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第4節 情報通信技術革新による仕事の変化

 情報通信技術革新の進展に伴い定型的業務が減少し、創造的業務の比重が増大している。企業が求める情報通信技術活用能力はそれほど高度なものではなく、中高年齢者であっても、ある程度の時間をかければ必要な技術を身につけることができる。
 情報通信技術革新は組織のフラット化を促進する一要因ではあるが、中間管理職の中抜きということは起こっておらず、むしろその役割はより高度なものになっている。
 個別企業レベルでは、情報通信技術革新は間接部門を中心に人員減少をもたらすが、調整方法は退職者不補充等が多く、企業は可能な限り雇用責任を果たそうとしている。

 (定型的業務の減少)

○ 情報通信技術の導入による仕事の内容の変化をみると、ウェイトが高まっているのは「創意工夫の余地の大きな仕事」「専門性の高い仕事」「個人の仕事の裁量性」などであり、一方「定型的な仕事」のウェイトは低下している(第21図)。今後については、さらにその傾向が顕著になり、また、情報化が進展している企業ほど今後の定型的な仕事のウェイト低下を指摘する割合が高い。

○ 定型的業務の比重低下に伴い、情報を収集・整理分析する能力に加え、自分自身で新たな企画を生み出す能力や既存業務を改善する能力などの重要性が顕在化している。

○ 6割近くの企業が、情報化によって今後賃金の成果主義的な要素が高まるとしており、この傾向は情報化の進展度の高い企業ほど著しい。

 (情報通信技術に関する技能による処遇の格差について)

○ 情報システム関係以外の従業員については、現時点では、情報通信技術に関する技能によって賃金や昇進に大きな格差が生じているわけではない。しかし、情報化の進展度の高い企業ほど賃金や昇進に影響しているとする割合が高く、今後、情報化が一層進展するに従って、影響が拡大していく可能性はある(第22図)。

 (中高年齢者は情報通信技術を使いこなせるか)

○ 多くの企業で、従業員全員がパソコンを使える必要があるとしているが、中高年ホワイトカラーを中心にパソコンの基礎的な操作能力が不足していると考えている。

○ しかし、実際に企業が求めている能力は、ワープロや電子メールの使用といったかなり基礎的な能力である。中高年社員であっても、時間をかければ必要な技術を身につけることができると考える企業が多く、そうした認識は実際に情報化を進めてきた企業ほど強い(第23図)。したがって、中高年齢者を中心に、情報機器の基礎的な利用技術を、ある程度の時間をかけて習得させていくことにより、いわゆるデジタル・ディバイドの発生を抑制することができると考えられる。

 (組織のフラット化の進行)

○ 現在、企業組織のフラット化が進みつつあり、情報化がより進んだ企業ほど、フラット化の実施率が高い。これは、組織改革を実施する上で情報通信技術が有効な手段を提供するからであると考えられる。

 (情報通信技術革新で中間管理職は不要になるか)

○ 情報通信技術革新により中間管理職が中抜きされると指摘されることがあるが、マクロ的なレベルでは中間管理職の減少は確認されていない。また、企業レベルでみても、情報化と中間管理職の減少に関連はみられない。

○ 中間管理職の役割として特に重要性が高まるのは、「情報の重要性の判断」や「新規事業や業務改善の企画」である(第24図)。また、中間管理職に求められる能力や知識についても、「必要な情報を検索、収集」し「整理、分析」した上で、それを活用して「自分自身で新たな企画を生み出す」能力が特に重要となる。中間管理職は自らの創造的な能力を最大限に発揮することが求められるようになってきており、その役割はより高度なものになってきている。

 (人員減少は間接部門が中心)

○ 個別企業レベルでみると、6割の企業が情報化の進展には、雇用の削減効果はないとしているものの、削減効果があったとする企業も少なくはなく、今後削減効果が出てくると考えている企業もある(第25図)。これは、個別企業では必ずしも経済全体を通じた雇用創出効果を実感できにくいためと考えられる。

○ 企業内で人員が減少している部門は、人事・労務、経理・財務・会計、総務・広報・秘書などの間接部門が中心であり、これらの部門では、従業員の仕事の内容について「定型的な仕事」が減っているという特徴がある(第26表)。

○ 情報化に伴う職員数の減員方法としては、退職者不補充、配置転換、出向・転籍が多く、退職者募集や解雇は比較的少ない。4分の3以上の企業は、今後のIT化による雇用ニーズの変動への対応として、「教育訓練や配置転換によって可能な限りの雇用責任を果たすべき」と考えている。


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