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2.給付の見直しの手法

(1) 給付水準
1) 厚生年金給付水準の抑制

厚生年金(基礎年金を含む)の水準を抑制する。 

【考え方】

○ 現行の平均的な年金額は全角、夫が現役時代に平均的な賃金を得ていた場合には、夫婦2人(夫のみ厚生年金に40年加入、妻は専業主婦)で、現役の平均月収(標準報酬)の68%(対手取り総報酬の62%)になるように設計している。

○ 本手法の考え方は、高齢者世帯の消費状況等に照らし、厚生年金額の算定式の給付乗率及び基礎年金額を変えることによって、所得代替率を引き下げるものである。

【試算の前提】

試算案
 
所得代替率

対手取り総報酬
 
基礎年金

(月額、円)
 
厚生年金

(月額、円)
 
合計年金額

(月額、円)
 
ケース1
 
55%
 
58,000  90,000 207,000
ケース2
 
50%
 
53,000  82,000 188,000
ケース3
 
45%
 
48,000  74,000 169,000
現行水準
 
62%
 
65,000 100,983 230,983
*基礎年金・厚生年金の水準が同じ割合で引き下がるものとして計算

(参考)夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの有業者のいない世帯の消費月額(平成6年全国消費実態調査)との比較


【経過措置】

 経過措置として、平成11年の制度改正前の旧給付水準に基づく旧年金額と、新給付水準に基づく新年金額を政策改定・物価スライドしたものを比較し、新年金額が上回るまでは、旧年金額を保証する(従前額保証方式)。
 これにより、制度改正前の年金受給者及び制度改正後に裁定される者について、平成11年度における年金額が保証される。

【影響】

 
厚生年金最終保険料率
 
国民年金最終保険料
 
対標準報酬
 
対総報酬
 
ケース1
 
▲5 %
 
▲4 %
 
▲3 1/2 千円
 
ケース2
 
▲8 1/2 %
 
▲6 1/2 %
 
▲6 千円
 
ケース3
 
▲11 1/2 %
 
▲9 %
 
▲8 千円
 

(注)標準報酬上昇率4.0%、消費者物価上昇率2.0%で試算。経済的要素の前提や経過措置の置き方が異なる場合には、影響も異なる。

2) 平均的厚生年金給付水準を妻の平均厚生年金加入期間も考慮して設計


妻の平均的な厚生年金加入年数(5年)を標準として厚生年金の給付水準を設計する。 

【考え方】

○ 現行の厚生年金水準は、妻が生涯専業主婦であるという前提の下、厚生年金加入期間が全くないために妻自身の厚生年金額もないものとして設計されている。その結果、月額65,000円の基礎年金が夫婦それぞれに支給され、夫に支給される100,983円と合わせて、合計で230,983円となる。しかし、現実には妻に厚生年金加入期間があれば、これにさらに妻の厚生年金が加算されている。

○ 本手法の考え方は、女性の過去の厚生年金加入年数を勘案して、妻の厚生年金額と夫の厚生年金額を合わせて現行の100,983円になるように厚生年金額の算定式の給付乗率を変えるものである。妻に5年の加入期間があれば、夫婦合わせた年金額は230,983円になるが、加入期間がない場合は夫婦合わせた年金額が下がることになる。

【試算の前提】


(参考1)妻の厚生年金加入期間がない場合

(65,000+340,000×0.99×7.0/1000×40)+65,000=223,967円

(参考2)現行の厚生年金給付設計

(65,000+340,000×0.99×7.5/1000×40)+65,000=230,983円

(参考3)女性の標準報酬月額の平均(平成5年度末) 203,000円

(参考4)女性の平均厚生年金加入年数(加入期間がない者を含む平均)



・・年度新規裁定者
 
昭和50
 
昭和55
 
昭和60
 
平成元
 
平成7
 
平均厚生年金加入年数
 
3年
 
5年
 
6年
 
5年
 
7年
 

* パート労働者に厚生年金を適用した場合は、女性の厚生年金加入年数はさらに伸びる。

【経過措置】

 経過措置として、平成11年の制度改正前の旧給付水準に基づく旧年金額と、新給付水準に基づく新年金額を政策改定・物価スライドしたものを比較し、新年金額が上回るまでは、旧年金額を保証する(従前額保証方式)。
 これにより、制度改正前の年金受給者及び制度改正後に裁定される者について、平成11年度における年金額が保証される。


【影響】 
厚生年金最終保険料率
(対標準報酬)▲    2 %
(対総報酬)▲  1 1/2 %

3) 現役時代に賃金が高かった者に重点を置いた厚生年金額の抑制


厚生年金額を抑制する場合は、現役時代に賃金が高かった者に重点を置いて行う。 

【考え方】

○ 現在は、年金額の計算において、その基礎となる現役時代の平均賃金の多寡にかかわらず一律の給付乗率をかけている。

○ 本手法は、現役時代の平均賃金が高かった者について、現役世代の平均的な賃金を超える部分の給付乗率を引き下げることにより、支出総額を抑制するものである。

【試算の前提】

〔65,000+{(340,000×0.99×7.5/1000)+(受給者の現役時代の平均賃金−340,000)×0.99×5/1000}×40〕+65,000

 

※ 340,000円は、現役世代の平均的な賃金

(参考)【現在の年金額の計算式】(65,000+受給者の現役時代の平均賃金×0.99×7.5/1000×40)+ 65,000

<現役時代の平均賃金と年金額の関係− 40年加入の場合>

※ 現役時代の平均賃金が34万円以下の場合には、年金額は同額。

【経過措置】

経過措置として、平成11年の制度改正前の旧給付水準に基づく旧年金額と、新給付水準に基づく新年金額を政策改定・物価スライドしたものを比較し、新年金額が上回るまでは、旧年金額を保証する(従前額保証方式)。
 これにより、制度改正前の年金受給者及び制度改正後に裁定される者について、平成11年度における年金額が保証される。


【影響】 
厚生年金最終保険料率
(対標準報酬) ▲ 1%
(対総報酬) ▲  1/2 %




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