VII 有料老人ホームの設置運営標準指導指針の改正について
(1)改正の趣旨
有料老人ホームについては、介護保険制度において「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号)」を満たせば「特定施設入所者生活介護」として介護保険の給付対象に位置付けられたことから、多様な有料老人ホームが出現するなど、有料老人ホームをめぐる状況は大きく変わってきている。
また、今般、特別養護老人ホームについては、4人部屋主体の居住環境を抜本的に改善し、入居者の尊厳を重視したケアを実現するため、個室・ユニットケアを特徴とする「居住福祉型の介護施設」として整備を進めるため、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第46号)」の改正を行うこととしているが、有料老人ホームについても高齢者の居住の場としてふさわしいものに誘導していくことが必要である。
このため、有料老人ホームの設置運営標準指導指針について、所要の改正を行うべく検討しており、その主な検討の方向は別紙のとおりである。
(2)各都道府県における指導指針の作成
従前より、各都道府県は、地域の状況に応じて指導指針を定め、これに基づき設置前及び事業開始後の継続的な指導を行うこととされているが、既に指導指針を作成している都道府県においては、新標準指導指針の趣旨や地域の状況等を総合的に勘案した上で、より質の高いサービスが利用者に対して提供されるよう指導指針の改正を検討されたい。
また、未だ指導指針を作成していない都道府県については、新標準指導指針を参考として、指導指針の作成をお願いしたい。
なお、各都道府県において、指導指針を作成又は変更した場合は、参考のため、当職まで送付することを併せてお願いしたい。
(3)新標準指導指針の適用
新標準指導指針は、平成14年10月1日をもって適用することを検討しており、それ以前に既に着工している有料老人ホームについては従前の標準指導指針によることとなるが、設置計画の協議段階のものについては、新標準指導指針の趣旨を踏まえて指導されたい。
なお、各都道府県において既に指導指針を作成している場合には、この限りではない。
(4)改正のスケジュール
改正に伴う今後のスケジュールは、パブリックコメントを実施した上で、6月下旬を目途として各都道府県あて通知することを予定している。
(別紙)
有料老人ホーム標準指導指針改正の検討の方向
(1)個室化及び廊下幅員の規定の緩和
○特別養護老人ホームの個室化を踏まえ、有料老人ホームの介護居室についても全室個室化する。
○一定の要件(居室面積18平方メートル以上、トイレ・洗面設備付き=高齢者向け優良賃貸住宅並み)を満たす場合に、廊下幅員の規定を緩和する。
1.8m→1.4m(※1.4mは、車いす+歩行者のすれ違いが可能な幅)
2.7m→1.8m(※1.8mは、車いす+車いすのすれ違いが可能な幅)
(2)月払い方式の有料老人ホームへの対応
○これまで一時金方式の有料老人ホームの場合を想定して指導を行ってきたが、月払い方式の有料老人ホームについて土地や建物を借りて設置する場合に要件を緩和する。
これにより、家賃の低額化、供給の促進等の効果が想定される。
不可→可
借地30年以上・借家20年以上→規定なし
(3)有料老人ホームの類型の見直し
○介護保険の定着に伴い、高齢者がホームの適切な選択に資するよう類型を再整理する。現行6類型をまとめて3類型とし、あわせて入居希望者に必要な表示事項を表示することとする。
【現行の6類型】 【改正案の3類型】 【表示事項】
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(4)その他の改正事項
○個室は、各個室が建築基準法の界壁(天井裏まで達する遮音性能を有する壁のこと)により区分されたものとする。これにより、隣の個室からの一定の音、におい、光が遮断されることとなる。
○既存の建築物を改造する場合について、やむを得ず廊下の幅員等の基準が満たすことができない場合、代替の措置(居室に近接して共用スペースを確保、部分的に廊下幅員を拡幅等)により、これらの基準によらないことができることとする。
これにより、使用されなくなった社員寮等不良資産の有効活用が図られるとともに、有料老人ホームの家賃相当額の低額化にも資するものと考えられる。
○有料老人ホームが行うべき介護サービスを診療所に行わせていたという公正取引委員会からの警告があったことを踏まえ、介護サービスを行わせてはならない施設として「診療所」を追記する。
○従来の指針では、有料老人ホームの届出後に入居募集を行うこととされているにもかかわらず計画段階や着工前に相当数の「入居見込者を確保する」こととしていた。しかしながら、高齢者にとっては自分の目で実際に確かめてから入居を決定する方が好ましいという考え方、事業者にとって過度な規制となっているのではないかという考え方等から、構想段階における市場分析や計画段階における市場調査等により相当数の「入居者が見込まれる」ことに改める。
○利用料について、これまでの入居一時金を前提とした構成を改め、利用料の内訳(家賃相当額、介護費用、食費、管理費等)ごとに費用の算出方法、受領方法等について整理する。
○家賃相当額は、これまでの建設コスト等から合理的に算定したものとすることに加え、近傍同種の住宅の家賃(市場家賃)から算定される額を大幅に上回るものでないこととする。また、いわゆる入居一時金は、終身にわたって受領すべき家賃相当額の全額又は一部の前払い金であることを明記する。
○家賃相当額に関する保証金は6ヶ月分を超えないこととする従来の取り扱いに加え、退去時に居室の原状回復費用を除き全額返還することを明記する。さらに、原状回復の費用負担については、建設省住宅局及び(財)不動産適正取引推進機構が作成したガイドラインを参考にすることとする。
○一時金方式の場合に、入居後の短期間の解約については、滞在日数に応じた費用及び原状回復費用等を除き、一時金を全額返還することが望ましいこととする。
○一定の要介護状態になったときに、一般居室から介護居室に住み替える契約の場合、本人又は身元引受人等の同意を得ることを要件とする。また、この場合の家賃相当額の差額の取り扱いについても考慮することとする。
○重要事項説明書の「職員体制」の表中、直接処遇職員数について自立者のための職員数を記載させるとともに、要介護者数に対する直接処遇職員数の割合(いわゆる「※:1」)を前年及び前々年の数値も含めて記載することとする。