III 新型特養の整備
(1)全室個室・ユニットケアを特徴とする新型特養の基本的な考え方や具体的な構造設備基準の内容等については、これまでの全国課長会議での資料や各自治体に配布したビデオ・解説冊子等においてお示ししてきたところである。このうち、構造設備基準について、今般、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第46号)の一部改正等を行うこととしており、パブリックコメントを実施した上で本年7月頃を目途に官報告示を行う予定であるので、御了知願いたい。
(2)また、去る5月23日には、社会保障審議会介護給費分科会(第10回)において、
(1) 既存施設で平成14年度以降に個室・ユニットに改築・増築等を行う場合の取扱いについて
(2) 居住費の範囲・徴収の基準について
(3) 低所得者の範囲・負担軽減額について
等に係る資料を別添1のとおりお示しし、御議論いただいたところであるので、併せて御了知願いたい。
(別添1)
第10回社会保障審議会介護給付費分科会(平成14年5月23日)提出資料
介護老人福祉施設の報酬体系の見直し案−全室個室・ユニットケア施設の居住費(3)(新築・既存・増改築別の整理)
施設類型 | A 平成14年度以降に新築した施設 | B 平成13年度以前に建築した既存の施設 | C 既存施設で平成14年度以降に個室・ユニットに 改築・増築・増改築・拡張・大規模修繕(模様替)等を行うもの | |||||||
A1 全室個室・ ユニット |
A2 一部個室・ ユニット |
A3 個室・ユニット なし |
B1 全室個室・ ユニット |
B2 一部個室・ユニット |
B3 個室・ユニット なし |
C1 全室個室・ ユニット (平成14年度以降に全室個室・ユニットに改築等) |
C2 一部個室・ユニット (平成14年度以降に一部個室・ユニットを新設・拡大) |
|||
個室・ユニット 部分は3割以内に限定 |
個室・ユニット 部分が3割超 |
個室・ユニット 部分が3割以内 |
個室・ユニット 部分の新設・拡大後、当該部分が3割超の施設 ※3 |
個室・ユニット 部分の新設・拡大後、当該部分が3割以内にとどまる施設 |
||||||
施設整備費 | 新補助 | 従来補助 | 従来補助 | 従来補助 | 従来補助 | 従来補助 | 従来補助 | 改築等時 新補助 |
増築等時 法人負担 又は新補助 |
増築等時 法人負担 又は新補助 |
介護報酬 | 新報酬 | 従来報酬 | 従来報酬 | 従来報酬/新報酬を施設が選択 | 【一部個室・ユニット部分】 従来報酬/新報酬を施設が選択 【多人数部屋】 従来報酬 |
従来報酬 | 従来報酬 | 新報酬 | 【一部個室・ユニット部分】 新報酬 【多人数部屋】 従来報酬 |
従来報酬 |
居住費徴収 | ○ | × | × | ×/○ を施設が選択 |
【一部個室・ユニット部分】 ×/○ を施設が選択 【多人数部屋】 × |
× | × | ○ | 【一部個室・ユニット部分】 ○ 【多人数部屋】 × |
× |
※1 | ユニットのない単なる個室については、新築・既存・増築等のいずれの場合にも、従来報酬。個室のかかり増し経費及び光熱水費の徴収不可(現行の運営基準の改正・解釈変更なし)。 |
※2 | 従来の施設整備費補助の個室加算(定員の3割限度)及びユニット加算は、平成15年度以降廃止予定。 |
※3 | 全室個室・ユニット化する計画を提出する場合に限る。 |
介護老人福祉施設の報酬体系の見直し案 − 全室個室・ユニットケア施設の居住費(1)(居住費の範囲・徴収の基準)
利用者から徴収できる居住費の範囲
居住環境に要する費用として適切に見積もられる費用のうち、入所者の個人スペース(個室およびユニット部分)にかかる部分とする。
○ 建物及び建物付属設備の取得費用(以下「建物費用」)
国庫補助算定対象となる設備のうち浄化槽、エレベーター、スプリンクラー、消融雪、介護用リフト等を除く。
設備資金を借り入れる場合、元金償還額と借入金利息を含む。
○ 器具及び備品の取得費用
器具・備品を賃借する場合、賃借料を含む。
福祉用具(車いす、特殊寝台等)を除く。
○ 修繕費(建物、器具及び備品等の修繕又は模様替の費用)
○ 光熱水費・燃料費
居住費の配分基準
入所者の個人スペースにかかる部分へ配分する基準は以下のとおりとする。
○ 建物費用は個人スペースと共用スペースの建築床面積比による。
○ 器具及び備品費用、修繕費、光熱水費、燃料費は内容に応じてできる限り直課し、直課できない費用については個人スペースと共用スペースの建築床面積比による。
○ 借入金利息は個人スペースと共用スペースの設備資金借入金額比(国庫補助額を控除して算出する)による。
居住費の料金の算定方法
○ 建物費用の原価算定期間(費用を回収する期間)は20年以上とする。
○ 建物費用の総額と原価算定期間中に見込まれる料金収入額が一致するように設定する(収支相償の原則)。
○ 建物費用以外の費用は償却資産の耐用年数等の合理的な基準や過去の実績を基礎として適切に見積もることとする。適切に見積もることが困難な場合は、その都度に実費として徴収する。
○ 居室の具体的な料金は、その面積等を基準に複数の料金として設定できる。
料金の調整
○ 施設は、入所者数や物価上昇率等の経済指標の動向その他の事業環境を勘案して、定期的に料金を調整できる。
都道府県知事への届出
○ 施設は居住費の料金を都道府県知事に届け出ることとする。これを変更するときも同様とする。
介護老人福祉施設の報酬体系の見直し案 − 全室個室・ユニットケア施設の居住費(2)(低所得者の範囲・負担軽減額)
対象者 | 介護報酬による負担軽減額 | 利用者負担額 | |
他制度による軽減措置 | |||
保険料第1段階 (市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者、生活保護受給者等)* |
2万円 | 施設が定める額−2万円 ※ 平均的には2〜3万円程度 |
生活保護受給者については、現在、検討中 |
社会福祉法人による利用者負担軽減措置 ※ 市町村民税世帯非課税者(老齢福祉年金受給者である者を含む。)のうち、特に生計が困難である者を対象 |
|||
保険料第2段階 (市町村民税世帯非課税者等)* |
1万円 | 施設が定める額−1万円 ※ 平均的には3〜4万円程度 |
|
なし | |||
保険料第3段階〜第5段階 (市町村民税本人非課税者等、市町村民税本人課税者) |
なし | 施設が定める額 ※ 平均的には4〜5万円程度 |
* 対象者の区分について、それぞれ、いわゆる「境界層該当者」を含む。
※ 平成13年度以前に整備された既存の施設において、
(1) 平成13年度以前に法人の自己資金で個室・ユニット部分を建築した場合
(2) 平成14年度以降に拡張等を行って個室・ユニット部分を建築する場合
は、当該個室・ユニット部分に対して建築時に従来の施設整備費補助金が交付されており、その相当額分だけ居住費が低額に算定されるため、低所得者対策を行わない。
【居住費の試算*1】
試算額(1人月額) | 試算の前提条件 | |||
新築・増改築等により個人スペースを新たに整備する場合 (新築・増改築時に個人スペースに国庫補助金が算定されない) |
既存施設において法人の自己資金により算定基準面積を上回る個人スペースを整備した場合 *4 (創設時に個人スペースに国庫補助金が算定) |
既存施設において今後に拡張等により個人スペースを整備する場合 *5 (拡張時に個人スペースに国庫補助金が算定されない) |
建築単価 | 借入金利 |
3.8万円 4.4万円 |
2.5万円 2.7万円 |
2.8 〜 3.5万円 3.1 〜 4.0万円 |
国庫補助基準単価 179,400円/平方メートル *2 |
2.0% 5.0% |
4.1万円 4.8万円 |
2.5万円 2.8万円 |
2.9 〜 3.7万円 3.3 〜 4.3万円 |
国庫補助基準単価 207,200円/平方メートル *2 *3 |
2.0% 5.0% |
*1 | 個人スペースの建物関連費用、借入金利子、光熱水費、燃料費、建物関連の修繕費を試算し、準個人的空間の器具備品費は除外した。 |
*2 | 通常の地域に適用される本体工事基準単価 (平成13年度単価を基に試算) |
*3 | 北海道、東京都、大阪府などの地域に適用される本体工事基準単価に、特別区・政令指定都市・中核市といった都市部に建設する場合に適用される都市部特例(10%)割増加算した後の本体工事基準単価 (平成13年度単価を基に試算) |
*4 | 平成7年度以降に整備された施設が、新設施設と同じ面積の個人スペースを整備することを想定した。 |
*5 | 平成元年度以降に整備された施設が、平成14年度以降に居住福祉型の国庫補助金により拡張工事(現在定員の増員なしに延面積を増加)を行って個人スペースを整備することを想定した。創設時の算定基準面積により試算額は変動する。 |
*6 | 原価算定期間は20年とし、将来の料金収入や費用の現在価値による換算額が等しくなるように試算した。 |