厚生労働省

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9月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況

景気は、このところ弱含んでいる。

・輸出は、弱含んでいる。生産は、緩やかに減少している。

・企業収益は、減少している。設備投資は、弱含んでいる。

・雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ弱含んでいる。

・個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、当面、弱い動きが続くとみられる。ただし、アメリカにおける金融不安の高まりや株式・為替市場の変動などから、景気がさらに下振れするリスクが存在することに留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ弱含んでいる(第1図)。

・完全失業率は、平成20年7月は前月差0.1ポイント低下し、4.0%となった。

・15〜24歳層の完全失業率は、高水準ながら低下傾向で推移している。

・有効求人倍率は、低下している。

・新規求人数は、減少傾向となっている。

・就業者数は季節調整値で3か月連続で減少した。雇用者数は季節調整値で2か月ぶりに減少した。

・製造業の残業時間は、減少している。

・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱い動きとなっている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、緩やかに減少している。

7月の鉱工業生産(季節調整済前月比、以下同じ)は、1.3%増と2か月ぶりに増加した(第2図)。

業種別にみると、7月は輸送機械工業、食料品・たばこ工業、化学工業等が上昇し、電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業、金属製品工業等が低下した。

出荷は1.9%増と上昇した。在庫は0.1%減と低下した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は8月2.9%減の後、9月は3.4%増となっている。

先行きについては、在庫の動向や今後の設備投資・輸出の動向等に留意する必要がある。

(2) 最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、6月1.5%増の後、7月0.9%増となった。うち勤労者世帯では、6月0.5%増の後、7月横ばいとなった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は6月75.2%の後、7月75.7%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2008年4〜6月期(季節調整済前期差)は4.2ポイント低下し、32.3となった。なお、8月(原数値前年同月差)は13.9ポイント低下し、30.1となった。

7月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.1%増、大型小売店販売額は0.5%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、7月7.0%増の後、8月8.0%減となった。

[2]  設備投資は、弱含んでいる。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2008年1〜3月期季節調整済前期比0.4%増の後、2008年4〜6月期同6.1%減(うち製造業同0.9%増、非製造業同10.5%減)となっており、製造業で増加、全産業、非製造業で減少している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、全規模の2008年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で1.4%減、製造業は2.4%増、非製造業は3.5%減となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で6月は2.6%減の後、7月は3.9%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、6月は季節調整済前月比14.1%減の後、7月は同63.9%増となっている。

先行きについては、企業収益が減少していることもあり、注視が必要である。

[3]  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。

新設住宅着工総戸数をみると、6月季節調整済前月比5.4%増、7月は同1.2%増の9.5万戸(年率114.4万戸)と2か月連続で増加した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、6月季節調整済前月比3.7%増の後、7月は同2.1%増となった。

先行きについては、雇用・所得環境が弱含んでいることやマンション販売在庫数が高い水準にあること等に留意する必要がある。

[4]  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、6月は7.1%増の後、7月は14.7%増となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、7月前年同月比13.8%増の後、8月は同6.0%減となっている。先行きについては、国、地方の予算状況などを踏まえると、総じて低調に推移していくものと見込まれる。

[5]  輸出は、弱含んでいる。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で6月は2.3%減の後 、 7月は0.1%減となっており、四半期別では、平成20年1〜3月期0.1%増の後、平成20年4〜6月期2.0%減となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は、弱含んでいる。アメリカ向け輸出は、全体として弱含んでいる。EU向け輸出は、減少している。先行きについては、アメリカ経済の今後の動向等に留意する必要がある。

輸入は、弱含んでいる。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で6月は4.8%増の後、 7月は4.8%減となっており、四半期別では、平成20年1〜3月期1.6%減の後、平成20年4〜6月期0.3%増となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は、全体として緩やかに減少している。アメリカからの輸入は、横ばいとなっている。EUからの輸入は、横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、緩やかに上昇している。

8月の国内企業物価(速報)は、前月比0.1%下落(前年同月比7.2%上昇)となり、輸出物価は同0.5%上昇(同0.9%上昇)、輸入物価は同2.3%上昇(同27.1%上昇)となった。

7月の消費者物価は、総合が前年同月比2.3%上昇(前月比0.2%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同2.4%上昇(同0.4%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、減少している。また、企業の業況判断は、一段と慎重さが増している。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2008年1〜3月期17.5%減の後、2008年4〜6月期5.2%減(製造業11.7%減、非製造業0.2%増)、季節調整値で2008年1〜3月期9.1%減の後、2008年4〜6月期14.7%増(製造業8.7%増、非製造業19.3%増)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)によれば、企業の全規模の2008年度の経常利益計画(前年度比)は、2008年度通期では全産業4.4%の減益、製造業6.9%の減益、非製造業2.3%の減益となっている。なお、2008年度上期では、全産業14.6%の減益、製造業19.4%の減益、非製造業10.3%の減益の後、下期では全産業6.2%の増益、製造業6.9%の増益、非製造業5.7%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、規模計で、全産業−7ポイント(3ポイント悪化)、製造業−3ポイント(5ポイント悪化)、非製造業−10ポイント(3ポイント悪化)となっており、全産業、製造業、非製造業のいずれもで悪化となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、8月1,254件で、前年同月比4.2%増となった。

(5)  2008年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.7%減(年率3.0%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%減、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.1%減となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.8%減となった(第10図)。

3 雇用・失業 

(1)[1]  7月の就業者数(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、6月に前月差13万人減となった後、7月は同28万人減と減少し、6,359万人(原数値は6,406万人、前年同月差52万人減)となった。男女別には、男性が3,714万人(前月差8万人減)、女性が2,645万人(同18万人減)となった(第11表)。

7月の雇用者数(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、6月に前月差11万人増となった後、7月は同17万人減と減少し、5,511万人(原数値は5,524万人、前年同月差11万人減)となった(第13図)。男女別には、男性が3,204万人(前月差2万人減)、女性が2,306万人(同16万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,761万人(前年同月差1万人減)、臨時雇が661万人(前年同月と同水準)、日雇が102万人(前年同月差9万人減)となった。

7月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月比0.2%増となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比横ばい、パートタイム労働者は前月比0.4%増となった。

[2]  7月の完全失業率(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で低下した。

完全失業率(季節調整値)は、6月に前月差0.1ポイント上昇の4.1%となった後、7月は前月差0.1ポイント低下の4.0%(原数値は3.8%、前年同月差0.3ポイント上昇)となった。男女別には、男性が4.0%(前月差0.2ポイント低下)、女性が3.9%(前月差0.1ポイント低下)となった。

7月の完全失業者数(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で減少した。

完全失業者数(季節調整値)は、6月に前月差7万人増となった後、7月は前月差8万人減の264万人(原数値は256万人、前年同月差22万人増)となった。男女別には、男性が156万人(前月差6万人減)、女性が108万人(同3万人減)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、 7月は非自発的理由による離職失業者は80万人(前年差6万人増)、自発的理由による離職失業者は100万人(同9万人増)、学卒未就職者は11万人(同1万人減)、その他の理由による失業者は62万人(同10万人増)となった(第11表)。

[3]  7月の労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で減少した。

労働力人口(季節調整値)は、6月に前月差6万人減となった後、7月は同36万人減と減少し、6,623万人(原数値は6,662万人、前年同月差29万人減)となった。

7月の非労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、6月に前月差12万人増となった後、7月は同40万人増と増加し、4,427万人(原数値は4,384万人、前年同月差38万人増)となった。男女別には、男性が1,472万人(前月差14万人増)、女性が2,956万人(同27万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、 7月は60.3%(前年同月差0.3ポイント低下)となった。男女別には、男性が72.6%(同0.7ポイント低下)、女性が48.7%(同0.1ポイント上昇)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、7月は58.0%(前年同月差0.5ポイント低下)となった。

(2)  有効求人数(季節調整値)は、前月比1.9%減と2ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比0.7%増と3ヶ月連続で増加した。

7月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.89倍と前月より0.02ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比横ばいとなった。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比1.2%減と3ヶ月ぶりに減少した。

7月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.28倍と前月より0.02ポイント上昇した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.53倍(前年同月差0.06ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、7月は一般は前月比1.9%減と2ヶ月連続で減少し、パートについては同3.2%増と2ヶ月ぶりに増加した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比0.7%減と3ヶ月ぶりに減少し、パートについては同1.5%減と3ヶ月ぶりに減少した。

(3)  産業別にみると、7月の就業者数(原数値)は、サービス業は前年同月差26万人増、情報通信業は同20万人増、医療,福祉は同16万人増と増加したのに対し、製造業は同33万人減、飲食店,宿泊業は同14万人減、卸売・小売業は同12万人減、運輸業は同4万人減、建設業は同2万人減と減少した。なお、教育,学習支援業は前年同月と同水準であった。

また、 7月の新規求人(原数値)は、医療,福祉は前年同月比7.7%増と増加したのに対し、サービス業は前年同月比28.0%減、製造業は同18.0%減、建設業は同13.8%減、情報通信業及び卸売・小売業は同13.6%減、運輸業は同6.5%減、教育,学習支援業は同4.4%減、飲食店,宿泊業は同0.1%減と減少した。

(4)   雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では 6月に前月比 1.4%減となった後、7月は同1.6%減、調査産業計では 6月に前月比1.5%減となった後、7月は同0.8%増となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では−5%ポイント(3月調査より4%ポイント上昇)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2008年4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は14%となり2008年1〜3月期から1%ポイント上昇した(第15図)。また、2008年7〜9月期に実施予定の事業所割合は13%、2008年10〜12月期に実施予定の事業所割合は11%となっている。

4 賃金・労働時間

(1)  7月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は388,095円で、前年同月比0.3%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.1%増、パートタイム労働者は同1.6%増となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.6%増(一般労働者同0.5%増、パートタイム労働者同1.8%増)となったほか、所定外給与は同0.8%増、特別給与は同0.7%減となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.6%増(一般労働者同0.4%増、パートタイム労働者同1.8%増)となった。

(2)  7月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は154.7時間で、前年同月比0.7%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.0%増、パートタイム労働者は同0.4%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は144.0時間で前年同月比0.9%増(一般労働者同1.2%増、パートタイム労働者同0.5%減)、所定外労働時間は10.7時間で同1.0%減(一般労働者同1.4%減、パートタイム労働者同3.7%増)となった。

なお、月間出勤日数は20.0日で前年同月差0.1日増となった。

7月の製造業の所定外労働時間(確報)は15.6時間で、前年同月比5.5%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比6.0%減、100〜499人規模で同4.3%減、30〜99人規模で同1.3%減、5〜29人規模で同13.7%減となった(第17図)。

9月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版(PDF:87KB)

月例労働経済報告PDF版(PDF:164KB)


月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:167KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:5,239KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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