帯面統計調査における世帯の定義及び分類は、各統計調査が持つ調査目的等
の違いから必ずしも同一ではなく、前述の「統計行政の新中・長期構想」において、世
帯の定義の統一化等について関係省庁間による検討の必要性が指摘されている。
こうした世帯をめぐる社会情勢の変化を踏まえ、世帯や世帯員の実態を的確に把握す
るため、世帯面統計調査の今後の在り方について見直しを行う必要がある。 見直し
に当たっては(1)各種世帯面統計調査間の比較、分析における利便性の向上(2)各種施策
課題に対する世帯面からの情報の把握という観点から検討を行った。
(1)高齢者世帯の定義についての検討
(1) 各種世帯面統計調査における世帯の定義は、「同一住居・同一生計」でほぼ一致
しているが、詳細な部分では異なっている。そのため、世帯としてとらえる際の基
準が必要であり、可能な範囲で基準の統一化を図るべきである。
しかし、詳細な基準の設定は、調査結果の時系列観察が困難になること、被調査
者、調査員の負担の増加を派生させることにもなることから慎重に行うべきである。
(2) 世帯分類の統一化に関しては、主として「高齢者世帯」について検討を行った。
分類の統一化は、各統計調査が固有の調査目的を持っていることから、これを考慮
した上で行う必要がある。
1) 現在、厚生省が実施する統計調査で使用している高齢者世帯の定義は、昭和2
0年代後半に、高齢による所得の減少等の世帯の経済的側面及び婚姻における男
性と女性の年齢差という当時の一般的状況を考慮して定義付けられたもののよう
である。そのため、男65歳以上、女60歳以上と性による年齢差があり、60
歳から64歳の男の単独世帯、男65歳未満・女65歳以上の夫婦世帯等につい
ては高齢者世帯に該当しないものとなっている。
しかし、平均寿命の伸長、年金制度の成熟、女性の社会進出等、社会・経済の
状況は大きく変化している。そのため、こうした社会の変化を踏まえた世帯分類
とする必要がある。
2) 高齢者世帯については、経済、介護等の面から、行政として何らかの支援が必
要、又は必要と思われる高齢者を中心とした世帯としてとらえ、(ア)高齢者を6
5歳以上の者とする(イ)65歳以上の者の世帯に18歳未満の未婚の者が加わっ
た世帯も対象とする(ウ)女性の就労による経済的自立、年金における性による扱
いにほとんど違いがないこと等から、性による年齢差は考慮する必要がないとす
ることが妥当である。
具体的な高齢者世帯の定義としては、「65歳以上の者のみで構成する世帯又
は、これらに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」とすることが考えられるが、
各種世帯面統計調査間の統一化の問題、これまでの高齢者世帯の定着の度合い等
から十分な検討が必要である。
なお、調査結果の公表に当たっては、利用者における継続的活用・高齢者をめ
ぐる世帯の変化をみる観点から、現行の定義による数値及び「65歳以上の者の
みの世帯及び65歳以上の者と60歳から64歳の者で構成される世帯(18歳
未満の未婚の者も含む)」についても、併せて表章することが望ましい。
(2)世帯面統計調査における政策課題への対応
(1)二世帯同居世帯における生活の共同性
現在、世帯面統計調査においては、同一家屋に居住しているものであっても、
生計を異にしている場合は、別の世帯として取り扱っており、同一家屋に居住す
る親世帯と子世帯などの関係については解析が行われていない。しかし、世帯の
住居や生計の在り方が多様化している現在、在宅介護に関する現状を把握すると
いった目的のためには、こうした世帯を、いわば一つの世帯としてとらえること
も必要と考えられる。このため、調査の実施に際してこうした世帯については単
なる別世帯ではなく、関連分析の必要な世帯として関連づける等の方法により、
このような世帯の情報を把握すべきである。
また、親と子といった二世代の者が同居する世帯については、これまで明確な
概念でとらえられていなかったが、世帯内の構造を明らかにするため、性、年齢、
子の配偶関係等のライフステージ別に居住形態を類型化する等、現行調査の解析
を高度化することが必要である。
こうした世帯について、生活の共同性を把握するためには、家計収支、住居の
状況、食事・入浴の状況、交際費の負担状況等の日常生活の在り方を調査する必
要があるが、今後、行政的活用、把握すべき事項、分析の手法等についての検討
が必要である。
(2)痴呆性老人の実態把握
痴呆性老人については、寝たきり者と同様に、施設及び在宅での適切な介護が
必要であり、そのための実態に関する基礎資料が求められているが、現在実施さ
れている世帯面統計調査では全国的に同一の基準での実態は把握されていない。
世帯面統計調査における痴呆性老人の実態把握においては適切な介護の提供と
いう観点から、痴呆により生ずると考えられる心身の状態及び日常生活動作(A
DL)の状況を把握することが適当である。併せて、医療機関での受診等の状況
を把握することによって、調査結果の活用の幅が広がることとなる。
痴呆性老人の実態を医学的な側面から厳密に把握することは望ましいが、痴呆
か否かの具体的な把握方法については今なお検討すべき点が多く、新たな全国的
大規模調査を直ちに行うことは困難であるため、当面は上記のような世帯面の調
査による実態把握の可能性を検討することが現実的であると考えられる。
その際の、設問及び調査方法については、地方公共団体等で実施された調査を
参考とするとともに、この分野の専門家等により、その在り方を十分検討すべき
である。
(3)保健・医療・福祉サービスの需要把握
人口の高齢化等により、保健・医療・福祉分野における各種サービスに対する
需要は、ますます増大すると考えられる。これまでの世帯面からの需要の把握は、
主として各種サービスの利用実態及び利用意向を把握してきているが、可能な限
り客観的なものとする必要がある。
世帯面統計調査における今後の方向としては、世帯及び世帯員のサービスに対
する需要を的確にとらえるため、新たに世帯の誰がサービスを必要としているか
を把握するとともに、世帯員の健康状態、要介護の状況等、世帯及び世帯員の置
かれている状況をより詳細に把握する必要がある。同時に、世帯内でのプライバ
シーを考慮した調査方法についても検討が必要である。
また、様々なサービスのうちどのようなサービスが求められているかをより的
確にとらえるためサービスの種類、対象とする世帯員等を適切に選んで行うなど
の方法が有効であると考えられ、行政需要に対応して、年次により調査対象を変
更することも検討すべきである。
(3)その他
(1) 以上、各課題について検討したが、検討結果の実施について、世帯の定義及び
分類の統一化は、各種調査を所管する各省庁間での協議を踏まえて実施すべきで
ある。痴呆性老人の実態把握については上記の諸点を十分検討した上で、実施す
べきである。
(2) なお、今回は検討できなかったが、世帯の個人化への対応、国際比較への対応、
ライフサイクルを浮き彫りにすることによる各世代への効果的な施策展開のため
の表章等については、今後の課題として残されている。また、統計調査の実効を
あげるため、各種世帯面統計調査に適した母集団情報の活用等による一層の効率
的な実施、調査精度の向上が望まれる。
NO3に続く
照会先
厚生省大臣官房統計情報部管理企画課
課長補佐 廣瀬滋樹
[現在ご利用いただけません] 内線4115
前ページ
次ページ