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厚生統計の今後の在り方についてNO1
平成9年3月19日
厚生大臣 小泉 純一郎 殿
厚生統計協議会
会長 和 田 攻
厚生統計の今後の在り方について
標記について、本協議会は平成7年6月から審議を重ねてきましたが、今般、これま
での検討結果を別添の「厚生統計の今後の在り方について(報告)」としてとりまとめ
たので報告します。
厚生統計の今後の在り方について(報告)
平成9年3月19日
厚生統計協議会
厚生統計の今後の在り方について(報告)
はじめに
本協議会は、少子・高齢化等の厚生行政を取り巻く環境の変化を踏まえ、来るべき2
1世紀に向けての厚生統計の在り方について平成7年6月から検討を重ねてきた。この
間、平成8年5月31日に中間報告として提言を行ったが、その後も引き続き様々な課
題について審議してきたところであり、今般、中間報告における指摘事項を含め検討結
果を以下のとおり取りまとめた。
I 厚生統計の発展に向けての基本的考え方
1.厚生統計の意義と役割
厚生行政において適切な施策を展開していくためには、保健、医療、福祉等諸分野に
おける国民のニーズと各種サービスの現状とを的確に把握、分析し、厚生行政の進むべ
き方向を明らかにすることが必要である。
厚生統計は、このような厚生行政推進の基盤となる情報を提供する役割を担っている。
このため、厚生統計には、単に調査結果を集計するだけではなく、その加工、解析を通
じて政策の企画・立案や施策の効果の検証・改善のために有用な情報を提供することが
求められている。
同時に、国民生活に密着した厚生行政を推進するためには、厚生行政に対する国民の
理解を深めることが不可欠であり、そのため、国民に対して厚生行政の現状や施策の基
盤に関する情報を的確に提供することも厚生統計の重要な役割である。
2.厚生統計を取り巻く環境の変化
厚生統計がその本来の役割を十分に果たしていくためには、社会の変化と厚生行政の
変化に応じ、常に見直しを行っていくことが必要である。
今後の厚生統計の在り方を検討するに当たって考慮すべき主な環境の変化としては、
以下の諸点があげられる。
(1)少子・高齢化の進展
少子・高齢化の進展に対応した高齢者、児童等を対象とする保健福祉3プランの総
合的推進、介護保険制度創設への取組み、医療保険制度の改革等の、厚生行政の新し
い総合的展開の基礎となる情報が求められている。
(2)家族・世帯の機能の変化
核家族・単身世帯の増加や女性の社会進出に伴う共働き世帯の増加などにより、従
来、家族や世帯が担ってきた介護機能や保育機能が低下しつつあるといわれており、
こうした状況を正確に把握する必要が高まっている。
(3)行政改革の動き
国の財政が危機的状況にあること等を背景に社会保障制度の構造改革や行政・財政
の構造的な改革が政府としての基本方針となっている。厚生統計においても、行財政
のスリム化・効率化の観点からの見直しが迫られている。
(4)地方公共団体の役割の増大
保健、医療、福祉など国民生活に密着した行政は、より身近な地方公共団体が主体
となって実施すべきとの要請が強まっており、地域ごとのニーズに応じた施策の展開、
地域ごとの違いを視野に入れたきめ細かな政策立案、更には地方公共団体における施
策の立案・実施への支援の観点から地域の状況の違いを把握できる情報が求められて
いる。
(5)国際化の進展
国際化の進展と我が国の社会保障に対する国際的な関心の高まりにより、単に統計
の国際比較により政策立案の資料を得るということだけでなく、我が国の社会保障の
現状に関する情報を世界に向けて発信していく必要性も増している。
3.厚生統計の発展に向けての方向
以上のような厚生統計を取り巻く環境の変化の中で、厚生統計の役割をより的確に果
たしていくためには、(1)サービスの需要と供給の関係を適切に把握できる統計体系とし
ていく、(2)サービスの質を把握できる統計体系としていく、(3)地域間の比較に活用で
きる統計情報を提供していく、(4)利用者にとって使い易い形で統計情報を提供していく
(5)信頼性の高い統計を効率的に作成するといった視点が重要であり、これらを踏まえて
より具体的にまとめれば以下のとおりである。
(1)政策立案に資する統計の作成
厚生統計に求められることは、何よりも厚生行政の施策の企画・立案に役立つ統計
データを提供できるような統計調査を企画・実施し、多面的な解析を行った上、結果を
迅速に提供するということである。
このためには、時代の要請に敏感に反応し、今後の厚生行政の推進に必要となると思
われる情報を予測し、速やかにその情報の収集に着手するよう努めることが必要である。
それと同時に既存の施策についても「サービスの需要と供給の関係」や「サービスの
質」等の観点からその実態を正確に把握し、それが社会の実情にあっているかを検証で
きるような情報の把握に努める必要がある。
また、提供される情報については、保健、医療、福祉等の厚生行政の諸分野の施策の
実施状況等を総合的に把握し、分野横断的な分析に活用できる情報、地域の役割が増し
ていることから地域間の比較を可能とする情報、更に、単なる調査結果の集計だけでな
く、指標化等の加工を通じて政策目標の達成状況の把握に活用できる解析結果を提供で
きるよう努める必要がある。
更に、急速な社会の変化に的確に対応した政策立案のためには、統計データの収集・
提供の迅速化を図る必要があり、データ収集のオンライン化やデータベース化の推進等、
急速に発展する情報通信技術の積極的な活用も必要である。
(2)統計利用の利便性の向上
利用者にとってより使い易い形で統計情報を提供していくことは厚生統計にとって重
大な課題である。
どのような統計情報がどこにあるかという、いわゆる所在源情報については、データ
ベース化を図る等検索し易い形で提供することが必要である。
また、提供する内容についても、(1)でも述べたように指標化等の加工により、分
かり易い形としていくことや結果の国際比較を可能とすることが必要である。
統計情報の提供の方法については、広範な統計利用者の多様なニーズに柔軟に応える
ために、オンライン化、データベース化、CD−ROM化などの多様化を推進する必要
がある。
調査結果の公表の早期化を図るためには、概数がまとまった時点で速報を発表するな
どの段階的公表についても検討されるべきと考える。なお、内外の研究者や国際機関等
から要望の高まっている統計調査の標本データ提供については、統計審議会答申「統計
行政の新中・長期構想」(平成7年3月)において今後2〜3年を目途に専門的・技術
的な研究を行うとしているところであり、その結果を踏まえ、厚生統計についても適切
な対応を図っていく必要があるものと考えられる。
(3)信頼性の確保と効率化
今後とも厚生統計については高い信頼性を確保しつつ効率化を推進していくことが必
要である。
信頼性を確保するためには、被調査者に対し調査の意義を十分に説明するとともに、
調査事項や調査対象の選び方、調査方法、設問の立て方等について更に工夫、見直しを
行い、回答し易い調査とするとともに地方公共団体の統計担当職員や調査員の資質の維
持及び向上を図ることが必要である。
また、効率的な統計調査の実現には標本調査の活用や調査周期の見直し、更には情報
通信技術の積極的活用などの努力が不可欠である。
更に、社会情勢の変化等により必要性の低下した統計調査については、調査事項の整
理縮小、場合によっては廃止するなど不断の見直しを行うべきである。
NO2に続く
照会先
厚生省大臣官房統計情報部管理企画課
課長補佐 廣瀬滋樹
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