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厚生年金基金の「運用の基本方針」に盛り込むべき改正ポイント等の例示

 厚生年金基金の「運用の基本方針」については、今回改正された省令・通知及び関係法令等に基づいて、各基金が定めるべきものであるが、今回改正の趣旨、内容を正しく踏まえた作成が行われるよう、「運用の基本方針」に盛り込むべき事項のポイント等を参考として例示する。

  • ※用語の略称
    「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインについて(通知)」
     →以下「ガイドライン」という。
(参考)「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」(抜粋)

三 (4) 運用の基本方針

(策定)

  •  運用の基本方針は、基金の成熟度・積立水準、事業主の掛金負担能力・経営状況等、基金の個別事情に応じて、基金自らの判断の下に策定されなければならない。

(内容)

  •  運用の基本方針においては、運用の目的、運用目標、資産構成に関する事項、運用受託機関の選任に関する事項、運用業務に関する報告の内容及び方法に関する事項、運用受託機関の評価に関する事項、運用業務に関し遵守すべき事項、自家運用に関する事項(自家運用を行う基金に限る。)、その他運用業務に関し必要な事項を定めなければならない(厚生年金保険法第136条の4及び厚生年金基金規則第42条参照)。

目的

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 一(1)を参照)

  • 年金資産が公的年金の一部を代行していることを踏まえること。
  • リスク管理を重視すること。
    • (注) リスクには、狭い意味での運用リスク(価格変動リスク、流動性リスク等)だけでなく、運用受託機関等の運用体制、管理態勢や事業経営に起因するリスク等も含まれる。

資産構成(政策的資産構成割合)に関する事項

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 三(2)(4)を参照)

  • 政策的資産構成割合及びその乖離許容幅を策定すること。(乖離許容幅の策定を追加すること)
    • (注) 政策資産構成割合および乖離許容幅の策定は、ALM分析等の結果を踏まえて、長期的な分散投資を徹底する観点から策定することが望ましい。
      「運用の基本方針」と共に書面で定めること。(本文挿入でも別紙でも可)
  • 策定にあたっては専門的知識及び経験を有する者から意見を徴収すること。
    • (注) 専門的知識及び経験を有する者は、策定実務の経験がある者や、その際に必要となる金融や経済の知識を有する者、運用コンサルタント等が考えられる。
  • 政策的資産構成割合に係る「リバランス(再調整)」のルールについて定めること。

分散投資義務、集中投資規制に関する事項

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 三(2)(4)を参照)

  • 分散投資を行わないことにつき合理的理由がある場合は、その理由を定めるとともに加入員及び事業主に周知しなければならないこと。
  • 特定の運用受託機関に対する資産等の運用委託が基金の資産全体から見て過度に集中しないようにしなければならないこと。
    • (注) 分散投資、集中投資については、行政による一律的な数値規制等は適切でないので、具体的な考え方や基準については、各基金が自らの実情等を十分踏まえて定めること。
    • (注) 合理的理由については、ガイドライン及びガイドライン等に関するQ&Aも参照のこと。
    • (注) 合理的理由がある場合でも、運用受託機関の信用リスク等に十分な注意を払うこと。

オルタナティブ投資を行う場合の運用受託機関等の管理に関する事項

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 三(4)を参照)

  • オルタナティブ投資を行う場合は、その「目的」「位置付けとその割合」「固有のリスク」等に関する事項を規定すること。
  • オルタナティブ投資に係る運用受託機関の選任に当たっては、ガイドライン 三(4)の該当箇所に掲げる事項等に留意して行うこと。
  • オルタナティブ投資に係る運用受託機関が用いる運用戦略等については、ガイドライン 三(4)の該当箇所に掲げる事項等に留意して行うこと。
    • (注) オルタナティブ投資に関する方針や管理規程は別紙形式で規定してもよい。
    • (注) オルタナティブ投資の定義に関しては、ガイドライン等に関するQ&Aも参照のこと。

運用受託機関の選任および評価

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 三(5)を参照)

  • 運用受託機関の選任の際には、投資判断を行うファンドマネージャー等に対するヒアリング、運用コンサルタントや資産運用委員会等に対するヒアリング等を行うことが望ましいこと。
    • (注) ヒアリング対象は運用を統括する者やポートフォリオのリスク管理担当者等でもよい。
  • 定量評価に関しては、アクティブ運用においてはシャープレシオやインフォメーションレシオ等の指標にも留意しなければならないこと。
  • 定性評価に関しては、ガイドライン三(5)の該当箇所に掲げる事項等に留意して行うこと。

運用コンサルタント等を利用する場合の事項

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 三(8)を参照)

  • 運用コンサルタント等と契約する場合、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第29条の規定による投資助言・代理業を行う者としての登録の有無を確認し、未登録の運用コンサルタント等と契約してはならないこと。
  • 当該運用コンサルタント等の運用受託機関との契約関係の有無を確認しなければならないこと。
  • 当該運用コンサルタント等が運用受託機関と契約関係がある場合、運用受託機関と緊密な資本若しくは人的関係がある場合、又は自前の運用商品等を提供している場合は、助言内容の中立性・公平性の確保に十分留意する必要があること。
    • (注) 運用コンサルタント等との契約締結に関しては、ガイドライン等に関するQ&Aも参照のこと。

資産運用委員会を設置する場合の事項

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 六を参照)

  • 専門的知識及び経験を有する者であって理事長が選任する者を構成員に加えること。
  • 議事を記録にとどめて保存し、概要について直近の代議員会への報告及び加入員等への周知を行うこと。
    • (注) 資産運用委員会に関する規程は各基金の実状に応じて定められるべきものであるが、基金の業務の執行に関する意思決定はあくまで理事会で行うべきものであることに留意すること。
    • (注) 運用受託機関等の関係者が委員となっており、利益相反のおそれのある場合には、当該委員が運用受託機関等の選任・評価の審議に加わることは適切ではないため、審議の中立性・公平性確保の観点から、当該委員を適宜審議から除外する旨をあらかじめ適切な形で設けておくことが望ましい。
    • (注) 資産運用委員会規程等にこれらの事項を明記した場合は、運用の基本方針に記載しなくても差し支えない。

管理運用業務に係る研修

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 三(9)を参照)

  • 運用執行理事をはじめとする管理運用業務に携わる者は、自らが有する管理運用業務に関する専門的知識及び経験等の程度に応じ、資産運用に係る研修を受講しなければならないこと。
    • (注) 基金役職員の職務規程等に明記した場合は、運用の基本方針に記載しなくても差し支えない。

管理運用業務に係る情報の代議員会への報告、加入員等への周知

【改正で盛り込むポイント】 (ガイドライン 八(2) (3)を参照)

  • 理事は代議員会に対し、ガイドライン 八(2) の該当箇所に掲げられた事項を含めた管理運用業務に関する情報を正確に、かつ、わかりやすく報告しなければならないこと。
  • 基金は加入員等に対して周知すべき事項として、「資産運用委員会の議事の概要等」を加えなければならないこと。(資産運用委員会を設置している場合は必須)
    • (注) 加入員等への周知の方法は、従来と同じ方法(基金だよりやホームページ掲載等)でよい。
    • (注) 代議員会規程、資産運用委員会規程等に明記した場合は運用の基本方針に記載しなくても差し支えない。

その他(運用受託機関等への「運用の基本方針」等の提示)

【改正で盛り込むポイント、 (注)を参照のこと】

  • 運用受託機関等に対し、「運用の基本方針」及び「総資産額」を確認できる資料を提出するとともに、「年金資産の運用指針」を交付することを規定すること。
  • 「運用の基本方針」等の内容を変更した場合も、運用受託機関等に対し、提出又は交付すること を規定すること。
    • (注) 「運用の基本方針」及び「総資産額」を確認できる資料の提出については、今後、関係省令及びガイドラインの改正を予定している。

例示: 政策的資産構成割合(基本ポートフォリオ)について

(平成●年●月●日改定)

資産分類 政策資産構成割合 乖離許容幅
国内債券 ●% ●%〜●%
新株予約権付社債 ●% ●%〜●%
国内株式 ●% ●%〜●%
外国債券 ●% ●%〜●%
外国株式 ●% ●%〜●%
生命保険(一般勘定) ●% ●%〜●%
オルタナティブ投資等 ●% ●%〜●%
短期資産 ●% ●%〜●%
合計 100%

(留意事項の例)

  1. (1)XXXXXへの投資は、●●資産に含めることとする。
  2. (2)伝統的資産の代替資産として、デリバティブ等を利用して行う YYYYYへの投資は、●●資産に含めることとする。
  3. (3)オルタナイティブ投資等の運用管理は、「オルタナティブ投資に係る運用方針・管理規程」に基づくこととする。
  4. (4)乖離許容幅の範囲内で運用を行うことを基本とする。
    ただし、市場の変動状況に応じて、資産構成割合を機動的に変更すること等により、一時的に許容乖離幅を超過することは許容する。
  5. (5)乖離許容幅の上下限を超えた資産がある場合等に行うリバランスにおいて、オルタナティブ投資等はその特性(流動性の制約等)を考慮し、通常のリバランスの対象資産からは除外し、別途、構成割合等を管理する。

例示: オルタナティブ投資に係る運用方針・管理規程

 この規定は、別途定める○○○○厚生年金基金(以下「当基金」という)「年金資産の運用に関する基本方針」(以下「本基本方針」という)の規定に基づき、オルタナティブ投資に係る運用及び管理に関する具体的内容について以下のとおり定める。

定義

【改正で盛り込むポイント】

(参考) ガイドラインでは、オルタナティブ投資とは「株式や債券等の伝統的な資産以外の資産への投資又はデリバティブ等伝統的投資手法以外の手法を用いる投資」としている。
「伝統的投資手法」は現物資産のロングポジション(買建て)を想定しており、デリバティブ等を用いたショートポジション(売建て)は、伝統的資産における市場リスクのヘッジ目的や資産構成割合の調整における現物資産の代替目的で用いる場合にはオルタナティブ投資には含まれないと考えている。(ガイドライン等に関するQ&Aも参照のこと。)

目的

【改正で盛り込むポイント】

  • オルタナティブ投資を行う場合は、その目的を明記すること。
    • (例)
      • 収益源泉の分散 (リスク分散によるポートフォリオのリスク/リターン特性の改善)
      • 収益機会の追求 (超過リターンの獲得によるポートフォリオのトータルリターンの向上)
    • (注) 伝統的資産とは異なるリターンとその変動性、他の運用資産との相関関係、流動性等のオルタナティブ資産の特性を十分に理解した上で、オルタナティブ投資を行うこと。

位置付け

【改正で盛り込むポイント】

  • オルタナティブ投資を行う場合は、その位置付けを明記すること。
    • (例)
      • 政策的資産構成割合上の独立した資産クラスとして位置づける。
      • あるいは、伝統的資産(国内債券や国内株式等)の代替資産として位置づける。
    • (注) 安全で効率的なポートフォリオのリスク管理の観点からは、伝統的資産とは異なる特性等を考慮し、他の資産とは区分して独立した資産クラスとして取り扱うことが望ましいと考えられる。
      基金固有の諸事情等から、伝統的資産の代替資産として位置付ける場合でも、そのリスク特性や投資割合等は明確に内部で区別して把握し、適切なリスク管理を行う必要がある。

投資割合

【改正で盛り込むポイント】

  • オルタナティブ投資についても、そのリスク/リターン特性を定性的のみならず、できる限り定量的に把握・分析するものとすること。
  • ポートフォリオの最適化等の適切なプロセスを経て、総合的に評価した上で、他の資産と同様に、投資割合等(基準となる構成割合と乖離許容幅等)を決定するものとすること。
    • (注) 伝統的資産の代替として位置付けて伝統的資産に計上する場合においても、適切な投資割合等を設定し、過大にリスクを取らないようにするべきである。
    • (注) 政策的資産構成割合の乖離許容幅を超えた場合などに行う「リバランス」において、オルタナティブ投資等については、その特性(流動性の制約等)を考慮し、通常のリバランスの対象資産からは除外し、別途、構成割合等を管理することが考えられる。

運用受託機関および投資商品の選定

【改正で盛り込むポイント】

  • オルタナティブ投資における運用受託機関及びオルタナティブ投資商品を選定するにあたっては、ガイドライン 三(4)のオルタナティブ投資を行う場合の留意事項等を参照して、選任に関する留意事項等を定めること。
    • (注) ガイドライン 三(4)のオルタナティブ投資を行う場合の留意事項は例示であり、これらを参考に、基金において実態に即した適切な留意事項を定めること。

投資対象とする商品とベンチマーク

【改正で盛り込むポイント】

  • オルタナティブ投資における運用商品とベンチマーク等を設定すること。
    • (注) オルタナティブ投資においては、不動産関連やヘッジファンド、プライベートエクイティのように必ずしも市場ベンチマークとして広く認知されているものが未だなく、一般的なアクティブ運用のようにインフォメーションレシオ等を評価尺度とした運用を行っていない場合も考えられる。しかし、これらの運用商品においても、運用受託機関と協議の上、運用戦略等に照らして適切と考えられる基準を設定し、できる限りそれらを用いて定量評価等を行うことが望ましい。
    • (例) 絶対収益追求型の運用商品:コールローン(翌日物、有担保)や3ヶ月円LIBOR+α 等

評価

【改正で盛り込むポイント】

  • オルタナティブ投資の評価方法について、ガイドライン 三(4)のオルタナティブ投資を行う場合の留意事項等を参照して、評価項目や基準等を定め、それを基づいた運営を行うこと。
    (項目例) ・運用実績 ・運用体制 ・運用リスク管理 ・法令遵守 ・資産管理 ・情報開示、等

その他

【ポイント】

  • 本規程は、運用の基本方針の一部であること。
    • (注) 運用受託機関等への提示及び厚生労働省への提出が義務となる(厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第136条の4第3項及び厚生年金基金規則(昭和41年厚生省令第34号)第56条第2項)。

(以上)

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