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第5節 情報通信技術革新に対応した人材育成

 情報化が進展する中で労働者には情報リテラシーが求められており、政府も情報リテラシー確保対策を推進している。情報通信技術を業務に活用する実践的能力や本来業務についての深い知識や経験も不可欠であり、キャリア形成支援の重要性が高まっている。
 情報通信技術関連人材は不足している。技術者の職業能力は年齢が上昇しても維持又は向上すると考えられることから、中高年になっても活躍できる仕組みが必要である。
 情報通信技術は、WBTなど新しい効率的な教育訓練手法も生み出している。

 (情報リテラシーの確保)

○ 企業における情報化が進展する中で、在職者、失業者ともに幅広い情報収集・活用能力(以下「情報リテラシー」という。)が求められるようになってきている(第27図)。企業では、情報化対応のための教育訓練の重要性を十分感じているが、時間や費用の問題が大きな障害となっている。

○ 情報リテラシーの必要性が高まる中で、政府では、「e‐Japan重点計画」(2001年3月)などにより、情報通信技術革新に対応した人材育成対策を進めている。

 (実践的能力や本来業務に係る知識、技能の重要性)

○ 情報リテラシーの確保が重要になる一方、それにとどまらず、情報通信技術を業務に活用する発想力、応用力、課題設定・解決力などの実践的能力が求められている。また、情報通信技術を本来業務(「コンテンツ」)にどういかすかということも重要となる。

 (不足する情報関連人材)

○ 情報通信技術関連分野における労働需要は拡大しているが、情報処理技術者の求人の充足率は低く、背景に需給のミスマッチが生じていることが懸念される(第28図)。1998年〜2000年において採用予定人数全部を採用できた企業は45%で、半数以上の企業では予定数を採用できなかった。

○ 情報関連企業では中途採用が進んでおり、今後も増加するものと考えられる。一方、技術者側も転職経験のある者が多く57%は転職経験があるとしている。8割以上の者が転職したことに満足しており、転職により収入は平均1割増加している。「売り手市場」となっている技術者は、自分のキャリア形成に資するように転職をしているものと考えられる。

 (情報通信技術関連人材に求められる能力)

○ 企業では一人前の技術者となるまで4〜5年、プロジェクトリーダーについては6〜10年かかると考えている。年齢と職業能力の関係について、「ある歳までは上昇し、あとは一定」、「年齢とともに能力は上昇する」と考える企業が多い。また、能力が上昇する年齢として「35〜39歳」が最も多く、それ以上の年齢をあげる企業も含めると、66%に及んでいる(第29図)。中高年になっても技術者として活躍できるように、能力向上を念頭に置いた計画的なキャリア形成の支援の仕組みを構築していくことが必要である。

 (情報通信技術関連人材の育成対策)

○ 企業における体系的な教育訓練が重要であるが、企業における教育訓練はOJTが中心であり、充分な状況とはいい難い(第30表)。しかし、先進的な企業ではOJTとOff−JTをうまく組み合わせて、計画的な教育訓練に取り組んでいる。

○ 情報通信技術者や研究者の育成の点で、学校教育の役割が重要であり、現在、国立大学等における情報関連学科等の整備等が行われている。また政府は、情報通信技術に係る労働者の能力開発や企業における教育訓練を支援するため、公共職業能力開発施設等における情報通信技術に係る訓練の実施等の取組を進めている。

○ 現在、情報通信技術関連分野をはじめとする外国人技術者は、1995年から4年間で約1.6倍(約16,000人)になっているが、e‐Japan重点計画においては「2005年までに3万人程度の優秀な外国人人材を受け入れ、米国水準を上回る高度なIT技術者・研究者を確保する」ことを目標として掲げている。

 (能力開発の場における情報通信技術の活用)

○ 情報通信技術は、能力開発を効果的に行うための手段としても重要であり、WBT(web based training)の発展が期待されている。多くの企業が教育訓練にあてる時間や教育訓練施設・設備がないことなどを問題点としてあげる中、WBTはこれらの問題を解消する効果的な教育訓練手法になるものと考えられる。


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