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第III章 研修カリキュラム等のあり方

(1) 研修対象者

研修対象者の図

(2) 研修規模(開催日程、開催期間、研修定員等)

研修実施主体の判断に基づき、適正に行うこと

(考慮すべき点)

○現任者を対象とした研修であること。(実際の現場において多忙である中を割いて参加すること)
 ※参加者の意識別に数回に分けて実施するという方法など

○地理的要件(遠隔地等)
 ※研修開催地との距離にもよるが、今後は、より現場の近辺で研修が受けられるような場合、「日」ではなく「時間」で区切るくらいの方がよい。

○会場確保等の物理的要件

○研修実施主体の能力的要件

(3) 研修内容(研修カリキュラム)

(ア) 研修目標の設定

 ケアマネジメント技術(特にケアプラン作成技術)の向上のために行われる「事 例演習」等を中心とし、介護支援専門員の研修過程においても、その研修から「何 を学ぶのか」を、「研修目標」として受講者にはっきりと提示することが必要であ る。
 ただし、現状では、ケアプランに関する評価手法・評価基準が明確に確立してい ない部分もあるため、こうした部分については、その動向や成熟化も踏まえ行うこ とが必要である。

−ケアプラン作成に関しての目標設定例−

○ケアプラン上の目標設定の仕方の習得

 ケアプランの目標が立てられない介護支援専門員も見受けられるため、きちんと、「目標」が立てられるようなる。

○ニーズを優先した計画の立て方の習得

 サービスオリエンテッド(サービス優先)ではなく、ニーズオリエンテッド(ニーズ優先)なサービス調整方法を行うことが出来るようになる。

○アセスメント手法の習得

 課題抽出ができるよう、専門性確保のための「ニーズ抽出方法」(本人がニーズとして意識していないものを拾い上げる=ニーズとディマンズの違いを意識する)を学ぶ。

○専門家としての意識の習得

 「介護支援専門員」と「サービス提供責任者」を兼務している場合、混同したケアプランをたてたり、その業務の区分け(それぞれの責任の範囲、連携部分)がきちんとできていないような例もみられるので、兼務の有無に関わらず全体を見渡してプランを立てる意識が必要であることを学ぶ。

 ただし、現状では、ケアプランに関する評価手法・評価基準が明確に確立していない部分もあるため、こうした部分については、その動向や成熟化も踏まえ行うことが必要である

(イ) 講義

体系図

○基本の確認

○不得意分野の補足

※例えば、「リハビリテーション」は、保険給付・介護予防の観点からも、介護支援専門員が知るべき分野であるが、
  • その専門性がOT・PT等一部に限定されている分野であること。
  • 特に元職によっては、専門知識が未熟である傾向も見られること。
  • 実務経験(プランへの組み込み等)という上では皆無に等しいこと。
等に起因し、リハビリテーションの積極的活用という意識付けが不十分な点が見受けられる。

○実務研修の補足

○複合的条件への担保

(ウ) 演習

演習の目的事例検討
(1)アセスメント手法の習得 現場において自ら選び使用しているアセスメント方式を、よりうまく使いこなす。いわゆる「実務研修」の演習の延長として実施する。複数のアセスメント方式を用いた事例検討.例えば、2方式程度のアセスメント手法を演習し、自らのベースとなる手法の客観的な分析を行うなど。
(2)職種間の連携方法の習得 居宅サービス事業者、主治医等との連携や、「居宅」と「施設」の介護支援専門員間において、自分の業務領域のことはこなせるが、相手の領域についてはよく知らないことも見受けられるので、こうした連携方法のノウハウ獲得のための演習が必要。サービス担当者会議の開き方、進め方、意見調整の仕方、「施設」と「居宅」の連携がうまくいっている事例(退院を前提とした施設入所者のプランづくりに関するサービス担当者会議に居宅の介護支援専門員が参加した例)などを演習事例として取り組むなど。
(3)モニタリング手法の習得 ケアプランをつくるまででで終わってしまい、その後「プランに基づいてサービス提供がなされているか」「そのサービスが生活を改善しているか」等のモニタリングがほとんどできていない。モニタリングの意義と方法、評価手法を学ぶ演習が必要。モニタリングとは何か、どういう風に展開していくべきか、ということを明らかにする事例、モニタリングの違いによって、以後のサービス展開と結果が分かれた事例に 取り組むなど。

(エ) 演習における事例検討の方法について

○ 模擬サービス担当者会議の開催

→サービス担当者会議の開き方、進め方のノウハウ獲得のための演習が必要。 現場でも「揉まれる」ということは成長につながる経験となるので、うまく、演習で揉まれるための開き方、どう進めていくのかを設定して、現場での経験につなげていく。

→具体的なノウハウを教えたり、短時間で終われるような形の紹介を行う。
プラン作成〜サービス担当者会議〜給付管理業務という一連の業務を効率的に行うためのノウハウ等の提示など。

→福祉・医療を問わず、介護支援サービスにおける共通項を見いだす上で、実態として有用な手段であるため、そのことに気がつくような方法で実施する。(「合議」の意義の確認)

→同一事例を種々の介護支援専門員に作成させ、それを互いに評価するなどのグループ検討方式を導入する。(こうした評価の集大成を行えば、いわゆる共通項というものが見えてきて、将来的にはプランの作成基準が出来てくるのではないか。)

○ ロールプレイの導入

→ただし、プレイヤーの感情移入の仕方等(たまたま、自分が実際に関わっているケースと類似していた、等による。)によっても左右されやすいものでもあるので、実際の事例を用いるのか、多少の問題点を含んだ作り上げたシナリオを使用するのか、など吟味する必要がある。

○ 実習の導入(「モニタリング実習」の導入)

→実際にモニタリングは現場(利用者宅等)へ伺って行うことが大切であり、こまめに利用者の状況を伺いニーズを見いだすことが必要な場合があるので、「実習」方式の実施も検討すべきではないか。

(オ) 事例

(1)事例演習のあり方・進め方

目標の設定

○ その事例から何を学び取るのか、事例提示のポイント・視点を示すことが必要。

 (例)

【ポイント・視点(例)】

・アセスメントの視点を学ぶ。
・プロセスをしっかり学ぶ。
・サービスのコーディネート、モニタリングをしっかり行うことを学ぶ

事例の選定

○ 演習の対象者、演習目標に沿った、適切な事例を選定することが必要。
 (例)

【事例区分(例)】

○「目標設定」の3区分に応じた類型
 ・アセスメント能力を高めるのに適した事例
 ・プロセス能力を高めるのに適した事例
 ・コーディネートやモニタリング能力を高めるのに適した事例

○高齢者の形態に応じた類型
 ・独居
 ・日中独居
 ・老夫婦
 ・痴呆性高齢者
 ・ターミナルケア など

【ニーズ埋没事例の例】

○ 「家族が言ったことばかりをプランの盛り込んでいる例」
  • 家族の問題については、「息子夫婦と同居している場合」など、年金など金銭問題が絡みプラン作成が難しいケースも見られる。

○ 「ショートステイの紹介など、紹介・仲介するだけで終わってしまっている例」

○ 「介護度は重くないが、生活上の様々な問題を抱えている例」

  • 初心者が陥りがちな点として、介護度が高くなければ、プランを立てるのは難しくないように受け止めがちなであるが、実は、そうしたケースほど、問題が潜在的なだけに、きちんとアセスメントしなければならないこともある。

【失敗事例、不適切事例の例】

○ 訪問介護の不適切事例

○ 家族、利用者の言いなりのケース

○ 介護支援専門員の一方的なケース

○ 「退院時の支援」の事例

  • 本来であれば退院時に、その家庭環境を整えることが第一優先になる場合に、毎日「通所リハビリテーション」を組んだプランを立てるなどのケースである。

(2)事例演習に用いる資料のあり方

○ 様式については設定する必要はないが、ケアプラン作成のプロセスを踏む ことはきちんと押さえることが必要。

(a) 事例概要(フェイスシート)

○ 記載にあたっては、言語等の表現方法の共通化、ルール化が必要。
(例:家族構成図の記載方法等)

○ 「課題分析票(アセスメントシート)」を用いない場合には、フェイスシートで「課題分析標準項目」を押さえることが必要。

【ポイント】

○事例には「ネーミング」を付ける。
 (例)
 (1)疾病、健康レベル(リハ回復期であるとか、維持期であるとか)
 (2)生活課題(引きこもり、経済)
 (3)要介護度
 (4)家族等
 (5)退院時ケースか否か、新規か継続か

(b) ケアプラン

○ 原則的には、国の示す「標準様式」を使用することが妥当。

(c) 課題分析票(アセスメントシート)

○ 必要に応じて、
  • 参加者が普段使いなれているものを提示する。
  • 逆に普段使用しているのとは異なるものを提示する。
等により、能力向上の効果を狙うことなどが必要。

(d) 週間サービス計画表

(e) サービス利用票、別表、給付管理票等

○ 提示は、演習内容、演習目的にあわせ任意で行う。

(f) モニタリングシート

(g) ケアカンファレンスの要点

○ モニタリング演習を行う際には、効果的。

事例資料セットパターンの図

モニタリング演習用事例の図

(4) その他

(ア) 研修講師

○「事例演習」については、スーパーバイザーたる指導者が望ましい。

(イ) 研修受講料

○基本的には、受講者本人が負担。

(ウ) 研修修了証明

○研修実施主体側に修了証明に伴う事務が付加されるという点はあるものの、基本的には、修了証明書の発行は必要である。

○ただし、小規模の勉強会形式で行われるもので、かつ研修受講者側と研修実施主体側の同意に基づく場合は、必ずしもこの限りではない。

(エ) 研修教材

○テキスト:アセスメントを行うためのプロセス、ノウハウを書き込んだ教材が必要。

○その他の教材【ビデオなど視覚的教材等活用の必要性】

I 臨場感を持ったモニタリング演習の代替実施

 モニタリングの演習を行う場合、現場に行って研修を行うことが有効だが、ヘルパー等他職種養成等でも現場実習があり、受入れや調整が困難である。そこで、ビデオテープ等の視覚的教材を使い、代替活用することで臨場感を持った研修を行えるようにする必要があるのではないか。

II 視覚的効果による再教育

 介護支援専門員が様々な分野から養成されていることを考えると、共通の「実務研修」を受けてきていても、レベルの差違は大きい。介護サービス現場等を知らない者に対しては、視覚的学習も有効なのではないか。

III 広範囲にわたる研修実施

 いわゆる教材作成により、複数の研修実施主体で同レベルでの研修を実施することが可能となる。例えば、県域でも中央研修での実施内容をビデオに収録することにより、ブロック別研修でのビデオ活用ができるなど、効率的な研修が可能となるのではないか。


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