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感染症健康危機管理実施要領

厚生省保健医療局

1 目的

 本実施要領は、「厚生省健康危機管理基本指針」に基づく個別指針として、感染症対策に係る危機管理の具体的な指針を定めるものである。なお、本実施要領は、厚生省内での対応について定めたものであり、地方公共団体等での対応要領については、既存の指針、要綱等によるものとする。


2 感染症対策における危機管理の基本的心得

(1) 感染症は、ひとたび発生して拡大すれば個人の健康のみならず社会全体に深刻な影響を及ぼす恐れがあることに留意し、日頃からの発生状況の把握と的確な流行状況の予測に努めるものとする。

(2) ひとたび感染症が発生した場合は、適切な初期対応が拡大防止の第一要件であることから、起因病原体の感染性、感染経路、重症度等を考慮した機敏な対応に努めるものとする。


3 感染症による健康危機発生時の対策決定

(1) 平時体制

 国立感染症研究所感染症情報センターにおいては、結核・感染症サーベイランス事業を実施するとともに、WHO、CDC及び内外の大学研究機関等からの情報を収集し、分析を行い、必要な情報を保健医療局結核感染症課へ提供する。
 結核感染症課は、緊急時の第一報や自治体の行政対応に係る緊急時の情報収集を行い、それらの情報を評価し、政策判断をすることとする。

 (1) 情報の収集

ア 地方自治体からの情報

・ 結核感染症課は、伝染病発生報告等による情報を地方自治体から受理した場合、直ちに、別紙1のどのレベルに該当するか判断するために必要な情報を収集する。

イ 結核・感染症サーベイランスによる情報

・ 感染症情報センターでは、結核・感染症サーベイランス事業実施要綱(昭和61年6月9日健医発第704号厚生省保健医療局長通知)等に従い、原則として金曜日までに、前の週の分の患者情報を集計する。

・ 感染症情報センターは、コメントが付された上でとりまとめられた結果を、直ちに結核感染症課へ、電子メールにより伝達する。

・ 感染症情報センターは、集計を行っている時点で、別紙1のレベル3以上に該当する状態と判断した場合、速やかに、結核感染症課に対して電話で通報を行う。

ウ 検疫所の情報

・ 検疫所(支所、出張所を含む。)において、当該検疫所が所管する検疫港又は検疫飛行場に来港する船舶又は飛行機(以下「船舶等」という。)が、国内に常在しない感染症を持ち込むおそれが高いと判断した場合、当該検疫所は、当該船舶等の出港地、発生が疑われる感染症等の情報を、直ちに結核感染症課及び生活衛生局食品保健課検疫所業務管理室へ通報する。

・ 検疫所は、当該検疫所が所管する検疫港又は検疫飛行場において、伝染病の発生を発見した場合、直ちに、伝染病等発見報告書を結核感染症課及び検疫所業務管理室へ伝達する。

エ 世界保健機関(WHO)、米国疾病対策予防センター(CDC)

・ 結核感染症課は、毎日、WHOのホームページの感染症集団発生情報(http://www.who.ch/programmes/emc/news.htm)を確認する。

・ 結核感染症課は、毎週月曜日に、WHO疫学週報(WER)を、WHOのWERのホームページ(http://www.who.ch/wer/wer_home.htm)からダウンロードし、内容を確認する。

・ 結核感染症課は、MMWRのうち感染症の発生に関する情報を毎週確認する。

・ 結核感染症課は、WHO、CDC等と頻繁に電子メール等を通じて情報交換を行うとともに、新種の感染症が海外で発生し、拡大した場合は、WHO、現地等への専門家の派遣等を通じて、情報収集を行う。
 また、収集、交換した情報の写しが大臣官房国際課に送付されるようにする。

オ 国際課経由の在外公館からの情報

・ 結核感染症課は、大臣官房国際課経由により在外公館発出の感染症発生に関する情報を収集する。

カ その他の情報について

・ 結核感染症課が、感染症に関する情報で、上記ア〜カのルートを通じて入手しなかったものを把握した場合、直ちに情報の真偽等の確認を行う。


 (2) 対応のレベル決定及び情報提供

ア 既知の感染症である場合

(ア) 感染経路が特定されている場合

・ 結核感染症課は、新着情報の到着及び既存の情報の変更があった場合、速やかに、当該発生例のレベルを判断し、別紙1に沿った情報提供、治療情報の収集等を行う。この場合において、レベル3以上と判断された場合には、別紙1の表に沿った対応に加え、別紙2の一次対応者に対して当該情報及びレベル3以上の判断が下された旨を伝達するとともに、下記の「(2) 緊急時対応」に沿った対応を行う。(以下同じ。)

・ 結核感染症課は、病原体の種類の如何にかかわらず、発生例の感染経路から判断して、別紙3に掲げる関係課に対して当該発生情報を伝達する。

(イ) 感染経路が特定されていない場合

・ 結核感染症課は、新着情報の到着及び既存の情報の変更があった場合、すでに受理している情報から、速やかに、当該発生例のレベルを判断し、別紙1に沿った情報提供、治療情報の収集等を行う。この場合において、レベル3以上と判断された場合には、別紙1の表に沿った対応に加え、別紙2の一次対応者に対して当該情報及びレベル3以上の判断が下された旨を伝達するとともに、下記の「(2) 緊急時対応」に沿った対応を行う。(以下同じ。)

・ 結核感染症課は、病原体の種類の如何にかかわらず、発生している疾病から推定される感染経路に応じ、別紙3に掲げる関係課に対して、当該発生情報を伝達する。

イ 感染症と疑われる未知の疾病である場合

・ 感染症と疑われる未知の疾病が発生した旨の報告を受けた場合、別紙4による情報収集を行う。


 (3) 国際機関への通報

・ 検疫所業務管理室は、発生を把握した疾病が、国際保健規則に基づき締結国に対して通報の義務が課せられているものであった場合、大臣官房国際課に連絡する。大臣官房国際課は、当該情報をWHOに対して通報する。

・ 結核感染症課は、国際課と協議した上で、WHOに対する通報義務のない疾病の発生の報告を行うかどうか決定する。


 (4) 専門家の把握

・ 結核感染症課は、疾病ごとの専門知識に係る研究及び疫学調査を行うことができる国立機関の担当官職名の一覧表を作成する。

(2) 緊急時対応

 別紙1のレベル3以上の状態と判断された場合、以下に定めるところにより必要な対応を行う。

 (1) 初期対応方針の決定

・ 結核感染症課は、直ちに、対応方針の検討を行う。その際、最低限検討すべき事項は、以下のとおり

ア 厚生省健康危機管理調整会議の開催

  (厚生省対策本部の設置)

イ 職員の現地派遣

ウ 関係部局への協力要請

エ 関係省庁への協力要請

オ 公衆衛生審議会伝染病予防部会等の開催

カ (法定・指定伝染病以外の疾病の場合)伝染病予防法の適用

キ (検疫伝染病以外の場合)検疫法の適用

ク 海外の機関への協力要請

・ 結核感染症課は、対応方針について、保健医療局長の判断を仰ぐとともに、対策の実施に当たって他局との調整を要する場合等には、厚生省健康危機管理調整会議の主査に対し、厚生省健康危機管理調整会議の開催を具申する。


 (2) 厚生省対策本部の設置

 感染症による重大な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、厚生省健康危機管理基本指針第2章第3節により、対策本部を設置するものとする。

 (3) 現地派遣

・ 上記(1)の結果、職員の現地派遣を必要と判断した場合、結核感染症課は、関係課とともに、直ちに派遣チームの編成を行う。

 (4) 関係省庁への協力要請

・ 結核感染症課は、対策の実施において、関係省庁の協力が必要不可欠又は有効と判断される場合、当該省庁に対して協力を要請する。

 (5) 伝染病予防法及び検疫法の適用

・ 伝染病予防法の法定伝染病又は指定伝染病となっていない感染症の発生例の場合、結核感染症課は、伝染病予防法の適用を検討する。また、日本国内に常在しない感染症の発生例の場合、同時に検疫法の適用も検討する。なお、これらの手続きに当たっては、原則として、公衆衛生審議会伝染病予防部会等を開催し、その意見を踏まえる。

・ 伝染病予防法の適用の基準及び手続きは別紙5のとおり。


 (6) 海外への協力要請

・ 国立感染症研究所は、発生例の病原体と疑われるものが、日本国内で同定できない場合、直ちに、当該病原体を同定する能力をもつ海外の感染症対策の機関に対して連絡をとり、関係省庁へ協力の要請等を行った上で、最も早く当該研究機関に検体が送達される輸送方法を用いて検体を送達する。なお、国立感染症研究所は、検体を送達した場合、その旨を結核感染症課に連絡する。結核感染症課は、大臣官房国際課及び関係各課に対して、検体を送達した旨を連絡する。

・ 結核感染症課は、日本国内での発生例がない等の理由により、厚生省のみでは対策を早期に立案できないと判断した場合、保健医療局長の判断を仰ぎ、国際課と協議した上で、CDC又はWHOに対して、人員派遣を要請する。


 (7) その他

 発生例が、感染症によるものであることが否定された場合、結核感染症課から所管課に業務を引き継ぐ。


(3) 対策の判断過程の明示及び政策効果の検証

 別紙1のレベル3以上の場合の対応が必要と判断された場合、以下のことを実施する。

 (1) 対策決定後の内容公開

・ 結核感染症課は、対策を決定した段階で、別紙1の情報配布先に対し以下の情報を提供するとともに、この情報を国民に対して公開する。

ア 対策の内容

イ 対策の前提となったデータ

ウ 国民への周知事項


 (2) 危険がなくなるまでの間の監視体制

・ 結核感染症課は、対策実施後、定期的に以下のデータを把握する。なお、※のデータは、把握時点での瞬間値及び累積値を把握し、対策の有効性を検証する。

ア 患者数(※)

イ 入院者数(※)

ウ 重症者数及び重症者の状況(※)

エ 治癒者数及び死亡者数(累積値及び前回把握時との差引値)

オ 無症状保菌者数(※)

カ 周辺医療機関の対応状況

キ 現地の自治体における対策実施状況

・ 結核感染症課は、現地紙の報道の動向を確実に把握する。


4 実施要領の見直し

 この実施要領については、感染症対策全般の見直しの内容等も踏まえ、必要な改訂を行うものとする。


(別紙1)
レベル 海外感染症発生例(国内に常在しないもの)
国内の伝染病発生例
結核・感染症サーベイランス
情報配布先
対応
0
・国内への影響はないと想定される場合(常在国での黄熱発生など)  ・特異的な傾向がない場合 結核感染症課 ・情報の分析
1
・国内への影響はないと想定されるが、WHOが対策を講じている等経過観察が必要な場合 ・散発例で、周辺地域への影響がない場合 ・特異的な傾向はあるが、状況観察で足りる場合 (レベル0に加えて)

保健医療局長

保健医療局企画課長

健康危機管理調整官

検疫業務管理室長

(レベル0に加えて)

・詳細な発生情報等の収集

・WHO等からの情報収集

2
・国内への軽度な影響が想定され、個別の対策を必要とする場合 ・集団発生例のうち、感染経路がほぼ特定されて、周辺地域への影響が想定されない場合 ・特異的な傾向があり、個別の対策を必要とする場合 (レベル1に加えて)

厚生科学課長(危機管理調整会議主査)

WISHNET

検疫所

医師会

(レベル1に加えて)

・治療情報等の収集・提供

・海外の感染症の発生例の場合は、検疫所において、海外渡航者向けに情報提供する。

3
・国内への重度の影響が想定されるか又は国内での発生が急増しており、緊急に対策を必要とする場合 ・集団発生例のうち、感染経路が特定できないこと等から、周辺地域への影響が想定される場合

・最近国内で発生例のない感染症の散発例

・全国的な発生の増加が予測され、緊急に対策を必要とする場合 (レベル2に加えて)

厚生大臣

関係省庁

報道機関(記者レク)

厚生省ホームページ

緊急FAX(危機管理調整会議の結果に応じ)

(レベル2に加えて)

・厚生省健康危機管理調整会議の開催

・国内の場合は、現地派遣

・伝染病予防法の適用の検討

4

(非常事態)
・最近前例のない規模又は種類の感染症が現に侵入したか侵入するおそれが高い場合 ・重大な疾病による大規模集団発生例

・重大な疾病による最近国内で発生例のない感染症の集団発生例

・全国的な発生の増加がみられ、緊急に対策を必要とする場合 (レベル3に加えて)

内閣総理大臣

WHO

(レベル3に加えて)

・関係省庁連絡会議設置の検討

・CDC又はWHOへの協力依頼の検討

注)なお、「集団発生」については、当面、昭和45年衛防第18号「伝染病発生特殊事例報告」の4の「同一感染経路によることが明らかな場合には、町村においては、一週間以内に2例以上の発生を見た場合、…」の定義による。



(別紙2) 厚生省内感染症対策一次対応者

所属
1次対応者
保健医療局長、書記室 局長、書記、管理係長、経理係長
保健医療局企画課 課長、法令審査委員、科学技術調整官、総務係長、企画法令係長
結核感染症課 課長、感染症情報管理官、総括補佐、法令補佐、技官補佐、国際感染症対策専門官、総務係長、企画法令係長、管理係長
検疫所業務管理室 室長、総括補佐、技官補佐
厚生科学課 主任科学技術調整官、健康危機管理調整官
国際課 技官補佐


(別紙3) 感染経路別関係課

感染経路等
担当課
担当者
海外 大臣官房国際課 技官補佐
生活衛生局検疫所業務管理室 技官補佐
食品 生活衛生局食品保健課 技官補佐
ペット・家畜 生活衛生局乳肉衛生課 技官補佐
空調施設 生活衛生局企画課 技官補佐
水道 水道環境部水道整備課 技官補佐
そ族、昆虫 水道環境部環境整備課 技官補佐
医薬品(血液及び血液製剤を除く。) 医薬安全局安全対策課 技官補佐
血液及び血液製剤 医薬安全局血液対策課、医薬安全局

安全対策課

血液対策課:技官補佐

安全対策課:技官補佐

母子感染 児童家庭局母子保健課 技官補佐
病院内感染 健康政策局指導課 技官補佐
(国立病院の場合、健康政策局指導課に加え、国立病院部運営企画課) 技官補佐
老人関連施設 老人保健福祉局企画課、社会・援護局施設人材課 企画課:法令補佐

施設人材課:課長補佐

障害者関連施設 障害保健福祉部精神保健福祉課、社会・援護局施設人材課 精神保健福祉課:技官補佐

施設人材課:課長補佐

児童福祉施設 児童家庭局企画課施設調整室、社会・援護局施設人材課 施設調整室:室長補佐

施設人材課:課長補佐

プリオン及び感染症であるか不明な疾病 保健医療局エイズ疾病対策課 技官補佐


(別紙4) 感染症が疑われる未知の疾病が出現したときの情報収集・提供要領

(この要領は、感染症対策の見直しの検討の中で、必要な改訂を加える。)

1 患者又は死者への対応

・ 感染症が疑われる未知の疾病が出現した場合、当該患者の所在を確認し、担当医療機関と連絡をとり、患者の容態及び症状を確認する。

・ すでに患者が死亡している場合、死体の所在地及び状況を確認する。


2 情報収集

(1) 情報収集を行うべき者

・ 保健医療局結核感染症課は、国立感染症研究所と共同で、感染症が疑われる原因不明の疾病(以下「不明疾病」という。)に関する情報収集に当たる。

(2) 収集すべき情報

 上記の担当課は、以下の情報を収集する。

(1) 同様の症状の疾病の発生状況(地理的、時系列的)

(2) 疫学的特徴

(3) 感染源、感染経路と想定されるもの

(4) 起因病原体の性状

(5) 感染拡大の防止方法

(6) 治療方法


3 情報提供

・ 保健医療局結核感染症課は、疾病の発生状況、特徴、対応について、国民及び医療機関に対し、迅速に情報提供を行う。


(別紙5) 伝染病予防法の適用基準

1 告示指定基準

・ 厚生大臣は、伝染病予防法第1条第2項に基づき、以下の基準の全てに該当する疾病を、同法に定める予防方法を施行すべき伝染病として指定する。

(1) 重症かつ感染力が強い感染症であること

(2) 伝染病予防法に定める措置により感染拡大防止が期待できること。

(3) 現に国内での感染拡大が生じているまたはその恐れが高いこと。

・ 感染症が疑われる原因不明の疾病に対して伝染病予防法の適用が必要と判断される場合は、当該疾病に対して適当な名前付した上で、指定する。


2 省令による限定適用

・ 保健医療局結核感染症課は、即時に伝染病予防法を適用する必要があると考えられる場合は、当面省令制定の手続を行わず、告示の手続を最優先事項として実施する。

・ 保健医療局結核感染症課は、人権尊重の観点も考慮した上で、伝染病予防法に定める予防措置のうち、必要最小限のものを適用するよう、同法第1条第3項の省令の制定を検討する。

・ 限定適用を行う場合は、以下の条件に合致する予防方法に限って適用することとする。

(1) 危機管理のために必要不可欠な措置であること。

(2) 当該措置よりも人権を制限しない代替手段が存在しないこと。


3 指定までの過程

 伝染病予防法を適用する場合は、以下の過程に従う。

(1) 保健医療局結核感染症課は、適用の可否及び適用の範囲について、原案を作成。

(2) 保健医療局長は、当該原案を検討し、公衆衛生審議会の開催を決定する。保健医療局長が適用する旨の判断をした場合、保健医療局結核感染症課は、大臣官房総務課に対して、当該方針を連絡する。

(3) 伝染病予防法の適用の必要があると判断される場合、厚生省健康危機管理調整会議を開催し、当該方針について報告する。

(4) 公衆衛生審議会伝染病予防部会等を開催し、伝染病予防法の適用について意見を聴取する。

(5) 厚生大臣は、公衆衛生審議会伝染病予防部会等の答申等を踏まえ、適用を決定する。

(6) 保健医療局結核感染症課は、厚生大臣の決定が行われたら、速やかに告示等の原稿を大蔵省印刷局に入稿する。


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