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              第3回中央児童福祉審議会基本問題部会議事録NO3

○部会長  ありがとうございました。
  それでは、簡単にどうぞ。
○J委員  今のいろいろな流れの中で、どうしてもやはり私も触れたいと思いまして、
この2つの大きなテーマの中で共通にこれから進めていく枠組みということを考えたと
きに、私はやはりH委員がおっしゃられたような理念というものを、ここでどこまで確
認出来るかということだと思うんですが、第1回目のときにも私自身も児童福祉法や教
育基本法の理念の重要性を挙げたつもりなんですが、これからの進め方で、子育てとい
うときに、どうしても主体が育てる側になっていますので、児童福祉法なり、これから
考えられる法律の中で、もう一つやはり子どもが育つということに高い関心を向けた考
え方をどうしても入れなくてはいけないのではないかと思います。
  その点では、先ほど子どもの自立とか、社会性というふうな表現をされたような、ち
ょうど児童福祉法で言えば、今までは子どもは育てられるということで見ていましたが
、やはり子どもの権利条約も含めて、もう一つの能動的な積極的な意味の部分を、子ど
もの福祉とか、ウェルビーイングの中で、これは考え方として是非入れなくてはいけな
いのではないかと思います。それで、その子どもが育つことをしっかりと私たちが支え
られるような環境づくりとか、子どもの育ちに関心を向けることとかという理念がやは
り入らないと、従来の繰り返しの部分でまた展開される心配もありますし、それが1つ
重要な考え方として含めたいということです。
  それからもう一つは、何よりも中心はまず親だと思いますが、それを社会的支援とか
、親が育てるのを支援するということと同時に、それからもう一つ、社会が育てるとい
う積極的な部分ですね。例えば、育児の社会化も、先ほど指摘されたような問題でいう
育児の社会化ではなくて、保護者と共にという、その共にの部分の社会の責任の方をど
こまで入れるか。それが、さまざまな施設や、子どもの環境のハードやソフト面全部を
含めた部分だと思いますが、その中で3つの部分を十分踏まえて考えていかなくてはい
けないと思います。
  それから、親に関しては私たちは日本語では親となっていますが、先ほど来いろいろ
議論されていますように、どうしても親イコール母親という、子育てというとどうして
もその部分がありまして、そうすると父親というのはそれに参加するとか、やや次の段
階でかかわる部分がどうしても出てきますが、例えば英語でしたらペアレンツとなって
いますよね。Sがついているんです。これは日本語で両親と訳してしまうと、ではひと
り親はどうかと、必ずそれが議論されます。
  しかし、親と言ったときに、本当に一緒に父親、母親がいるとか、いないに関係なく
、両親、父親と母親ということがもっときちんと受け止められるような進め方は是非考
えるべきではないかと思います。
  ちょっと長くなりましてすみません。
○部会長  先回と今回でかなり盛り上がってまいっておりますが、どうしてもこの際と
いう方がありましたらどうぞ。
  ただし、今、勿論おっしゃっていただきますけれども、説明させていただきます。ま
だまだ3回目でございまして、これからお話いただく機会はたくさんございますので、
そのつもりでお願いを申し上げたいと思います。
  どうぞ。
○K委員  先ほど、一番最初に産まれる前の話がちょっと出ましたけれども、これは今
回出されているテーマとは違うかもしれませんが、少し発言しておきたいと思います。
  といいますのは、例えば結婚する前の人たちに、婚前教育だとか、あるいは妊娠した
ら母親が今、両親学級に行っていると思いますけれども、こういうことは多分母子保健
法の範疇かと思いますが、そのこともその後の子育てということには非常にかかわり合
いがありますから、どこかの段階で整理をした方がいいのではないかというふうに思い
ます。
  というのは、例えば先ほどB委員がおっしゃられたことで、女性の中にキャリア重視
に走りがちな人がいると。そういう人がいないとは言いませんけれども、一方では労働
省の方の調査を見ますと、例えば妊娠中あるいは出産後1年間は残業だとか深夜業を本
人が要求すれば外すということになっています。
  しかし、現実に労働省が、出産のために入院している人たちに調査をしました結果を
見ますと、そういうことを要求した人は非常に少ないんです。そして、例えば現在就い
ている仕事がきついから、ほかの仕事に変わりたいというふうなことを申し出た人は非
常に少ないという結果が出ております。
  ですから、労働環境ということもありますし、その職場の雰囲気ということもありま
すし、あるいは妊娠、出産、育児ということについての考え方についての社会的支援と
いうこともありますし、いろいろなことがあると思うんですね。ですから、こういうこ
とが単に労働条件が悪いということだけではなく、あるいは本人の考え方ということだ
けではなくて、もっとそういうことに対して社会的に温かい目で見るというような状況
をつくり出さないと、結局今だんだん職場で、例えば総合職で、世界中も含めて全国ど
こでも転勤で行けますかというふうに脅されて入ってきている女性の人たちは、妊娠、
出産したらこの職場にはいられないんだという強烈な思い込みがある訳です。
  ですから、そういう人たちにとって見れば、働き続けるならば子どもを産まない、あ
るいは子どもを産むためには家庭に入らなければいけない。どちらになっても不幸だと
思うんですね。先ほど一番最初にA委員がおっしゃられたように、不本意な形で家庭に
入れば今度は子どもに夢中になってしまう。それから、職場にい続ければ、そういうこ
とを選択したことに対する自分の不満足感が残っているというふうな問題等もあると思
いますから、ここら辺のことも大事ではないか。
  それから更に、例えば1歳半から健診に2、3歳くらいまで何回も注射などで出掛け
ていく訳ですけれども、こういうことも私たち働く女性の方から見ると、大抵保健所の
都合、お医者さんの都合で、最近は医者に委託するのが増えてきましたけれども、1時
半から3時までやりますよというふうなことだと、結局1日休まなければならないとい
うことでとても困っているとか、保育園に預けている子どもが午後2時ごろになって熱
を出したから迎えに来てくださいというふうな問題だとか、そういういろいろな種類の
ことがありますので、ここら辺のことも子育ての環境づくりの中ではやはり重要ではな
いかということで、1つ課題として挙げておいていただきたいと思います。
  それからもう一つ、性をめぐる問題が出されました。これも、私はとても大事な問題
だと思います。最近、新聞だと売春などはだんだん中学生くらいまで下りてきていると
いう記事が出ていますね。それから、私の住んでいる団地でも、テレクラに関する電話
のメモなんて毎日のように放り込まれている。それで、ただ電話番号だけが書いてある
のが入っているということが毎日のようにありますから、ああいうふうなものを見てい
て、一体これはどうしたものかというふうなことで、性をめぐる問題ですね。
  それから、テレビのこともおっしゃられました。
  それから、マンガのこともあると思います。例えば、最近は子どもが大きくなりまし
たから見ていませんけれども、今『クレヨンしんちゃん』とか、ああいう番組というの
は実に不愉快だという気がします。表現をしている人物に子どもが出ているから子ども
向けの番組かというと、実際は本来大人が見るような中身が、子どもの出演者によって
置き換えられているために子ども向け番組というふうにされてしまっている。それで、
そういう時間帯に出されている。
  かつて、失敗したことを皆でいじめるようなたけしの番組が10年くらい前に盛んにあ
ったんですけれども、ああいう種類のことについてきちんと批判されないままにきたこ
とも、非常に私としては苦々しい思いだったんですが、テレビだとか、雑誌だとか、性
をめぐる問題も子育て環境という点では非常に重要だし、特に売春にかかわる問題とい
うのは直接には児童福祉ですから、これも重要な課題ではないかということで発言をし
たいと思います。
○部会長  どうぞ、D委員。
○D委員  今の性をめぐる話のことで、つい先日までエクパットという国際会議の準備
会が日本で開かれていまして、今度8月の末にスウェーデンで国際会議が開かれるんで
すが、これは売春、売春と言いますけれども、売る側ではなくてやはり買う側がいるか
ら成り立つので、売買春がややこしいので、そこでは買う春の方を買春という言い方を
しておりますけれども、買春を防ぐための国際会議が今年の夏にスウェーデンで開かれ
たりする訳です。
  それで、日本人が外へ行ってタイなどで7歳の女の子を買っているというような話ま
でいろいろなリポートがあったんですけれども、この児童福祉法が出来たときには余り
考えられていなかった、これもやはり虐待の一つの形だと思いますので、今度これを改
正する中にそういう部分も新しい問題として是非盛り込む必要がある。先ほどJ委員が
おっしゃったことに全面的に私は賛成いたしますが、子どもが育つことを妨げるような
ものについても、この中にちゃんとそれを禁止することを盛り込むべきだというふうに
思いますので、一言だけ申し上げます。
○B委員  今の問題で、私のところへ売買春の問題と取り組む会という会から要請書と
いうのが実は送られてきておりますけれども、皆様方のところへもいっておりますでし
ょうか。お受け取りになりましたか。
  私も、これは大賛成です。
○E委員  私は、仕事柄お目に掛かる親たちは親になろうとしない親とか、あるいは親
になり切れない親たち、そういった親を子どもたち自身がどう見ているのかというふう
なことでこの問題をとらえているんですけれども、親になろうとしない親とか、親にな
り切 れない親たちというのはどういう時代的な背景の中で育ってきたのかというのは
、既にいろいろ今までの話の中でも、前回の話の中でも出てきたと思うんです。
  一方、昨年でしたか、いろいろな政府の統計資料を使いながら、例えば未婚の母につ
いての認識の仕方はかつては否定的だったのが、かなりそれを肯定的にとらえている若
い人も多くなってきておりますし、あるいは子どもを1人産むならば女の子というふう
な率も高まってきていますし、あるいは必ずしも結婚をすべきとは思っていないという
若い女性たちも増えてきていますし、また男性側からは結婚をするならば年上の女性を
というのが徐徐に増えてきている。
  そういった人たちが家庭をつくって親になったときに、どういう親になっていくのか
なというふうなことについていろいろ考えさせられる訳で、そういう中でどういうふう
に児童福祉法があったらいいのかというふうなことを考えていかなければいけないのか
なというふうに思っております。
  性の問題も出たんですけれども、今、中学生、高校生の間でも別に売春とか何かでは
なくて、ごく普通のような形でそういう御経験を持つ高校生あるいは中学生の子たちが
増えてきている。その背景には、これは私が実際に扱った例なんですけれども、両親が
きちんとそろっていて、しかも1人娘で、父親は会社員で、御多分に漏れずに帰って来
る時間は遅くて、母親はある時間帯を使ってパートで働いている。それで、子どもは小
さいときから保育園に預けられてきて、その子いわく、いつもお迎えは一番びりで寂し
い思いをしたというふうに言っている訳です。
  その子が、物心つくときに夫婦の間にいろいろあったんだろうと思うんですけれども
、どちらを選ぶかという話が幼児期にあったみたいで、それを鮮明に覚えていて、その
ときから不安に駆られていたということでした。
  それで、話はその子が高校に上がるときにある小さな塾に行って、そこで若い教師と
知り合ってそういう関係を持った。それで、母親がたまたま掃除をしに、どういう訳か
その子どもの部屋に入って、机の上に乗っていた日記を見てそれを知って、気が狂わん
ばかりに子どもを責めて、その相手の男性も責めて、子どもの方がそういうたび重なる
責めで家出をして、ある人を介して私どもの方で一時保護をした。
  それで、その子どもを迎えに行って私どもの方に連れて来る間に言っていた話は、自
分は確かに言えば何でも買ってもらえた。でも、寂しくてそういう関係を持ったという
ふうに言っていて、10日間くらい私どもの方で預かったんですけれども、その子はピア
ノは達者に弾くし、家庭的にも恵まれている子で、小さい子から、お姉ちゃん、お姉ち
ゃんと慕われて、ここは快適で私はここにいたいなんていうふうなことを言い出して、
親の元にどういうふうにつなげて帰していくかということにかなり骨を折った訳ですけ
れども、片一方でそういうような子どもの状況もあるという中で、家庭の役割なり、あ
るいは社会的支援のあり方というものも考えていかなければいけないのかなというふう
に私自身は考えています。
○部会長  ありがとうございました。
  それでは、今日はせっかくでございますので、御出席の全委員さんから一言ずつでも
御発言をいただきたいと思います。
○L委員  先ほどJ委員の方でお話があったように、やはり子どもの側に立った視点で
いろいろな政策なり、物事が展開されていく必要があるんじゃないかというところを付
け加えていただければ、今の段階で私は特にありません。
○部会長  ありがとうございました。
○M委員  就学前の問題点というのはいろいろ言われます。何度もお話が出ましたけれ
ども、少子化による集団生活での経験不足であるとか、過保護による子どもの自立の妨
げであるとか、直接体験の不足であるとか、あるいは社会生活に対応したしつけ等の家
庭教育の不足であるとか、こんなことがよく言われる訳であります。
  こういうことを前提にして、現状にして、そして小学校の先生に、困っていることは
どんなことですかと実は聞いてみましたら、答えはこういうことでありました。
  1つは、集団での行動がうまく出来ない。
  2つは、先生や友達の話をしっかり聞けない子どもが多い。
  3つは、自分の思いを表現出来ない子どもが増えている。
  4つは、その次は、指示待ち傾向が強くなっている。
  そして最後には、給食などで偏食傾向が強くなったり、食事のマナーが出来ていない
。こういうことが、小学校の先生の返事として返ってまいりました。いずれも、集団生
活の必要性というものを強調している訳でございまして、私も先ほど掘田先生がおっし
ゃいましたけれども、子どもの健全育成という視点に立ちまして、「保育に欠ける」と
いう言葉もまた吟味をしていかなければいかぬというふうに思っております。
  取り分け、母と子1人という場合にありましては、2歳以上から保育所に入れて集団
生活を体験させるということの必要性もある訳であります。厚生省は「保育に欠ける」
という中身を、保護者の働いている事情からいたしまして、決めておる訳でありますけ
れども、私は飽くまでも子どもの健全育成という視点に立ちまして、むしろ「子育ての
環境に欠けている」という表現に変えることは出来ないだろうか。「保育に欠ける」と
いう言葉を、「子育ての環境に欠けている」ということに出来ないだろうかということ
を考えている1人なんです。
  幼稚園へは3歳以上ということに決まっていますし、それから一番大切な3歳未満児
につきましては、厚生省は保育に欠けていなければ措置出来ないということであります
ので、少なくとも2歳児というのは対象として大切でありまして、私どもの金沢市では
実はしばらく前からこういうことをやってみました。すなわち児童館で2歳児だけを親
子で預かるということなのであります。これを、親と子の遊びの教室というふうに名付
けまして、児童館でこういうことを1週間に1、2度やってみておるのであります。
  私は、この成果は少し分析してまとめたいというふうに思っておりますけれども、幼
稚園は3歳児以上、そして未満児は保育所の場合は保育に欠けていなければ入れない。
ちょうどその透き間の部分で、3歳未満児のうちの2歳児だけを預かるということを実
は、やってみております。
  こういうことも1度やってみまして、どういう成果が出るか分析をしてまいりますけ
れども、そろそろ戦後50年たちまして、「保育に欠ける」という言葉の吟味も必要にな
ってきたのではなかろうかなと、そんなことを考えております。
  しかし、この問題も突き詰めていけばいくほど大変難しい事柄にもぶつかりまして難
儀をする訳でありますけれども、もう少し子どもの視点に立って考えるということの必
要性を感じております。
○部会長  ありがとうございました。
○N東委員  保育に欠ける状態について、いろいろ社会の変化と共に変わってきている
ことについてはまたいろいろ御議論があると思いますが、今の状態で、今の社会で一番
これから支援を必要としている人たちに対する社会的な支援ということを考えてみます
と、1つはシングルペアレントであり、もう一つは学童保育ではないかなというふうに
考えております。
  シングルペアレント、特に今、法制審議会の方でも新しい改正についての意見がなか
なかまとまらないというふうに聞いております。審議会では法案大綱の方がまとまらな
いというふうに聞いておりますが、非嫡出子も含めて、非嫡出子と嫡出子の法的な地位
をどうするのか。これは本当に家庭のあり方、家庭を中心に子育てという子どもについ
ての支援を考えるのか。それよりも、子どもをまず第一の前提として考えるのかによっ
て意見が大変分かれているようですけれども、いわゆる健全な家庭を維持することが、
全体的なその子どもの福祉に貢献するんだと。それで、父親も家庭にもっともっとコミ
ットするんだという家庭中心型で子育てを考えていくのか。家庭がやはり健全でなけれ
ばいけないとか、しっかりしなければならないということを強調していくのか。児童家
庭局の家庭のところを強調するのか。あるいはもう一つ、児童ということ、非嫡出子だ
ろうが、嫡出子だろうが、子どもが健全に育っていくということを第一義として考える
のかということについても、少し議論が必要なのかなというふうに思います。
  勿論、公式的にはそれは両々相まってということになるんでしょうけれども、そうい
ったようなところで子ども、チャイルドファーストなのか、それとも家庭、ホームファ
ーストなのかというようなことについては、一度皆さんの御意見を聞かせていただきた
いなという感じがいたします。
  そしてまた、母子家庭の中でもう一つの大きなグループは、離別した後の母子家庭で
す。前にも一度短く触れましたけれども、そうした家庭の父親の多くが経済的に余裕が
ないということもあるんですが、養育料、子どもが育っていくための経済的な負担をシ
ェアしないという父親が圧倒的に多い訳ですね。
  それに対して、社会的支援ということで児童扶養手当等々が整って支援されている訳
なんですけれども、こうした社会的な支援と、その父親の責任あるいは親の責任という
ようなものをどういう形で考えていくのかなというのも、これからの社会の一つの大き
な課題になるのではないかなという気がいたします。これからの社会では、もしかした
ら離別した母親が経済的に負担をシェアしろというような話のケースもあるかもしれま
せんけれども、いずれにしても理想は両方の親がそろっているということで、それが出
来るだけ維持出来るように支援するということかもしれませんが、結果としてシングル
の方たちが増えていくのをどういう形で位置づけていくのかというのが、ひとつ是非必
要だと思います。
  それから、2つ目の学童保育ですが、就学前までは保育園、保育所、幼稚園、いろい
ろな形で働く母親たちの実感としても随分よくなった。随分支援していただいている。
社会的な支援が整ってきたと言えると思いますが、小学校に入った後、就学した後、特
に10歳辺りぐらいまで、まだ放課後1人で置いておくには心もとないというような時期
の子どもたちが、十分な社会的な支援が受けられていないというのが実情ではないかと
思います。  私の子どもも、一時期父母がいわばお金を出し合って、労力を出し合って
学童クラブを運営するというところにお世話になったことがありますけれども、保育所
が制度的にしっかりとした支援が行われているのに比較しますと、本当に悲しいような
状況でして、場所も6畳1間ですとか、あるいはまた倒産したレストランの廃屋を借り
ているとか、いろいろなものがあるようですし、世話に当たる方たちに対する人件費の
補助というのも全く乏しい状態があります。
  一方で、子どもの数が減ってきて空教室が大変増えているんだけれども、あちらの方
は文部省の方の施設であって、中央のレベルでは弾力的にとおっしゃっていても、本当
の現場の方では管理上の問題からなかなか融通がうまくいっていないというようなこと
もありまして、施設の面でも問題が多いというようなこと等を考えますと、ある程度の
水準になっている分野について、もっともっと議論するのも必要ですけれども、本当に
これはだれから見ても十分なレベルに達していないなという分野、学童保育はその一つ
ではないかと思いますので、是非御配慮いただければと思います。
○部会長  ありがとうございました。
  それでは、この前御発言をいただく機会がなかったO委員からお話をいただきます。
○O委員  私はB委員のように優等生ではありませんで、父親としても落第生ですし、
各委員のお話を伺っていますとだんだん発言しにくくなりまして、私が申し上げたいの
は本当に皆さんおっしゃいましたので別に新しいことはないんですが、私も実は役所に
入りまして、最初に入ったところがこの児童局という局でございました。
  大変子どもの問題には、そういうことから仕事の上でも縁が深かったんですけれども
、振り返ってみますと前回もお話が出ておりましたが、私どものように戦時中に育った
人間と、それから高度成長時代に育った今の30代、40代の人と、それから今の子どもた
ちですね。それぞれやはり時代も違いますし、問題も違うと思うんですけれども、全体
としてはどなたかも言っておられましたが、非常に今の子どもたちというのは経済的に
も、物質的にも恵まれまして、そういった意味で豊かな時代になりましたけれども、逆
に言うと失ったものも大変多いんじゃないかというふうに思います。
  何を失ったかというと、1つはやはり兄弟が少なくなったということ、それから友達
が非常に少なくなったんじゃないか。自分たちの身の周りを見ても兄弟が非常に少ない
ですし、友達も非常に少ないんじゃないかという感じがします。学校よりも塾などで友
達をつくっているようなことも聞きます。
  それからまた、親がいなくなったというとまた怒られるかもしれませんが、私どもの
時代というのは戦時中は父親が兵隊とか軍に招集されていなくなったということもあっ
たと思いますけれども、私たちの時代というのは本当に会社人間といいますか、役所で
いいますとやはり役所の人たちが多かったんだろうと思います。父親と母親というのは
分業の時代だったんですね。家事は、要するに女性がやるというような考え方が強かっ
たんですけれども、今は女の人も働くようになりましたから、今は少しまた違うかもし
れませんが、父親だけではなしに母親までいない時期があったんじゃないか。
  今は父親も、先ほどからのお話のように少しといいますか、共同参加といいますか、
共同保育ということで、一緒に夫婦で育児をするような時代になって大変よかったと思
いますけれども、それでもやはり産まれてすぐでも母親の手で育てられないとか、ある
いは学校から帰っても、保育所から帰っても母親がいないというのは果たしていいんだ
ろうかという感じは今でも持っております。
  全体として、やはり日本というのは経済的な豊かさを求める余りに子どもを産み、そ
れから育てることの価値といいますか、大切さといいますか、そういうものを失ってし
まった、忘れてしまったんじゃないか。それを元へ戻すという言い方がいいかどうかは
分かりませんけれども、それを再認識をするということが一番、実は大事なことなんじ
ゃないかというふうに思います。
  何年か前の外国と日本を比較した調査で、子どもを産み育てることを楽しいと思うか
どうかということを国際比較をした調査があったと思います。これは、アメリカでもヨ
ーロッパでも非常に楽しいという答えが多かったんですが、日本が一番楽しいというよ
りか、つらいとか、苦しいというような答えが大変多かったので、私はちょっとそれを
見て驚いたといいますか、ショックを受けましたけれども、やはり子どもを産んだり育
てるということが楽しいというような時代なり社会にどうやったら戻すことが出来るだ
ろうか。戻せるかどうかということはなかなか分かりませんけれども、そういった時代
や社会に戻さなくてはいけない。過去に時代を戻すということとはまた別に、やはりそ
ういったことの大切さというものを再認識をする必要があるんじゃないか。それが一番
根本なんじゃないかと思います。
 NO4に続く


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