厚生省生活衛生局
I 総則
(1)
この実施要領は、「厚生省健康危機管理基本指針」に基づき、飲料水を原因とする国民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して行われる健康被害の発生予防、拡大防止等の危機管理の適正を図ることを目的として、厚生省における責任体制及び権限行使の発動要件について定めるものである。
(2)
この要領において飲料水とは次の3種のものをいう。
(1)
水道法に基づく種々の規制が適用される水道事業者、水道用水供給事業者及び専用水道設置者(以下、本要領において「水道事業者等」という。)並びに簡易専用水道設置者により供給される水道水(以下、本要領において「水道水」という。)
(2)
規模が小さいことなどから水道法による国の規制が適用されない(1)以外の水道により供給される水(以下、本要領において「小規模水道水」という。)
(3)
個人が井戸等から汲み上げて飲用する水(以下、本要領において「井戸水等」という。)
なお、ボトルウォーターについては、食品衛生法により措置が講じられるものであるため、本要領の対象とはしていない。
(3)
水道法の水道水質基準は、小規模水道水を含めて、水道から供給される水全てに適用されるものである。また、小規模水道水や井戸水等については、厚生省が衛生対策要領を示して地方公共団体を指導し、地方公共団体により地域の実情に応じた規制等が行われている。
そのため、本要領では、水道水のみならず小規模水道水や井戸水等を含めて、健康危険情報を入手した際に厚生省において対応すべき措置及びその実施体制について定めるものである。
(4)
本要領においては、我が国の人口の約96%の飲料水となっている水道水について、水道水源から取水した水道原水の水質の異常又は水道施設において生じた事故等による汚染が原因となって、国民の生命、健康の安全を脅かす事態が生ずるおそれがある又は生じているという健康危険情報を入手した際に、厚生省において対応すべき措置及びその実施体制について、特に詳細かつ具体的に定めるものである。
(参考)
本要領において定めるところとは別に、厚生省においては、飲料水を経由して摂取する物質及び微生物による健康危険に関する新しい情報の収集及び調査研究並びに水道原水水質保全対策の強化及び高度な浄水施設の整備などの、飲料水に係る健康リスクをできるだけ下げるための施策を推進することとする。
II 水道環境部水道整備課等における対応
1.情報の収集
(1)
水道環境部は、飲料水に係る健康危険情報を入手したときは、水道整備課を情報収集の中心として、さらに詳細な健康危険情報を収集するものとする。
(1)水道水の水道原水に係る水質の異常について
(2)水道施設等において生じた事故について
水道整備課は、都道府県又は水道事業者等から水道施設又は簡易専用水道において事故が発生した旨の情報を入手した場合には、(1)のア、イ、エ及びオに準じて対応するものとする。
(3)水道水を原因とする食中毒等の発生について
水道整備課は、生活衛生局食品保健課等から水道水が原因となり又は水道水が原因となったことが疑われる食中毒又は感染症が発生した旨の情報を入手した場合には、(1)に準じて対応するものとする。
(4)小規模水道水又は井戸水等の水質異常等の発生について
(2)
水道整備課は、(1)で収集した情報のうち、健康への影響が懸念されるもの、又は健康への影響は小さいが発生規模が大きいもの若しくは広域にわたると懸念されるものについては、速やかに生活衛生局長まで、生命への危険が強く懸念される場合には、速やかに厚生大臣まで、及び健康危機管理調整会議主査に伝達するものとする。
また、生命への危険が強く懸念されるもので発生規模が大きいものについては、速やかに内閣総理大臣まで伝達するものとする。
(3)
水道整備課は、(1)で入手した情報について、当該情報に伴う対応が想定される関係課に対し、速やかに当該情報を伝達するものとする。関係する省内他課は以下のとおり。
(4)
水道整備課は、(1)で入手した情報について、健康危険の程度を判断するために必要があれば、国立試験研究機関、研究者、国外の関係機関(世界保健機関、米国環境保護庁等)等から情報を収集するものとする。
(5)
水道整備課は、情報の的確な把握及び対策の検討に資するため、国立公衆衛生院、国立医薬品食品衛生研究所及び国立感染症研究所と連携して、また、世界保健機関、米国環境保護庁等を通じて、飲料水の健康危険に関する広範な情報収集に努めるものとする。
(6)
飲料水による重大な健康被害が発生した場合には、水道整備課は、必要に応じ、関係する地方公共団体との連携の下に、水道環境部長の了解を得て現地に職員を派遣し、情報の収集に努めるものとする。
(7)
水道整備課は、水道原水又は飲料水の水質の異常が判明したときは、関係省庁と必要な情報交換を密接に行うものとする。
2.対策の決定
(1)
水道整備課は、健康への影響が懸念される、又は健康への影響は小さいが発生規模が大きい若しくは広域にわたると懸念される、飲料水を原因とする健康危険に関する対策の決定は、水道環境部長の決裁を経て行うものとする(対策を講じない旨の決定を含む。)。また、生命への危険が強く懸念される場合の対策決定等特に重要な決定を行った場合には、速やかに厚生大臣まで、及び厚生省健康危機管理調整会議主査に伝達するものとする。
(2)水道法に基づく権限行使等は次により行うものとする。
(1)
水道法第39条に基づく立入検査について
(2)
水道法第40条に基づく水道用水の緊急応援について
(3)
水道法第36条に基づく改善命令等について
(4)小規模水道水又は井戸水等の健康危険に対する措置について
(3)
水道整備課は、健康危険に関する対策の決定を行った場合には、当該危険が無くなるまでの間、1の(1)(1)オに準じて情報収集を行うとともに、対策決定の諸前提条件の変化に応じて対策を見直し、上記(1)及び(2)に準じてその決定を行うものとする。
(4)
水道整備課は、適時適切な対策の見直しを継続的に行うため、対策決定の諸前提、判断理由についての資料を適切に管理するものとする。
(5)
水道整備課は、上記(1)、(2)又は(3)により決定された対策について、速やかに、その内容を公開するとともに、特に不確実な情報の下で当該決定を行った場合には、その前提となった知見情報の内容、考慮要因、制約条件等を併せて公表するものとする。
(6)
水道整備課は、上記(2)による行政機関等に対する指導については、緊急やむを得ない場合を除き、文書によるものとする。緊急やむを得ず文書によらない場合にあっては、おって文書により指導の内容を明らかにするものとする。
3.研究班及び審議会での検討
(1)
水道整備課は、飲料水に由来する重大な健康への被害の発生が疑われる問題については、生活環境審議会を機動的に開催し、必要な対策について専門的見地から意見を聴くこととする。
なお、必要に応じ、厚生科学審議会において大局的見地からの審議、提言を受けるものとする。
(2)
水道整備課は、飲料水に起因する健康被害について専門的、学問的観点からの知見の集積を行うため、学識経験者から構成される研究班を機動的かつ弾力的に設置するものとする。
(3)
水道整備課は、上記(2)により研究班を設置する場合には、設置要綱等において、検討事項の範囲、責務等を明確にするとともに、対策決定に関わるような研究班については、研究班における検討状況の適時の生活環境審議会への報告等、生活環境審議会との連携強化を図るものとする。
4.健康危険情報の提供
(1)
飲料水に関する健康危険情報の提供に係る対応の窓口は、水道整備課水道水質管理官及びその指定する職員とする。
(2)
飲料水に関する健康危険に係る国内外の情報については、適宜、報道機関、政府広報、高度情報通信網等を通じて広く国民に対して提供することとする。この場合、(財)水道技術研究センターが整備している水道データベース、(社)日本水道協会の連絡網等を活用し、情報提供が迅速に行われるよう措置するものとする。
(3)
都道府県、保健所、地方衛生研究所等に対し、「WISHネット」を活用する等により、重要かつ緊急な健康危険に関する情報、講じた対策及び治療方法等の情報並びに関連情報を共有すべき地方公共団体内の部局又は関係機関に関する情報について、迅速かつ直接提供するとともに、必要に応じ、都道府県担当係長会議等を開催して周知するものとする。
5.その他
水道環境部は、必要に応じて、本実施要領を見直すものとする。