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(4)廃棄物問題に関する意識の向上
事業者はもとより、国民においても産業廃棄物の適正な処理の必要性について一層の
理解が求められており、廃棄物問題に関する白書の作成や広報の充実、各種シンポジウ
ムの開催、各種教育等を通じ、産業廃棄物を含め廃棄物の適正処理の必要性に関する国
民の啓発を一層進めるべきである。
第5 おわりに
今後の産業廃棄物対策については、この報告書における提言の方向に沿って、国にお
いて具体的な検討を進め、廃棄物処理の実態にも十分配慮しつつ、「廃棄物の処理及び
清掃に関する法律」の見直しをはじめ総合的な施策を講じていくべきである。また、こ
のような施策が円滑かつ効果的に実施できるよう、職員の資質の向上等産業廃棄物行政
の体制整備とその強化を図っていく必要がある。
なお、処理施設の基準の見直し等については、本報告書で提言した方向に沿って、さ
らに、専門的な検討の場を設けるなどにより、具体的な内容を詰めていく必要がある。
産業廃棄物問題の解決はまさに国民的課題であり、その解決に向けて、国は関係省庁
で連携し、地方公共団体、事業者及び国民の理解と協力の下に総力をあげて取り組み、
一日も早く、総合的な産業廃棄物対策の推進が図られることを期待する。
産業廃棄物専門委員会報告書の概要
-今後の産業廃棄物対策の基本的方向について-
第1 はじめに
○ 大量生産・大量消費社会の下で、産業廃棄物は大量に排出され続けており、私たち
が豊かな生活を営むためには、廃棄物の存在は無視できなくなっている。
○ 大量生産・大量消費社会から循環型の社会経済システムへの転換を図っていく必要
があるが、現に生じている産業廃棄物の適正な処理を確保していくことは、産業界の
みならず、国民的な課題として避けることのできない問題。
○ 産業廃棄物をめぐる様々な問題の解決に向けて、国民的課題として総力をあげて取
り組んでいくことが必要。
第2 現状と問題点
1.大量に排出され続ける産業廃棄物
○ 産業廃棄物の排出量が増大。(昭和60年度約 3.1億t→平成5年度約4億t)
○ 廃棄物の質の面でも、産業の高度化・ハイテク化に伴い、新たな有害廃棄物の問題
が発生するなど、その性状に変化。
2.最終処分場の逼迫
○ 産業廃棄物の排出量の約21%に相当する約8千万tが1年間に最終処分。リサイク
ル率はここ10年間で40%前後で頭打ちの状況。
○ 産業廃棄物の最終処分場残余容量は全国平均で約2.3年分、首都圏で約0.8年分と逼
迫。
○ 2010年頃には最終処分場残余容量がゼロになるという推計もあり、わが国の健全な
社会システムの維持に重大な支障が生じかねない状況。
3.不適正処理等産業廃棄物処理をめぐる問題
(1)最終処分場等処理施設の問題
○ 最終処分場については、安定型処分場に安定型廃棄廃棄物以外のものが混入したり
、許可対象外の「ミニ処分場」で不適正な処理が行われる等の例がみられる。
○ 管理型処分場については、設置者の倒産等により維持管理が継続できなくなった場
合に対する住民の不安が大きい。
○ 中間処理施設においても不適正な保管が行われる等の例がみられる。
(2)排出事業者の問題
○ 排出事業者については、委託の際に廃棄物の内容や処理方法等の必要な情報提供が
行われてないケースや、一部に無許可業者へ委託が行われる等の例がみられ、その適
切な取組みが求められている。
(3)処理業者の問題
○ 処理業者については、一部に不法投棄等の不適正処理を行う悪質な業者の例もあり
、全体的な質の向上が求められている。
○ 適正な処理コストを処理料金に十分に反映させずに受託し、その結果、不適正な処
理が行われている例もある。
(4)行政の問題
○ 国の基準や、都道府県の指導監督、取締り体制等の充実・強化を図るべきとの声が
強い。
4.不法投棄の状況
○ 産業廃棄物の不法投棄は、平成6年の検挙件数が 349件にのぼるなど依然として跡
を絶たず、住民の不信感の大きな要因となっている。
○ 不法投棄横行の背景には、罰金額に比較して、不法投棄に伴う不当利得が大きく、
罰則による抑止効果が十分働いていないことがある。
○ マニフェスト制度についても、法律上対象範囲が特別管理産業廃棄物に限定されて
いる、紙の帳票によるため廃棄物の管理が徹底しない等、不法投棄の防止対策として
必ずしも十分に機能していないとの指摘が強い。
5.住民の不信感の高まりと地域紛争の多発
○ 環境意識の高まりや不法投棄の横行等により、産業廃棄物や産業廃棄物処理施設に
ついては国民の間に根強い不信感が生じており、施設の設置をめぐる地域紛争が多発
している。(この10年間で 200件以上の紛争事例)
6.地方公共団体による要綱規制
○ 多くの都道府県においては、廃棄物処理法による規制に加え、要綱等に基づき、住
民同意の取得の義務づけ等の規制を実施。
○ 要綱等による規制については、広域的な処理が阻害される、住民同意の取得により
施設設置の見込みが立たない等の声がある一方で、法律に基づくものではないため事
業者に対する都道府県の指導にも限界があるとの指摘もある。
7.原状回復の状況
○ 不法投棄の投棄者が不明等であるために原状回復ができないケースが多く、その件
数は不法投棄全体の約35%を占めている。
○ こうした場合、生活環境の保全を図るため、やむを得ず地方公共団体が原状回復を
行わざるを得ない場合も多く、原状回復のシステムを確立し、これを円滑に推進する
ための基金の創設を求める意見が強い。
第3 今後の施策の基本的な考え方
1.循環型社会への転換
○ 廃棄物の排出抑制の徹底やリサイクルの強力な推進により、廃棄物を可能な限り資
源として有効に活用する「循環型社会」への社会経済システムの転換が必要。
2.悪循環を断ち切る総合的な対策の実施
○ 処理施設の確保が困難になるなどの問題の背景には、産業廃棄物に対する国民の不
信感の下で、施設設置をめぐる地域紛争が激化、施設の立地が困難化し、施設の不足
が不法投棄等を惹起し、不信感をさらに高めるという悪循環が存在。
○ 産業廃棄物の処理をめぐる諸問題を解決し、国民の信頼の回復を図るためには、こ
の悪循環を断ち切る総合的な対策が必要。
3.関係者の役割分担に応じた適切な取組みの推進
○ 産業廃棄物をめぐる問題の解決を図るためには、排出事業者、処理業者、国、都道
府県等がそれぞれの役割に応じた適切な取組みを実施していくことが必要。
第4 今後の施策の具体的な方向
1.廃棄物の減量化・リサイクルの推進
(1)廃棄物減量化のための国の基本方針の策定等
○ 廃棄物の減量化やリサイクルの一層の推進を図るため、国で一定の目標や基本方針
を示すこととし、これに事業者も積極的に協力すべき。
○ 多量排出事業者の策定する処理計画については、減量化やリサイクルの視点を明確
に盛り込むとともに、都道府県は計画の実施状況をフォローアップし、指導・助言等
を行うことが必要。
(2)リサイクル推進のための規制緩和
○ 廃棄物のリサイクルの推進を図るため、生活環境保全上の問題がないことを十分確
保できる形で、必要な規制緩和を行うべき。
(3)リサイクル市場の拡大等環境整備
○ リサイクル製品の利用や流通を促すため、技術開発やリサイクル製品に係る基準や
規格の明確化等リサイクル市場拡大のための支援措置を講じていくべき。
2.産業廃棄物処理に関する信頼性と安全性の向上
(1)最終処分場等の安全対策の充実・強化
1処理体系の見直しと基準の強化
○ 最終処分場の安全性を高めるため、管理型処分場については遮水シートの二重化、
浸出水処理施設の高度化等基準の充実・強化を図るとともに、安定型処分場や遮断型
処分場についてもそのあり方について見直しが必要。
○ 「ミニ処分場」は、施設の規模にかかわらずすべて許可制とすることが必要。
○ 廃棄物の処理実態を踏まえ適正処理を確保するため、処理基準の強化等が必要。
2最終処分場の閉鎖や跡地利用に係る規制の見直し
○ 最終処分場の閉鎖や跡地利用について許可制の導入等の監督の強化が必要。
3有害廃棄物対策の強化
○ 特別管理廃棄物の追加指定や廃棄物処理センターの設置促進など有害廃棄物対策の
強化を図るべき。
(2)施設の設置手続の明確化・透明化
○ 事業計画や生活環境への影響評価の結果の公告・縦覧や、関係住民や市町村の意見
聴取等の施設の設置手続を法令で明確に定めるとともに、専門家により審査する機関
を設ける等により生活環境への影響等を客観的に審査する仕組みが必要。
○ 施設の設置手続については、産業廃棄物の広域処理の実態をも踏まえ、統一的な運
用を確保するために必要な基準を法令で明確に定めるべき。
(3)情報公開の推進
○ 処理施設に対し、廃棄物の量、種類や維持管理データ等の公開を義務づけるべき。
(4)最終処分場に係る長期的な維持管理の確保
○ 最終処分場の設置者が倒産した場合等も含め適切な維持管理を行う責任体制を保証
する仕組みが必要。
(5)処理業者の質の向上
○ 処理業者の全体的な質の向上を図るため、資力や信用力等許可要件を強化すべき。
○ 廃棄物処理業の将来ビジョンの作成、処理業者の専門性の表示等により優良な事業
者の育成に努めるとともに、健全なビジネス環境を整備していくべき。
(6)排出事業者による委託処理の適正化
○ 排出事業者は、廃棄物の内容や適正な処理方法を明らかにした上で処理業者に委託
するとともに、処理業者は廃棄物の内容をチェックすることが必要。
○ 排出事業者は、委託契約に際し処理業者の処理体制をきちんと確認するとともに、
適正な処理コストを勘案し、適正な処理料金で委託すべき。
3.不法投棄対策の強化
(1)マニフェスト制度の拡充
○ マニフェスト制度の適用をすべての産業廃棄物に拡大するとともに、マニフェスト
の電子化を図り、廃棄物の管理を徹底することが必要。
(2)罰則の強化等
○ 罰金の大幅な引上げを含めた罰則の強化等が必要。また、取締りの徹底や監視体制
の強化が必要。
(3)排出事業者の責任強化
○ 排出事業者は、委託契約を適正に行うとともに、廃棄物が契約に定められたとおり
に適正に処理されたことを確認すべき。
○ 多量排出事業者以外の事業者も、処理計画を策定する等により適正処理を徹底すべ
き。
(4)その他
○ 都道府県における監視指導体制の充実・強化を図るとともに、都道府県間で処理業
者等に係る情報交換を推進することが必要。
○ 積替保管のあり方についても見直しが必要。
4.原状回復措置
行政による監視、罰則の強化等や事業者への働きかけ、優良な処理業者の育成等によ
る不法投棄の未然防止に万全を期すとともに、原因者の徹底究明により原因者に原状回
復をさせるのが基本。
現在生じている不法投棄の問題については個々の事例ごとに対応し、今後は様々な未
然防止策を講じた上で、なお必要な場合に、その段階であらためて何らかの方策につき
検討すべきとの意見あり。
これに対し、原因者の特定できないままに生活環境保全上の支障が生じる不法投棄の
ケースは今後も残らざるを得ないことから、産業廃棄物に対する国民の不信感を払拭し
、信頼を回復するには原状回復に必要な資金を手当てする制度を社会システムとして構
築するべきとの意見が多数。
以下は当委員会で出された考え方。
(1)仕組み
○ 生活環境の保全を図るため、原因者が不明等であって生活環境保全上問題となるよ
うな場合には、都道府県が直接原状回復をさらに迅速かつ円滑に行うことができるよ
う、必要な資金を手当てする制度を社会システムとして構築することが必要。
(2)費用負担のあり方
○ 不法投棄の未然防止や原因者の徹底的究明を行ってもなお生じる原因者が不明等の
場合の原状回復については、原因者に費用負担を求めることができないため、その費
用を何らかの形で措置する必要がある。
○ この費用負担のあり方をめぐっては、
・産業廃棄物は産業活動に伴い生じるものであることから産業廃棄物の排出を伴う産
業活動を行う者全体で負担すべき
・適正処理を行ったことが確認されたものを除く排出事業者が負担すべき
・行政も負担すべき
・排出事業者、処理業者、行政がそれぞれ負担すべき
との意見があり、
また、費用徴収の方法としては、
・排出事業者から排出量に応じて徴収すべき
・処理業者から徴収すべき
・自社処分場の場合を含め最終処分場から最終処分量に応じて徴収すべき
などの意見が出されており、制度の公平性、即応性、実効性の確保や制度実施のため
のコスト並びにモラルハザードの惹起に留意し、早急に具体的な措置のあり方について
検討を進めていく必要がある。
5.その他
(1)廃棄物処理法の運用の見直し
○ 廃棄物処理法の運用については、廃棄物処理の処理実態を踏まえて、見直しを検討
し、必要な措置を講ずるべき。
(2)廃棄物処理センターの設置促進等
○ 廃棄物処理センターの設置の一層の促進や、「広域臨海環境整備センター法」や「
産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」の活用の推進が必要。
(3)研究開発の推進
○ 廃棄物の処理技術について、有害廃棄物の無害化技術等の研究開発の推進を図ると
ともに、中長期的な開発計画の策定等により計画的かつ効率的な開発を促していくべき
。
(4)廃棄物問題に関する意識の向上
○ 廃棄物問題に関する白書の作成や広報の充実等を通じ、廃棄物の適正処理の必要性
に関する国民の意識啓発を一層進めるべき。
第5 おわりに
○ 今後の産業廃棄物対策については、この報告書における提言の方向に沿って、国に
おいて具体的な検討を進め、廃棄物処理の実態にも十分配慮しつつ、「廃棄物の処理
及び清掃に関する法律」の見直しをはじめ総合的な施策を講じていくべき。
問い合わせ先 厚生省生活衛生局水道環境部計画課
担 当 岩屋(内4007)
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