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第II章 研修体系の整理

(1) 現在の体系

○ 研修のあり方について説明を行っていくには、まず、現在の介護支援専門員養成体系の全体を整理し、それを踏まえ、今後のあるべき研修体系を整理することが必要である。

次ページ図:「平成12年度現在の介護支援専門員の研修体系」参照

○ なお、本委員会で議論された問題のうち、いくつかは(2)の「実務研修」においても検討を要するものがあると思慮されたが、ここでは、登録以降の「現任養成」に視点をおいているため、取り扱わないこととする。
 ただし、「実務研修」自体は、当然に「現任研修」の前提となるべく、最初の介護支援専門員養成の一過程であることから、「現任研修」のあり方を踏まえ、見直しが必要なのではないか、という意見もあったことを記しておく。

○ また、この他にも、民間事業者によるセミナー(実務研修受講試験対策セミナーの類)が開催されているケースもあるが、ここでは言及しないものとする。

平成12年度現在の介護支援専門員の研修体系の図

○上記図のうち、

 なお、本委員会において、その研修体系についての骨子を固めるものは(4)〜(5)である。

(2) 今後の体系

(ア) 研修実施主体の種別及びその特性

○ 研修実施主体については、それぞれの主体がもつ研修実施に係る特性を活かしつつ、それぞれが担うべき役割を遂行できる研修体系を構築していくことが必要。

○ また、それぞれの研修実施主体においてのその主体としての機能が整備されていく進捗状況等も考慮しつつ、主体間相互での総合的な研修体制の構築が必要。

研修実施主体 特性 役割 備考
国(厚生労働省) 全国研修等、大規模な研修実施が可能。小回りはきかない。 ・介護保険制度が円滑に運営・定着されるまでの間、地域における指導的立場となるべき者の養成等の支援
・研修水準の統一
 
都道府県 地域特性を反映しつつ、比較的大規模な研修実施が可能。ある程度小回りはきく。 介護支援専門員養成の制度上の主力 規模(養成対象者数等)の面から「研修実施機能」に多少のばらつきがあること。
市区町村行政 地域特性を強く反映した小規模な研修実施。小回りがきく。 実質的な介護支援専門員の資質向上のための主力 地域によって「研修実施機能」のばらつきがあること。
事業者・施設(居宅介護支援事業者、介護保険施設等) 多少大規模な市区町村域の場合は、それ以上に地域特性を反映した研修実施が可能。 より良いサービス提供のため、従業者を研修派遣する等により研修の機会を確保し、資質の向上を図る責務を負う。 事業所の規模等により「研修実施機能」のばらつきがある。大規模な研修実施は困難。
所属団体(介護支援専門員協議会、職能団体等) 同一職能による横の情報交換や、職域に応じた専門的な研修実施が可能。 ・介護保険制度定着後の研修実施の主力
・市区町村レベルの協議会にあっては、当面は、リアルタイムな情報提供の役割として、将来的には研修主体としても役割を果たす。
「介護支援専門員協議会(協会)」には、都道府県レベルのもの、市区町村レベルのものがあるが、整備途上段階であり、必ずしも全ての行政圏域を網羅しているわけではない。

(イ) 研修の種類

(1)現任研修・専門研修

(a)「専門研修」の明確化

○ 当初は下図左の整理を行い検討を開始したが、検討過程の中で、「専門研修」の位置づけについて再度整理し直し、以下のとおりとすることとした。

専門研究の明確化の図

○ 「専門研修」については、現任の介護支援専門員が、ある程度のその習熟に伴い段階的に習得していくものとして、「現任研修」の一部として位置づけられるものであり、具体的には、「援助困難事例を取り扱った事例検討」、「指導・スーパービジョン」等の知識・技術を習得していくための研修を総じて「専門研修」と整理する。

区分 趣旨
現任研修  
  基礎研修 初任の現任介護支援専門員を対象とした研修
専門研修 ある程度の熟練を積んだ現任介護支援専門員を対象とした研修

(b)研修のあり方

継続性一個人の介護支援専門員が、自らの成熟度に応じて継続的に研修を受けていけるようなシステムづくりが必要。

※例えば、就業後1〜2年目、3〜4年目、5年目以降というように「初任者」「中級者」「上級者」のある一定のスパンでの研修受講のイメージづくりが必要。

※また、例えば「事例検討」といった研修内容においても、一回事例を検討して終わりではなく、反復し習熟度を高めていくようなプログラムが必要。

具体性現場でのリアルな研修(OJT)を採用すべき。

※参加者が「優れた介護支援専門員像」をイメージできる研修体系の整備・研修の実施が必要。

※また、必ずしも研修カリキュラムに組み込んで行うものではないが、介護支援専門員に対する情報支援は常にリアルタイムで行う必要もあることから、研修の場を活用し、情報支援を行うことも必要。

実効性現任者を対象に行う研修であるから、現場からの意見をよく聴き、現場で何が必要なのか、何をなすべきなのかを掴み研修に反映させることが大切。
その他現任者に対する研修だけでなく、未就労者等、資格的要件を有しているものの、現に職についていない者が、職場復帰を行う際の、いわばペーパー介護支援専門員に対する研修も必要。(将来的課題)

(c)研修実施主体のあり方

研修状況(情報)のフィードバック

○ 事業として研修を実施したことの成果(成功部分、失敗部分)の検証のため、様々な切り口で研修自体の評価を得ることが必要。

※例:受講者へのアンケート調査等の実施等
※さらに、研修を通じて、ケアプランの共通項を見いだし、ケアプラン作成技術の向上(介護支援専門員の資質向上、プラン評価手法の向上などを含む。)を図るなどの検討も必要。

参加促進策への取組み

○ 研修に参加できない(参加しない)要因分析とその要因に対応した研修体制(研修参加の活性化が促されるような研修体制)の確保。

適切な研修環境設定(研修プログラムの組立)

○ 研修への参加により、一時期でも現場を離れることは、現場で蓄積された介護支援専門員のストレス解消という側面的効果を有する部分もある。しかも、例えば、別の研修会で一度聴いた内容(既に習熟している内容)を選択の余地もなく聴講すれば、逆に、研修に出たこと自体がストレスになってしまうことも起こりうる。こうしたことを十分に考慮し、適切な研修環境を設定することが必要。

(d)「専門研修」のあり方

 「専門研修」であれ、「基礎研修」であれ、基本的な研修方法や研修カリキュラムのあり方等についての相違はないが、以下の点に留意し実施すること等が考えられる。

(e) 地域における研修実施の有用性について

○ 将来的には、介護支援専門員の協議会等の各都道府県圏域での研修実施主体に委ねられていく部分もあるのではないか、という意見もあった。

○ こうした各地域における研修実施主体については、現状では、そのための指導者の養成・確保などを含め、地域でのばらつきがあり、必ずしも研修実施主体としての土台が均一に形成されているわけではない。しかし、各地域毎の整備進捗状況を踏まえ、徐々に委ねられていくべきである。

(メリット)

  • 都道府県行政よりもさらに現場の近いところに位置することから、現場の意見が集約されやすい面を考慮すれば、必要な研修内容を即座に把握し、また実施できる可能性を有していること。

  • 「援助困難事例」など、より現場に接しているところの方が事例となる実例(題材)を集めやすいこと。

(さらに職能団体でのメリットとして)

  • より職能域に応じた観点での研修実施が可能なこと。

  • 職能研修(各々職能団体の実施する研修)が「地域研修」の担い手と成る場合のメリットとして、協議会等だと個人参加となるが、現状では、職能団体の開催の方が(事業所の出張扱いなどで)行きやすいこと。

(2)指導者研修

○ 今後の「指導者研修」における「指導者」とは、これまでの「実務研修における指導者」のみならず、より広範囲な意味での指導者を指すものであるが、おおむね以下の2通りと考えられる。

(a)「リーダー」としての指導者養成

 ここでの「リーダー」とは、いわゆる地域における介護支援専門員の代表者先導的立場にある介護支援専門員を指す。実態としては、必ずしも介護支援専門員の養成の過程に沿ってリーダー養成やリーダーシップ制に基づくグループ構築がなされるものではないので、これまでの地域でのキーパーソン等が携わる場合もあると思料させる。

(b)「スーパーバイザー」としての指導者養成

 いわゆる「スーパービジョン」の手法を介護支援サービス(ケアマネジメント)の中で展開していく観点から、上記の「リーダー」という切り口より、むしろ「専門家」としての切り口でその養成が行われると思料される。

○ こうした2通りの「指導者」に対する研修についても、『新規養成』と『現任者の資質向上』の2つの視点での養成が必要となるが、当面の状況などを考慮すれば、おおむね以下のとおり整理される。

(a)「リーダー養成研修」

  • 実際に介護支援専門員の活動は始まっており、現場においては自ずとリーダー的な役割にこなせる介護支援専門員も出始めていることを考慮すれば、今後は都道府県域での養成が考えられる。

  • また、これまでの指導者(いわゆる「実務研修における演習等の指導」を行う者)については、
    • これまでに2,000人近い「指導者」を養成していること。
    • 「実務研修」も既に3期を終了し、国の示す基準(実施要綱)を踏まえ、各都道府県毎にも実施上の工夫が見られていること。
    等を考慮すれば、各都道府県においての研修実施のノウハウを得ている。

  • ただし、例えば今後も制度の見直し等に伴い、介護支援専門員の業務について新たな方針を示すなど、中央(国)においても、リーダー的役割を担う介護支援専門員に対し、いわゆる「指導者のリニューアル研修」を実施していく必要もあるのではないか?

(b)「スーパーバイザー養成研修」

  • 介護支援専門員養成の黎明期である現在においては、さらにその中からスーパーバイザーを養成するための地域の基盤(絶対数、研修のロジックなど)は成り立っておらず、当面は中央で養成を始め、将来的には、都道府県など各地域において組み込まれていくことになる。

  • また、「スーパーバイザー研修」として機能していく場合には、「どれが良いプランなのか?」という、いわゆるケアプランの評価基準も必要であり、こうした部分も含めて徐々に研修体系が構築されていく必要がある。

指導者研修の種類 区分 研修実施主体(案)
リーダー 新規養成 都道府県等
現任者の資質向上 都道府県等
スーパーバイザー 新規養成 国 ※将来的には、都道府県等への移行を見直し。
現任者の資質向上 都道府県等

(ウ) 研修体系イメージ図

イメージ図


イメージ図


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